マルチジャンルバトルロワイアルpart16
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0699瞬間 ◆Wott.eaRjU
2009/08/02(日) 20:18:18ID:P5ED+YUJ(なんだろうなぁ……さすがにおかしいんじゃねぇの?)
この殺しあいに呼ばれてからラッドは幾度も助けられた。
そこには開始当初に摂取した不死の酒による肉体の不死身化が絡んでいる。
しかし、ラッドはその事実を知る由もないためどうにも疑問が湧いた。
なにも今までに全く心当たりがなかったわけではない。
負傷は何度も負ってきたがそれらは打撲を初めとして、治りが目には映りにくい類のものだった。
されども今回のケースは全く違う。
両腕切断という、自力ではどうにもならないような負傷がそこにあった。
だが、完全にとは言わないがある程度の接合は済んでしまった。
駄目で元々ではあったが、いざ出来たとしても手放しでは喜べない。
拭いきれない疑惑。いくらこの場で自分の常識が通じないといえどもこれではまるでアレだ。
そう。まさに自分が言った“不死者”とやらに――
一度は捨てた、最悪の事態への想定が再び蘇り、思わず嫌な汗がこめかみの辺りを濡らす。
死ぬことがなくなってしまえば、それでは生きている意味を失うのに等しい。
なにより最も憎らしく思う存在に、ラッド自身が成ってしまったというのであれば笑えない冗談にも程がある。
絶対にあり得ない。そう否定できる材料が生憎見当たらない事にラッドは少なからず焦りを感じていた。
(……まあ、いいか。あとでゆっくりと調べればいいだろうし、この殺しあいとやらが終わった後でもいい。
それに俺が死ななくなったら駄目じゃねぇか……終わりじゃねぇか。ありえねぇだろうが……!)
しかし、ラッドは強引に思い止まる。
問題の先送りと言われればそれまでだが、たとえそれでもだ。
認めるわけにはいかない。
自分は不死者になってしまった。
そんな事実を認めてしまえば、今までの自分は一体なんだったのか。
故にラッドは全てをかなぐり捨てるように走り出す。
そうだ。答えを出すのにも急ぐことはない。
たとえば今回以上の怪我を負った時、果たして自分はどうなるか。
その時の状態を見てからでも結論は遅くはない。
今、必要なのは両腕の完治。逸る自身に言い聞かせ、ラッドはホールから飛び出していく――。
「……行ったか」
別の出口の傍に身を隠した、リヴィオ・ザ・ダブルファングの存在には気づかぬまま。
ラッドはホールから姿を消した。
◇ ◇ ◇
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