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だから俺達に新作ガンダムを作らせろよ3

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0001創る名無しに見る名無し2009/06/19(金) 18:03:43ID:hFuzoh2/
・これまでのガンダムシリーズの二次創作でも、
 オリジナルのガンダムを創っても、ガンダムなら何でもござれ
・短編、長編、絵、あなたの投下をお持ちしてます
・こんな設定考えたんだけどどうよ?って声をかけると
 多分誰かが反応します。あとはその設定でかいて投下するだけ!

携帯からのうpはこちら
ttp://imepita.jp/pc/
PCからのうpはこちらで
ttp://www6.uploader.jp/home/sousaku/

前スレ
「だから俺達に新作ガンダムを作らせろよ2」
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236428995/

これまでの投下作品まとめはこちら
ttp://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/119.html
0011創る名無しに見る名無し2009/06/25(木) 20:50:55ID:HFULnNJT
>>9
どっちもゲームのストーリーに沿ってるが、若干内容が違う
小説版は最終決戦までやるが、漫画版は1号機が壊れた所で終了
Gジェネとかを見るに、小説版のが公式扱いなんかね?
0012創る名無しに見る名無し2009/06/25(木) 20:57:17ID:J3wWZjwp
公式か非公式かってのはたいした問題じゃないな
ようは面白いかそうでないか
俺は面白かった
0013創る名無しに見る名無し2009/06/25(木) 21:09:15ID:ldNwtDwN
>>10
そうなのか、漫画版だけでも探してみようかな…。

>>11
ちょっとwikiみたところ小説版はAランクのエンディングで
話が作ってあるらしいから、そうなのかもね。
でも無口設定はゲームの由来らしい。
0014創る名無しに見る名無し2009/06/27(土) 11:29:02ID:WGPnyWy9
1シーンぐらいなら書いてみたいな
でもガンダムにそんなに詳しくないからなぁ…
0015創る名無しに見る名無し2009/06/27(土) 14:37:32ID:wtiFmYtJ
ブルーディスティニー懐かしいな
全3部作で、データ引き継いでオールSランク取ると
ED内容がリ・ガズィに乗ってアクシズ落としを止めるやつに変化するんだよな

オマケにあったシミュレーターでのアムロ搭乗ガンダムとの対戦が、EXAM発動したブルーや
ラスボスのニムバスの3倍くらい強くて鼻水出たのもいい思い出
0016創る名無しに見る名無し2009/06/27(土) 16:11:38ID:AT7Z5K5e
ブルーはSまではなくてAまでだよぅ
あとリ・ガズィじゃなくてジェガンね。設定でもロンド・ベルにはリ・ガズィはアムロ機(その後ケーラ機)の一機しか配備されてないし
シュミレーターのガンダムにはてこずったよ
でも撃破時のメッセージも全部出したのよー
それだけは誇ってもいいはず(自画自賛)
0017創る名無しに見る名無し2009/06/28(日) 01:22:57ID:8ohTYAVP
久しぶりにきたらパート3かよ、すげーな
0018創る名無しに見る名無し2009/06/28(日) 02:04:26ID:tPufTu3T
Gガンなら、あんまり深く考えなくても勢いだけで二次創作書けそうな気がしないでもない

0019創る名無しに見る名無し2009/06/28(日) 02:49:13ID:gLKo0B9c
>>18
Gガンらしさを出そうとすると逆に面倒だよ
深く考えないで出来た勢いだけでは原作っぽくならないし

逆に宇宙世紀モノのが資料が多い分楽だろう
0020創る名無しに見る名無し2009/06/28(日) 03:08:59ID:N83kelcr
Gガン+北斗の拳的な世界観の
世紀末武闘伝ガンダムホクトみたいなのがあってもいい
もうSD向けの世界かもしれんがw
0021創る名無しに見る名無し2009/06/28(日) 13:56:41ID:Ot4VVdLH
モビルファイターがヒャッハー言いながら町を襲撃とか世紀末すぎるw

Gは元からいろんな意味でSDチックじゃね?
0022創る名無しに見る名無し2009/06/28(日) 15:05:08ID:jPeYywMo
どっちかというとXの序盤じゃね?
モビルスーツがひゃっはーいいながら街を襲うのって
0023創る名無しに見る名無し2009/06/28(日) 17:47:55ID:hfZ3o+5y
ユウが主役ならここで長編書いてるのがいるな
0024創る名無しに見る名無し2009/06/30(火) 12:45:01ID:YoSD0tuw
流れをぶった切って、大昔に書いた「デス種、幻の51話」を曝す。
これは、当時の俺が本当に見たかった、俺の妄想最終話なんだ…
お目汚しスマン、供養の意味も込めてよかったら読んでくれると嬉しい。

因みに未完なんだけどな(汗)
0025PHASE-51「閃光は運命をのせて」1/52009/06/30(火) 12:45:48ID:YoSD0tuw
「副長、全軍に向けて停戦勧告が……副長?」

 呆然とモニターを見詰めるアーサーは、オペレーターの声で我に返った。振り返ればそこには、指示を求めるアビー・ウィンザー。不安げな瞳は確かに、今この場での最高責任者を見詰めていた。他ならぬアーサー・トライン本人を。
 今もうこの船に、ザフトが誇る高速艦の面影は何処にも無い。
 推進機関に直撃を受け、クルーの奮戦虚しく、月面へとその身を横たえるミネルバ。指揮を執る艦長の姿も今は無い。否、もう永遠に失われてしまった…崩壊するメサイアを目の当たりにして、アーサーはそう痛感していた。

「停戦勧告? ……わかった、艦内に放送して」
「了解」

 タリア・グラディスが去り際に、退艦を厳命したにも関わらず。いまだ艦内には多くのクルーが残っていた。
 誰もが皆、己の意思で持ち場に留まり、賢明の復旧作業に追われている。既に無駄と知りながらも、出来る限りを尽くさずには居られない……ここが暮らし生きる、居場所だから。
 ここへ帰るべき者がまだ、帰り着いていないから。

「ザフトの皆さん、私はラクス・クラインです。既にもう勝敗は決しました。これ以上無益な……」

 かつてザフトの歌姫だった、ラクス・クラインの声。
 言葉を選びながらの物悲しい響きが、ただ淡々とスピーカーから艦内に流れる。ある者は血が滲むほど拳を握り締め、ある者は嗚咽を噛み殺しながら……ミネルバの各所で各々が、戦いの終結を飲み込んでいた。
 戦争の根絶と約束された未来……その夢も今、この瞬間に見果てたのだ。

「私達は今、自由な未来を取り戻しました。二度と帰らぬ犠牲と引き換えに」
「……二度と帰らぬ、か。我々にとっては犠牲だけど」

 彼女にとっては全てが、対価に過ぎぬのでは? らしからぬ疑念を巡らしながらも、アーサーは手早く付近の艦隊分布を把握する。
 一応の終結を見た今、彼は大きな義務を負う。出来る限りの将兵を生還させ、故郷のプラントへ帰すという義務が。幸いにも後詰の艦隊は無傷で、ゴンドワナを中心に残存戦力の回収作業を行っているらしい。
 総員退艦の後、月面離脱を立案しかけた時、再びアーサーの思案をアビーが遮った。

「副長、救難信号キャッチ……インパルスです!」
「! ……回線、繋いで!」

 手近な端末を求めて、艦長席へと駆け寄るアーサー。肘掛に噛り付くようにして、小さな液晶画面を食い入るように覗き込む。そこに映るのは、ザフトレッドのパイロットスーツ。
 ルナマリア・ホークの無事が今は、何よりも朗報に感じた。ノイズが入り混じる画像と音声が、シン・アスカの無事も伝えてくる。僅かな安堵と希望…直ぐに救援を差し向けなければ。
 指示を出すべく面を上げたアーサーはしかし、メインスクリーン上の不吉な光点の瞬きに、再び絶望へと突き落とされた。
0026PHASE-51「閃光は運命をのせて」2/52009/06/30(火) 12:47:07ID:YoSD0tuw
「ミネルバ、応答せよ。こちらルナマリア……え?嘘、そんな……」

 大破したインパルスのコクピットで、ルナマリアがミネルバを呼び出している。その姿をぼんやりと眺めながら、シン・アスカは自問自答を繰り返していた。
 先程両軍に発せられた、ラクス・クラインの停戦勧告……自分の預かり知らぬところで、また戦争が通り過ぎてゆく。何もかも自分から奪いながら。
 それがお前の欲した力か、と。かつての盟友、アスラン・ザラは叫んだ。
 ザフト最新鋭のモビルスーツに、特務隊フェイスという地位……名実共に申し分ない、エースとしての自分。その全てを問われて、シンは揺らいでしまった。
 結果、アスラン・ザラに遅れを取り、完膚なきまでに叩きのめされ……デュランダル議長の理想を奉じて戦う、その心が折れたのだ。

「欲した力、か……」

 先の大戦で家族を失い、その身を復讐の炎に焦がした。ザフトレッドとして今まで、争いを憎み戦ってきた。だがしかし、失ったモノは余りに多い……疑念拭えぬ我が身の力も、今は欠片さえ残ってはいない。

「違うよな……きっと違う。本当は……」

 深く沈むシンの思考を、ルナマリアの悲鳴が現実へ引き戻した。コクピットに座る彼女は、すがるような視線をシンへ投げかける。ヘルメット越しでも真空を伝う、絶望と不安。
 すぐさま立ち上がり、寄り添うべく地を蹴るシン。

「ルナ、ミネルバは? 無事だったんだろ……ルナ?」
「ミネルバは大破、航行不能……でもクルーは大半が無事。今から救援、出すって……」

 僅かな重力を感じながらも、シンはインパルスのコクピットへ飛び上がる。身を乗り出したルナマリアは、両手を広げてシンを抱き止めた。無線を通して伝わる泣き声が、シンのパイロットスーツ内に満ちてゆく。

「艦長が……グラディス艦長が……」
「……そうか、メサイアに……レイは?」

 答える代わりに首を振るルナマリア。シンもそれ以上は、何も言葉を紡げなかった。
 声を詰まらせ押し黙る…次の一言を聞くまでは。ルナマリアの声は震えながらも、戦慄と恐怖を静かに告げる。

