コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ37
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0001創る名無しに見る名無し
2009/02/24(火) 23:43:06ID:eaiT05oZ感想等もこちらで。このゲームについて気になる人はギャルゲー板のゲーム本スレにもお越しください。
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0067創る名無しに見る名無し
2009/02/27(金) 23:57:06ID:/MZkS3yE0068創る名無しに見る名無し
2009/02/27(金) 23:57:32ID:iU7ytaGa0069創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:05:58ID:UqxZvbjU0070コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:13:44ID:AU2QOMzk井上の視線の更に先では、扇が何とか立ち上がろうとしながらもその度に失敗し、玉城に至っては完全に失神しているらしくぴくりとも動かない。
そして、ほんの僅か。時間にして一秒程度の間意識を向けなかっただけで銀髪の青年は壁を足場として、井上目がけて駆けてきていた。
迎撃しなければ。咄嗟に井上は腰のホルスターに手を伸ばしかけ、そこで漸く先ほど青年に銃を破壊されていたことを思い出した。
青年が壁を蹴り、宙を舞う。さながら独楽のように回転しながら向かってくるその様を見て、井上の脳裏に「全滅」の二文字が浮かぶ。
思考を手放し呆然と、迫りくる青年を眺めていた井上は、
「伏せて、井上さん―――!」
前触れ無く聞こえたその声に、殆ど脊髄反射で応える。
仰向けに倒れこむようにしてその身を伏せた井上は、視線の先、自らの頭上で敵と交差する紅い髪の少女を見た。
井上から襲撃を受けているという連絡を受けたカレンは、吉田達より先んじて扇達の救援に向かった。
しかし食糧貯蔵庫までやってきた時には既に玉城、扇、小笠原が地に伏し、今まさに井上が襲われているところであった。
「伏せて、井上さん―――!」
ダッシュの勢いをそのままに、カレンは大きく跳躍する。幸い井上には声が届いたようで、カレンは敵の腹目がけて渾身の蹴りを見舞った。
「りゃあぁぁぁ!!」
その蹴りはカウンターの要領で敵の腹に突き刺さったが、カレンは不確かな手ごたえ、まるで強化ゴムを蹴りつけたような感触を感じていた。
その感触の正体は鍛えられた筋肉と言う名の鎧。青年の細身に反して密度の高い筋肉は、カレンの蹴りの威力を半減していた。
だが、全くダメージが無いわけではない。事実、危なげなく着地したカレンに対し敵の青年は辛うじて着地には成功していたものの、膝をつき未だカレンに背を向けたまま立ち上がれずにいる。
青年が容易に立ち上がれぬ状態であるのを確認してから、カレンは周囲を見回した。
気を失った玉城、苦しげに呻く扇、苦悶さえ出来ぬままその身を震わす小笠原、そして一見したところでは外傷は無いものの、床に手をついたまま消耗した様子の井上。
それらを改めて目にしたカレンの瞳が怒りで揺らぐ。頭に血が昇って行くのを実感しながら、カレンは青年に歩み寄ろうとして、
「うっ……」
突然、鈍い痛みが足首に走った。堪らず視線を下ろすカレン。ブーツによって直接見ることは出来なかったが、この時カレンの足首は痛々しく腫れあがっていた。
先程の蹴りの時を痛めたのか。カレンはそう考え、事実それは確かに原因の一端ではあったが、全てでは無かった。
カレンは気付かなかったが蹴りを受けた瞬間、青年は自分の右肘と右膝を使ってカレンの足首を思い切り挟みこみ、ダメージを与えていたのだ。
骨に異常は無さそうなものの、やや歩行に支障をきたすことになりカレンは唇を噛んだが、そこでふと、青年の容姿に目を惹かれた。
背を向けている為顔は見えないが、鮮やかな銀の髪はカレンの友人のそれとよく似ていた。
まさか、と。足首の痛みにより冷静な思考を取り戻したカレンの顔から血の気が引いていく。今自分が対峙しているのは、まさか……。
「動くな」
カレンの思考は、その言葉と共に後頭部に押し付けられた銃口の感触で中断させられた。
声からして女性のようだが、背後に立つ人物には付け入る隙が微塵も感じられない。カレンは心中で舌打ちするが、大人しく従うしかない。
そのカレンの脇をやはり銃を手にした少女が駆け抜け、壁を支えに何とか立ちあがっていた青年の元へ急ぐ。
「大丈夫ですか、ライさん!」
呼ばれた青年の名が自分の予想通りであったことで、様々な感情がカレンの心中に渦巻く。
