ラノロワ・オルタレイション part8
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0001創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:01:08ID:ormJzZ9O「ラノロワ・オルタレイション」という企画の為のスレです。
※内容に流血や死亡を含みますので、それを予め警告しておきます。
前スレ
ラノロワ・オルタレイション part7
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1256582479/l50
ラノロワ・オルタレイション@wiki (まとめ)
http://www24.atwiki.jp/ln_alter2/
ラノロワ・オルタレイションしたらば掲示板 (避難所)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/10390/
予約用のスレ(予約スレ part2)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10390/1255965122/l50
※予約のルールに関してはこのスレの>>1を参照のこと。
0002創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:02:00ID:ormJzZ9O4/6【涼宮ハルヒの憂鬱】
○キョン/○涼宮ハルヒ/○朝倉涼子/●朝比奈みくる/○古泉一樹/●長門有希
5/6【とある魔術の禁書目録】
○上条当麻/○インデックス/○白井黒子/○御坂美琴/○ステイル=マグヌス/●土御門元春
4/6【フルメタル・パニック!】
○千鳥かなめ/○相良宗介/●ガウルン/○クルツ・ウェーバー/○テレサ・テスタロッサ/●メリッサ・マオ
4/5【イリヤの空、UFOの夏】
○浅羽直之/○伊里野加奈/●榎本/○水前寺邦博/○須藤晶穂
3/5【空の境界】
○両儀式/●黒桐幹也/○浅上藤乃/○黒桐鮮花/●白純里緒
1/5【甲賀忍法帖】
●甲賀弦之介/●朧/●薬師寺天膳/●筑摩小四郎/○如月左衛門
4/5【灼眼のシャナ】
○坂井悠二/○シャナ/●吉田一美/○ヴィルヘルミナ・カルメル/○フリアグネ
2/5【とらドラ!】
●高須竜児/○逢坂大河/●櫛枝実乃梨/○川嶋亜美/●北村祐作
2/5【バカとテストと召喚獣】
●吉井明久/○姫路瑞希/○島田美波/●木下秀吉/●土屋康太
4/4【キノの旅 -the Beautiful World-】
○キノ/○シズ/○師匠/○ティー
4/4【戯言シリーズ】
○いーちゃん/○玖渚友/○零崎人識/○紫木一姫
3/4【リリアとトレイズ】
○リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ/○トレイズ/○トラヴァス/●アリソン・ウィッティングトン・シュルツ
[39/60人]
※地図
http://www24.atwiki.jp/ln_alter2/?plugin=ref&serial=2
0003創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:02:41ID:ormJzZ9O1.とある場所に参加者60名を放り込み、世界の終わりまでに生き残る一人を決める。
2.状況は午前0時より始まり、72時間(3日)後に終了。
開始より2時間経つ度に、6x6に区切られたエリアの左上から時計回り順にエリアが消失してゆく。
全エリアが消失するまでに最後の一人が決まっていなければゲームオーバーとして参加者は全滅する。
3.生き残りの最中。6時間毎に放送が流され、そこで直前で脱落した人物の名前が読み上げられる。
4.参加者にはそれぞれ支給品が与えられる。内容は以下の通り。
【デイパック】
容量無限の黒い鞄。
【基本支給品一式】
地図、名簿(※)、筆記用具、メモ帳、方位磁石、腕時計、懐中電灯、お風呂歯磨きセット、タオル数枚
応急手当キット、成人男子1日分の食料、500mlのペットボトルの水4本。
(※名簿には60人中、50名の名前しか記されていません)
【武器】(内容が明らかになるまでは「不明支給品」)
一つの鞄につき、1つから3つまでの中で何か武器になるもの(?)が入っている。
※以下の10人の名前は名簿に記されていません。
【北村祐作@とらドラ!】【如月左衛門@甲賀忍法帖】【白純里緒@空の境界】【フリアグネ@灼眼のシャナ】
【メリッサ・マオ@フルメタル・パニック!】【零崎人識@戯言シリーズ】【紫木一姫@戯言シリーズ】
【木下秀吉@バカとテストと召喚獣】【島田美波@バカとテストと召喚獣】【土屋康太@バカとテストと召喚獣】
※バトルロワイアルのルールは本編中の描写により追加、変更されたりする場合もある。
また上に記されてない細かい事柄やルールの解釈は書く方の裁量に委ねられる。
0004創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:03:21ID:ormJzZ9O状態が正しく伝達されるために、作品の最後に登場したキャラクターの状態表を付け加えてください。
【(エリア名)/(具体的な場所名)/(日数)-(時間帯名)】
【(キャラクター名)@(登場元となる作品名)】
[状態]:(肉体的、精神的なキャラクターの状態)
[装備]:(キャラクターが携帯している物の名前)
[道具]:(キャラクターがデイパックの中に仕舞っている物の名前)
[思考・状況]
基本:(基本的な方針、または最終的な目的)
1:(現在、優先したいと思っている方針/目的)
2:(1よりも優先順位の低い方針/目的)
3:(2よりも優先順位の低い方針/目的)
[備考]
※(上記のテンプレには当てはまらない事柄)
方針/行動の数は不定です。1つでも10まであっても構いません。
備考欄は書くことがなければ省略してください。
時間帯名は、以下のものを参照してそこに当てはめてください。
[00:00-01:59 >深夜] [02:00-03:59 >黎明] [04:00-05:59 >早朝]
[06:00-07:59 >朝] [08:00-09:59 >午前] [10:00-11:59 >昼]
[12:00-13:59 >日中] [14:00-15:59 >午後] [16:00-17:59 >夕方]
[18:00-19:59 >夜] [20:00-21:59 >夜中] [22:00-23:59 >真夜中]
0005創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:04:44ID:ormJzZ9O0006創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:22:34ID:ormJzZ9O0007CROSS†POINT――(交換点) ◆EchanS1zhg
2009/12/12(土) 00:47:27ID:dvKSLL24「意図を測りかねるな」
言葉の意味はわかるが、少年の意図がどこにあるのか読みきれない。
なので、シズはそれをそのままに言葉として口にした。
「そのままなんだけど……そうですね。まず第一に交渉が通じると思っているのは、シズさん。
あなたが物事を秤にかけて考えることのできる人だからです」
シズはあの橋の上でキョンから時間移動などの可能性を聞き、この世界からの脱走は無理だと判断した。
故に、ここをコロシアムの前哨戦として、皆殺しを慣行して優勝者になろうと決めたのである。
それを指し、目の前の少年――悠二はシズのことを損得で物事を判断できる人間だとそう称した。
「しかし、俺は自分勝手な理由で人を殺している。それなのに交渉が通じると思うのかな?」
「けど最初はそうじゃなかった。だったら戦いをしかける方が不利益だと、僕があなたに示せればいい」
再び、ゴンという重い音が辺りに響き渡る。
アスファルトにめり込んだ鉄柱を見るに、どうやら見た目どおりの重さはあるらしい。
だが、少年はそれを軽々と重さがないかのように扱っている。
そこにいかなる仕掛けがあるかは不明だが、その実力は無傷で済ませられる程度ではないと見積もることができた。
「なるほど。……では一体、何と何を交換するんだ?
君たちはこのバギーを譲ってくれるのか? だとしても俺は君たちに渡せるような物を持っていないぞ」
そんなことはないと少年はシズの腰のあたりを指差す。
彼が何を差し出せと言っているのか、言葉にしなくてもそれは明白だった。
シズが腰に差している一本の刀をよこせということである。しかし己の武器を手放すなど、簡単に了承できるはずもない。
「正直に言うと、その刀は僕の知り合いのもので……その刀を彼女以外の人間が持っているは見逃せないんです」
「つまり、それぞれの持ち物を本来の所有者の元へと戻そうというわけか」
「勿論、無理を言っているのは承知の上です」
なのでこれもつけます。そう言って、少年は鞄から鞘に入った太刀を取り出してバギーの座席の上へと放り投げた。
鞘から抜いて見なければ確かとは言えないが、どうやらシズが普段使っている刀と似たようなものらしい。
「その脇に差している刀。抜き身だし、長くて使いづらいんじゃないですか?」
「バギー1台に代えの刀か……。おいしい話すぎて逆に警戒してしまうな。何かまた要求するものがあるんじゃないか?」
「そうですね。できればこれから人を殺すのを控えてください。それがあなたの為でもあります」
「説得するつもりなのか?」
「いいえ、交渉です。あなたはどうやら頑固そうなので、説得だなんてそんな甘い期待はしませんよ」
ふむ……と唸る前で、少年はいかに殺し合いによって生き残ろうとするのが無謀かをシズに向かって説く。
すでに少年の側には10人ほどの実力者による集団ができあがっていること。
その中にはフレイムヘイズという超常の強者がおり、それは自分よりも遥かに強いこと。
またそれ以外にも強者は仲間におり、逆に敵対している存在の中にもそれに匹敵する者がいること。
自分や、それと相対しているシズ程度の実力ではとてもそれらには太刀打ちできないこと――を。
「無謀だから止めておけと忠告してくれるわけか……」
「その通りです。しかしこちら側に下れとも言いません。ただ現状を把握しなおし冷静に行動してほしいんです」
少年は最後の交渉材料――1枚のメモ紙を丁寧にジープの座席に置き、そしてまた離れた。
0008創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:48:07ID:ormJzZ9O0009CROSS†POINT――(交換点) ◆EchanS1zhg
2009/12/12(土) 00:48:30ID:dvKSLL24「君たちが拠点にしている場所はどこだ?」
「それは教えられません」
最後の答えを聞いてシズは刀から手を離しかまえを解いた。
この坂井悠二という少年はただの平和主義者ではない。頭が回り、そしてなにより慎重だ。信用がおけると判断する。
「では、刀はここに置いてゆく。せっかくなのでこちらからも”おまけ”をひとつ差し出そう。
それとひとつ警告だ。ここから北にある病院で4つの死体を見た。
殺したやつは俺と同じか、それよりも強い。多分バイクに乗っているやつがそうだろう。気をつけるといい」
最後に、国の外で旅人同士がそうするように情報を交換し合うと、シズはバギーに飛び乗りエンジンをかけた。
そして見送る2人の少年から逃げるようにバギーを駐車場の出口へと向け、その場を後にする。
その後に、一本の長い刀とひとつの筒が残されていた。
【7】
「……よかった」
シズが置いていった刀――贄殿遮那を拾い上げ悠二はほっと息を漏らす。
最初に気づいた時は驚いたが、それは紛れもなくシャナが愛用していた刀に違いなかった。
それが彼女の手元にないことに不安を感じ、そして無事に取り戻せたことに安堵する。
「(時間移動説は本当なのか……?)」
もうひとつ。シズが残していった望遠鏡のようなものを拾い上げて、悠二はキョンが言っていたことを思い出した。
望遠鏡のようなそれは《リシャッフル》という名前の宝具であり、以前にシャナが打ち壊したはずのものなのだ。
また討滅したはずのフリアグネの所有物でもあり、とある1日の騒動を起こした逸品でもあった。
「さて、”おれのもの”だったバギーがなくなってしまったわけだが」
背後から声をかけれて悠二はびくりと肩を揺らす。
振り向けば、そこには今回の物々交換で損しかしていない水前寺の不満げな顔があった。
「……えーと、これは……その」
「いや、かまわんよ坂井クン。あのシズという男との交渉の手並みは見事なものだった。
あれで我々に対しても危険が減るというのならバギーの一台くらい安いものだろう」
だからこれは君に対する”貸し”だと、水前寺はさらりと言う。
そしてやはり時間が惜しいのだろう。早速に次の目的地の話を切り出した。
「グズグズはしておられん。病院に向かうとするぞ……と言いたいところだが乗り物を失ってしまったな」
「ごめん」
「言葉だけでは貸しが減ることはないぞ。要求されるのは迅速な行動だ。我々の新たなる足を確保しようではないか」
言いながら水前寺は駐車場の中を見渡す。悠二もそれに倣って駐車場の中を見渡してみた。
普通乗用車やワゴンにトラック。狭いながらも多種多様な車両がそこには並んでいるが、しかし問題があった。
0010創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:48:37ID:IhuY7pq40011創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:49:13ID:ormJzZ9O0012CROSS†POINT――(交換点) ◆EchanS1zhg
2009/12/12(土) 00:49:15ID:dvKSLL24「どうする? 車を止めてある家の中に入れば鍵が見つかるかもしれないけど」
「自転車ならば止め具を壊すだけでかまわんのだがね」
「できれば自動車がいいって?」
さてどうするべきか。
死体が4つなどという話は穏便ではない。そこに浅羽が入っている可能性もある以上、今すぐにでも飛んで行きたいのだ。
探せば車もどこかで調達できるだろう。速度もあるし、複数人が一度に乗れるので、できればこちらが好ましい。
自転車で妥協するという手もある。何よりお手軽だ。だがしかし速度やその他では自動車に大きく劣る。
「ふーむ……」
「ふーむ……」
水前寺と横に並び、悠二は駐車場に並んだ車と自転車を見て、彼と同じように唸り声を漏らした。
これとは別に余談であるが。と、前置きして水前寺は悠二にひとつ確認をとった。
「今更だが、携帯電話を持っていたのだな」
「うん。そうだけど……。一度、神社へと連絡を取っておいた方がいいのかな? 番号はあるし」
「実を言うと、君と遭遇した時点で彼らとの約束を反故にしていてな……」
「今、電話しても怒られるだけか……」
「うむ。成果を上げるまでは、大手を振っては帰ることもできんのだよ。6時に帰るとは言ったがね」
「わかった。電話するのは少し置いておこう。(シャナもいないし……)」
これもまた、余談は余談として終わる。
水前寺の理由もあるが、悠二としても電話口越しにあのヴィルヘルミナから小言を重ねられるのは勘弁願いたかったからだ。
【B-4/市街地南部・駐車場/一日目・昼】
【坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:メケスト@灼眼のシャナ、アズュール@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式
贄殿遮那@灼眼のシャナ、湊啓太の携帯電話@空の境界(バッテリー残量100%)
[思考・状況]
基本:この事態を解決する。
0:自動車か自転車か……?