「副長が今……一部の敵艦隊が、撤退中のザフトに……」

 コズミック・イラの宇宙にまだ、平和の静けさは訪れない。
 統制を乱しながらも、撤退作業に追われるザフトの部隊へ、今まさに復讐の牙が向けられつつある。体を入れ替えインパルスのコクピットに収まり、シンはミネルバから送信されたデータを睨む。
 無秩序に散らばるザフトの部隊へ、明らかな敵意を向ける流れがあった。消えない怨嗟の炎、終わらない憎しみの連鎖……だが、シンの迷いは霧散した。

「ミネルバ、チェストとレッグはまだ有るか? 有るなら射出して欲しい……艦長!」

 本当は力なんて一度も、これっぽっちも欲しくは無かった。
 今なら解る……そして望まなかった力が、まだ自分に残っている事も。守るべき大事な、代え難い存在と共に。
0027PHASE-51「閃光は運命をのせて」3/52009/06/30(火) 12:48:22ID:YoSD0tuw
 艦長と呼ばれた、その一言に動揺して。身を乗り出して端末を覗きながら、決して艦長席には座ろうとしないアーサー。
 だがしかし、肩書きがどうであれ、この場の責任者は自分をおいて他に無い。突飛とも言えるシンの応答に、たじろぎながらもアビーに目配せ。通信内容を聞いていた彼女は、すぐさまモビルスーツデッキを呼び出した。

「すぐそっちに救援を出す。そして総員退艦の後、残存艦隊に合流する予定だけど……」
「その残存艦隊が危ないんでしょ? 反撃の素振りを見せる友軍もいる」

 ザフトの指揮系統は今、混乱の様相を露にしていた。
 中枢であるメサイアが陥落し、掲げるべき旗を失ったのだ。混乱に乗じて牙を向けられ、爪を剥いて応じてしまう……互いに退けぬ程、多くの物を奪い合い過ぎた両軍。
 デュランダル議長の熱烈な支持者達には、停戦勧告を無視して戦闘を継続する者さえ居た。

「もしかしたらオレにも……まだ出来る事があるかもしれないから」

 そこにもう、不遜で傲慢なミネルバのエースは居なかった。まだ年端もいかぬ少年の面影が、以前より顕著に見て取れる。あまりに脆く、頼りなげな……しかし真っ直ぐ、一点の曇りも無い真紅の瞳。

「モビルスーツデッキより! 予備が一対、10分後に射出可能との事です……艦長!」

 ヨウランやヴィーノを始めとする、整備班一同の答え。
 その想いも交えて、アビーの報告がアーサーの耳を打つ。
 艦長……その言葉は殊更強く響き、その意味はずしりと双肩に重い。既に翔ばぬ船で、既に居ない人に代わって。僅かに苦笑を零すと、アーサーは制帽を被り直し……意を決して艦長席に腰を据えた。
 全艦内へ向けてマイクを握り、高まる動悸を感じながら息を吸う。

「艦長代行のアーサー・トラインだ。全クルーに告ぐ……これより本艦は、最後の作戦行動を開始する」

 無論、既に総員退艦の命令が下っているから……意思無き者には去るよう、アーサーは何度も説得を試みる。だがしかし、その声を聞く誰もが、早くも行動を開始していた。
 非常電源の薄暗い艦内に、再び活気の火が灯る。たった一人のブリッジ要員を振り返れば、アビーは力強く頷き返してきた。

「よ、よし! コンディションレッド発令、ブリッジ遮蔽!」
「艦長、現在コンディションレッドは発令中、ブリッジは依然として遮蔽中です」
「……言ってみたかっただけだ。さぁミネルバ、もう一仕事だ。頼むっ!」
「予備電源、全投入。破損区画の人員は退避してください……送電止めます」

 残存する全てのエネルギーが、最優先でカタパルトへと送られてゆく。女神の名を冠する船は今、最後の力を搾り出そうとしていた。遥か上空、月軌道上で燻る戦火…その炎が再び燃え上がるのを阻止する為に。
0028PHASE-51「閃光は運命をのせて」4/52009/06/30(火) 12:49:09ID:YoSD0tuw
「シン、これよりチェストフライヤー、レッグフライヤーを射出します」

 計器の数値を確認しながら、アビーの通信に頷くシン。開け放たれたハッチからは、不安げにルナマリアが見守る。
 彼女はデュートリオンビームの照射を一度受けており、その乗機であるインパルスにはまだ、充分なエネルギーが残されていた。機体そのものは大破しているが、中心となるコアスプレンダーは無傷である。
 ただ……

「フォース・シルエットは……無いよな、もう。届くか? 艦隊まで」

 インパルスは各種シルエットパーツを装備する事で、様々な局面に対応する機体。そして今、機動力とスピードを特化させた、フォース・シルエットの選択がベストではあるが……唯一ミネルバに配備されていた物は、既に大破している。
 新たなチェスト、レッグと合体しても、翼がない。

「問題ありません、試験用のシルエットを回しました。エネルギー配分に気をつけて下さい」
「試験用?何でそんな物がミネルバに……了解、使ってみる。使いこなしてみせる!」

 予想に反して、アビーはシルエットパーツも射出し終えていた。しばらくインパルスからは遠ざかっていたが、どうやら第四のシルエットが配備されたらしい。

「……前に私が申請して、急いでミネルバに回して貰ったの」
「ルナ……そっか、ルナの機体だもんな。今のインパルスは」

 もうすぐ上空へ、インパルスのパーツ群が飛来する。少し遅れて、救援の内火艇も到着するだろう。死に逝くつもりは毛頭無かったが、しばしの別れを惜しんで。シンはルナマリアと抱擁を交わした。
 必ず戻る……そう呟く言葉が、真空を隔てる硬質硝子を僅かに曇らせる。

「私のインパルス、ちゃんと返しに戻ってよね……シン」
「ああ……ルナ、行って来る。みんなで一緒に、プラントに帰るんだ」

 第二の故郷、プラント……仲間達と過ごした日々。
 もう帰る事のない、友への想いも乗せて。ルナマリアがふわりと離れると、シンはハッチを閉じる。インパルスは細かな振動と共に僅かに浮かび、最後の力で虚空へと飛翔した。分離レバーを押し込むと同時に、背を押すような衝撃が走る。

「シン・アスカ、コアスプレンダー……行きます!」

 破損したパーツを振り解き、コアスプレンダーは漆黒の宇宙を切り裂き馳せる。
 救援に駆けつけたヨウラン達も、見送るルナマリアに倣って空を見上げた。引き絞られた運命の一矢は、今再び放たれたのだった。
0029PHASE-51「閃光は運命をのせて」5/52009/06/30(火) 12:50:41ID:YoSD0tuw
「駄目です、応答ありません……右翼、連合より合流した艦隊が前に出ます!」

 悲痛な叫びと共に、艦長席を振り返るメイリン。だがしかし、虚ろな瞳を虚空に向けたまま、ラクス・クラインは微動だにしない。

「やはり人は皆、憎しみの連鎖を断ち切れないのでしょうか…」

 ぽつりと一言。ラクスは呟くと同時に、目元に一片の輝きを零したように見えた。だが、それを拭いながら立ち上がると、再び全軍に向けてマイクを握る。
 慌ててメイリンは通信の周波数を切り替えると、固唾を飲んでラクスの言葉を待った。
 既にもう、ラクスには最初から解りきっていた。ディスティニープランという前代未聞の試みに対して、対話と対案を捨てた時から。
 今というタイミングでしか、暴走したデュランダル議長は止められなかった……もし話し合いのテーブルに付けば、長引く議論の影で、ザフトはより支配力を強めただろう。
 ロゴス崩壊後の混沌とした今こそが、磐石の態勢を築く前の議長を討つ、唯一にして最後の機会だったのだ。

「連合の皆さん、既にもう大勢は決しました。無用な追撃はおやめ下さい」

 落ち着いて言葉を選び、諭すように呼びかける。
 感情も露に泣き叫びたい、その気持ちを鎮めて。
 敵を示して旗を振り、自由を守れと力を奮わせた……それは紛れもない彼女自身。だからこそ今は、有り余る力の矛先を、再び収めなければならない。

「駄目です、艦隊止まりませ……あ、ザフト側が迎撃体勢に移行します!」

 ラクスの呼び掛けも虚しく、再び武力の応酬が繰り広げられようとしていた。力に応えるのはやはり、力でしかない……彼女が灯した戦火の炎は、激しく燃え盛って宇宙を照らす。
 あたかもそれが、人を導く光であるかのように。己が選ばせた未来の、その歪な輝き……その前では、言葉は余りにも無力。

「ラクス、僕が行く。もう誰も……誰にも撃たせない」

 不意にエターナルのブリッジに並ぶ、蒼い翼のモビルスーツ。それはラクスが解き放った、パンドラの箱の最後の希望。
 思わず立ち上がるラクスは、戸惑いながらも小さく頷く。憎悪渦巻く戦場へと、大切な者を送り出す……その痛みに耐えながら。数え切れぬ多くの者へ、その痛みを強要した自分だから。

「ごめんなさい、キラ……気をつけて」

 祈るような呟きに応えるように。ストライクフリーダムは身を翻すと、瞬く間に視界から飛び去った。一条の光を引き連れ、怨嗟の鎖を断ち切る剣となって。
0030創る名無しに見る名無し2009/06/30(火) 19:18:16ID:lrEpvZ2z
乙!
未完とのことたが、悲壮感が出ていてイイ
結末が気になるね
0031創る名無しに見る名無し2009/07/02(木) 01:24:33ID:AmSa5Anw
続けられるかあれですが、こんなの作ってみました
0032紫のいない3年2009/07/02(木) 01:25:35ID:AmSa5Anw
書類上のミス、これは時たま起きる事だ。たいていの場合は訂正が実行される