無事でいてくれたことへの安堵、常人離れしている強さへの不審、そして気付いていなかったとはいえ、傷付けてしまったことへの罪悪感。それら全てが混ざり合った、ぐちゃぐちゃな心中。
少女に支えられながら歩くライに何か言葉をかけようとしたところで、しかしカレンは今の己の立場を思い出し、顔を伏せたまま脇を通り過ぎるライを無言で見送るしかなかった。
「紅月!」
この時になって漸く、南や杉山らが駆けつけてきた。彼等はまず扇達が倒れ伏し、カレンが銃を突き付けられている状態に驚いた。
両手に銃を持ち、それぞれの照準をカレンと小笠原に向けていたリーライナは、油断無く身構えながら杉山達に射抜くような眼光を向ける。
0071創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:13:55ID:qxMsE7+C0072コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:16:29ID:AU2QOMzk「なにをっ」
「動かないで!」
思わず詰め寄りかけた杉山達だったが、もう一人の少女、マリーカが素早く銃を向けたことでその場に釘付けにされる。
睨みあう両者。まるでその場だけ時が止まったかのような静寂の中、場に緊迫した空気が流れる。
「ブリタニアの女性は勇敢なのだな。だが、少々落ち着きが足りないようだ」
不意に、声が響いた。感情を感じさせない冷徹なその声は機械を通すことでいっそ非人間的でさえあった。
静まり返った通路に、コツコツと硬質な靴音を響かせながら姿を現した人物を目にし、リーライナは驚きの声を上げた。
「貴様、ゼロ!!」
「ほぉ、貴女のような可憐な方まで私をご存じとは。私も有名になったものだ」
「クロヴィス殿下の仇を、我ら帝国臣民が知らぬ筈が無い!」
その容姿に似合わぬ荒々しい声を発し銃を向けるマリーカを一瞥し、ゼロは無言のまま鋭利な眼差しを自分に向けるリーライナと真正面から向き合った。
「君達は誤解をしている。君達はどうやら私を日本解放戦線の仲間だと思っているようだが、それは間違いだ」
芝居がかった動きでマントをひらめかすゼロの言葉に、リーライナは端正な眉を寄せる。
「我々は『黒の騎士団』! 力無き者の味方である我らは、君達を助けに来た!!」
自らを誇示するように両手を広げ、ゼロは高々と宣言した。
そのゼロの言葉にリーライナは驚きを隠せない。彼女の目の前に立つ怪人は、クロヴィス前総督を暗殺したテロリストでありながら、
あろうことか騎士を名乗ったのだ。それも、力無き者の味方などという、まるで自分こそが正義だとでも言うような言葉まで添えて。しかも、自分達を助けに来たと言う。
「テロリストが騎士を名乗るか」
「祖国を救うため戦う存在を、ブリタニアでは騎士と言うのではないか? 君達を相手取るにはぴったりの名前だと思うがね」
「戯言を。貴様も日本解放戦線と同じテロリストであるのは変わらない。その貴様が、我々を助けに来たとはどういうことだ?」
「言葉通りの意味だが?」
ゼロは仮面に手を添え、奇妙な形に指を曲げると言葉を続けた。
「確かに日本解放戦線も日本解放の為に戦うという意味では同志と言えるが、今回は少々互いの考えに相違があったものでね。
言っただろう? 我々は力無き者の味方だと。今回のような罪の無い一般人を犠牲にする、無意味な行為は看過出来なかった。
それ故私は人質を解放するよう草壁らを説得したのだが、応じてもらえなかったものでね。仕方なく……天誅を下した」
仮面に添えていた手を一気に握りしめる。力強く握りしめられたその拳は、ゼロの断固たる意思そのものを表しているかのようだった。
「もし貴様の言葉が真実なら、私達が貴様らに助けられねばならぬ道理は無いわ。ここで救助を待てばいい。貴様も一緒にね」
「ふっ、心遣いには感謝するが、我々には救助を待つほどの時間的余裕は無い。後二十分ほどで、このホテルは爆破されるのだからな」
「……どういうこと」
「恐らく逃走の為だろうが、草壁らは爆発物を用意していたのだ。そしてこれはこちらの落ち度だが、先ほど草壁らを始末した時生き残りの部下にタイマーを作動させられてしまってね。
そのリミットまで、もう二十分ほどしかないのだよ。草壁は死んだとは言え、地上ではまだその事実を知らぬ日本解放戦線の者がブリタニア軍と睨みあっている。
そんな状態で、二十分以内に救助が来るとは思えないな。だから私としては、こうして睨みあっている暇があれば、一刻も早くこの場から脱出したいのだよ。君達と共に」
毅然とした態度でゼロと向き合っていたリーライナの瞳にこの時、迷いが生じた。
もし仮に爆発物の話が本当だとしたら、ゼロの言うとおり今の状態は時間の無駄以外の何物でもない。しかし、相手はゼロである。信用など出来よう筈が無い。