1:水前寺と一緒に浅羽を探す。そのために今は病院へと向かう。
2:事態を打開する為の情報を探す。
├「シャナ」「朝倉涼子」「人類最悪」の3人を探す。
├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
└”少佐”の真意について考える。
3:シャナと再会できたら贄殿遮那を渡す。
[備考]
清秋祭〜クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻〜14巻の間)。
会場全域に“紅世の王”にも似た強大な“存在の力”の気配を感じています。
0013創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:49:27ID:IhuY7pq40014創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:50:00ID:mnB8UvjK0015CROSS†POINT――(交換点) ◆EchanS1zhg
2009/12/12(土) 00:50:13ID:dvKSLL24[状態]:健康
[装備]:電気銃(1/2)@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:この状況から生還し、情報を新聞部に持ち帰る。
0:自動車か自転車か……?
1:悠二と一緒に浅羽特派員を探す。そのために今は病院へと向かう。
3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
4:浅羽が見つからずとも、午後六時までには神社に帰還する。
【8】
聞きなれたエンジン音を耳に、シズは慣らし運転といった感じでバギーを走らせ市街の中を行く。
そしてほどなくして、とある倉庫街の一角へと辿りついた。
灰色の高い壁で囲われ、煉瓦造りやプレハブなど多様な倉庫がずらりと並ぶそこは、彼にとってのスタート地点である。
「ふりだしか……」
車を止め、座席の中で悠二から譲り受けた太刀を確認しながらシズは再び考える。
半日――予定されている3日の期限の内の6分の1ほどを過ぎて、結局はまたここに帰ってきてしまっていた。
「いい刀だな」
ずしりと重みのある厚い刃は太刀のそれで、よくよく見れば相当に使い込まれていることがわかる。
あの長刀もすごいものだったが、これにしても中々のもので、何故この様な業物を彼が手放したのか、少し不思議なくらいだった。
実を言うと、存在の力を通せない普通の物質であるこの太刀よりも、使いこなせないまでも宝具であり力を通せる鉄柱の方が
悠二にとっては有用な武器だったのだが、しかしシズには知る由もない。
「さて、どうすればいいんだろうな……?」
ここを生きて抜け出し、あの国へと赴き悲願を達成する。
従者であった陸が死んでもそれは変わらない。誰が死のうとも、誰を殺そうともそれだけは決して変わらない。
その為に国を捨て、その為に剣の腕を磨き、その為に旅をして、その為だけに7年という時間を費やしてきたのだ。
「それを考えなおすつもりはないよ」
心の中に聞こえた忠犬の声に、シズは何度も何度も繰り返したようにそう呟いた。
これだけは変わらない。いくら頑固者と言われようとも、無鉄砲とも、泣いて止めろと哀願されようとも変わらない。
しかし、ここでの振舞いに関しては別の話だ。ようは生きて戻れさえすればいい。
まずは何か方法がないかと探してみた。次にそれはとても難しそうだったので人を殺すのが早いと考えた。
そして、今度はそれもまた難しいということがわかった。さて、この状況で一体どう振舞えばいいのか?
「なぁ、お前は俺がどうすればいいと思う?」
シズは助手席に置いた鳥籠に顔を向け、その中にいる新しい相棒であるインコちゃんへと問いかける。
「テ、テ、テ……、テメェノォ――カッテニ、シ、シヤ……ガレェ――ッ!」
そうだな。そのとおりだな。と、シズは新しい相棒の言葉に小さく頷いた。
【C-4/倉庫街/一日目・昼】
0016創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:50:18ID:r1qr0SiC0017創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:50:27ID:ormJzZ9O0018CROSS†POINT――(交換点) ◆EchanS1zhg
2009/12/12(土) 00:51:01ID:dvKSLL24[状態]:健康
[装備]:早蕨刃渡の太刀、パイナップル型手榴弾×1、シズのバギー@キノの旅
[道具]:デイパック、支給品一式(食料・水少量消費)
インコちゃん@とらドラ!(鳥篭つき)、携帯電話の番号を書いたメモ紙
トンプソン・コンテンダー(0/1)@現実、コンテンダーの交換パーツ、コンテンダーの弾(5.56mmx45弾)x10
[思考・状況]
基本:生還し、元の世界で使命を果たす。
0:さて、どういった方法でそれを実現するか……?
1:身の振り方を考える。
2:未来の自分が負けたらしいキノという参加者を警戒。
3:インコちゃんを当面の旅の道連れとする。
[備考]
参戦時期は、「少なくとも当人の認識の上では」キノの旅6巻『祝福のつもり』より前です。
腹部に傷跡が残っているかどうかは不明です。
【早蕨刃渡の太刀@戯言シリーズ】
《殺し名》の序列第一位である匂宮雑技団の分家である《早蕨》に所属する早蕨三兄妹。
その長兄である《紫に血塗られた混濁》こと早蕨刃渡が使用していた太刀。
0019創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 00:51:09ID:ormJzZ9Owiki収録の際は、【0】〜【4】までを前編 【5】〜【8】までを後編でよろしくお願いします。
0021創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 01:12:38ID:ormJzZ9Oなんという見事な交錯劇w 緊張感あったなー。
悠二のカマかけと交渉が見事。シズや水前寺も生き生きとしてるなあ。
水前寺と悠二は病院に向かうか。これは先が楽しみ。
0022創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 02:39:22ID:KVlte5EBモザイク〜
ガウルーーーン!
し、死んでしまったかorz
兄さんは敵討ちができたのかw
姫ちゃんと組むけどどうなるかなぁ。
かなめは……よくわからんだろうなぁw
GJでした。
クロスポイント
水前寺と悠二がとまらねぇw
流石頭が回る二人だ……w
シズは(いい意味で)フラフラするなぁw
ある意味らしい……のか?w
GJでした
0023創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 02:49:47ID:r1qr0SiC>モザイクカケラ
が、ガウルンが! ガウルンがー!
リアルで「え"ー!」って言ったわwwwwww
いやしかしあの冒頭部分から完全に引き込まれてしまった……なんという構成力。
それに如月先生、まさか姫ちゃんと組むとは……これもまた意外也。
後に二人が周りに何を振りまくのかが楽しみでなりませんな。
>CROSS†POINT――(交換点)
一方のこちらはこちらでまた面白いことを……w
悠二と水前寺の会話が止まることを知らないwwwwwこの二人が組むとこうなるのか、こうなってしまうのかw
悠二のシズに対するアクションも格好よかったなぁ。だが野放しにしたのが結果どうなるやら……。
浅羽も探さなきゃだし、シズはまた決意を新たにって感じだし、忙しい奴らだ全くw
0024創る名無しに見る名無し
2009/12/12(土) 10:21:25ID:0M43gM3Aまさかガウルンが一人も殺さず退場するなんて…
また一人優勝候補が消えたか
wiki収録の際に、記入を忘れていた現地調達品(レインコート、医療品)をシズの状態表に書き加えましたことを報告します。
0026創る名無しに見る名無し
2009/12/13(日) 11:50:25ID:iJmnBPKS0027創る名無しに見る名無し
2009/12/13(日) 12:51:52ID:WiQCctT8ガウルンがまたあっさりとしたモンに…ガウルンらしいといえばらしいかもしれないが…
しかし、悠二に贄殿遮那かあ
0028創る名無しに見る名無し
2009/12/13(日) 14:40:04ID:xEuRSHJPそういや最近見ないよね。
リアルの都合で投下できなくなったのか
タイミング的にug氏が墓石職人だったのか
それとも墓石職人さんはug氏のファンだったのか
0029創る名無しに見る名無し
2009/12/14(月) 00:19:06ID:1lqgC1BG0031創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:26:01ID:u+kgLdSA0032ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:27:07ID:5cQMjq3m人生というのは大分不公平だと愚痴りたくなる具合たまらない
最もそう言ったって何も変わらないこの現状がある。
心は酷く怯えて引き裂けそうになってくる。
哀しい事や苦しい事が余りにも重なって。
箍が外れて決壊しても可笑しくないくらいに。
だけど、もしそうなっても何も変わらない。
今まで起きてしまったことは何も変わらない。
頭の中がグチャグチャになっている。
知りたくもなかった事実。
重く圧し掛かる現実。
失ってしまったもの。
色んな事が余りにも多すぎて。
もう、訳が解らない。
そんな全てを投げ出したい状況なのに…………
「……えっと火傷はまず冷やさなきゃ」
わたし――リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツは自分のやたら長い名前をすらすら言えるほど何故か冷静だった。
本当に不思議なほど冷静で。
まず、目の前にある今すぐやらないといけない事を何事も無かったように行えている。
「氷……氷……つめたっ」
プディックの事務室にあった冷蔵庫から取り出してきたバケツ一杯の氷。
それを抱えながら持ってきたら手が冷たくて堪らない。
だけど、それも今やるべき事の為に文句は言ってられない。
「はぁー…………よし……ソースケ……今から……やるわよ」
わたしは手に暖かい息を吹きかけて暖をとる。それで充電完了っ。
そして目の前にいるわたしを護ってくれた人。
その為に深く傷を負ってしまった人、相良宗介。
彼を見るとやっぱり凄い傷と火傷だ。
そう、わたしがやらないといけない事、やるべき事。
それは護ってくれた彼の治療だ。
息はまだあるんだ、こんな所で失いたくない。失ってはいけない。
わたしはまだ彼に何も出来ていない。
だからっ……わたしがやらなくちゃ。
そればかりを考えていたら他の事なんか脇においておく事が出来た。
今、わたしが怖いのは彼が死んでしまうこと。
そんな、傍に居てくれた人の消失に恐怖してしまっていた。
「大丈夫……死なせない……死なせたくない」
0033ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:28:11ID:5cQMjq3m弱気になりかけていた自分を励ましながらもう一度火傷箇所を確認する。
その場所に一気に氷をかけ、冷やす。
ソースケはまだ目を覚まさない。
表情を苦悶に歪めていたままだった。
わたしはちょっと泣きそうになるけどそのまま冷やし続ける。
このまま、失い続けるなんて絶対に嫌だ。
「よし、次は…………」
火傷を負ってる箇所を事務室から拝借したタオルに包んだ氷を全て当て終えると次にやらないといけないもの。
それは切り傷やすり傷などの無数の傷とそこから出る出血だった。
いくつか血が乾いてる所があるけど、それでも急がないとならない。
「まずは洗わなきゃ……」
傷を折っている所に汚れを落とす為に盛大にミネラルウォーターをかける。
服も一緒に濡れてしまうけどこの際仕方ない。勘弁してもらおう。
その次にやらないといけないのは消毒。
確か…………ディバックにあったはず。
私のは持っていかれたから宗介のデイバックから応急手当キットを取り出す。
そのまま、消毒液を傷口にかけた。
盛大にしみそうだなと思いつつも気にはしない。
まずは治療が大事だ。
「ふう……最後は包帯とかでおさえて……」
ここまできたら後はおさえるだけ。
やっと一息を着く。
苦痛に歪んでたソースケの顔も今はそうでもない。
まだ気を失っているけれどもこのまま、回復してくれる事を願うのみだ。