「な、なにかの間違いではないかと・・・」
私に渡された辞令、ドロワを母艦とする第302哨戒中隊への配属
「私もそう思う。が、ソロモンでドズル閣下が亡くなられて、旧宇宙攻撃軍の下部組織の命令系統が混乱しているのが現状でな」
ア・バオア・クーでの決戦が近づく今、訂正よりも履行が優先されたのである
「は、はぁ・・・」
「敵の攻撃の集中が予想されるS・N両フィールドを避け、出来る限りの女性パイロットはEフィールド等を受け持つようになっていたのだがな」
済まなそうに人のよさ気な人事課の大佐が頭を下げた。私は覚悟を決める。他のみんなと行動を別にするのは不安だったけれども
「いえ、精一杯やってみせます!」
「そうか・・・精鋭というだけあって、あのソロモンで殿軍を勤め、生きて帰って来たエースも居る。前線指揮には問題なかろう。私に言えることはそれだけだ」
「はっ!」
敬礼を返す。いいわよ、エース部隊だろうがやってやろうじゃないの!
「ジオンの為に死んでくれ」
その時はわからなかったけれども、大佐の言葉の意味する事を、私はドロワで思い知らされるになった
0033紫のいない3年2009/07/02(木) 01:28:01ID:AmSa5Anw
ドロワ



「ざ、ザクレロ!?私の機体ザクレロなの!?」
私は受領に持って来た技官の首を掴んで振り回した。
「ビグロはもう余ってないんです!このザクレロも、302という事で持って来れたんです!」
なんてこと!よりにもよってザクレロなんて。そう・・・ジオンが負けているというのはそういう事なのね
「せめて被発見率を下げるために黒に塗装してくれるかしら・・・というか、デフォルトの黄色にしなくてもいいでしょうに」
私がリアルorzをしていたその頃



格納庫通路
「ケリィの容態が気になるが・・・」
ガトーはいらついていた。ソロモンでソーラ・システムの照射を受け、負傷したケリィが収容されたのはキシリア旗下の艦で、連絡がつかずにいたからだ
「く、誰にケリィの代わりが勤まるというのか!」
補充を受けれるとはいえ、あまりにも大きな穴だった。ケリィのビグロによる火力支援で敵の足を止め、ガトーらMS隊が切り込む。それが302の基本的な戦い方だ。それを封じられたのだから
「302だ。補充の機体と人員を受け取りに来た」
しかし気をとりなおし、ガトーは用件を言って扉を開けた


プシュッ


「あ゛」


最初の出会いはそんなものだった
0034創る名無しに見る名無し2009/07/02(木) 01:31:59ID:AmSa5Anw
一応これだけ投下
0083史上もっとも黒歴史かつ謎である紫との関係を別人にしてやってみようかと思うのですが、どうでしょう?割と歴史は変えた方がいいのでしょうか?それともなぞったほうが・・・えーん
0035創る名無しに見る名無し2009/07/02(木) 08:39:38ID:h6kZkm2D
>>34
自分の描きたいやつを描けばいいじゃないかと・・・
0036創る名無しに見る名無し2009/07/02(木) 17:43:55ID:+hBvkxT9
なぞった方が分かりやすいのは事実だけど
ifなんだから好きにやっていいと思うよ

ニナとガトーは無関係でも
バニングは負傷で死なずに途中退場しても
コロニーなんて落ちなくても大丈夫
0037某武装勢力司令官2009/07/03(金) 00:18:42ID:Ddz6GP/u
いつの間にか新スレが。>>1乙です

オリジナルMS考えてるけど、なかなかカッコイイのは出来ませんな。
0038創る名無しに見る名無し2009/07/06(月) 05:26:33ID:Y787a6tt
こう、王道っぽくだな
http://imepita.jp/20090706/191000
0039創る名無しに見る名無し2009/07/06(月) 18:01:18ID:dYlKfEGm
なんか変形しそうな?
0040創る名無しに見る名無し2009/07/07(火) 20:44:33ID:BifJNKEm
>>39
ザクの模倣だから変形は考えてなかったなぁ
0041創る名無しに見る名無し2009/07/07(火) 20:52:38ID:cnXR9aqk
脚のスラスターの形状のせいかな
0042創る名無しに見る名無し2009/07/09(木) 05:12:36ID:N8LT3UM7
現実からガンダム世界へってのは誰か書かないの?
0043創る名無しに見る名無し2009/07/09(木) 09:01:11ID:cP/upCB0
>>42
昔書いてみたことがあるが、何度書き直してもダンバインになった
0044創る名無しに見る名無し2009/07/09(木) 09:04:27ID:uvdmwCYJ
そういうのが読みたいなら自分で書けば良いのに。
0045創る名無しに見る名無し2009/07/09(木) 23:07:45ID:9YO6cJYM
現実にMSがやってくるのは書いてみたことあるけどラプターとシースパローに全部落とされたよ!よ!
0046創る名無しに見る名無し2009/07/10(金) 01:05:03ID:ocgcorNs
ゼータとかから出たビームも弾くオーラ的な何かがあれば核だって防げる
間違いない
0047創る名無しに見る名無し2009/07/10(金) 02:53:22ID:QTDKhqE2
>>44
一応設定とかは妄想してるよ
けど文章にできないんだorz

主人公はジオン公国国民として生まれて流されるまま軍人に……
原作知識を生かして死なないように四苦八苦する的なの

後読みたいのと書くのは違うと思うんだ……
0048創る名無しに見る名無し2009/07/10(金) 03:19:38ID:NuKThRH7
ええい、蒼の残光の続きはまだか!!
0049創る名無しに見る名無し2009/07/10(金) 13:52:09ID:41Se1Z+0
そういうのが読みたければ自分で書けばいいのに
0050MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/10(金) 15:04:46ID:ptA409Hy
すまん
これから書く
0051MAMAN書き ◆TIZ8.3DMwS9z 2009/07/10(金) 15:10:09ID:ptA409Hy
あれ酉が
0052MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/10(金) 15:14:17ID:ptA409Hy
度々すいません
0053創る名無しに見る名無し2009/07/10(金) 18:46:00ID:ky723DBx
  _  ∩
( ゚∀゚)彡
 ⊂彡
0054創る名無しに見る名無し2009/07/11(土) 02:03:20ID:7E+ERWa9
しかし、投下待ちだけってのもなぁ
スレタイ的に住人で作品を作るってのはどうだ?
投下してくれる人にはこれまで通りお願いしますってスタンスでさ
0055創る名無しに見る名無し2009/07/11(土) 02:54:47ID:LfJV1fGU
宇宙世紀の日本の漫画文化はどうなってるんだろうね
0056創る名無しに見る名無し2009/07/11(土) 11:28:22ID:YgSaj6bG
@廃れている
A斜め上の発展を遂げている
B相も変わらず
0057創る名無しに見る名無し2009/07/11(土) 12:21:41ID:tpyFp2dh
続きを少し投下です
0058紫のいない三年2009/07/11(土) 12:23:45ID:tpyFp2dh
「はぁっ、はぁっ・・・!」
正にSフィールドは地獄だった。Nフィールドと共に、連邦軍にとっての最大攻撃目標である空母ドロワが存在するからである
「っく!」
逆流しそうな胃の内容物をこらえる。それにしても目につくのは隊長、アナベル・ガトー大尉機の戦い方だ
「撹乱!」
不意に来たその一喝にボタンを押し込む
「はいっ!」
あの人は、味方がいる時は格闘戦を多用した。私を含めた若年兵には、疲労の割に撃墜効率が落ちる為に戒められたそれをだ
「カリウス!」
「はっ!」
そして私達が弾を撃ち尽くして何も出来ない的となったとき、カリウス伍長と共に盾として前線に残り続けるのである
「その聡明さは美徳であるが」
一度補給に帰還した時、自機の性能と腕に自信のなかった私は、ザクレロのランチャー全てにビーム撹乱幕を詰め込んだ。彼等を支援するにはこれが一番だと判断したからだ
「死ぬぞ」
戦列に戻った私に、武装を尋ねた大尉は険しい顔でいった
それが意味することはわかっている。私は大尉らと共に弾が切れたら支援無しの後退を行わなければならない。そして私にはその技量がない
「きゃっ!」
乱戦で流れて来たジムの突き出したサーベルを、危うい所で避ける
0059紫のいない三年2009/07/11(土) 12:29:35ID:tpyFp2dh
「くぅっ!」
撹乱幕を使っているせいで、こちらのビームも使えない。今私には、ヒートナタ以外に武装は無いも同然なのである


ドンッ!


さっき私のザクレロを攻撃して、そのまま慣性に任せて流れていったジムが四散する。
「支援役が支援されては意味がないぞ」
「カリウスさん!」
カリウス伍長のリックドムが見越し射撃を行ったのだ。気付けば敵の攻撃が多少落ち着いて来ていた
「・・・敵の限界か?」
少なくとも今まで乱戦であったが、比較的優位にジオンは戦いを続けていた。戦闘というものは、崩れだせば早い。勝つにしても負けるにしても
「だと、良いのですが」





私達はこの時知るよしもなかった。連邦がドロワを撃沈した事で戦力の再編を行い、再びSフィールドへと襲いかかろうとしていた事も。
そして運命の銃弾がジオンの最高指揮権者の頭脳を貫いていた事で、それに対応すべき方策を放棄してしまっていた事も・・・
0060創る名無しに見る名無し2009/07/11(土) 12:38:08ID:tpyFp2dh
投下終了
ジオンの防衛線が崩れていきます。ここまではまだ史実通りです。あと、今後の展開としては色々クロスしていくことに決めました。今後ともよろしくお願いします


・・・主人公の名前どうしようか(汗)
0061創る名無しに見る名無し2009/07/11(土) 18:39:26ID:YgSaj6bG
意外と、兄上も甘いようで
0062MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/12(日) 19:00:38ID:3kNG96+c
wiki更新して来ました

「俺のが入ってない」という方いたらご報告ください

0063創る名無しに見る名無し2009/07/12(日) 22:14:18ID:G7L81C5a
いつも乙です
0064創る名無しに見る名無し2009/07/14(火) 21:49:15ID:MEFuASB0
>>60
紫のかわりってことでバイオレットとか
0065創る名無しに見る名無し2009/07/15(水) 11:58:25ID:GfdeM+94
イタリア語で紫の『viola』から『ヴィオラ』とかは
0066創る名無しに見る名無し2009/07/16(木) 05:29:24ID:zhXVki6d
>>54
自衛隊スレやミリタリー系創作スレと協力して
「軍人がガンダム世界に〜」みたいなのはどうだろうか
スレ間を超えた板内合作って感じで