0073創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:18:18ID:qxMsE7+C0074コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:18:39ID:AU2QOMzk確かに、爆発物はある。それもこのホテルを倒壊させるのに十分な量が。ただしそれはゼロが設置させたものであり、しかもその爆発物はゼロの持つスイッチによってのみ起爆するのだった。
交渉を有利にする為に伏せているのだということは皆分かっていたが、それでも予想外の事態に見舞われながらも平然と虚言を弄するゼロという人物に、不信感を抱いたのも確かだった。
しかし、そんな黒の騎士団側の事情を知らないリーライナにとっては、判断に迷う問題であるのは変わらない。
そもそも爆発物など存在しないかもしれないし、あったとしても爆発するまでにもっと時間があるかもしれない。だからと言って、
無視していいような話でもない。リーライナ一人の命だけでなく、多くの人質、そしてユーフェミアの命までかかった話なのだから。
「リーライナさん」
惑うリーライナの耳に、この状況でなお落ち着いた声が届く。ゼロに隙を見せぬようにしながら背後を窺うと、
腹を押さえたライが、壁を支えにしながら立ち上がっていた。
「ゼロの話、僕は受けて良いと思う」
「えっ」
「ライさん……?」
突然のことに戸惑う二人。この瞬間、ライに気を取られていたリーライナから銃を奪うことがカレンならば可能であっただろうが、
そのカレン自身がライの言動に虚を突かれていたためそれは適わなかった。一方のゼロは、興味深そうにライを眺めているようだった。
この時ほんの一瞬、ライを見たゼロの体が不自然に硬直したことに気付いた者は、この場にいなかった。
「ほお。君は見たところ、軍人と言うわけではないようだが」
「ああ。ただの学生だからな」
「ふむ。その学生の君が、何故私を信用すると?」
「別に、お前を信用したわけじゃない」
まだ腹が痛むのか、額にうっすらと汗をにじませているライの声はかすれていた。
「ゼロという人物の思考、そして目的を考えて判断しただけだ」
「私の? 興味深いな。聞かせてもらおうか」
「お前はさっき言ったな。草壁を説得しようとしたと。それはつまり、このホテルに忍び込んできたのではなく、真正面から入ってきたということだ。侵入者と面会するトップはいないからな。
それに素人に毛が生えた程度のお前達が見つけられるような侵入経路を、建物の詳しい構造についての情報を得ている筈のブリタニア正規軍が見つけられないというのも考えにくい」
「ふっ、その通りだ。私は正面から堂々と、車でこのホテルまで乗り付けてやったよ」
「その車の種類を当ててやろう」
「面白い。当ててみろ」
「報道関係の車両、恐らく中継車だろう」
ライが発した言葉を聞き、仮面により様子が窺い知れないゼロ以外の黒の騎士団の面々が、バイザーでは隠しきれないほどの驚きを表情に出した。
その反応だけで、ライの言葉が事実であることがリーライナ達にも分かった。
「……何故分かった?」
「お前が一人の犯罪者でありながらこれほどの知名度を誇っているのは、幾つか理由がある。
クロヴィス前総督を暗殺したこと。そしてマンガから抜け出してきたかのようなその姿も勿論そうだし、僕の友人である枢木スザクを助け出したこともある」
ここで、今度は黒の騎士団だけでなくリーライナ達も驚かされていた。
スザクは名誉ブリタニア人とはいえ、所詮は日本人……イレブンである。そのスザクをライは、何の躊躇いも無く友人と呼んだのだから。
当のライは何ら気にした様子も見せず、言葉を続ける。
「お前がテロリストではなくゼロとして有名になったのは、これらのことを大衆の、いや、メディアの前で堂々披露したのが最大の理由だ。
ただ撮られるだけでなくお前は、メディアを上手く使っている。まるで舞台の役者のような、芝居がかった口上、動作。
従来のテロリストがメディアを利用するのは大抵が要求を示す為だが、お前は大衆を舞台の客と見立て、徹底的にゼロという存在を演じてみせた。
これにより、ゼロという存在は強烈に人々の頭に残った。共通したイメージが確立されたわけだ」
ゼロは無言。ただ静かに、ライの先を促すのみ。
「そして今回。自分の組織を作ったお前は、今度はその組織に対するイメージを確立させようとしている。
その為の中継車だろう。そして、お前の言動や行動から考えると、お前が黒の騎士団に対して大衆に抱いてほしいイメージは絞られてくる」
「興味深い。是非聞かせてもらいたいな」
「表現は色々あるだろうが、そうだな。最も分かりやすいのは……」
少しの逡巡の後、ライはやや乱れていた呼吸を整え、言った。
「正義の味方」