なんだけども所詮応急処置な訳で。
直ぐに治る訳でもないし、内臓や骨の方までいっているならお手上げだ。
そうなっていない事を心の底から願いながら傷口をおさえていく。
ふうと溜息をついた。
なんともままならない気分だ。
本当に役に立っているのかが不安だ。
わたしの応急処置ぐらいで上手く言っているのかさえもわからない。
「……大丈夫……よね?」
そう、問いかけるも誰も答える人なんて居る訳が無い。
わたしの漠然な不安は広がったままでなんかもやもやする。
不安なんだ。
不安で堪らない。
でも、それをどうにかする事が出来なくて更に不安が増していく。
そんなどうしようもない不安定で堪らなくなっていく。
「……ソースケ」
そっと名前を呼んで抱きかかえる。
頭の傷に包帯を巻く為だ。
呼びかけた彼は勿論返事をする事も無く。
一抹の不安をまた感じながらも悪戦苦闘してやっと包帯を巻きあげる。
0034創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:28:55ID:u+kgLdSA0035ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:29:08ID:5cQMjq3mそう、感慨深く呟いて、一先ずの治療を終えた。
ソースケの身体は傷だけで胸が少し痛くなっていく。
大丈夫だろうか。
彼はまた元気になれるのかな。
どうなんだろう。
わたしのせいで傷を負ったのかな。
わたしを護ろうとしたせいで。
彼には護ろうとする人が居るのに。
それでも私を護って傷ついて。
申し訳ない気持ちになっていく。
このまま目を開けなかったらどうしよう。
漠然とまた襲い掛かって来る不安。
目の前のソースケを見つめる。
まだ眠っていた。
わたしは堪らなくなって彼の頭を胸に抱き寄せる。
心に漠然とした不安を抱えながら。
そして、何か人恋しい気持ちに襲われながら。
複雑な気持ちを沢山抱いて。
彼に胸を借りた時のように。
わたしは静かに抱き寄せていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
0036創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:29:37ID:u+kgLdSA0037ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:29:51ID:5cQMjq3mそう、呟いたのはどれ位たった頃だろうか。
長かったような短かったような時間だった。
わたしはそう言い訳かもしれない言葉を呟いた後ソースケを安全な隠れている所に置いた。
とりあえずは宗介は大丈夫……なはず。
なら、わたしがやらないといけない事。
少なくともソースケが元気になるまでやらないといけない事は
「護らないと……」
そう、わたしが気を失っているソースケの分まで護らないと。
正直、私自身のみですら護れるかどうか不安でならないけど。
とりあえず、今動けるのは私しかいないのだ。
だから、頑張る。
だから、わたしがやる。
そう思い、気持ちを奮い立たせる。
今あるのは宗介に渡した銃器だけど上手く使えるのかどうか不安だ。
なので、他の武器を探してみる。
ソースケのデイパックから適当に出してみるとそれは
「うわ……大きい……危ないわよこんなもの」
槍みたいなのといえばいいのかしら。
槍の代わりに長柄の先が鋭い刃になっているような槍と剣を着けたみたいな武器だった。
それは私が扱うに本当にギリギリのラインの長柄の刃物だった。
とりあえず充分脅しにはなるだろう。
わたしははそれを持ってプディックの前を見張る。
わたしがとりあえずは護らなきゃ。
そう思って入り口を見ていると後回していた色々な事を考えてしまう。
それはさっき私に銃を突きつけた人の事で。
信じていた人の事で。
ママの恋人だった人のことだった。
訳が解らない。
どうして、なんでという考えが未だに巡っている。
彼は何で殺し合いなんか肯定しているんだろう。
ママが死んだから?
そしたらどうでもよくなった?
そんな感じでは無かった。
あの人はしっかりと意志を持っていた。
なのにどうしてわたしに銃を向けたのだろう。
解らない。
でも、あの人はわたしを殺しはしなかった。
傷つけた宗介でさえ。
本当に殺し合いを肯定しているのなら。
わたしを撃ち殺してもよかったのに。
宗介に止めをさしているはずなのに。
0038創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:30:30ID:u+kgLdSA0039創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:31:16ID:u+kgLdSA0040ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:31:20ID:5cQMjq3mいや、もしわたしとわかっているのになんで姿を現したのだろう。
殺しもしないのに。
なんで………………?
………………わかんないわよ。
…………わかんないよ。
何も言ってくれない。
というよりわたしは彼の事を解っていない。
ママの恋人って事だけで。
ママが本当に彼の事を大好きって事だけ。
正直わたしとの縁なんて薄いのかもしれない。
………………でも。
どうして。
どうして。
ママが死んだときのようにこんなにも哀しいんだろう。こんなにも苦しいんだろう。
心から。わたしの知らない何かが本当に哀しいと告げている。
そんな気がするのだ。
だから。
こんなにも苦しい。
あの人がこんな事しているのが哀しい。
止めてほしい。
そう思ってしまう。
だけど、わたしはきっとなにもできないだろう。
当然だ。あの人はきっとわたしの事を何も思っていないだろう。
そう、思うと何か哀しかった。
それが何故だか解らなくて余計に哀しく思えた。
わたしは何故か零れてきそうな涙をこぼさない為に前を見る。
今はソースケを護らないと。
わたしが護らないといけないんだ。
0041創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:31:57ID:u+kgLdSA0042ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:32:04ID:5cQMjq3mわたしが護らないと……
わたしが……頑張らない…………と
まも……………………
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よう、カシム」
ぼやっとした空気の中、聞きたくも無い声が俺の耳に聞こえてきた。
その名前で呼ぶのは奴しかいない。
「何のようだ、ガウルン」
「おー折角現れてやったのにつめてぇ野郎だ」
「俺はあいたくもない。さっさと消えろ」
その言葉に奴はけたけたと笑った。
心底イラつかせる奴だ。
俺は睨むと奴は笑いながら言った。
「いやぁ愛しているカシムの為に忠告しに……」
「いらん」
「つれないねぇ。俺でさえ簡単に死んだだぜぇ」
そう言ったガウルンは楽しそうに俺を見る。
どうやら、まだ成仏する気は無いらしい。
「カシム〜。他の子に現抜かしていいかい? 気が着いたらカナメちゃん達殺されるぜ」
そう言った言葉は俺の心を抉って。
俺は苛立ちながら言う。
「煩い。黙って消えろ!」
「まぁ、俺としてはカシムがカナメちゃんが死んで苦しんでるのを見てるのがよっぽどいいがな……くっくっくっくっくっくっ」
喜びに笑う奴に我慢が効かなくなる。
俺は睨んで
「まぁそうやって護るものも解らないまま、絶望していくがいいさ、地獄で待ってるぜ……ぎゃはっはははは!!!!!!」
「だまれっ! 死人はさっさと死ね!」
0043創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:32:40ID:u+kgLdSA0044ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:33:13ID:5cQMjq3m「……っ!?」
そうやって奴の汚らしい笑い声を聞きながら身を起こす。
辺りを見回すが奴はいない。
…………夢か。
そうだ奴は死んだはずだ。
この島に名前があるとはいっても一緒。
それは変わりも無い、奴は死人だ。
そう思って心を落ち着かせふと身体を見回すと傷に処置がされている。
どうやら、誰かが治療してくれたらしい。
一体誰かと起き上がり、前を見ると俺が扱いづらいと思ってしまった薙刀を持ったリリアがカウンターに突っ伏しながら寝ていた。
……どうやらリリアが治療してくれたみたいだ。
疲れて眠っているらしい。
処置は適切で身体は快適だ。
内臓や骨はどうやら無事らしい。
それに安心し、怪我の治療をしてくれた事に感謝しながらリリアに近づく。
「ソー……スケは……わたしが……まもらな……いと」
そう寝言を言うリリア。
どうやら……俺が気絶している間、彼女は護っていてくれてらしい。
慣れない薙刀などもって必死に。
結局の所力が尽きて寝てしまったようだが無理もない。
元々彼女に身には色々起こりすぎたのだ。
俺はその事に感謝し、リリアを見守りながら考える。
これから、リリアが起きた後、放送を聞いてやるべき事を。
まず、いくら応急処置だからといって、まだ内部に怪我が残っているかもしれない。
そこを確認する為にも一度病院にいくのは考えの一つとしては有効だ。
元々人が集まる可能性がある場所でもある。
もしくは一度こう損害を受けたのだ。
調べきった場所の空港で体勢を整えるも有りだ。
どちらにしようかと思いながらとりあえずリリアが起きるのを待とう。
リリアは相変わらず寝ていた。
その寝顔は疲れきっていたものだった。
俺はそんな様子を見て少し戸惑ってしまう。
俺はリリアを守る。
そんな事に迷いなど無い。傍に居るといった。
それなのにあの忌々しい奴の言葉を思い出してしまう。
『他の子に現抜かしていいかい? 気が着いたらカナメちゃん達殺されるぜ』
0045創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:33:21ID:u+kgLdSA0046ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:33:55ID:5cQMjq3mマオでさえ死んでいる。
気が着いたら、かなめ達が死んでいるかもしれない。
それは絶対に避けないといけない。
……だが、俺はリリアを護らないといけない。
俺の為に治療やこんな事までしている。
リリアはリリアなりに頑張っているというのに。
だから、俺はリリアを護る事には後悔は無い。
そう思っている。
……いや、そうだといえる。
だから今更迷う事など……無い。
『まぁそうやって護るものも解らないまま、絶望していくがいいさ、地獄で待ってるぜ……ぎゃはっはははは!!!!!!』
そんな声が聞こえたのを無視して。
リリアの寝顔を見る。
やすらかで俺は安心して。
「……ママ……どうして死んじゃったの?…………ひとりは…………いやぁ……」
その言葉に止まってしまう。
そんなリリアの不安や哀しみが俺に伝わっていくようで。
俺の心にも楔を打っていくような。
そんな気がした。
0047創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:34:12ID:u+kgLdSA0048ふたりの護りたいという気持ち、ふたりの不安。
2009/12/16(水) 05:34:36ID:5cQMjq3m【リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康、深い深い哀しみ
[装備]:IMI ジェリコ941(16/16+1)、早蕨薙真の大薙刀@戯言シリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:がんばって生きる。憎しみや復讐に囚われるような生き方してる人を止める。
0:睡眠中
1:宗介を護る。
2:トラヴァスの行動について考える。トラヴァスの行動が哀しい。
3:トレイズが心配。トレイズと合流する。
【相良宗介@フルメタル・パニック!】
[状態]:全身各所に火傷及び擦り傷・打撲(応急処置済み)
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品0〜1個所持)、予備マガジン×4
[思考・状況]
0:……リリア。
1:放送を聞いた後病院か空港へ行く。
2:リリアの傍に居る。
3:かなめとテッサとの合流。
4:マオの仇をとる?