軍事や自衛隊の知識はあってもガンダムは全然知らねーよって人を
このスレで積極的にバックアップするとか
原作を提供して書いてもらうとか、
もしくは向こうに原作提供してもらうとか、
なんかそういうのできたら面白そうな予感はする
0067創る名無しに見る名無し2009/07/16(木) 08:31:04ID:U6uofseE
面白そうだがこんな過疎ってたらなぁ……
0068創る名無しに見る名無し2009/07/17(金) 01:40:13ID:G1IZVfXF
ちまちま、ぷつりぷつりと投下です
0069紫のいない3年2009/07/17(金) 01:40:59ID:G1IZVfXF
グワデン



「ギレン閣下が戦死されたと?」
デラーズは指揮席から腰を浮かせる。ドロワが沈んだ時、デラーズは旗下の艦艇をかなり前線へ進出させていた。
背景はこうだ。ジオンはドロワの格納、そして整備能力をもってMS戦力を回転させ、数に劣る連邦に対抗していた。
故に連邦はドロワに狙いをつけたが、それをデラーズは見越し、その戦力をもって挟撃、連邦にかなりの損害を与えていた。ジオン統帥府がア・バオア・クー戦開始当初、戦勝気分にあったのは彼の働きがあったことに間違いは無い
だが、戦力が連邦より薄い事に違いはないし、不沈空母が存在しえない事もまた確かだった


「故にその時は、我々が兵を受け入れねばならぬ」


艦艇への前進命令をデラーズが下した際、彼はそういったという。グワジン級戦艦ならば、比較的多数のMSや兵を収容出来る。帰る処無くして戦闘なぞ出来ぬ、とも
「謀ったな・・・キシリアめ」
しかしその努力も、全ては水泡に帰してしまった。ア・バオア・クーは陥落してしまうであろう。そして、それの意味する所は言うまでもない。どうすべきか・・・
「全艦。および全MSを集結させる。我が艦隊は、この宙域を速やかに離脱する!」
0070紫のいない3年2009/07/17(金) 01:43:29ID:G1IZVfXF
また一方の連邦にとっては、この混乱こそが唯一のチャンスであった


「邪魔だぁっ!」
ガトー機のビームライフルに貫かれたジムが爆発する。それに密集陣形を組んでいたボールが巻き込まれた「この乱戦に密集陣形なぞとるからこうなる!」
ガトーはそういって相手の不手際を吐き捨てる。連邦はとにかく戦力を集めて投入しました、でしかない。それに何の意味があるのか
「大尉!」
傍らを紫にカラーリングされたザクレロが通り抜ける
「ヴィオ!前に出過ぎるな!」
心配なのは無理についてくるこの新米だ、このような戦場であれば、ビスレィのようであればよいのであるが、あれとは全く逆で困る。ガトーはザクレロを援護するために機速を緩めた
「ぬおっ!」
本来彼が進むべき位置を流れ弾が貫いた。もしザクレロを見ていなければ、これに腕を持って行かれてたかもしれない
「天佑とはこの事か」
安堵したのもつかの間
「大尉!ヴィオが!」
ガトーのゲルググにカリウスのリックドムが近付いて指差す
「きゃああああああっ!!!」
マシンガン装備のジム二小隊になぶられている。何故だかわからないが、非常に怒りを覚えた
「カリウス、来い!」
「はっ!」
二機は戦場を駆けた
0071紫のいない3年2009/07/17(金) 01:47:12ID:G1IZVfXF
「すいま、せん・・・お二人とも」
「喋るな、傷に触る」
ザクレロはマシンガンの乱射で半壊状態にされていた。中のヴィオも、破壊された計器の破片で負傷している。二機はふらつくザクレロを護衛しながら戦線を後にしていた
「大尉、近くにザクレロが着艦出来る艦が・・・発光信号?」
ムサイでは余裕がなさすぎる、大型艦・・・あの赤い艦、グワジン級に違いない!だが、発光信号は・・・
「撤退命令!?」
「馬鹿な!?私はまだまだ戦える。それにしてもどういう事か」
ザクレロさえ戻すことができれば、またとって返さねばならない。まだドロワの仲間が戻って来ていないのだ
「うっ・・・」
駄目だ、ヴィオの苦悶と共に、またザクレロがよろけた。選択肢はなかった
「グワデンに着艦する」

「大尉、撤退命令は・・・」
ガトーはカリウスの言葉にかぶりをふった
「そのような命令、聞けぬ」
言語道断。彼の口調からは、そんな強い思惟が感じられた
「グワデン、デラーズ大佐か・・・」
ギレン閣下からの信任も厚い大佐から発せられる、理不尽な撤退命令。一体この戦場で、何が起こっているというのか
「まさか、な。ありえぬ」
敗戦という言葉を、ガトーは頭から追い払った
0072紫のいない3年2009/07/17(金) 01:53:29ID:G1IZVfXF
しかし、敗戦の現実はガトーらに突き付けられた
「私は行きます!」
「ならぬ!今は耐えるのだ。生きてこそ得る事のできる、真の勝利の日まで」
耐えねばならないというのか、この恥辱に・・・!
「負傷者を収容します!」
対峙する二人のむこうで、ヴィオが運ばれていく。デラーズが横目でそれを一瞥し、更に言葉を紡いだ
「再びジオンの栄光をつかみ取るその時まで、貴公の命、わしが預かる。」
ここで死ぬ事は決して許さぬ、と
「その日まで、私の命、閣下にお預けします」
デラーズはガトーの言葉に頷いた
「そして未だなお、戦士達は傷つき、命を失おうとしている。その彼等を我々は救わねばならない」
救出と撤退戦を効率的に行う必要があった
「現在Eフィールドが未だに戦線を構築、維持できている。我々はそこを脱出路となし、撤退する」
「そこで私が出撃するのですね」
ソロモンでの撤退戦、その再現を閣下は望んでおられるのだ





そして果たされるカスペン戦闘大隊と、デラーズフリートの運命の出会い。これが宇宙世紀に何をもたらすのか、今はようとしてしれなかった
0073創る名無しに見る名無し2009/07/17(金) 01:55:47ID:G1IZVfXF
投下終了
名前はヴァイオレット、愛称はヴィオで行きたいと思います。



待たせたな、ヒヨッコども!
0074創る名無しに見る名無し2009/07/17(金) 07:37:24ID:IXxreEnm
乙!
これから3年がはじまるのか
楽しみ
0075創る名無しに見る名無し2009/07/17(金) 12:27:07ID:qn2H4NVs

やっぱUCは人気だな
0076MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/18(土) 05:16:59ID:zCGksfA4
蒼の残光 9. 連合艦隊編成 後編