0075創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:18:44ID:y9YWKKzX0076コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:20:27ID:AU2QOMzk瞬間、ゼロは大笑した。愉快で堪らないとでもいう風に。肩を大きく揺らしながらゼロは、天井を見上げるようにして暫し笑い続けた。
「ほぼ正解だ、とだけ言っておこうか。君は頭が良い」
ゼロの称賛に、ライは渋面を作ることで応えた。そのライの反応にさえ愉快そうな声を漏らすと、
ゼロはライの隣で戸惑っている様子のリーライナに向き直る。
「聞いていた通りだ。我々黒の騎士団は、正義の味方だ。人質には絶対に危害を加えない。時間のこともある。そろそろ、どうするかご決断願えるかな?」
急かしながらも、どこかからかうような響きの宿るゼロの言葉に、未だ迷いを残すリーライナは返事に詰まった。
「先ぱ……少尉」
気遣うようなマリーカの声。しかしその声には、マリーカの感じている不安が孕まれていた。
「分かりました。貴方を信じましょう、ゼロ」
そしてそれとは別に、凛とした決意を感じさせる声が発せられていた。
「ユ、ユーフェミア様!」
驚き、カレンから銃口がそれていることにも気付かず慌てて振り返ったリーライナの視線の先には、案の定、ユーフェミアの堂々たる立ち姿があった。
制止しようとして適わなかったのか。傍らにはミレイとシャーリーの姿もあり、開け放されたままの扉からはニーナが恐る恐る顔をのぞかせていた。
「何故出てきたのですか! 危険です、お下がりください!」
「話は全部聞いていました。たった今ゼロは、人質に危害を加えないと約束しましたよ」
「だからと言って!」
「ごめんなさい、リーライナ少尉」
尚も言い募ろうとするリーライナに、ユーフェミアは後悔すら滲ませた顔をして、頭を下げた。
「あなたにこんな大事な決断を押し付けそうになって。本来なら、私がやらなければならないことでした。ごめんなさい」
「ユ、ユーフェミア様」
言葉を失ったリーライナに優しく微笑むと、きっ、と真摯な表情を浮かべて、ユーフェミアはゼロと対峙する。
「私はブリタニア帝国第三皇女。ユーフェミア・リ・ブリタニアです。ゼロ、先程の言葉に嘘偽りはありませんか?
もし貴方が本当に人質の方々を無事に逃がすというのなら、私ユーフェミアの名に誓って約束します。此度のことで、貴方を捕えるようなことはさせません」
「……ああ。勿論、人質は助けますよ。ご配慮、感謝します。ユーフェミア殿下」
「分かりました。リーライナ少尉、銃を下げてください。マリーカ候補生もです」
「……Yes,Your Highness」
渋々、といった感じで銃を下げるリーライナ。リーライナが銃を下げたのを見て、どこか納得のいっていないような、それでも安堵した様子でマリーカも銃を下げた。
同時に、吉田達は扇達に手を貸す為に動きだし、ミレイとシャーリーが座り込んでしまっていたライの元に駆け寄って来た。
そうしてライがミレイ達に手当てを受けている様子を、静かにカレンは眺めていた。
「カレン、彼女達が君の友人か?」
いつのまにか傍らに来ていたゼロが、カレンにだけ聞こえるように囁いた。
「あ、はい。そうです」
「そうか。色々と思うところはあるだろうが、君はここに長居すべきではない。髪型を変え、バイザーで顔を隠しているとはいえ、君に気付かないとも限らないからな。
君は井上を連れて先に脱出艇に向い、準備をしておいてくれ」
「……わかりました。お気遣い、ありがとうございます」
人質の中にカレンの友人がいると聞き、万に一つでもカレンの正体が気付かれることがないよう団員達に「紅月」と呼ぶことを徹底させたのはゼロだった。
また、人質を救出するチームから白兵戦最強のカレンを外したのもゼロの配慮によるものだった。
「気にすることはない。君に何かあれば、私も困るからな」
マントを翻してカレンに背を向けたゼロに頭を下げると、カレンは井上の元へ駆けだした。
0077創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:20:37ID:GgLNIVab0078創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:23:04ID:y9YWKKzX0079コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:24:04ID:AU2QOMzk両肩をそれぞれミレイとシャーリーに支えてもらいながら、ライは立ち上がった。
間近で見たシャーリーの顔は、泣きそうになり歪んでいた。ミレイもライに少しでも負担をかけないよう注意を払ってくれているのが分かった。
視線を感じてそちらを見ると、ニーナが黒の騎士団のメンバーが近くを通る度にビクっ、と体を震わせながらも、ライを迎えるようにして立っていた。