【早蕨薙真の大薙刀@戯言シリーズ】
《殺し名》の序列第一位である匂宮雑技団の分家である《早蕨》に所属する早蕨三兄妹。
その次男であり蕨刃渡の双子の弟である早蕨薙真の大薙刀。
0049創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:34:54ID:u+kgLdSA0050創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 05:35:59ID:u+kgLdSA0052創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 08:39:34ID:BNIdu2d7このコンビは微笑ましい
0053創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 14:31:47ID:cBS1vZNbガウルン、死んでから逆に生き生きとしてるなw
0054創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 21:35:39ID:ZDyvqfkn二人の信頼関係がゆっくりと深まっていっているようですな。
状況は凄惨ではあるが、強く生きて欲しいと思う限り。まぁ、現実問題ちょっと難しいんだけどな。
少佐の笑顔の一撃は効いたなぁ。ガウルンもガウルンで……お前……w
痛手を負った状態で何処まで足掻けるか、これからが勝負といったところか。
0055創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 21:54:01ID:dSdvCnWQうん、やっぱりこの二人はいいわw
ゆっくりと、そしてどんどん仲が深まってるなぁ
でもロワでこういう展開は後が怖いんだよな……
0056創る名無しに見る名無し
2009/12/16(水) 22:12:48ID:vKHQSJtH宗介が原作後半からの参戦じゃないからガッカリした時もあったけどこういう展開も良いね
頑張って戦い抜いて欲しい物だ
0057創る名無しに見る名無し
2009/12/17(木) 00:52:28ID:F7Gw3lsGリリアと宗介のコンビは本当大好きだなー
二人の関係がどうなるかこれから凄い気になるしやり取りも本当いい。
この二人は応援したい。続きが楽しみだ。GJ
0058創る名無しに見る名無し
2009/12/17(木) 02:42:18ID:pbZJVDsmリリアと宗介の微妙な距離感いいなぁ。
互いに互いの事を思いつつも不安があって。
ああ、この二人どうなるんだろう。いい形になってほしい
0059創る名無しに見る名無し
2009/12/17(木) 16:07:00ID:GgOyx5iz2分間隔で投下しますので、もし途切れたら規制食らったと思ってください。
0060代理◇LxH6hCs9JU
2009/12/17(木) 16:09:00ID:GgOyx5iz小学校時代には理科の授業やらなんやらで使っていた記憶があるものの、中学に上がってからは触る機会もなくなった。
高校生になってからはなおさら、プライベートやモデルの活動においても、わざわざ自分で方位を調べたりはしない。
方位磁石片手に、知らない土地の知らない町で、南にあるはずの海を目指す。
住宅が犇めき合う道を、学校指定のローファーで踏み歩く。
車道に車はなく、路地に通行人はなく、町に人気はない。
学校から出発したから、ちょっとした校外学習の気分だった。
川嶋亜美。
ティーン向け雑誌の表紙を飾ることもある彼女は、同年代の女の子には名の知れたモデルである。
容姿やプロポーション、学生服の着こなし方、姿勢に歩き方にと、どこを見ても様になる、そんな女の子への歓声はない。
同行者がいないからといってぶつぶつ独り言を呟くこともなく、手元の方位磁石で逐一進行方向を確認しながら、南へと歩く。
初めは、川と海の、つまりは北と南の二択だった。
自然に還す、という意味では川に流したってどうせ海に行き着くわけだし、と二択はすぐに一択になった。
海のある南へ行こう。そこで『水葬』を済ませよう。亜美ちゃんの『おそうじ』は、とりあえずそれで完了としよう。
歩きながらに思う、思いながらに歩く、わざわざ声に出す必要もない、川嶋亜美の思考。
背負ったデイパックの中身に、わざわざ喋りかけることでもなかった。
気兼ねなくおしゃべりできる相手は欲しいと言えば欲しいが、今はいらない。そんな感じ。
トレイズや上条当麻みたいなデリカシーに欠ける男子ではなく、木原麻耶や香椎奈々子のような女子がいい。そんな感じ。
いつもみたく尻尾振って愛想振りまいて仲良くなって……でもそれって億劫かも、とそんな感じで。
川嶋亜美は、一人だった。
川嶋亜美は亜美ちゃんではなく、川嶋亜美として一人でいることを望んだ。
というか、今ばかりは亜美ちゃんではいられなかった。
仕方ないよね、と心の中で吐き捨てる。
トレイズを送り出してやったのも、それを止めなかったのも、川嶋亜美本人。
上条当麻に同行を願わなかったのも、むしろ突き放したのも、川嶋亜美本人。
一人でいることを選んだのも、川嶋亜美本人。だって、そのほうがよかったから。
最後のお別れは、自分一人でやらなければいけないと思ったから。
逢坂大河や櫛枝実乃梨はこの場にはいないし、北村祐作は彼と一緒にいなくなってしまった。
ならやっぱり自分一人でやるべきだ。知り合いと呼ぶにも微妙な人たちには、面倒も迷惑もかけられない。
なんて、ただの自己満足なんだけどね。
人を『送る』正しい作法なんてものは、勉強不足の亜美にはわからなかった。
それは最良や最善がわからないという意味で、確固として思い描くイメージは、あるにはある。
水葬のために海を目指しているのも、そんな自分の中にあるイメージに従ってのことだった。
誰だって、薄暗い学校の中でバラバラにされたままでは嫌だろう。
きれい好きの彼なら、なおのこと。
そう思っただけ。
◇ ◇ ◇
0061代理◇LxH6hCs9JU
2009/12/17(木) 16:11:00ID:GgOyx5iz崖の縁に立ち、視線を下へと落としてみる。落ちたらまず這い上がってはこれない。そのままあの世行きコースだった。
直下の海をなぞるように、視線をついーっと前方へと向けてみると、例の『黒い壁』が聳えていた。
それは夜中に確認したときよりもずっと鮮明に、それでいて険しく、絶望の黒一色を纏い君臨している。
あれ、ちょっと待って、これ、どうやって流そう。
問題なく済むと思った水葬は、直前で大きな問題に直面する。
イメージとしてはもっとこう、水辺に遺体をそっと浮かべて、あとは流れのままに、という感じだった。
ところがこのような断崖絶壁ではそうはいかない。
崖下に下りられるような道も見当たらず、水面に近づくことは非常に困難だと思えた。
となると、これはもう直接海に落とすか投げるかしか、方法がないのではないか。
いやいやそんな不法投棄みたいな真似はどうなんだろう。
ゴミ扱いする気など毛頭ないが、掃除の締めがそれではあまりにも彼に失礼だ。
川嶋亜美は考える。
デイパックから取り出したビニール袋三つ。一つ一つが結構な重さになっているそれを、じっと見る。
こういうとき、掃除のプロフェッショナルたる彼ならどうするだろうか。
これがちゃんとした清掃活動なら、そもそも海ではなくゴミ捨て場に持っていくのだろうが、言っても仕方がない。
水葬は諦めて、やっぱり土葬にするというのはどうだろう。それもよくない。自分が納得できない。
なにかいい案はないものか、と川嶋亜美はまたデイパックの中を漁り始める。
出てきたもの。食料。水。地図。救急箱。名簿。メモ帳。筆記用具。懐中電灯。歯ブラシ。歯磨き粉。
風呂桶。タオル。高須棒。コイン。本。包丁。遺髪。あとは手元に方位磁石と腕時計、それと拳銃。
なにをどう活用したとしても、問題の解決には程遠い。知恵を借りようにも一人ではそれも成り立たない。
孤立無援の八方塞がり。業界において、一人では仕事ができないのと同じように。
同じにしたくはなかった。
これくらい、一人でやらなきゃと思った。
◇ ◇ ◇
たっぷり三十分ほど、そこで考え込んでいたことだと思う。
土に埋めるにしても、川にそっと浮かべるにしても、海に放り投げるにしても、結局は不法投棄のようなものなのだ。
ゴミはゴミ捨て場に。分別はきっちりと。なまものはなまもの、プラはプラ、ペットボトルはペットボトル。リサイクル精神。
バラバラになってしまった人間のパーツを還すべき場所など、結局はどこにもない。
これは単なる自己満足なのだから、完全に自己を満足させるためにはある程度の妥協も必要なんじゃないかと、妥協した。
0062代理◇LxH6hCs9JU
2009/12/17(木) 16:13:00ID:GgOyx5iz海との距離が遠かろうが近かろうが、行き着く先は結局海なのだ。変に格好つけたって仕様がない。
まさかどこからともなくカモメが飛んできて、遺体が落下し切るより先に啄まれる、なんて心配もまあないだろう。
なら問題なんてのはただの一問。水葬を担当する川嶋亜美が、納得できるか納得できないか。
納得することこそが、この場合は正解なのだった。
考えてみれば、この海にしたってあと数時間後には『消滅』してしまう。
正確には約十八時間後。正確と言いつつ約を使っているあたり国語力が足りていないが、この場は気にしない。
消滅というのはつまり、例の狐面の男、人類最悪が説明してくれたとおりの意味での、世界消滅のこと。
実際にその消える瞬間、消えた場所を確認したわけではないが、おそらくは目の前の『黒い壁』と同じような感じになるのだろう。
そのとき、生きている人間はともかくとして――海を漂う遺体は、どうなってしまうのだろうか。
これは確かめようのない難問中の難問である。挑んで解けずに不貞腐れるつもりもなかった。
テストはスルーして、自己のスタイルでもって行為に採点をする。欲しいのはやはり、単位ではなく自己満足。
彼が向こう側からお礼を言いに来てくれるというならそれはそれでロマンチックな話だが、一方で怖くもある。
水葬にしても火葬にしても土葬にしても、葬送なんてものは結局、残された者が気持ちに整理をつけるためのものだと思うから。
唐突に深呼吸。
いや、全然唐突なんかじゃない。
答えを決めたら覚悟も決めた、というだけの話。
臭いが漏れないよう、しっかりと口を縛ったゴミ袋が三つ分。
その内の一つを慎重に開け、中に視線をやる。すぐに逸らしてしまった。
変だ。片付けている最中は、それほど気にならなかったのに。感覚が麻痺していたのだろうか。
袋の中から放たれる異臭が、鼻を曲げる。グロテスクな絵面が、目を焼く。心が折れそうになった。
嘔吐感もないといえば嘘になるが――それ以上に、反吐が出るほどの弱音だとも思った。
今ここで吐き出したりしたら、すべてが台無しになってしまう。
まだ、なにも終わっちゃいない。
強く心で唱え、ゴミ袋の口を開けたまま、しかし中身は溢れないよう、軽く捻ったところを手で掴む。
相変わらず結構な重さだったが、地面を引き摺って袋が破れでもしたら惨事である。
筋肉痛覚悟でこれを膝の高さまで持ち上げ、そのまま崖っぷちまで移動。
反動をつけて海のほうへ投げ込めば、あとはまっさかさまという位置に立った。
そして。
袋の口を持ったまま、腕を軽く後ろに振り、反動をつけて前へ。
振り子の要領で、後ろへ、前へ、ゆらり、ゆらりと。
数回やってから、川嶋亜美はその手を離した。
――高須竜児の遺体が詰まったゴミ袋は、ばしゃーんという音を立てて海に消えた。
◇ ◇ ◇
0063代理◇LxH6hCs9JU
2009/12/17(木) 16:15:00ID:GgOyx5izこれでゼロ。もう残っていない。かつて高須竜児と呼ばれていたモノはすべて、自然に還っていった。
唯一の例外は、家に持ち帰るつもりだった遺髪だけ。
強いて言えば、あとは余韻と名残が少しばかり。
崖の縁に乗り出し、顔を出す。漫画なんかだと、このまま崩れて落ちてしまいそうなシチュエーションだった。
視線の先、海を揺らす波は穏やかで、遺体が詰まったゴミ袋は見当たらない。沈んでしまったのだろうか。
きっとそうに違いない。仮に思い切って飛び込んでみたとして、もうそれを手にすることはできないのだろう。
手放してしまったから。送るというのは、つまりそういうことだから。もう、お別れもおしまい。
うん。
おわり。
さーて、これからどうしようかな。
川嶋亜美はくるりと回って海に背を向ける。後方に聳える『黒い壁』からは、今もなお威圧感がひしひしと感じられた。
あの『黒い壁』はなんなのだろう。壁というよりは境界と呼ぶべきものだと、トレイズはそんな風に言ってもいた。
遺髪を高須家に持ち帰るともなれば、当然その手段についても考えなければならない。
真っ先に思いつくのが、『黒い壁』を突破するという方法――なのだが、肝心の突破の方法が思いつかなかった。
それって本末転倒じゃない。呆れつつも、川嶋亜美はデイパックを担いで歩き始める。考えるなら歩きながらだ。
椅子取りゲームの趣旨に従い、最後の一人を目指すという手もあるにはある。
誰にも害されないよう逃げて隠れて、最後にはちゃっかりと席についていればいいわけだ。
別段、難しいこととは思えない。やってやれないことはないと思う。
ただ、そうなると自分以外の人間は。この世界に組み込まれた、椅子を与えられなかった人間は――消えてしまう。
たとえば、逢坂大河。たとえば、櫛枝実乃梨。たとえば、トレイズや上条当麻や名前も知らないあの女の子。
エリアの消滅に巻き込まれて消えるか、高須竜児のように誰かに殺されて消えるか、その程度の違いはあるもののやっぱり消える。
一以外の五十九が消えてしまう運命。なんて悲惨なお話だろう。今更ながらに思った。
海との距離はどんどん遠ざかっていき、足元も土と草の地面からアスファルトに変わりつつあった。