今回は短いです。これで次は決戦近し
0077MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/18(土) 05:17:41ID:zCGksfA4
 コロニーレーザーと共に移動を続けるリトマネンのアクシズ残党軍では、ささやかな酒
宴がひらかれていた。
 連邦艦隊を殲滅して以来、彼らの元には各地に潜伏していた反連邦活動の士が馳せ参じ
ていた。全くの身一つで来る者、ジオン公国の艦艇やMSを持ち込む者、そして少ないな
がらもガルスJやRジャジャなどのアクシズ製MSを所有する者もいた。
 更に匿名ながらも資金援助を申し出る個人や企業も現れ、彼らの作戦行動は質、量共に
改善される事となった。
「我等の信念、我等の正義が受け入れられた証である」
 宴の始め、リトマネンは演説の中でそう言った。少なくとも援軍や支援者の存在が兵の
士気を大いに上げた事は事実だった。
 アラン・コンラッドは水割りのグラスを手にこの酒宴を他人事のように眺めていた。
 彼は彼の上官ほどには現状を楽観視していなかった。
 確かに人数は増えた。資金や整備もこれで改善されるだろう。しかしこれまでの戦闘で
失われた戦力を直ちに補填できるものではない。パイロットや艦艇のオペレーター、ガン
ナーとしての力量はこれから見極めなければならない。少々資金が増えたところでMSを
買えるわけでもなし、整備部品の調達が根本的に改善されたわけでもない。こうして酒や
食事が少し立派になるだけでは、皆もいずれ現実に気付く事になるだろう。
(それに、義勇兵の集まりも思ったほどではないような)
 それも気懸りだった。この宇宙に今でも連邦憎しと潜伏する旧ジオン軍人やその子弟は
決して少なくない。連邦艦隊でも最大規模の勢力をあれほどまでに一方的に虐殺して、そ
れでも呼応しようとしないならいつそれらは蜂起する気なのか。現実はアランが考えてい
る以上に冷めてしまっているのだろうか。
(あるいは、他にもジオンの意志を継ぐ組織が既に結成されているのか……?)
 そこまで考えた時、彼の前にスティーブ・マオが歩いてきた。
「どうしましたかな?難しいお顔をして。もっとお酒を召し上がってはいかがです」
「いえ……万が一攻撃を受けた時のために酔うほどに飲むわけには参りませんので」
「ふむ、隊長は生真面目なお方だ」
「手綱を緩める事は閣下がしてくれます。私は引き締める側を務めます」
 アランとしては気の利いた科白のつもりだったが、マオには通じなかったらしい。曖昧
な表情でシャンパンらしきものの入ったグラスを回していた。
「ヘル・マオ、そちらの方は?」
 マオの後ろにいる見慣れぬ人物に視線を向け、アランは訊ねた。
「おお、そうでした。隊長、こちらは我々に協力してくれる事になったドクトル・ゲオル
ゲ・ハジです。ハジ博士、こちらがハンニバルのパイロット、アラン・コンラッド隊長で
す」
「ハジです。お目にかかれて光栄です。私のことはゲオルゲとお呼び下さい」
 ゲオルゲと名乗る男は右手を差し出してきた。アランはその右手を握り返した。
「アラン・コンラッドです。ドクトルとの事ですが、お医者様ですか?」
「いえ、私は宇宙における運動制御理論を研究している者です。MSの医者、と言えば言
えるでしょうか」
 MSの研究者か。なんとなくだが木星の技術者には見えなかった。より都会的に洗練さ
れている。AEのスタッフか、とアランは判断した。驚く事ではない。奴らは戦争と金儲
けを結び付けられるならどこにでも出向く。
「ゲオルゲ博士のコネからジオン系の流体内パルス式駆動モジュールを用立ててもらえそ
うなのですよ。これは隊長たるあなたに早くお聞かせしたいとご案内した次第です」
「これは素晴らしい。感謝します」
 精一杯愛想よく感謝の意を伝えた。出所に興味はないがこれで小破、中破して稼動不能
となり、部品取り用のドナーとしてしか使い道のなくなっていたMSが再生できる。
「このくらいはお安い御用です。その代わりと言っては何ですが、私もここで整備を見学
する事を許可いただけるでしょうか。特に隊長の乗るハンニバル、あれは実に興味深い。
是非とも、この目で見ておきたいのです。研究者の性とご理解下さい」
 アランは内心、この申し出をよく思わなかった。協力者、と言ってはいるがその実は技
術を盗用するスパイのようなものである。特にオリバーのサイコミュや自身のIMBBL
のような技術を簡単に見せたくはない。しかし、断れる状況でないのも確かだ。
「どうぞ、現場には私から伝えておきます」
「ありがとうございます」
「時に隊長、もう一人のハンニバルパイロットは何処にいますかな?」
0078MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/18(土) 05:19:54ID:zCGksfA4
 マオが訊いた。オリバー・メツはこのパーティーを欠席していた。
「まだ調整中のサイコミュで戦闘を行ったせいでしょう、今は自室で休んでおります。丁
度今から様子を見に行こうとしていたところです」
「おお、これは失礼しました。お引き留めして申し訳ない」
 絶妙な口実でその場を離れ、アランはオリバーの部屋を訪れた。
「オリバー、入るぞ」
 返事を待たずドアに手を掛ける。鍵はかかっていなかった。
「オリバー、どうだ、少しは落ち着い――」
 アランの動きが止まった。
 オリバーはベッドの上に座っていた。膝を抱え、顔をその膝に埋めていた。手には何か
小さな瓶を持っていた。
「どうした、オリバー」
「なんでもない」
 予想外に即答が返ってきた。アランはそれ以上言わず相手を見ていたが、ふと、その手
の中の小瓶がほとんど空になっているのに気付いた。
「オリバー、お前、薬を――」
「なんでもない!」
 オリバーは先ほどよりも強く否定した。アランは再び黙った。
 オリバーの持っている瓶は一種の昂揚剤である。NTや強化人間の能力は精神的なもの
に左右される要素が強い。特に人工的に能力を引き出す強化人間は精神が不安定になりが
ちで、欝状態になると全く戦場で役に立たなくなってしまう。そのため、この昂揚剤で発
奮させ、能力を常に全開させるのである。
 オリバーは実験の副作用で視力を失って以降能力が急上昇し、かつ精神の安定性も高か
ったため失明以後はほとんど薬物は使用していなかった。そのオリバーの小瓶が空になり
かけている、と言う事は……。
「どれだけ飲んだんだ、オリバー」
「大丈夫だよ、アラン」
 顔を膝に着けたままオリバーが答えた。落ち着きを取り戻したようだ。
「奴に勝つには、今の僕の能力では足りない。戦場だけじゃなく、二十四時間常に感覚を
研ぎ澄まして能力を磨き続け、NTとして能力の底上げをしないと届かないんだ――ユウ
・カジマとマリオンの二人には」
「オリバー……」
「大丈夫、僕なら大丈夫だよ。奴に勝つまでだ、それまででいいんだ」
 オリバーはそう繰り返していた。
0079MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/18(土) 05:30:11ID:zCGksfA4
RGM-86R-LA ジムVライトアーマーA
第一次ネオジオン抗争終盤、AE社は連邦軍次期主力MSとして量産型百式改を提案するが、主にコスト面で折り合わず
不採用となり、AEは連邦軍開発のジムVをノックダウン生産しつつ、新たに生産性を重視した新型量産MS(ジェガン)
を開発する事で合意した。
しかし、支援機的性格の強いジムVはすぐに前線のパイロットの間から不満の声が上がり、急遽高速空間戦闘能力を
重視した改装型の設計、開発を要請された。
厳しいコスト面の制約の中、一年戦争期のジム・ライトアーマーをコンセプトとすることに決定、アーマーの削減と軽量化
を徹底する事で運動性と関節の可動域を広げる事を目的に改良が加えられる。
ムーバブルフレームを持つジムVはジム以上の大胆な装甲の省略が可能となったが、結果としてムーバブルフレーム
の露出したデザインは量産型百式改に拘ったAEの意趣返しとも言われる。
尚、本来はジェネレータ出力はベース機と変更はないが、一部のエース機の中にはジェネレータ出力をブーストアップ
した機体も見受けられる。

主に隊長とエースを対象に支給され、ルナツー基地のジャック・ベアードも本機を受領している。ジオン共和国駐留艦隊
も当然対象となるはずだったが、ユウは既にAZ-107のテストパイロットが決定しており、ルーカスはリックディアスからの
乗換えを嫌い、イノウエは元々対MS戦闘を専門外とするため、支給される事はなかった。


ここまで
0080創る名無しに見る名無し2009/07/18(土) 07:40:59ID:JH6oY6fX
まさに決戦間近
0081創る名無しに見る名無し2009/07/19(日) 00:43:47ID:1GsNnVbu
こういうのは男の子として素直にワクワクするな
0082創る名無しに見る名無し2009/07/19(日) 08:53:00ID:nG2KzBP1
すげえ
短いのにむちゃくちゃ盛り上がる
0083Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 21:54:48ID:4Ki7p1KW
行けるか?!
0084Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 21:57:13ID:4Ki7p1KW
 アステロイドベルト暗礁宙域。地球連邦軍とコロニー連合軍の戦争が始まる前から、双方が軍事衝突する際の
緩衝地帯として設けられた岩石の海。今でも大戦の名残……数多くのMSの遺骸が漂う、戦士の墓場。
 艦船が無事に通過するには航行速度を落とす必要があるが、時間的にも距離的にも、ここを通り抜けるのが木星に
向かう最短コース。しかし、それは同時に、ヴァンダルジアがペリカンに最も迫られる進路でもある。

 ペリカンに搭載されていたガンダムは全7機。
 土星の魔王に懸けられた破格の賞金は、出資者の目論見通り、十分な効果があった。
 討伐隊と連携を取ろうとしなかったゴートヘッズの4機は敗れ、現在出撃可能な機体は3機。
 高機動ΖU]、ガンダムヒマワリ、そしてバウンティハンターガンダム……。 

 バウンティハンターガンダムのパイロット、エルンスト・ヘル准尉は、セイバー・クロス中尉、リリル・ルラ・ラ・ロロ少尉と
共に、格納庫へと向かう。エルンスト・ヘル……銀髪の青年は“ガンマン”のパイロット。緊急討伐隊に参加する為、
陸軍から宇宙軍へ臨時転属した。一時的な措置ではあるが、階級も少尉から准尉へと降格されている。
 初の実戦に、やや緊張した面持ちの青年は、両の眼に静かな闘志を燃やしている。復讐に心を染めているにしては、
淀み無く澄んだ瞳。彼を突き動かす物の正体を知る者は居ない。

 先導のセイバーに数歩遅れ、リリルとエルンストが従う。
 歩みの速いセイバーは、己の意思を示すかの様に、決して後ろを振り返らない。
 リリルは負けん気を顔に表し、セイバーから遅れそうになる度に、小走りで追い掛ける。
 その様が気に掛かって仕方の無いエルンストは、セイバーとリリルを交互に見ていたが、無言の両者に話し掛ける
事は躊躇われ、何も言わずに付いて歩いた。

 格納庫に着くと、セイバーは歩みを止め、2人に向き直った。

「俺は新人と子供の御守をする気は全く無い。君達には1人のパイロットとしての役割を期待している。ギルバートが
 暗礁宙域を抜けてしまえば、ペリカンでは追い着く事は出来ない。これが最後の機会となる」

 彼の言葉に、表情を強張らせる少女と青年。セイバーは声高らかに続ける。

「個人的な感情は捨て、任務遂行に徹せよ。目標はギルバートとバウ・ワウの撃墜。己の役割を果たす事のみに
 全力を尽くせ」
「はっ!!」

 同時に敬礼をするリリルとエルンスト。3人はガンダムに乗込む。

 破損の痕跡は見られない、ΖU]とヒマワリ。そして、緑褐色のマントを纏ったガンマン。
 各々の思いを胸に、ペリカンから発進する3機。セイバーの後に、リリル、エルンストと続く。
 彼等は戦争の再開を止められるか……。
0085Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 22:03:03ID:4Ki7p1KW
 エルンスト・ヘルは、名家の生まれである。裕福な家庭で育ち、何不自由無く暮らして来た。彼の歩む道には、常に
兄の影があった。勉強、運動……何をしても兄には及ばず、後塵を拝すばかり。劣等感から、宇宙軍に入隊した兄を
避ける様に、陸軍に入った。しかし、優秀な兄と比較されるのを嫌った半面、兄の存在は彼の誇りでもあった。

 その兄が死んだ。アステロイドベルトでコロニー連合軍のエース“土星の魔王”に戦いを挑み、勇敢に散った。父母の
ショックは大きく、エルンストも数日は何も考えられなかった。それから怒涛の様に日々は過ぎ、終戦を迎える。
 ある日、コロニー連合軍のエースが捕まったと言う報せを受け、面会に……。以後は知っての通り。

 あの結果に上司や同僚達はエルンストを軟弱物と非難したが、彼は全く気にしていなかった。軍の周到なやり方は
不満だったが、手加減などしていない。エルンストは感動し、畏怖に震えた。土星の魔王との決闘は、彼の中に眠る
“何か”を目覚めさせた。出来る事なら、もう一度、闘いたい。今度は堂々と、己の持ち得る全てを懸けて……。
 彼は緊急討伐隊編成の噂に、二も三も無く飛び付いた。