(随分心配をかけたみたいだな)
心苦しい気分になったライは少しの逡巡の後、出来るだけおどけた調子を装って口を開いた。
「ミレイさんにシャーリーか。両手に花という奴だね。随分豪華な花だけど、頑張った甲斐があった」
明らかに作った声で突然そんなことを言い出したライに対し、初めはミレイもシャーリーもキョトンとしていたが、
すぐにライの意図を察したミレイがにんまりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あら、ダメよー。シャーリーはルルーシュ一筋なんだから。ミレイさんだけで我慢としときなさい。
その代り頑張ったご褒美に、ミレイさんがたっぷりサービスしてあげるから。うりうり〜♪」
ミレイは支えていたライの左腕を取ると、彼女自慢の豊かな胸の間に挟むようにして抱き込んだ。
左腕を包むふっくらと柔らかい感触にライの顔がみるみる赤くなっていく。途端にあたふたし始めたライにふふん、と小悪魔のように笑いかけるミレイ。
「あれぇ、どうしたのライ? 顔が真っ赤よ?」
「いや、あの」
「もう、何やってるんですか会長! ライをからかわないでください!」
ミレイの反対側でライを支えていたシャーリーが、こちらは羞恥によって顔を赤くしたシャーリーが怒鳴り声をあげた。
助かったよシャーリー、とライがシャーリーに礼を言おうとそちらに目を向けると、不機嫌なシャーリーと目が合った。
「ライもだよ。変なこと言わない」
「す、すまない」
シャーリーに怒られたライは、主人に叱られた子犬のように項垂れた。
「ぷっ、あっはっは」
「どうしたの、ミレイちゃん」
「いやいやぁ、あんなに強いライもシャーリーには勝てないんだなって思ったらね」
いきなり笑いだしたミレイに不思議そうな顔をして近づいてきたニーナに、ミレイはそう答えつつライの頭をくしゃくしゃと撫でた。
ミレイの顔には、この事件が起きてから浮かぶことの無かった穏やかな笑顔が浮かんでいた。
他の人質達と共に歩み去っていくライ達の背を、ゼロは見送った。
(ライ……頭の切れる奴だ。それに井上が連絡してきた"銀髪の男"というのは、あの状況からしてライのことだろう。
とすると、ライは不意をついたとはいえ一人で扇達を倒したということになる。スザク並みとまではいかんかもしれんが、かなりの実力の持ち主であるのは間違いない。
以前からライの事務処理能力には注目していたが……欲しいな)
「ゼロ」
思考を打ち切りゼロは振り向く。声の主であるユーフェミアは、ゼロに対し心根をそのまま示すような真っ直ぐな眼差しを向けていた。
ユーフェミアの傍らには、敵意を隠そうともしないマリーカが付き従っている。
「どうしましたユーフェミア殿下。何か問題でも?」
「貴方にお聞きしたいことがあります。よろしいですか?」
「私に答えられることであるのなら」
「ではお聞きします。我が兄クロヴィスを殺したのは、ゼロ。貴方ですか」
「その通りです。私がクロヴィスを殺しました」
ゼロの答えに、ユーフェミアが表情を曇らせる。しかし平然と答えたゼロに詰め寄りかけたマリーカを制したのも、やはりユーフェミアだった。
「……それは何故?」
「貴女の兄クロヴィスは、反ブリタニア勢力の鎮圧と称しながらゲットーで暮らす罪無き人々を虐殺した。許されることではない」
「テロリスト風情が何をっ!」
「外野は黙っていてもらえるかな。今私は、貴女の主ユーフェミアと話している」
一瞥すらしないゼロにそう断じられたマリーカは、ユーフェミアにまで目線で下がっているよう促されると、悔しげに唇を噛みしめ沈黙した。
ユーフェミアはゼロから目を逸らさず、しかしその顔に僅かな悲哀をにじませていた。
0080創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:25:44ID:qxMsE7+C感想はまた夕方にでも書きまする
0081創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:25:51ID:y9YWKKzX0082コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:26:30ID:AU2QOMzk「その通り……と言いたいところだが、それだけではない。私があの男を殺した最大の理由は」
その時、ユーフェミアは怖気を感じた。目の前に立つゼロから何か、圧倒的な負の感情を感じたからだ。
「あの男が、ブリタニア皇帝の息子だから」
「え……?」
戸惑うユーフェミアを無視してゼロは大仰な仕草でマントを翻す。
「そういえば、貴女もそうでしたね……ユーフェミア・リ・ブリタニア」
マントに隠された手が再び現れた時、その手には既に拳銃が握られていた。その銃口は目の前に立つユーフェミアに向けられている。