家に帰るという最終的な目標を定めたはいいが、そこにたどり着くまでの道程はどうしたものか、悩みながらに歩き続ける。
遺髪を誰かに託す、という案も考えてはみたが、川嶋亜美の知り合いにそれほどの信頼を寄せられる人間はいなかった。
いるとすれば、それは元から高須竜児のことを知っているあの二人なのだろうが、ここでは噂すら聞かない。
今頃、どこでなにをしているのだろうか。あの手乗りタイガーと、高須竜児が恋していた女の子は。
最後の椅子に着席する。そして帰る。これ自体はまあ悪くない。むしろ望むところと言える。
だが、それを目指したりはできない。それを目指すということはつまり、他人を殺すということと一緒だから。
腐ってもそんな人間にはなりたくなかった。いや、この場合は消滅してもそんな人間にはなりたくなかった、だろうか。
だからまあ、隠れたり逃げたりはするだろうけど、誰かを傷つけたりはしないしできないだろう。
そう思う。そうとしか思えないはずなのに、自分のことだというのに、ひどく曖昧な感じだった。
で、結局どうする――という話になる。
◇ ◇ ◇
0064代理◇LxH6hCs9JU
2009/12/17(木) 16:17:00ID:GgOyx5iz上条当麻の話によれば、北村祐作はそこで留守番をしていたという。
上条たちが発ってから放送が始まるまでの数時間、温泉でなにがあったかはわからない。
夜が開けた今でも温泉を訪ねるのは危険と言えるだろうし、学校のときのような凄惨な現場に遭遇しないとも限らない。
そもそも川嶋亜美はモデルであって、葬儀屋でも死体処理係でもないのだ。
わざわざ知人の死体を拝みに行く、というのも気が引ける。というか、嫌だった。
では学校に戻るというのはどうだろう。
上条と彼女はまだ校内に残っているだろうか。上条は温泉に戻る途中のようだったが、それもあの女の子しだいだろうか。
なんともまあ、世話好きというかおせっかいというか、他人に行動を縛られるタイプの人間なようである。
あの、上条当麻という少年は。
おせっかいというのなら、トレイズも負けていない。
好きな女の子がいると公言する一方で、別の女の子にかまけるだなんて、最低のクズ野郎だ。
しかもその相手が天下の川嶋亜美ともなれば、はっ、鼻で笑い飛ばすことができる。
腹ただしいから、トレイズにはぜひともリリアーヌさんと再会してもらって、幸せになってもらいたい。
その瞬間に居合わせることはできないだろうが、もし機会に恵まれたのならば、精一杯祝福してやるとしよう。
いろいろ考えながら歩いてたどり着いた、さてここはどこだろう。
あたりの風景は相変わらず住宅街だったが、学校から海を目指したルートでは見られなかった風景だ。
それほど遠ざかってしまったわけではないと思うが、おおよその隣町くらいの認識で大丈夫だろう。
だとすれば、温泉は東か北か――目印らしい建物がなにもないので、方位と直感だけが頼りになる。
川嶋亜美は結局、温泉に行ってみることにした。
ひょっとしたら、そこでまた大掃除をして、遺髪を確保して、海に遺体を流す――なんて仕事を得てしまうかもしれない。
正直、二度目となるとかなり面倒くさいが、それは行き当たってしまってから考えるとしよう。
いつまでもうだうだ町を練り歩くばかりではいられないのだ。
川嶋亜美は多忙な身の上なのだから。
…………いや、全然多忙なんかじゃない。
仕事はないし、学校にも行けないし、一人きりだから誰かに媚びへつらったり気を使ったりする必要もない。
そりゃ、友達が死んでしまってそれなりの精神的苦痛を味わってはいるが、癒す時間は十分にあった。
どこかに篭ってしくしくと泣いていればそれでいい。それはそれでメンタルケアになる。
しかし川嶋亜美のスタイルは、悲しんで癒すよりも食べて癒す。それが主流ではないだろうか。
暴飲暴食はストレスの消化としてこの上なく効果的。反面、モデルとしての質を落とすのが悩みのタネだった。
お菓子やらお茶やらばくばく食っちゃって飲んじゃって、満腹になったところで切なげに体重計に乗って、
ナイーブ入ったところでさらにお菓子をかじりつつ、その日の夕飯は寒天スープ27キロカロリーに抑える。
翌日はジムに通って、しこたま汗を流した帰りにジョギング、家についてからはテレビの前でビリー。
女の子は肥えた豚ではいられないのだ。特にクラスの人気者は。特にモデルは。特に川嶋亜美は。
炭水化物は朝と昼だけ。夜でも基本的には最大400キロカロリーまで。たらこスパなんてもってのほか。
勉強は学生との勤めだが、体型維持は年頃の女の子の勤め。小デブちゃんをざまあと嘲笑えるのは、努力した者の特権。
我慢に我慢を重ねての体脂肪率10パーセント台。服は7号。サイズはS。デニムは24インチ。この数字を死守。
自他共に認める『かわいい亜美ちゃん』は、努力家なのだった。
0065代理◇LxH6hCs9JU
2009/12/17(木) 16:19:02ID:GgOyx5izデイパックの中を漁る。出てきた食料といえば、乾パン。あの、避難訓練のときなんかに配られるやつだった。
こんなものでは腹の足しにもならないし、ぶっちゃけ美味しくない。口に入れるならやっぱりお菓子だろう。
近くにコンビニでもないものだろうか。小走りに探してみるものの、見えるのは民家ばかりだった。
いまどき近所にコンビニもない住宅地とか。そんなんどこの田舎だよ。ぼやきながら走り回る。
足はだんだんと加速していって、いつの間にか全力疾走に。腹をすかせたチワワの激走だった。
なんで。
なんで亜美ちゃん、走ったりしてるんだろう。
ストレス発散のため?
カロリー消費のため?
歩きっぱなしで、足、疲れてるってのに……。
「――うぉ」
不意に。
それは不意にきた。
食べ物のことを考えたからだろうか。
今までためてきたものが、はじけ飛んだ。
抑えつけていた衝動が、暴れる。
もう、川嶋亜美では制御し切れない。
叫びという形で外に出る。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!」
気がつけば。
本当に、気がつけば。
川嶋亜美は走っていった。
あらん限りに叫びを町中に響かせて。
走りながら叫びながら、泣いていた。
「ざっっっっけんなぁ――――――――――――っっっ!」
なにか。
だれか。
どこか。
別に対象があったわけではない。
対象がないからこそ、こうなった。
我慢には二種類あって、できる我慢と、できない我慢がある。
訪れたのは、できないほうの我慢だった。
――そういえば。
以前にも、似たようなことがあった。
我慢が得意だったはずの川嶋亜美が、我慢しきれなくなったことがあった。
思い出すのも不快なのでそのときのことについては触れないが、あれに近い感じだった。
いやむしろ、これには我慢をする理由がないのだから、我慢なんてできなくて当然だったのかもしれない。
0066代理◇LxH6hCs9JU
2009/12/17(木) 16:20:59ID:GgOyx5iz今はただ、思うがままに叫んで走りたい。
それでどこに行き着くかは、運試しだ。
うん、きっと大丈夫。
なんせ亜美ちゃん、日頃の行いがいいから。
【F-2/住宅街/昼】
【川嶋亜美@とらドラ!】
[状態]:健康
[装備]:グロック26(10+1/10)
[所持品]:デイパック、支給品一式×2、高須棒×10@とらドラ!、バブルルート@灼眼のシャナ、
『大陸とイクストーヴァ王国の歴史』、包丁@現地調達、高須竜児の遺髪
[思考]
基本:高須竜児の遺髪を彼の母親に届ける。(別に自分の手で渡すことには拘らない)
1:今はただ、なにも考えずに走り続けたい。
2:温泉にいたはず、という北村のことが気になる。落ち着いたら温泉の様子を見に行く。
※高須竜児の遺体(ゴミ袋3つ分)は、F-2の海に水葬されました。
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タイトル「お・ん・なビースト〜一匹チワワの川嶋さん〜」、代理投下完了。
0067創る名無しに見る名無し
2009/12/17(木) 16:30:56ID:GgOyx5izみのりんは境界葬されたけれど、忍者の変装状況と進む方向によっては一悶着ありそうな予感。
0068創る名無しに見る名無し
2009/12/17(木) 17:27:14ID:tkUz5dG/亜美ちゃん……。やっと、泣くことができた……。やっと、叫ぶことができた……。
なんだろう、理屈も筋もまるで通っちゃいないのに、凄い納得感。
崖に出くわして途方に暮れるとことか、今更ながらに異臭に心折れそうになるとことか、目のつけどころが上手いなあ。
もう、そのままどこまでも走ってくれ! GJ!
0069創る名無しに見る名無し
2009/12/17(木) 19:09:54ID:rACHq/wwなんだかんだ言っても、女の子だなあ
薄暗いホテルのロビーに篝火を掲げながら僕は黙々と作業をしていた。
そして壁に貼っていたルーンの書かれているカードの最後の一枚を回収した時、思わずそう呟く。
僕――ステイル=マグヌスは先刻、殺し合いを肯定する立場に鞍替えをした。
最もあるべき場所に戻っただけかもしれないね。
彼女の為に生き、彼女の為に戦い、彼女の為に死のう。
ただ、それだけの事。
結果的に言うと僕には『彼』のような生き方は無理という事だ。
まあいいさ。
元々似合わないし。
毒され過ぎただけかもね。
僕は僕の生き方をするだけだ。
彼女の為のヒーローであるべき者は今は彼だ。
僕じゃない。僕はその役目から降りた。
でも、僕の感情は変わらない、変わる訳が無い。
「でも……いいさ」
でも、それでいい。
ヒーローが彼でも、僕は彼女の為に生きる。
例え、それが血塗れた道でも僕は進むさ。
彼が光で僕が闇でいい。
それでいいさ。
ふうと溜息を着くついでに煙草に火をつける。
ああ、いいね。ニコチンは実にいい。
少しぐだぐだしていた思考や鬱憤を綺麗に吹き飛ばしてくれる。
お陰でいい加減頭を切り替えない事を思い出させてくれたよ。
「さて……」
まず、色々再確認しないといけない事がいくつかある。
今後の指針を決めるのに重要なものをね。
方針が鞍替えした事によって随分変わるしね。
僕はロビーのソファーに身を埋めながら考えに没頭していく。
まずはどうやって狩っていくのが効率がいいかだ。
その為には自身が出来る事を考えなければならない。
あの狂犬みたいにむやみやたらに行動したらガス欠が起きるのが目に見えているからね。
さて、自分で言うのなんだけど動き回るというのは正直苦手だ、。
体力が無いというと情けなく思うが、これも得た力の代償故なんだけど……まあ仕方ない。
それ故に僕の得意分野は要所防衛などといった篭城や防衛戦だ。
そして、僕の切り札、魔女狩りの王は元々下準備にかかる。
残念ながらとっさに出せるものではない。
だから出来れば何処かに留まるというのが理想といえば理想なんだけど……
「ゆっくり獲物が来るまで待つというのも……ね」
殺し合いに乗った現状、そうも行かないだろう。
例えば、ここに留まったって人が来るとは限らない。
だから僕は此処から離れることを選択したんだけど。
それに、自分から動かないと意味が無い。
これは時間制限がある……だからのんびりしてる暇は無いんだ。
0072創る名無しに見る名無し
2009/12/21(月) 02:51:46ID:8SiqR3tX0073創る名無しに見る名無し
2009/12/21(月) 02:52:04ID:/PR4MPGB0074オルタナティブ ◆UcWYhusQhw
2009/12/21(月) 02:52:40ID:SYD81gM1動き回るとなると僕の戦う手段になるのは主に炎剣だ。
炎剣だけでも充分と言いたい所だけど……あのような殺人鬼相手には何処まで通用するかが不明だ。
僕自身の弱点としては僕自身が弱いという事でもある。
そこをつかれるというなら……まあ、きついか。
とはいえ、遅れを取るつもりなんてさらさら無い。
まあ、纏めると僕の運動能力を着くような奴はちょっと遠慮したい感じだ。
「…………『魔女狩りの王』はどうしようかな?」
そして『魔女狩りの王』
僕の切り札だけど……これはルーンさえ貼っておけば自立行動は可能だ。
一度保険であの上条当麻のマンションにも張っていた時があるように。
僕が使役する訳じゃないから何処までこの島で通用するかわからないけど……力を持たないような奴ぐらいは狩れるだろう。
なら、何処か人が集まるような場所……例えばこのホテルとか、島の中心であるホール。
怪我を治療するかもしれない人が集まりそうな病院や診療所。
そういった所……つまり何か参加者が拠点になりそうな場所に設置しておくのも手かもしれない。
地図にわざわざ書かれてる場所……それがいいだろうね。
デメリットとしては僕が『魔女狩りの王』を持ち歩いていけなくなるという事。
そして、不安としてあるのが果たしてこの島で『魔女狩りの王』が自立行動できるかどうか……という点だ。
一度試してみる必要があるかもしれない。
その不安点さえ抜かせばメリットの方が勝るだろう。
僕はこの切り札に自信を持っているし。
持ち歩けなくても、場所さえ覚えておけば回収にいけるしね。
……それを踏まえると足が必要かもだ。
車などといった足が。
元々動き回るのは得意じゃないし。
体力もあるほうではないから出来る事なら島中駆けずりまわるなんてことは勘弁したい。
それを考えると体力温存の為に足を手に入れる事を視野に入れたほうがいいかな。
さて
「……とりあえずはこんなものか」
とりあえずの思考はこんなものかな。
具体的には足の確保と拠点を押さえ魔女狩りの王を設置する事を優先すべきかな。
なら、その為に何処に向かおうか。
北か、南か、西か、はたまた東か。
幸い今は中央だ、何処でもいける。
さて………………どうしようか…………
「……なんだ? 今の音」
その時だった。
僕の耳に大きな音が響いたのは。
……これは爆発音かな?