 兄が散ったアステロイドベルトで土星の魔王と相見える事に、エルンストは運命を感じていた。
 バウンティハンターガンダムはサーフボード型シールドに乗り、岩石の宙を行く。暫らく進むと、岩石群の隙間から、
黄土色の機体が前方に映った。焦がれる程に、待ち望んだ瞬間。武者震いを抑える。
0086Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 22:05:57ID:4Ki7p1KW
 無数の岩石が浮かぶ暗礁宙域で、ヴァンダルジアに真っ直ぐ向かう、1機のMS。ハロルドとダグラスは直ぐに
迎撃に出た。見通しの悪い中、ハロルドはモニターに映るレーダー情報を確認しながら、静かに息を吐く。

「1機……か? しかし、余りに判り易い」
「確かに、お前さんの言う通りだ。物陰に隠れて進むなり何なり、見付からない様に接近する方法は幾らでもあるのに、
 これでは見付けて下さいと言っている様な物だ」

 ダグラスは慎重に頷く。障害物が多い中、高速で移動する物体があれば、嫌でも目に付く。囮と思うのが普通。

「……だよな。罠かも知れんが、今は目の前の敵に集中しようぜ」
「一応、クーラー少佐にヴァンダルジアの護衛に出る様、要請する。異論は無いな?」
「出来れば頼りたくないんだが、後顧の憂いは断つべきか……」
「元々、その為の補充人員なんだし、確り働いて貰わないと」

 ダグラスがヴォルトラッツェル艦長への連絡を済ませた後、ハロルドは接近して来るガンダムに向かって、ビーム
ライフルを構えた。ゆらゆらと宙を漂う岩石の陰から、不意打ち気味に狙撃する!

 バシュッ!

 ビームは真っ直ぐガンダムに向かったが……機体を覆うマントに当たって分散した。ハロルドは小さく溜息を吐く。

「ABCマントかよ……」

 モニターで先程の敵機の動きを再確認していたダグラスは、ガンダムの正体に気付いた。

「ハル、あれは……間違い無い! “ガンマン”だ!」
「ガンマン? 見覚えのある機体だとは思っていたが、もしかしてパイロットは……」
「動作の癖からして、同一人だと思う」
「何と言う執念……! 仇討ちの積もりか知らんが、この命は譲れんぜ?」

 バウ・ワウは静かにバーニアを噴かし、ゆっくりと巨岩の陰に隠れ、ジャイアント・バズーカを右肩に担いだ。
 ハロルドは物悲しそうに呟く。

「殺し、怨まれ、また殺す。何処まで行こうが、憎しみの連鎖は断ち切り難い物よ……。何故、殺されに来た?」

 バズゥッ!

 素早く飛び出すと同時に、ロケット弾を発射。反動で岩石に衝突しない様、バーニアとスラスターで姿勢を制御する。
 向かい来るロケット弾に対し、ガンマンは……サーフボードを足場に小さく跳ねた。続いてロケット弾を踏み付け、
更に高く跳躍! バウ・ワウの上方に移動し、蹴りを喰らわせるかの様に、足から降下する。

「信じられん……幾らモービルトレースだからって! しかし、無防備だ!」

 ガンマンの予想外の行動に驚きながらも、ハロルドは敵の隙を見逃さなかった。ガンマンは武器を構えて居らず、
下方向に対して攻撃出来ない状態。バウ・ワウの上半身はバズーカの砲口をガンダムに向ける。
0087Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 22:10:07ID:4Ki7p1KW
 しかし、ダグラスは両脚を前方に投げ出し、足裏のスラスターを全開にして機体を後退させた。

「ハル、止めろ!!」

 狙撃し様としていたハロルドは、衝撃で姿勢を崩す。

「おわっ!? どうした!?」
「奴の脚を見ろ! 連装ビーム砲……“銀色の脚”だ!!」

 直後、ガンマンの脚が白銀に輝く!

 ドドドシュッ!!

 降り注ぐ眩い光の帯が、周囲に漂う小岩を砕きながら拡がり、バウ・ワウのモノアイの前を掠めた。
 ダグラスは感嘆の息を吐く。

「士、別れて三日なれば刮目して相待すべし……だな」
「いやいや、有り得んって! 別人だろう? 強化人間になったとかでも信じるぜ」

 ハロルドが動揺している間に、ガンマンはシールドを回収して背面に装備し、岩陰に移動した。瞬間、ダグラスが声を
上げる!

「来るぞ!」
「なっ……!?」

 ハロルドはガンマンが岩石群に身を潜めると思っていたが……違った。岩陰に隠れ様かと言う所で、ガンマンの
背負ったシールドが炎を噴き、急接近して来る。同時に、ガンマンがマントの下の右腕から飛ばした投げ縄状のビーム
ロープが、反応の遅れたバウの左腕を捕らえた。ガンマンはバウに切り払う間も与えず、ぐいっと力を込めて振り回し、
岩石の疎らな開けた空間に引き摺り出そうとする。

 ハロルドはビームロープで繋がれている事を利用し、崩れた体勢からジャイアント・バズーカを発射したが、ガンマンは
左腰のギガンティック・マグナムで早撃ちし、撃ち落とす。ハロルドは忌々しそうに吐き捨てた。

「くっ、何て奴だ!」

 不意を突かれてビームロープを避けられなかったハロルドを、ダグラスは強く叱咤する。

「ハル、どうした! お前らしくもない!」
「済まん……。どうも調子が狂う。本当に奴なのか?」
「相手が誰だろうと関係あるか! 油断するな!」
「そんなんじゃ無いんだがよ……」

 決闘の時とは明らかに雰囲気が違う相手に、ハロルドは動揺を隠せなかった。それでもダグラスの言う通りだと
思い直し、気を鎮める。バウはビームロープで左腕をガンマンの右腕と繋ぎ止められ、正面から睨み合う。
 ガンマンの威圧感は凄まじかった。隙を見せよう物なら、即座に撃ち抜かれてしまう様な気迫。バウは右肩に担いだ
バズーカを下げる事さえ出来ない。
0088Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 22:13:42ID:4Ki7p1KW
 何倍にも思える数秒が過ぎた時、ダグラスは付近を移動する気配を感じた。

「ハル、これは陽動だ。他に2機、ヴァンダルジアに向かっている」
「……しかし、逃げ様にも背を見せられん」

 慎重なハロルドに、ダグラスは言う。

「……俺が行く」
「任せた。ショットランサーを持って行け」

 ハロルドはシールドを回転させ、下半身を隠した。4本爪の隠し腕が、ショットランサーを掴む。連結を解除した後、
バウ・ワウ・ナッターは高速で飛び去った。

「後で追い着けよ、ハル!」
「ああ、墜とされんじゃねえぞ!」
「そっちこそ!」

 2人は軽く言葉を交わして別れる。

「行かせるか!」

 ガンマンはナッターを逃すまいと左手の銃を向けたが、その射線をバズーカが遮った。

 カンッ!

 銃弾が当たり、バズーカは暗礁宙域の彼方へ弾き飛ばされる。同時に、ビームが一閃!
 ガンマンのマグナムを破壊した。

「おっと、他所見をするなよ……」

 ハロルドは何時もの不敵な笑みを浮かる。
 ガンマンがナッターに気を取られた一瞬の隙に、バウの上半身はビームライフルを構えていた。その上、ビーム
ロープを切断している!
0089Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 22:17:23ID:4Ki7p1KW
 ガンマンのパイロット、エルンストは、迷う事無くナッターの追撃を諦めた。

(あれは仕方無いとしても、目の前の機体だけは絶対に逃がさない……“逃がさない”? いや、“倒す”んだ)

 彼はバウ・ワウのモノアイを見詰め、右腕の銃に手を掛ける。1対1の真剣勝負……だが、その前に……。

 カチッ……。

 共通回線を開いた。

「短距離交信……? 戦闘中に敵と話そうなんて馬鹿が居るかよ」

 ハロルドは小言を吐きながらも応じる。呼び掛けの信号を無視しても良かったのだが、相手が本当に“彼”なのか……
だとしたら、どう変わったのか、興味があった。

「何の用だ?」
「ハロルド・ウェザー連合軍特別大佐、もう一度、貴方と話がしたかった」

 生真面目なエルンストの声に、ハロルドは辟易した表情をする。

「悪いが、手前の兄貴の事なら答えられんぜ? ついでに、怨み言を聞く気も無い」
「そうでは無い。そんな事は……もう、きっと……どうでも良い事なんだ」

 エルンストは穏やかな声で、自身の胸中を語り始めた。

「兄は私の憧れだった。決して追い着けない夢の様な……。それは同時に悪夢でもあった。兄が死した事で……そう、
 貴方が兄を殺し……そして、決闘の日、“私を”殺してくれた事で、私は漸く夢から醒めたのだ」

 青年は独り、徐々に声を高くする。それは内から溢れ出た、自然な感情だった。

「あの時、私は見た! 貴方こそが、私のっ……! 私は貴方になりたい! 貴方を越えて、兄を越える!」
「そいつは結構! お喋りが済んだなら、死んでくれ!」

 通信を切る間際、冷たく放たれたハロルドの言葉に反応し、青年はマントを広げて右腕を突き出す。ハロルドは
“それ”を狙ってビームライフルを撃った。

 バシュッ……! キュゥウ……。

「何だ、これは!? ビームがっ!!」

 しかし、黄金のビームは、分厚い補強装甲を施されたガンマンの右手に命中する直前で分散し、吸い込まれて行く。
ハロルドはガンマンと対峙してから、驚き通しだった。ガンマンはミトンの様な右手で器用に掴んでいるマグナムから、
即座にライフルの倍近い威力のビームを撃ち返す!
 バウは避ける間も無く、ビームライフルを破壊された。

「また新兵器……性能テストを兼ねているのか? 本当に“連邦軍にとっては、どうでも良い部隊”なんだな……」

 ハロルドは苛立ちを見せた後、嘲る様に低く呟き、ガンマンと睨み合う。時間は静かに過ぎて行く……。
0090Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 22:21:07ID:4Ki7p1KW
 他方、ヴァンダルジアを追うセイバーとリリルは、岩石群を分けて慎重に進行中。
 ΖU]のセイバーは、不満を隠し切れないリリルに声を掛けた。