「なにを!」
「動くな。お前が動けば、ユーフェミアを撃つ」
肩にかけていた銃を構えかけたマリーカに、鋭い制止の声が飛ぶ。既に引き金を引くだけで良い状態のゼロの言葉に、マリーカは従うしかなかった。
このやり取りに気付いた周囲の人質や黒の騎士団メンバーから戸惑いの声が上がる。喧噪に包まれる周囲を余所に、その中心たるゼロとユーフェミアは静かに見つめあっていた。
「随分と落ち着いておられますね。兄を殺したテロリストに銃を向けられているというのに。怖くはないのですか?」
「もちろん、怖いです。怖いですけど」
自らの中の恐怖心を認めながら、ユーフェミアはなお毅然と言い放った。
「貴方は人質には危害を加えないと約束しました。私は、貴方が約束を守ると信じています」
凛とした、ユーフェミアの声とその眼差し。少しの間それらを無言で受け止めていたゼロは、大げさに肩を竦めた。
そのまま手の中の銃をくるりと反回転させ、銃のグリップをユーフェミアに向ける。
「確かに、私は約束した。そして私は約束を破るつもりはない。今も貴女を撃つつもりはなかった。なかったが……ここまで信用されてしまうのも困りものだな。
ユーフェミア殿下。貴女に忠告しておくが、貴女は甘すぎる。今回は相手が私だったから良かったが、誠意に対し常に相手が誠意で応えてくれるとは思わないことです」
その言葉を真摯に受け止めていたユーフェミアに、ゼロは持っていた銃を押し付けた。
「その銃は貴女が持っていると良い。今回の約束を貴女なら破ることは無いだろうという、私の信頼の証だ。
もし貴女が私を信用出来ないと思ったその時は、その銃で私を撃つと良い」
それだけを告げたゼロはまるで苛立ちを紛らわすように大仰な仕草でマントを翻しながら、踵を返し歩きだし始めた。
「ご忠告感謝します、ゼロ。貴方は優しいのですね」
その言葉を背に受けたゼロは――ルルーシュは歩みを止め、仮面に隠された顔に苦い笑みを浮かべた。
「……だから、貴女は甘いというのですよ」
そして今度こそ、歩みを止めること無く去って行った。
こうして、コンベンションセンターホテル占拠事件はその幕を下ろした。
今回の活躍により、黒の騎士団の名は一躍有名になることとなる。そしてそれは、黒の騎士団を率いるゼロについても同様であった。
また、ゼロが語った彼等黒の騎士団の行動理念は、イレブンを中心とした多くの民衆に広く受け入れられることとなる。
エリア11総督コーネリアは妹ユーフェミアを人質にとられた状態では手が出せず、その様子を歯ぎしりしながら眺めるしかなかった。
そして一方で、その様子を愉快そうに眺める人物もいた。
0083創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:27:05ID:GgLNIVab0084創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:28:04ID:y9YWKKzX0085コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:28:24ID:AU2QOMzkフジヤマプラントの一角にある応接室。備えられているソファやデスクは一目で高級と分かる物が揃っており、ガラス張りの外壁からは富士の山を見下ろすことが出来る。
日本の象徴、富士山。日本人に愛され、その姿の美しさに惚れ込んだ幾人もの画家達に筆を取らせ、数多くの名画を世に生み出させた霊峰。
その富士山は今、サクラダイト採掘のためにブリタニアの手によって蹂躙されている。そしてこの応接室から半ば機械化された富士山を俯瞰する男がいた。
歳の頃は四十代後半といったところだろうか。無精ひげに銜え煙草というだらしない見た目をしているが、その瞳に宿る光が男の本質を表している。
老いてなお鍛えられた男の身を包む濃い緑色をした日本陸軍の制服の襟には、少佐を示す階級章。この男こそが『奇才』の異名で知られる天才。白鳥社であった。
「中々に愉快な幕切れであったな」
背後からかけられた揶揄するような響きを持つ声に、白鳥は振り向く。そこに立つ枯れ木のような体躯に圧倒的な存在感を持つ老人に、白鳥は口元を吊り上げた。
「あの草壁が、桐原公を少しでも愉しませることが出来たんならそりゃ僥倖。血気ばかり盛んな猪にしては上等な最期ってもんですな」
「手厳しいな。草壁の死に何ら思うところは無いのかな?」
「ありませんな。どちらかといえばあなたが何を考え草壁に雷光なんて玩具を与えたのか、そちらの方が気になるんですがね」
飄々とした様子で答えた白鳥に、桐原は人を食ったような笑みを持って応えた。
「ふむ。今回の件で、片瀬めの重い腰が少しでも軽くなればと思っておったのだが」
「これはこれは、耄碌なさったかご老体。片瀬の腰が軽くなるのは撤退戦の時だけさ。そんなこともお忘れか?