少し遠い所から響いた音だ、これは。
こっちにすぐ危害ある訳では無さそうだけど確認するに越した事は無いか。
となると……そうだね。このホテルの屋上から確認してみるとしようか。
0075創る名無しに見る名無し
2009/12/21(月) 02:53:21ID:/PR4MPGB0076創る名無しに見る名無し
2009/12/21(月) 02:53:59ID:8SiqR3tX0077オルタナティブ ◆UcWYhusQhw
2009/12/21(月) 02:54:00ID:SYD81gM1……階段で行く訳が無いよ?
無駄に体力を消費したくもないし。
それに何よりも……面倒で無駄だ。
根性入れてのぼるなんて僕らしくもない。
精精そういうのはあの馬鹿にお似合いさ。
「ふん……」
僕はそんな思い出したくもない事を思い出して忌々しく鼻を鳴らしたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いい景色というか一望できるね……これは」
屋上に辿り着いた僕はまず辺りを一望する。
それなりに高いホテルなようで結構周りの景色は見える事が出来た。
その時すかさず見えたのは北の方角から空に立ち上る一筋の煙。
直ぐにかき消されたけどそれを確認する事ができた。
「誰かが騒ぎを起こしたのかな? 火事とは思えないし……爆弾でも使ったか」
誰かが爆発物を使ったのかな? それとも魔術かな?
それは兎も角、すぐ近く橋を渡った先の所で戦闘か何かあったのが明白だろうね。
まだ、そこに誰か残っているだろうか?
僕はそう思い凝視するも判る訳が無かった。
生憎、特別目がいいというわけでもない。
しかし、それなら其処の現場に向かうのもありだね。
その現場で何が起きたか少し確認したいし。
炎の魔術を行使したというのなら僕なら何かわかるかもしれない。
もし其処に誰か残っているなら情報を聞き出すことができる。
勿論その後、殺すけど。
まあ、戦闘を起こした者ならそれに骨がある奴かもしれない。
ちょっと戦う事も覚悟した方がいいかな。
それでも向かう価値はあるだろうね
さて……どうしようかな?
「……ん?」
0078創る名無しに見る名無し
2009/12/21(月) 02:54:25ID:/PR4MPGB0079創る名無しに見る名無し
2009/12/21(月) 02:54:46ID:8SiqR3tX0080オルタナティブ ◆UcWYhusQhw
2009/12/21(月) 02:56:20ID:SYD81gM1現場から見ると南東の方角に走っているのを確認できた。
ふむ……何かあそこで起きた騒動に関わっているかな。
騒動を起こした首謀者か、それとも逃げてきた者か。
……どちらにせよ、あのバギーがいった方向に向かうのは有りかもしれない。
何か知っている可能性は大きいし。
それに、一応確認する事が出来た参加者だ。
殺さないといけないならその方向に向かえば追いつく事は無理かもしれないけどそいつが休憩とかすれば遭遇できると思う。
向かうのもいいね。
「……だけど」
どちらにせよ、あれほどの爆音を出すものを持っている者だ。
強者である事は間違いない。
そいつとの遭遇を避けるのも有りだ。
それならば今まで僕が言った事が無い西か南に向かうのがいいかな。
西には警察署、図書館、それと神社など目立ったランドマークがある。
南は中央を抜けるからホールによる事も可能だ。
後目立つランドマークは診療所、温泉かな?
「……さて、どうしようか」
今、僕に与えられている選択肢は四つ。
現場を確認してそのまま北に。
バギーを追って東に。
拠点めぐりの西に。
中央を通って南に。
どれも、美味しい選択肢に見えるけど。
さて……どうしようかな?
まあどちらにせよ……
「ただ……狩って殺すだけだよ」
獲物を狩り、人を殺す事にはかわりないんだけどね。
0081オルタナティブ ◆UcWYhusQhw
2009/12/21(月) 02:57:13ID:SYD81gM1【ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:ルーンを刻んだ紙を多数、筆記具少々、煙草
[道具]:デイパック、支給品一式、ブラッドチップ(少し減少)@空の境界 、拡声器
[思考・状況]
基本:インデックスを生かすために行動する。
0:爆音が聞こえた現場に向かいその後北を目指すか、バギーを追って東に向かうか、ランドマークを巡る西にするか、中央を抜けて南に行くか選ぶ。
1:インデックス、上条当麻、御坂美琴、白井黒子以外の人間を皆殺しにする(危険人物優先)。
2:インデックスの害となるようなら、御坂美琴と白井黒子も殺す。
3:生存者をインデックス、上条当麻、御坂美琴、白井黒子、自分の五人のみにし、『幻想殺し』を試す。
4:万が一インデックスの名前が呼ばれたら優勝狙いに切り替える。
5:足(車、自転車など)が欲しい。
6:何処かの拠点(地図に載ってるランドマーク)に『魔女狩りの王』を設置する?
0082オルタナティブ ◆UcWYhusQhw
2009/12/21(月) 02:57:58ID:SYD81gM1支援ありがとうございます。
何かありましたら、指摘などよろしくお願いします。
0083創る名無しに見る名無し
2009/12/21(月) 20:10:06ID:CSSNSYmGステイル、確かに考えたら自由度高い状態だよな。
魔女狩りの王という凶悪なカードも持っているし、それをどう切っていくかは重要そうだ。
いい整理話でした。
0085Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:50:37ID:IjKpQ4k2『理解なんてものは、おおむね願望に基づくもんだ』
【序】
少し窮屈なシートに深々と身体を預け、少し息を吸ってそして静かに吐くの繰り返し。
室内の照明は落とされており、光源はスクリーン……に反射する映写機からのものが唯一。
その光は当然のうように意味合いを持ち、ぼくは、それと隣の彼女も、それをじっくりと鑑賞している。
まるで日常の世界から切り離されたかと錯覚するような、居心地がよく、また安心ならない不思議な空間。
逆に、スクリーンを隔てた向こう側には、ここから切り離された世界の姿が映し出されている。
離れた世界同士の境界。映し出す密やかなる暗闇の箱。密室の中の劇場。
離界シアター。
ありていに言えば、ぼくこと戯言遣いと、現状においてはぼくの主たるハルヒちゃんは映画館の中にいた。
時計を確認すればあと半時ほどで二回目の放送の時間がやってくる。
そして、その時間までをぼくと彼女はこの映画館の中で目の前に映し出されている”これ”を見て過ごすと決めた。
ただそれだけ。
そう、ここでもう切ってしまってもいいのだけれども、それはいささか不親切にすぎると思うので(誰にとって?)、
ぼく自身も整理よく物事を考えたいところだし順を追って起承転結折り目正しく振り返ることにしようじゃないかと思う。
では、はじまりはじまり――……。
【起】
0086Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:51:20ID:IjKpQ4k2事件あるいは実験。ともかくとして最初の放送の後に起きたアレを後にぼくはサイドカー付のバイクを走らせていた。
堀に沿って城内を東に。
あらかじめ下見は済ませておいたから滞りなく進むことができ、そしてなんらトラブルもなく橋を渡ることができた。
ここでひとつ忘れていたことを思い出す。正しくは忘れていたというよりも吹っ飛んでいたことだろうか。
ぼくの記憶力の悪さについて語るのはまた先に置いとくとして、思い出したのは先ほどこの橋を渡っていた者達のことだ。
そもそもとして、どうして移動を開始したかというとそれは誰かと接触する為にほかならない。
ハルヒちゃんに言われるまでもなく、最初からぼくだって、そして誰だってそう考えてこの世界の端を右往左往しているのだろう。
橋に差し掛かったところでぼくは下見の時に見かけた二人組のことをはっと思い出した。
片方は金髪の男。もう片方は修道服を着た女。彼と彼女はここを、何かから逃げるように走り去っていった。
追うべきか否か、これをハルヒちゃんに進言するか否か、それを思考する。
ハルヒちゃんは徒党を組んでいる者達を探そうと言った。
たったの二人が徒党と言うのかどうかは微妙なところだけど、しかし情報を得られるというのなら接触を考えないこともないだろう。
けど。
ぼくはそのことをサイドカーの中に納まっている彼女には伝えなかったし、あの二人を追おうともしなかった。
第一に、あの二人はハルヒちゃんの言うSOS団団員ではありえない。
聞いている風貌とは全く一致しないし、変装癖があるとも聞いていない。ならば重要度は僅かながらに下がる。
第二に、彼と彼女は誰かに追われている風にも見えた。つまりトラブルを抱えているわけだ。
おそらくはホールで起きた何かによるものだろう。なので、君子危うきに近寄らずとぼくは主張することにする。
そして第三に、……というか、これがそもそも根本的な問題なのだけれども、あの二人がどこに行ったのかわからない。
都合よく足跡が残っているわけでもないし、追うとなれば相当に頭を振り回すことになるだろう。
ここでバイクを止めてハルヒちゃんと喧々諤々などというのはさすがに遠慮したい。つまり、これが本音。
縁があったらどこかで行き逢うだろう。そう(勝手に)決めて、ぼくは橋を渡りきった。
城の敷地内から出て、道なりに西に、そして南に。
持たされた地図は簡易なものだったけれども、おかげで逆に道に悩むこともなくすいすいと進むことができた。
市街は城に入る前も通ってきたのだけど、やはり夜中と日が明けた後ではまったくその印象が異なっている。
暗闇の中に沈む建物の影や、夜空に浮かび上がる建物のシルエットなんてのはまったくの背景でしかなかったけど、
白光の中に姿を現したそれらは風景としての自己主張を始め、イメージと雰囲気を見るものに喚起させていた。
通りの両端に見える商店街。
庶民的な蕎麦処。銀色が眩しい金物屋。塗装の剥げたガードレール。雨だれの後がはっきり見える吊り看板。
並んだ店舗の内の二割ほどはシャッターを下ろしたままで、一言で言えばうらびれたとそういう雰囲気。
そんなイメージの中をゆっくりとバイクで過ぎ去り、ほどなくしてぼくらはそこに辿りついた。
大通りが丁字に別れるその北東角。赤煉瓦で組まれた古めかしい五階建てほどのビル。
正面にはガラス戸の分厚い扉だけがあって、その直上には映画のタイトルを書いた大きな看板。
看板のタッチも劇画のそれで、決してプリントされた写真を貼っただけなんてものではない。
上品でもなく優雅でもなく、古過ぎもせずただのレトロ。所謂昭和の香り。そんな映画館がそこにあった。
【承】
0087Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:52:02ID:IjKpQ4k2自動ドアではないガラス戸を押して入ると、そこはすぐに、一応はそれといった風の狭いロビーになっていた。
長く踏み続けられたせいか、くすんだ赤色をしている絨毯が床に敷かれており、入り口の脇には申し訳程度のカウンターがある。
輪ゴムで束ねられた入場券に、お金を入れておく為の小さな金庫。そして切られた半券を捨てるためのゴミ箱。
こじんまりとしていて、いい意味で薄汚く、決して昭和の日本に思い入れなんかないのに何故かノスタルジーを感じてしまう。
世界の端や生き残る為の殺人なんてものからは程遠い、どこか安心できる空間がここにあった。
「わっ! なにこれ……?」
当然のように入場券を出すことなくカウンターの先へと進んでいたハルヒちゃんが、そこで驚いた声をあげた。
それは独り言だけど自問ではなく、ぼくにここまで来いというアピールなのだろう。
ここで無意味な反骨精神を燃え上がらせるほどぼくも体力に余裕があるわけではないので、意図を汲むことにする。
「ハーゲンダッツだね。しかもストロベリー味」
「そりゃ見ればわかるわよ」
これも一応売店風といった台の裏側。そこにある小さな冷蔵庫の中をハルヒちゃんは覗き込んでいた。
中々以上に好奇心旺盛で無遠慮な彼女の視線の先――つまり冷蔵庫の中なのだけど、そこにはそれがぎっしりと詰まっていた。
発言した通りに、ハーゲンダッツのストロベリー味ばかりが、ぎっしりと、みっしりと、印象を加えればずっしりと。
「館主さんが好きなんじゃないかな?」
「……まぁ、それが常識的な解答よね。それでもちょっと不思議だけど」
言って、ハルヒちゃんはハーゲンダッツをひとつ手に取り、ベリベリと蓋をはがした。本当に無遠慮な子だと思う。
まぁ、緊急事態におけるモラルやマナーの扱いなんてのはともかくとして、やはりというかなんというか、それはただのアイスだった。
「いーもひとつ食べる?」
「うんにゃ、ぼくはハーゲンダッツは抹茶味しか食べないって決めているんだ」
勿論大嘘だけど。
もしこれがトラップならなにも二人一緒に踏むことはないと、ただの杞憂でしかない警戒心からくる発言だった。
この後、ハルヒちゃんが無事だというなら、ぼくも前言を撤回して頂くことにしよう。
「あたし、こっちを見てくるからいーはここで待ってなさい」
ハーゲンダッツをぺろりとたいらげたハルヒちゃんはそんなことを言って狭い通路の先へと行ってしまった。
こんな状況でどうしてぼくは彼女の単独行動を許したのか。それは少し頭を上げてみれば簡単に解る。
『WC』――アイスを食べて身体が冷えたからなのかそれともずっと我慢していたからなのかどうか知らないけど、
ここでぼくも一緒に行きますとは言えない。言えば、戯言遣いは変態野郎の謗りを免れることができなくなってしまう。
「さてと……」
そう声に出して、広くはないロビーの中をぐるりと一周してみることにする。
ハーゲンダッツをひとつ取り出し、それを食べながら歩いてみるが、別にここで何かが見つかるとも思ってやしない。