「何か言いた気だな」
「……彼で大丈夫なのですか?」

 後方を気に掛け、心配そうな口調で尋ねるリリル。しかし、本心は別にある事を、セイバーは見抜いていた。

「任務に私情を挟む者よりは当てになる」
「私情と仰るなら、エルンストさんの方が……」
「ロロ少尉……。君のそういう所が、駄目だと言うんだ」

 食い下がるリリルに、セイバーは呆れて溜息を吐く。少女は、ハロルド受けた屈辱を熨し付けて返したい剰りに、
平静さを欠いていた。上官の命令だと割り切って、素直に決定に従えない。高い能力を持っていようが、未だ未だ
子供である。

 瞬間、セイバーとリリルは後方から迫り来る規格外のプレッシャーを感じ、戦慄した。

「……流石に、荷が重かった様だな。ロロ少尉、敵機の正確な情報は判るか?」
「は、はい。追跡者はバウ・ワウ・ナッター、単機。方角7時46分20秒、距離2542.3m、遭遇まで2分31秒です」

 サイコミュレーダー搭載のガンダムヒマワリは、通常のセンサーでは察知出来ない微細な反応も見逃さない。
同レーダー以外に逆探知される虞は無く、搭乗者のコンディションに左右されるという欠点を除けば、優秀な索敵
システムである。

「この暗礁宙域で、追い着くと言うのか……」

 リリルの答えを聞いたセイバーは、軽く舌打ちした。彼はハロルドよりダグラスを警戒すべきだと考えていた。
次の行動は既に決まっている。

「ロロ少尉、先に行け。ギルバートを撃墜するのだ」
「し、しかし……」
「相手はナッター1機。子供に気遣われる程、腕は鈍っていない。必ず敵艦を仕留めろ。良いな?」
「……はい」

 リリルは返事に惑いを滲ませながらも、ヴァンダルジアへと向かう。相手がダグラスと判った時から、彼女の心には
小さな迷いが生じていた。己こそが最強の能力者だと信じて疑わなかったリリルは、故に格上を相手にする場合の
戦い方を知らないのだ。彼女にギルバート撃墜を命じて先行させたセイバーは、全く正しい。

 ガンダムヒマワリが岩礁の向こうに消えたのを確認し、セイバーは深呼吸をする。

「ダグラス・タウン……。互いに能力者同士、MSパイロットとして、どちらが上か決めようじゃないか!」

 上げた目付きは鋭く、彼は“同じタイプ”のダグラスをライバル視していた。
0091Mad Nugget ◆elwaBNUY6s 2009/07/20(月) 22:23:20ID:4Ki7p1KW
 その頃、ハロルドとエルンストは、互いに牽制し合って動けない状態で数分を迎えていた。
 エルンストは戦いが幾ら長引こうが一向に構わないが、ハロルドの場合そうも行かない。

(……もう暫らくの辛抱だ)

 ハロルドは何度も息を吐き、気を落ち着かせる。ここで焦った者の敗北は確実。唯々、時を待つ。
 静かに耐えるのは、エルンストも同じ。何倍にも感じられる時間が、神経を磨り減らす。

(我慢比べだ。相手は必ず動きを見せる)

 好機は意外に早く訪れた。バウの上半身は、エルンストの目の前でアタッカーに変形し、飛び去ろうとする!

「貰っ……たっ!?」

 ドォン!

 エルンストは得意の早撃ちでアタッカーを狙ったが、突き出した右腕に何かが触れ、小規模な爆発を起こした。

「こ、これは……ステルス機雷!?」

 驚きと同時に、歯噛みをして悔やむエルンスト。睨み合いの間、ハロルドは密かにハイドボムを撒いていたのだ。

「あばよっ、鈍ガメ野郎!」

 バウ・ワウは去り際に左腕から1発、グレネードを発射した。榴弾は空間一杯に浮かぶハイドボムに触れ、連鎖的に
大爆発を起こす!

「不味いっ!!」

 ドドドドドォンッ!!

 エルンストは素早く防御体勢に入り、シールドとマントを犠牲にして爆発を乗り切ったが、既にアタッカーは彼方。
追い掛け様にも、サーフボードを失ったガンマンでは、離されるばかり。

「何と未熟な……!」

 エルンストは戒める様に己を貶し、間に合わないと知りながらも、遅い足でアタッカーの後を追った。
0092創る名無しに見る名無し2009/07/20(月) 22:27:53ID:4Ki7p1KW
これで12話だか13話だか終わり。
また長々と失礼しました。
0093創る名無しに見る名無し2009/07/21(火) 17:31:41ID:KLcxN+pG
乙乙
0094創る名無しに見る名無し2009/07/22(水) 23:31:10ID:mZVRE0A9
全長一万9800メートルのMAを考えている
宇宙空間用だけど
名前はジャイガ・ギー
0095創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 21:22:48ID:4undQUEJ
設定だけだけどスパロボっぽいガンダムを書いているけどあり?

概要
元はゼータの続編であるダブルゼータ
レビル将軍とエマさんとフォウが生存している
アクシズ、もといネオジオンの総帥はシャア
そのためエウーゴに参加したのはハマーン
アムロは死亡、そのためシャアとの戦いはジュドーが担当
プルは殺さない(俺がロリコンだから)
0096創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 22:44:11ID:W1Z8reLb
>>94
だいたい20`ぐらいか…目的とか用途とか乗員数次第だなー
これを貼らないといけない気がした
【名前】デビルガンダム
【属性】自己進化、自己再生、自己増殖を備えた金属生命体
【大きさ】日本列島並み、両翼は日本列島よりさらに巨大
【攻撃力】直径500m以上の5、6本の触手を展開し一本で東アジア周辺を一瞬で壊滅させる。
     半日で惑星破壊もできる
【防御力】大規模建築物破壊級のドラゴンガンダム等に近いガンダムが何百体集まっても、歯が立たない
     常にバリアを張っており、Gガン世界最強のビームも防げる
     エネルギー源はコロニーのメイン動力炉であるため、それを破壊されると活動を鈍る
【素早さ】巨大な両翼を展開し、数時間でラグランジュポイントから地球に到達できる
     反応速度は、超音速
【特殊能力】宇宙戦闘可能
     DG細胞(一種のナノマシン)を散布しこれに感染すると、常人は支配下のゾンビ兵となり肉体が強化される。
     コロニーのメイン動力炉、DGレインの精神エネルギーの両方を活動源としており、双方途絶えない限り無限に修復する
【長所】短時間での惑星侵食可能
【短所】内部侵入に弱い
【備考】元々はアルティメットガンダムといわれて、地球自然の再生を目的に開発された。そのなれの果ての姿である。

>>95
カミーユはリタイア?
それともエマとフォウが生きてるから精神崩壊せずにすんでるのかな
0097創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 23:10:05ID:4undQUEJ
>>96
一応セーフ
でもニュータイプ能力を使いすぎたため序盤は昏睡状態になってる
(そうしないとジュドーがゼータに乗る活躍できなさそうだし…)
0098創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 23:30:01ID:W1Z8reLb
アリもナシも、書きたいものを書けばいいじゃない!
あのキャラがどう動くとかIFモノの魅力だからね

とにかく投下あるのみ
がんばれ
0099創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 23:31:03ID:3w/Yxz1o
オリジナルと既存のIFは似て非なるものだと思うんだが
本当にここでいっしょくたに扱うべきかな?
0100創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 23:38:44ID:RWMnLoai
そこまで堅く考えないでいいと思う
0101創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 23:39:27ID:8T057k8y
>>99
宇宙世紀舞台にしてる奴も既存のIFみたいなもんだし
別に構わないんでないの?
0102創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 23:41:21ID:OoHCcdO1
>>99
以下、>>1から抜粋

>・これまでのガンダムシリーズの二次創作でも、
>オリジナルのガンダムを創っても、ガンダムなら何でもござれ

つまりIF展開だってこのスレでおk
0103創る名無しに見る名無し2009/07/23(木) 23:59:48ID:8T0LR47A
 一年戦争の話で、一年戦争末期にザクフリッパーによる
偵察任務で、単独地球降下して目標降下地点から
ずれてヨーロッパ戦域の森の中に落ちて
連邦軍に追跡される。
 んで最後は
*何らかのジオンの有利になる情報を入手して死ぬ、
*終戦を知らずに殺されるとか
*捕虜交換で宇宙に返される
*もしくは、はじめから目標降下地点に降下して
フリッパーは破壊されるが宇宙帰還はする
 そんな話を書くんだと意気込んでいるのですが
きっかけとなる偵察目標について、いい案はないでしょうか
0104創る名無しに見る名無し2009/07/24(金) 00:21:33ID:wDEBlSur
なんかどっかの地上基地から打ち上げられる新兵器とか条約違反のNBC兵器とか・・・
あるいは連邦側のニュータイプ研究所とか
なんかすごいニュータイプに追いかけられてがんばってデータ収集してしぼんぬ
0105MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/24(金) 00:27:46ID:gtsWATXc
>>103
・ティアンム提督、レビル将軍らの宇宙艦隊合流(打ち上げ)場所の特定

・連邦軍決戦兵器(ソーラーシステム)の設計図、または計画書の奪取


ぱっと思いついたのはこの2つ
時期はどちらもオデッサの後、ソロモンの前。
0106創る名無しに見る名無し2009/07/24(金) 00:47:57ID:1SCzQxxR
末期だと地球にMSで単体降下してまで撮るものがなかなか思いつかないなぁ…

MS出すくらいなんだから対象はそれなりに大きいものだったりしなきゃいけないわけだし
・ベタに核弾頭やG3ガス弾、細菌兵器の貯蔵庫の様な場所
・新型ガンダムや新型戦艦(NT-1一機相手にコロニーごと核で燃やそうとしたジオンなら、事前調査としてフリッパー出すくらいするんじゃなかろうか)

くらいしか思い付かない
0107MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/26(日) 18:27:32ID:QxPfz0cy
蒼の残光  10.蒼の残光  その1