ふうむ、だとしたらこれは参った。現在の日本解放戦線はキョウトの期待に応えられるような組織ではないことも、ひょっとしたらお忘れになっているかもしれねぇ」
自らが属する組織を役立たずだと扱き下ろした白鳥の顔には、本心からの呆れが浮かんでいた。そしてその中に潜む僅かな自嘲を、桐原は見過ごさなかった。
白鳥自身も己の心情を桐原に見透かされていると悟っているのだろう。表情を消した白鳥は近くのソファにどっかりとその身を預け煙草を灰皿に押し付けると、視線で桐原にも座るよう促してきた。
「単刀直入に聞かせてもらいますがね。ゼロと黒の騎士団をどう思っておいでで? キョウト六家でなく、ご老体個人がだ」
先ほどまでの飄々とした雰囲気とは全く違う、凄味を感じさせる空気を纏った白鳥。それと相対した桐原はしかし涼しい顔でそれを受け流している。
「そうさな……少々派手すぎまた行動に慎重さ、堅実さが欠けるが、それでもあの行動力は評価に値するな。何より、見ていて痛快だ」
「援助も考えていると?」
「一考する価値はあろうな。ゼロも中々に賢い男のようだし、黒の騎士団には腕の立つKMFパイロットもいるようだしな」
「そうですか。ではうちに回す予定だった例の新型、黒の騎士団にくれてやってください」
この提案は予想外だったのか。桐原の目が僅かに驚きに見開かれた。驚かせることが出来て嬉しかったらしく、白鳥は満足気に笑っていた。
「どういう風の吹きまわしだ? あれほど完成はまだかまだかと責っ付いておった紅蓮弐式を手放すとは」
「責っ付いてたのは俺じゃありませんよ。片瀬の野郎です。まぁ、確かに性能も大したもんだし「初の純日本製」って謳い文句も魅力的ですが、
今の解放戦線にはちっとばかし勿体無い代物だ。片瀬に持たせると、折角の高性能機を無駄に遊ばせることになりかねねぇですからね。
それなら、将来有望な新鋭に持たせてやった方がマシってもんじゃねぇですかね」
「片瀬はどうするのだ」
「放っておきゃいい。腰ぬけのやっこさんのことだ、キョウトの機嫌を損ねて支援を受けられなくなるんじゃねぇかとビビって強いことは言えっこねぇですよ」
片瀬を揶揄するように一頻り嗤うと、白鳥は立ち上がった。
「さてと。そろそろ、自分はお暇させてもらいましょうか。ひよっこどもが自分の帰りを待ってるもんで。
それでは、体には気ぃつけてくださいね桐原公。あんたみたいな狸が今の日本には必要だ。まだ暫くは死んでもらっちゃ困る」
「安心せい。儂が死んでも、神楽耶様がおられるわ」
「あのお嬢ちゃんですか。確かに器のデカイお嬢ちゃんだとは思いますが……今しばらくはあの清純さを保ってもらいたいんですがね」
「いやいや。神楽耶様もあれで中々、油断のならぬお方よ」
「ああ、なるほど。言われてみりゃそうだ」
0086創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:29:46ID:GgLNIVab0087コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:34:57ID:AU2QOMzk大きく一度紫煙を吸いこみ吐き出した後、薄暗い通路をゆっくりとした歩調で歩きはじめた。
(さて。桐原の爺も気にしてたが、片瀬の奴をどうすっかねぇ)
立ち昇る紫煙を何となく目で追いつつ、白鳥は思考を開始した。
日本最大の反ブリタニア組織、日本解放戦線。旧日本軍、中でも日本陸軍の残党を核として構成されている解放戦線は、旧軍の武装を多く引き継いでいる上にその殆どが軍人であったこともあって構成員一人一人が高い能力を持っており、まさに名実共に日本最強の組織と言える。
ところが、これほどの力を持つ組織でありながら解放戦線はこれまでに目立った戦果を挙げていない。理由は様々だが、最大の理由は片瀬少将を筆頭とする上層部の慎重策のためだ。
軍隊とは完全な縦社会である。旧軍の人員で構成されていることで高い能力を持つに至った解放戦線であったが、皮肉にもその旧軍の体質に縛られることで、藤堂や白鳥といった実際に現場に立つ指揮官達と上層部との間で温度差が生まれることになったのだ。
慎重派の片瀬ら上層部に対し、藤堂や白鳥といった現場指揮官らで積極派は構成されていたが、その中でも直接片瀬に意見を具申出来るのは藤堂と白鳥の二名のみ。