見渡せば一瞥ですむだけのスペースだ。
大扉を開ければ上映室に入れるが、ぼくが一番乗りをしたと知れば彼女は気分を悪くするだろう。
なので、ただつらつら漫ろに、ぼくはこのロビーの中だけを暇潰し半分に見て周ることにする。
「”空(そら)の境界”……あ、違うや。”空(から)の境界”なのか」
壁に貼られた一枚のポスターを見て、随分とひねたタイトルだなと思った。
しかしながら、同じ一字なのに読み方ひとつでこうも印象が変わるとなると、なかなか秀逸なものだとも言えるんじゃないか。
いやまぁ、それはさておき、このポスターはこんなうらびれた映画館の中では場違いなほどに奇麗なものだった。
別にそこに描かれているものがではない。単純に張られて間もないものなのだと、そうわかっただけだ。
つまり上映が始まって間もないということ。なのでここから、この映画館は最近新しい映画を仕入れたことが推察できる。
0088Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:52:44ID:IjKpQ4k2だからといって、これがぼくやこの状況に対して意味のあることかと言うと、それは全くないと断言できたが。
しかし、普段から頭の回転数を維持しておくのは悪くないことだろう。こういった状況でもある訳だし。
「”病気の国”……、”天壌を翔る者たち”……」
並んで張り出されている他のポスターも見てゆく。こちらはどうやら少し古いらしかった。
片方には近代都市の昼間の風景が、もう片方には夜間の風景が描かれている。
タイトルから察するに、前者は社会派ドキュメンタリーで、後者は痛快アクション娯楽の類だろうか。
こんな風に言うってことは、つまりこれまでの三つの映画に対しぼくは心当たりがなかったということだ。
もっとも、映画通でもなんでもないので、だから不自然とか、別世界のとかなんて軽々とは口にできないけれども。
「これは、なんだ……?」
そして四枚目のポスターを見て、思わずそんな言葉を口から零してしまった。
何もない。ただの真っ黒なポスターで、真ん中に白抜きで――『消失』――とだけ書かれている。
他には何も書かれていないので、これじゃあ本当に映画のポスターなのかも判別がつかない。
四本目の映画がないから空白の変わりにこんなポスターを貼っているとも思えるが、しかしそれすらも謎だ。
「”消失”か……ミステリじゃ定番だけどね」
まぁ、これも現状には関係しないのだろう。そう思って、ぼくはただその前を通り過ぎる。
ぐるり一周。たったハーゲンダッツ一個食べる時間のうちに狭いロビーの探索は終わってしまった。
空(から)になったアイスの容器をゴミ箱に捨てて、もう数分。
少し帰って来るのが遅いなと思い始めた頃になってようやくハルヒちゃんはなんともない顔で戻ってきて、
そしてようやくぼくたちは重い扉を押し開けて上映室の中へとその身を滑り込ませた。
【転】
扉を潜ってみれば、そこから見て右側すぐにスクリーンがあり、左側に階段状に並んだシートの列があった。
シートの数は100席弱と言ったところか。
外観の印象通りここもこじんまりとしたもので、スクリーンにしても映画館としては大きいとは言えないサイズだ。
「なにもやってないし、誰もいないわね……」
そして、そのスクリーンには何も映し出されていなかった。
この世界の端とやらが無人である以上、従業員やなんかがいるわけもなく、
またその代わりを果たそうという酔狂な人物もいるはずがない。
加えるに、上映していない映画館に人が留まるわけもなく、あらゆる意味でここが無人なのは当然のことだった。
「まぁ、しかたないんじゃない」
そんな言葉で以上の推論を曖昧に提示してみる。
不満顔のハルヒちゃんも、それは当然のことだと元々わかっていたのだろう。
まぁね。と返すと、ずかずかとシートが並んだほうへと進んで行き、真ん中当たりで席についた。
0089創る名無しに見る名無し
2009/12/25(金) 01:53:00ID:K7pktw690090Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:53:42ID:IjKpQ4k2「今から考えるのよ」
ハルヒちゃんの隣に腰掛けるとなるほどいい席だというのがわかる。
横軸縦軸どちらで見てもど真ん中。
しかもすぐ前が通路になっていて幅がある為、前の席にだれか座っていても頭の動きが気になるようなこともない。
多少行儀が悪いが、これだけスペースがあれば足を伸ばすことも可能だ。
スクリーンからも遠からず近からず、ちょうど視界内に収まる感じで、まさにベストポジションと言えた。
しかしそんな上等な席についても、スクリーンが真白なままでは無意味どころがむしろ有害とも言えた。
ただゆっくり座りたいだけならなにもこんな窮屈なシートよりも、ロビーに出てソファにでも腰かければいい。
何より、真白なスクリーンは映画の待ち時間を連想させてどうにも気分がよくない。
待つことに苦痛を感じる性質ではないけど、こんな心理実験みたいな環境は好ましくなかった。
「すぐ戻るからここで待ってなさい。絶対に動いちゃだめよ」
彼女もそう感じたのか、ぼくにそんなことを言うとまたしても一人でどこかへ行ってしまった。
とは言っても、今回もまた彼女の行く先は簡単に推測できる。
映画館で映画が上映がされてないとしたら普通の人間はどうするか。それは先にも述べたとおり立ち去るのみだろう。
しかし、それは普通の人間の場合の話。ハルヒちゃんのような酔狂な人間だと――、
「鳴かぬなら、鳴かせてしまえ、ホトトギス……か」
そうするのであろう。上映されてないなら、自分で上映してしまえばいいということだ。
おそらくはさっきトイレに行った時に、その奥にあるであろう従業員以外立ち入り禁止の区域も確認していたのだろう。
故に帰って来るのが遅れた。別にハーゲンダッツがお腹に当たったとかそういうわけじゃなかったってことだ。
ではどうしてぼくに動くなと言ったのか。
それは多分、彼女は”映写室からだと上映室内の、そしてスクリーンの様子が見えない”と勘違いしているに違いない。
実際にはそうでないのだけど、ともかくとして彼女はぼくにこれから始まる映画を見過ごさないよう任せたのだ。
ここから考えるに、彼女はここで上映される映画に”意味”がありえると、多少ながらも考えているらしい。
「手当たり次第、動かせばなにかヒントが出てくるなんてご都合……ゲームでもあるまいし」
あるわけがない。とは思うのだが、しかしなにせ世界の神たるハルヒちゃんのことである。
彼女が”ここにヒントがあるといいな”と思えば、それぐらいの可能性は実現させてしまう可能性はなくもない。
むしろ、この程度だからこそ実現の可能性は高いのかもしれないとも言える。
彼女はああ見えて、心の中に常識というものを強く持っている。
故に、荒唐無稽な現象を起こさせるには四苦八苦するであろう訳で、逆にこの程度なら容易に実現するかもしれない。
現実の改変が、ハルヒちゃんが思いこむことで実現するというのならば。
こんなにも雰囲気があり、そうと思えば意味深に取れるこの映画館。
地図上の施設として当たりをつけて来たのに空振りに終わった歯がゆさと納得のいかなさ。
そして、彼女自身が自分のひらめきに対し、期待して、もしかすればと思い、その実強くそうであって欲しいと願っている。
もしそうならば。
「こんなことが実現するのかもしれない」
考えているうちに室内の明かりは全て落ちていた。それでも手元が見えるのは目の前のスクリーンが光源になっているからだ。
では、そこに何が映っているのか。
映写機のスイッチを入れたのはハルヒちゃんに違いない。
では、”これ”が彼女の願望の現われなのだろうか、それはしかし今は判別がつかない。おそらく、この先も不確定だろう。
0091Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:54:30ID:IjKpQ4k2映画を映すはずのスクリーンには、なぜか《地図》が映し出されていた。
ぼくたちに配られたあの地図とそう大差はない。升目の区切りや、印の置かれた施設なんかも全くの一緒だ。
強いて違いをあげるとするなら、道や建物なんかがきっちりと細かく書かれている程度にすぎない。
これが、ハルヒちゃんの願望が齎した結果なのか、人類最悪の仕込みなのか、また別のものなのかはわからない。
だがしかし、しばらくこれを見続けている必要があるだろうとその時すぐにぼくは気がついた。
《地図》というものは本来静止画だ。実際、目の前に映し出されている《地図》にしてもそれは一見変わりはしない。
そうなのだけれども。
「黒く塗りつぶされているのはすでに消失したエリアか……」
そう。地図上の『A-1』から『A-5』までの升目が真っ黒に塗りつぶされていた。
一見なんでもないようなことに思えるが、しかしこれは実におかしい。
もし、この映像が静止画でしかないとするのならば、
5つまでエリアが消失した段階で、ちょうどぼくたちがこれを見つけるというのは、あまりにもタイミングがよすぎる。
逆に、今このタイミング以外で見つけたとするならば、あまりにも無意味がすぎる。
もし、この映像が動画だとしたらどうか。エリアが消失する時間はもとより決まっていたのだ。
ならば、あらかじめ2時間ごとに升目が塗りつぶされてゆく72時間分の映像を用意しておけばいい。
72時間というと映画としては異常で、フィルムが足りないと思われるかもしれないが、なにもフィルムである必要もない。
今時、ハードディスクなどの記憶媒体から映画を上映するところも珍しくはないのだ。
しかし、この推論はやはり今というタイミングだからこそ否定されてしまう。
これが動画だった場合。再生が開始されたのは”たった今”なのだ。
ならば、今映っている《地図》はこの世界の始まったばかりと同じく、エリア消失は起こってないはずとなるはず。
「そもそも一連のフィルムじゃない可能性もあるけれど」
少なくとも、この《地図》はリアルタイムで更新されてゆくと”想像”するべき代物だ。
変化がエリア消失だけだとするならば、ぼくたちにとって意味合いは薄いけど、しかし捨て置くこともできない。
これに意味があると”期待”するならば、次に変化が起きるであろう12時まではこれを観察しないといけないのだ。
「アイスなんて食べているんじゃなかったな」
腕時計を見て、失敗を自覚する。現在の時刻は10時よりほんの少しだけ過ぎた頃だ。
つまり、そのほんの少しだけ先にこれを発見していれば、生まれたばかりの”疑問”はすぐに解決できていたのである。
「まぁ……いいか」
事態の開始より10時間。そろそろ一度休息を取るような頃合だ。
【結】
0092創る名無しに見る名無し
2009/12/25(金) 01:55:06ID:K7pktw690093Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:55:13ID:IjKpQ4k2「そう。時には足を休め、次に動く時のための力を蓄えることも重要だよ。長丁場だしね」
「あんたがそんなに働いていたとは思えないけど」
「SOS団は構成員に対して、その権利を認めることと、団員の体調を維持するために努める義務があると思う」
嫌なこと言う時だけは饒舌になるのね。って、確かにそれが傍から見たぼくの印象かも知れない。
自覚もあるけれども、しかし再確認すると本当にぼくって嫌なやつみたいだな。
しかも、それを反射的に否定できないところがまたなんともなところだ。
さておき。
ぼくはハルヒちゃんを説得することに成功し、二人して次の放送がかかる時間までここで休憩しようということになった。
彼女としても、理由を聞けば自分が映し出したこの《地図》が気になるらしく、そうと決まれば堂々としたものだ。
今は、ポップコーン片手に炭酸飲料と、映画鑑賞するにあたっての正統(?)な装備でスクリーンを睨みつけている。
「しかし、なんでわざわざいくつかの建物だけを地図に記しているのかしら?」
鑑賞中の映画(?)には動きも音声もない。とくれば、こういう風に考察じみた会話を始めることになる。
「君が言っただろう? 拠点にするって。
最終的には狭くなるとしても、やっぱりこの世界の端とやらは60人ほどで使うには広すぎるよ。
だからこそ、当てを作る為にわざわざ印を打っているんじゃないかな。実際、ぼくたちはそう動いているわけだしね」
まずまずの模範解答かと思ったが、隣から聞こえてきたのは大きな溜息だった。
「言ったんだから、そんなことはわかっているわよ。そんなの当たり前の前提でしょう。
得意満面に語るのはいいけどね、あんたの脳みそなんてこっちのが遥かに凌駕してるんだからもう少し考えなさい」
なんとも手厳しい。
つまりはもっと根本的なところをハルヒちゃんは問題としていたのか。
ぼくたちは思考の取っ掛かりや、移動するにあたっての目的として地図上の施設を活用しているわけだけど、
そういった実用のされ方ではなく、この舞台を作り上げた者が持つこれらの施設をセレクトした意図というものを。
「あんたも考えたらわかるんだから、できるところで手を抜くのはやめなさいよね。
余裕ぶって失敗なんてね。いっ……ちばん後で後悔するんだから。
いつでも全力出して、未来の自分に胸を張れるように生きるのが理想ってものよ」
これも彼女の神としての力か、はたまた洞察力の賜物か、または偶然か、なんにせよ痛いところを突いてくる。
今すぐにでも彼女の足元にひれ伏して謝り倒したいぐらいだ。
勿論、そんなことは思うだけだけど、しかしこの流れはよくない。話題を進めていかないとどうにかなってしまいそうだ。
「そう言えば、ハルヒちゃんはどこの建物からスタートしたんだい?」
「どこって……えーと、この地図だと『D-3』の中にある三叉路のあたりかしらね。
それで、そこらへん見て周って、あの声を聞いて近づいてみようかなって思ったところであんたに行き会ったのよ」
おや?