一部設定を修正。ブライト配下のフランク・カーペンターを少佐から大尉に変更します
0108MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/26(日) 18:29:39ID:QxPfz0cy
 リトマネン一党に対する哨戒活動を続けさせていたルロワ提督が幹部を招集したのは一
月十七日の事だった。
 ユウがアイゼンベルグ、イノウエと共にブリーフィングルームに入った時、既にブライ
トもスキラッチも中で待機していた。ユウは軽く一礼して席に着いた。
「何か判ったんでしょうか?」
 秘書官として出席を許されたシェルーが小声で訊いてくる。ユウは無言で首を振った。
実際にそれ以外の理由で臨時召集などかかるはずはないが、では何が判ったのか、それは
全く知らされていなかった。
 あるいは知らないのは自分だけかもしれない。ユウは思った。今自分はルロワやホワイ
トから信用されていない。情報漏洩のリスクを軽減するためにユウへのリークを極力遅ら
せる事はするかもしれない。
 予定の時間になり、ホワイトが口を開いた。
「――今日集まっていただいたのは、当然ヤン・リトマネンとアクシズ残党の動向につい
て、新たに判明した事実を伝えるためであります」
 聴衆側にスキラッチがいる事に配慮してか、ホワイトは最低限の敬語で話し始めた。
「信頼すべき筋からの情報として、彼奴等の目指す進軍ポイントが判明しました」
 スクリーンに宙域図が表示された。地球周辺のエリアだった。その中の一点が赤く光っ
てポイントされた。
「地球圏?」
 ブライトが声を出した。その位置は地球に程近く、周辺にはコロニーも軍事的な施設も
存在しない。
「そう、彼奴等はここを目指している。ここは現在の針路の延長線上にあり、その点から
もこの情報は信頼に足ると判断している」
「その信頼できる筋とは、どのような関係なのか?」
 スキラッチの質問は当然のものだった。それに対するホワイトの回答は同じく予想でき
るものだった。
「残念ですが、それを明かす事は出来ません。連邦に対し善意を持つ者、とだけはお答え
しましょう」
「……ふむ。それで、そこで何を始めると?」
「そこまで掴む事はまだ出来ていないようです。しかし、いくつかの標的を類推する事な
ら可能です」
 ユウは既にいくつかの標的について見当をつけ、可能性を検討していた。衛星軌道上に
あるレーザー通信衛星を破壊して情報網を破壊するか。同じく太陽光発電衛星(サテライ
ト・パワープラント)を狙うか。それとも――。
「直接地上の施設を狙う、なんて事もあるんですかね」
 アイゼンベルグが挙手と共に発言した。ルロワやホワイトが答えるより早くブライトが
否定した。
「いや、それは無理なはずだ。以前ティターンズがグリプス2を地球めがけて照射した場
合の被害を算出したが、ほとんど衛星軌道上に近い位置まで近付いても深刻なダメージは
与えられない、という結果が出ていたはずだ。それならばコロニーを直接落としてしまっ
た方がはるかに確実だと言う。そうでしたよね?」
 ユウもその話は聞いた事がある。大気を覆う雲や水蒸気、塵の影響は彼らの想像以上に
大きく、超長距離から宇宙艦隊を壊滅させる巨大レーザーもその熱量の大部分を吸収、拡
散され、地表に到達する破壊力は到底費やされるエネルギーに見合うものではないという。
もちろん、エネルギーを吸収した大気の温度は上昇し、気候や気象に大きな影響を与える
が、ブライトの言う通りコロニーを直接落としてしまう方が遥かに安価かつ効果的である
とされていた。
 ブライトの言葉にルロワも頷いた。
「そう、コロニーレーザーと言えども根本は光学兵器、宇宙から地上へ照射すれば大気に
よる減衰は免れん。しかし――」
 ルロワは一度言葉を切り、一同を見渡した。全員が後に続く言葉をそれぞれに予想して
いるのを見て、再び言葉を継いだ。
「極めて短時間の連射が可能であれば、つまり、一発目のレーザーで大気中の水蒸気を飛
ばし、それが再び戻る前に二発目を正確に同じ場所に撃ち込めれば、地表までその力を運
ぶ事が出来るかもしれん」
 全員が息を呑んだ。ユウやブライトのような歴戦の古強者ですら眉が跳ね上がる事を止
められなかった。
0109MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/26(日) 18:30:49ID:QxPfz0cy
「もちろん大気は一発目で激しい気流を起こし二発目をピンポイントで標的に当てる真似
は不可能だろう。しかしその熱量は確実に大地を焼き山を抉る事だろう。海に落ちれば大
規模な水蒸気爆発と共に津波を引き起こす」
 その場にいる、特に地球出身の者たちの脳裏に共通の光景が浮かんだ。故郷の地、その
上空から巨大な光の柱が落ち、町も、畑も、一瞬にして消失する。後には真っ黒に焦げた
大地だけが残り、人を含めた生物はその痕跡すら残さず蒸発して……。
「そんな事は許さん!」
『韋駄天』フランク・カーペンター大尉が烈しい口調で吐き棄てた。彼のように態度には
出さずとも、この場にいる全員の総意だった。
 スキラッチがこの場をまとめるように口を開く。
「ルロワ提督、事実だとすれば事は一刻を争う。早急に出撃の準備を整える事を進言する」
 ルロワは頷いた。
「スキラッチ中将の言う通り、事は巧遅より拙速を尊ぶ。今より三時間後、全軍を挙げて
出撃、敵艦隊殲滅及び多連装コロニーレーザーの破壊を行う」



 各艦艇には糧食、医薬品、弾薬など必要物資の搬入が急がれていた。ジャクリーンら整
備チームもMSの運搬を忙しく指示している。
 そこにアイゼンベルグとシェルーが近づいてきた。
「お疲れ様です、少尉。これ、どうぞ」
 シェルーがジュースを差し出した。ジャクリーンはそれを受け取る。
「ありがと。ユウは?」
「先に奥さんの様子を見てくると言ってました。その間はアイゼンベルグ大尉が隊長代行
です」
「ルーカスが?」
 ジャクリーンはアイゼンベルグをちらりと見た。
「大丈夫なの?」
「たいした信頼だな、おい」
 アイゼンベルグが笑いながら言った。
「まあ小隊の再編成なんかはもう終わって連絡も済ませてるからな。後は間違える馬鹿の
尻叩くくらいしかやる事はねえ」
「そうでしょうね。それで、サンディは何しにここへ?」
「私は資料運びです。中佐の書類は私しか正確に把握している者がいないので」
「ところでジャッキー、お前さんは今回は同行するのか?」
 ジャクリーンは首を振った。
「今回は留守番よ。機体整備は終わらせてあるしあとは各艦のクルーに任せてあるわ。そ
れより、どう?勝てそうなの」
「わからん」
 アイゼンベルグはあっさりと答えた。
「ただ、勝てなきゃかなりの大事になるわな。コロニー落としと同レベルの災害をエネル
ギー充填さえすれば何度でも引き起こせる史上最悪の兵器の誕生だ」
「本当に可能なんでしょうか。コロニーレーザーを連射して地上を破壊するなんて」
 シェルーの質問には二人とも沈黙した。
「どの程度の被害になるかだな。正直に言うが俺はコロニー落としの被害を直接見たこと
はないんだ」
0110MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk 2009/07/26(日) 18:32:02ID:QxPfz0cy
「私もないわ。月生まれだし、地上勤務の経験もないからね」
 映像としては消失したオーストラリアの一部やその衝撃波の被害を見たものの、そもそ
も地上というものを実感した生活をしていないのでどこか他人事のような感情しか湧かな
い。その意味ではサイド7からの難民を経験し、その後は地球で生活していたシェルーの
方が戦争の悲惨さを体験しているという点で想像力が働くかもしれない。
「まあ、勝つための作戦は提督連中が考えてくれるさ。運がいいことに連邦じゃ一番まと
もな指揮官も来てるんだしな」
「戦争で勝つのも大事ですけど、皆さん生きて帰ってきてくださいね。ご遺族への通達を
するのも辛いんですよ」
 シェルーの言葉にアイゼンベルグは驚いたような顔貌で彼女を見たが、すぐに破顔して
彼女の背中を叩いた。
「なあに任せておけ、きっちり勝ってきっちり帰ってくるさ。伊達に十年こいつで飯食っ
てるわけじゃないって所を見せてやるよ」
 ジャクリーンも何か言いかけたが、声に出さずに止めた。シェルーはそれには気づかず、
時計を見ると暇を告げた。
「もうこんな時間。大尉、そろそろ各隊の巡回に」
「ん、そうか」
「それではこれで失礼します、少尉。お邪魔しました」
「……ええ、それじゃ、頑張ってね、ルーカス」
 シェルーが一礼して立ち去っていく。アイゼンベルグもそれに続いたが、その直前、ジ
ャクリーンの肩に手を置いて言った。
「安心しな、隊長は死なねえよ。死なせやしねえさ」
 ジャクリーンはピクリと肩を震わせ、軽く目を閉じた。
「…………ありがとう」



「これから出撃する。すまんがもうしばらくここで養生していてくれ」
 ユウはマリーに告げた。
 マリーの体調はほとんど回復していたが、また出撃中一人にして倒れられてはと心配で
任務に集中できない。マリーもそれを承知しているから素直に頷いた。
「悪いな、出来ればお前についていてやりたいのだが」
「気にしないで、ユウ。あなたと暮らすと決めた時にもう判っていた事よ」
「すまん」
 マリーは笑った。
「あなたはいつも私に謝ってるわね。悪い事なんてしていないのに」
「そんなに謝ってるかな?」
「そうよ。プロポーズの言葉を覚えてる?『すまないけど一緒に地球に来て欲しい』だっ
たのよ。それにグリプス戦役で半ば勝手に宇宙に上がる時にも私に謝っていたわ。正しい
と信じてるなら謝らなくてもいいのに」
 ユウは苦笑した。
「俺は俺の判断が全面的に正しいと思った事は一度もないよ。今まで誰にも言った事はな
いがな」
「そうなの?」
 意外だった。
「先の事を見通す事など俺には出来ないからな。スペースノイドのお前を空気がきれいな
わけでもない地球に連れて行く事が正しい事なのか判らなかったし、グリプスの時は正義
がティターンズにない事は自信があったが、それでも万が一負ければお前は戦争犯罪人の
妻にされる。俺のせいでお前の人生が狂うかもしれん」
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