なんということだろう。今の今になって、どうやらぼくは根本的な勘違いをしていたらしいと気づいた。
いや、この時点で気づけたのは僥倖なのか。なんにせよ、動き出す前に気づけてよかった。
”登場人物はみんな地図上に記された施設からスタートしている”なんて勘違い、引きずったら大変なことになるところだ。
「……どうしたのよ?」
「あぁ、いや別に……なんでもないよ」
正直に話すとまた馬鹿にされそうだったので、そしらぬ顔で誤魔化してみた(つもり)。
しかし、そうか……そうでない人もいるってことか。
学校の屋上ですぐに古泉くんと会ったから、てっきりみんなそうなのかと勘違いしてしまっていた。
ホールにだって人が集まっていたみたいだし……なんにせよ自分で決めた前提条件ってのは常に疑うべきだと再認識。
0094Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:55:55ID:IjKpQ4k2「『E-2』にある学校からだよ。夜の学校だなんて長居したい場所でもないので早々に立ち去ったけどね」
あぁ、けど、これは大変困ったことになった。じゃあどうやって友のやつを探し出せばいいんだ?
断言できるひとつの事柄は、あいつは絶対にスタート地点から移動しないだろうってこと。
だから、施設を巡っていけばいつかは行き当たるとそう楽観していたんだ。
なのにそうじゃないパターンもあるだなんて……これは、真剣に、困った。当て所ないってレヴェルの話じゃない。
そこらの民家やビルの中にいるとするなら、それこそ一軒一軒見て周らねばならないわけで……、
これは改めてあいつを探す方法ってのをしっかりと考えないといけないという話だ。
「学校ねぇ……そういえば、地図には”学校”としか書いてないけど高校だった小学校だった?
それと少しでもなにか変わったものは見かけなかった? こういうヒントっぽいやつ」
「ヒントっぽいものか。確かに、ここにあるなら他のところにもあるんだろうって考えるのが自然なんだろうけど、
けど学校と一口に言っても随分と広かったからなぁ。それにせいぜい屋上から校庭を見下ろしたぐらい……で、と?」
言われてみれば、もしかして”あれ”が”そう”なのかというものが脳裏に浮かんだ。
全くもって奇麗さっぱりに意識してなかったというか、状況が状況だし、普通ならやはり見過ごすだけなのだろうけど、
しかしそう言われて意識してみれば確かにそれっぽいものをぼくは”学校の屋上から見つけていた”。
「なによ? どんな些細な情報でもきりきり白状しなさい」
「うん。屋上から見たよ。
あれは……なんて言うのかな。例えるならミステリーサークル……?
文字か図形なのかはよくわからなかったけど、そういうものが白線で校庭にでかでかと書かれているのは”見た”」
一見すれば、誰かの悪戯か、それとも何か行事の後かとそう思える”白線の模様”が校庭に書かれていた。
ナスカの地上絵のように、まるで空(そら)から見下ろすことを前提としたようなあれは一体本当は何なのか。
”校庭に立った状態じゃ大きすぎて認識できなかった”ろうし、暗い中じゃあはっきりと記憶することもできなかったけど、
”日が昇って明るい今ならもう一度屋上まで行けばはっきりと認識することができるに違いない”。
「ふーん……それは一見の価値ありっぽいわね。
それに学校って言ったらみんな馴染み深いし、そこを拠点にするってのもありえる話だわ」
「じゃあ、この次は学校に?」
「日が暮れるまでには行きたいけど、間に温泉があるしそっちにも寄って行こうかしらね。
お湯に浸かれる機会があるならそうしたいし、こっちもこっちで拠点向きだもの」
「温泉に行って、次は学校か……まぁ、順当だね」
温泉か。温泉ね。ふむ。いや、別に何かを期待するってわけじゃないけど。少し思いついたことがあった。
「さっきの地図上の建物の件なんだけれどもね……おすすめの”デートスポット”というのはどうだい?」
……すごく睨まれました。
【終】
――とまぁ、以上の過程を経てぼくたちは現状へと至った。
スクリーンに映し出された《地図》を見ながら、ただじっと身体を休めているだけ。
話し合うようなネタにしても早々に尽きたし、何より一度脱力してみればどれだけ疲労していたのかも実感できた。
なので、眠らない程度に意識を覚醒させたままシートに身体を預け、僅かばかりの休息をとっている。
時折、飲み物で乾いた口の中を潤しながら考えるのはやはりこの後についてのことだ。
0095Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 01:56:46ID:IjKpQ4k2この生き残りという事態が始まった時、この先に展開される物語は血みどろのそれだろうとぼくは考えていた。
しかし現状はそうではない。
死人が実際に出ている以上、どこかで血みどろの物語は展開されているのだろうけど、しかし”ぼく”の前にそれはない。
朧ちゃんにしたって死にはしたけど、あれは断じて殺しあったり生き残りあった結果ではないのだ。
ハルヒちゃんがいるからこそ、なのかもしれないけど、どうにも流れという”タスク”をかけられている気がしてしまう。
この後も、ずっと血みどろに遭うことがなかったとしたらぼくはどこに到達するというのか。
これが何者かの意図したことだと言うのならば、ぼくは……いや、ハルヒちゃんは一体どういう登場人物なのか。
「戯言なのか……」
意味を深く取りすぎているのかもしれない。今はこんなことを考えてもしかたないだろう。
とりあえずはハルヒちゃんから目を離さないこと。その上で友やSOS団の仲間とやらを探すことにしよう。
今は、それだけ。それ以上はその時になったらまた考えればいい。
では、映画館にちなんだ知識をひとつ披露して、この話を締めるとしよう。
映画史上、初めて音声として放たれた台詞はこんなものだったらしい。
――『お楽しみはこれからだ』
”これ”が誰にとっての物語なのかはぼくには見当もつかないけれど、多分、誰にとってもこれはそうな言えるとぼくは思う。
戯言だけどね。
【E-4/映画館/一日目・昼】
0096Understanding――(離界シアター) ◆EchanS1zhg
2009/12/25(金) 02:00:24ID:IjKpQ4k2[状態]:健康
[装備]:弦之介の忍者刀@甲賀忍法帖
[道具]:デイパック、基本支給品
[思考・状況]
基本:この世界よりの生還。
0:12時に映し出された《地図》が変化するか確認し、これの機能を把握する。
1:次に温泉へと向かい、その次に学校へと向かって校庭に書かれた模様を確認する。
2:放送で示唆された『徒党を組んでいる連中』を探し、合流する。
3:↑の為に、地図にのっている施設を回ってみる。
【いーちゃん@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:森の人(10/10発)@キノの旅、バタフライナイフ@現実、クロスボウ@現実
[道具]:デイパック×2、基本支給品×2、22LR弾x20発、クロスボウの矢x20本、トレイズのサイドカー@リリアとトレイズ
[思考・状況]
基本:玖渚友の生存を最優先。いざとなれば……?
0:12時に映し出された《地図》が変化するか確認し、これの機能を把握する。
1:当面はハルヒの行動指針に付き合う。
2:↑の中で、いくつかの事柄を考え方針を定める。
├涼宮ハルヒの能力をどのように活用できるか観察し、考える。
└玖渚友を探し出す方法を具体的に考える。
3:一段落したら、世界の端を確認しに行く? もう今更どうでもいい?
※
映画館のスクリーンに、すでに消失したエリアが黒く塗りつぶされた《地図》が映っています。
※
学校の校庭に白線で引かれた謎の幾何学模様@涼宮ハルヒの憂鬱(笹の葉ラプソディ)が存在します。
0098創る名無しに見る名無し
2009/12/25(金) 13:10:57ID:tuiqGJhk色々と気になる映画館だなぁ。やりようによってはポスターのある映画も見れるんだろうか。
今表示されてる画面も意味深だ。どこまでがハルヒの力なんだろうw
そして、まさか学校にソレがあるとはw これは学校にも影響を与えるか?
細かい仕掛けの数々が楽しい一作でした。
0099創る名無しに見る名無し
2009/12/25(金) 19:47:46ID:dfY6dRq3なんだなんだなんだwwwwww
この映画館なんなんだw
しかしこれ、地図じゃなくて別の映画を上映しても参加者情報が得られるという情報の山みたいな場所だな
そしてまさかのミステリーサークルと来たか…ちょうど学校には上条さんがいたし
ひょっとして右手でかき消せる可能性は無きにしも非ず。
しかし今回といい、第2回放送が今か今かと迫ってきたな
0100創る名無しに見る名無し
2009/12/25(金) 20:20:21ID:/K/aYjWY0101創る名無しに見る名無し
2009/12/27(日) 19:58:55ID:RRIGX6kD放送案の募集とか
年末年始はリアルがごたごたするから期間空けるとして1月4日に募集、数日期間置いて複数来たら多数決で決めるとかで
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