そしてその二人の間にも、意見の相違が存在した。片瀬に異論はあるもののそれでもなお組織としての結束を重視する藤堂に対し、白鳥は片瀬を"排除"してでも解放戦線の方針を積極的なものに転換させるべきだと考えていた。
(片瀬の無能もそうだが、藤堂の奴も腹が立つほど頑固だからなぁ。あの石頭め……コーネリアが相手ではこれまでのやり方では座して死を待つも同然だと気付いてやがるくせして。ああ糞、苛々するったらないぜ。時間もねぇってのに)
車両置き場にたどり着いたところで苛立ち紛れに舌打ちすると、白鳥はいつの間にかすっかり短くなっていた煙草を携帯灰皿に放り込んだ。
「白鳥少佐」
「ん、おぉ、千葉じゃねぇか。迎えが来るって話は聞いてねぇが……ああ、藤堂の奴か」
0088創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:36:03ID:GgLNIVab0089コードギアス The reborn world 5話
2009/02/28(土) 00:36:13ID:AU2QOMzk千葉もすぐに操縦席の乗りこむと「発車します」とだけ告げると言葉通りすぐに車を動かした。
「しっかし、お前さんも律儀だねぇ。草壁の騒ぎをどうにかする手助けを俺にさせる為に藤堂が迎えにこさせたんだろうが、
お前さんも知ってるだろう? 草壁のアホ垂れはおっ死(ち)んだ。なら、俺みたいな年寄りなんて待ってるこたねぇのによ」
「中佐に命じられましたから」
「かぁー、真面目だねぇ! まぁ俺としては、千葉みたいな美人に迎えに来てもらうのは嬉しいばかりだから別に構わねぇんだけどよ。あーあ、藤堂の奴が羨ましいったらねぇなぁ。こんな美人に惚れられててよ」
「ば、馬鹿なことを言わないでください! 私は別に」
「照れるな照れるな。ふむ、お前さんがうちに来たのは七年前だから……今幾つだっけか? 二十四? それくらいだったよなぁ。
いやぁ、歳誤魔化してたって知った時は驚いたぜぇ。そこまでして藤堂の傍にいたいってか? 乙女だねぇってどわぁ!?」
千葉がプロもかくやと言わんばかりのドリフト技術を披露したため、後部座席で派手に転がる白鳥。
「な、なんだなんだ!? 狸でも飛び出してきたか?」
「失礼しました。コーナーを見ていたら急にドリフトしたくなったものですから。お怪我はありませんか?」
「ねぇよ! ったく、おっかねぇ女だ。まぁいい。で、結局お前さん今幾つだっけか? 書類上の数字じゃなくて、本当の方な」
「……今年で二十三になります」
ボソリ、ともう一度ドリフトしたそうな顔で千葉は呟いた。
七年前。当時まだ学生だった千葉が暮らす町がブリタニア軍の脅威にさらされた時、厳島から撤退途中であった藤堂達がその窮地を救った。
その時目にした自ら陣頭に立って兵達を励ましながら共に戦い、傷だらけになりながらも千葉達民間人を助け出した藤堂の姿が忘れられなかった千葉は、
思い切ったことに軍に入れてほしいと藤堂に直願した。当初藤堂は千葉の申し出を退けたが、最後には根負けしたというわけだ。
だが流石に藤堂も甘くは無く、女性の身に軍隊生活が如何に過酷かを身をもって知った後で今一度意思確認を行うとして、ど素人だった千葉の教育を自らが尊敬する恩師、つまり白鳥に任せた。
「おぉ、そうそう、そうだったな。いやぁ、書類上では二十九になるんだったか。二十三の娘が随分サバ読んだなおい。どうりでてめぇにゃ色気が足りないわけだよ」
今の二人の関係はそこから始まった。当初は素人の教育、それも女性の教育をおしつけられたと面倒くさそうな様子を隠そうともしなかった白鳥であったが、彼は能力さえあれば人種や性別に拘らない男であり、
そして千葉は白鳥が感心するほど有能で努力することが出来る女性であった。千葉の本気を知った白鳥は他の軍人と同じように扱い、そして千葉もそれを望んだ。
そのようにして白鳥の過酷な訓練を耐え抜き、また自ら研鑽を積み続けた千葉は僅か数年で藤堂直属の「四聖剣」の一人に選ばれるという大躍進を遂げたのだ。
己が四聖剣の一人に選ばれたのは自分一人の力では無く、白鳥という日本軍切っての名将に多くのことを叩き込まれたからであると理解している千葉は、藤堂に匹敵する敬意を白鳥に抱いている。そう。尊敬しているのだが。
(どうしてよりによって少佐に、歳のことを知られてしまったのだろう)
白鳥の下にいた頃に巧言に惑わされ、軍に入る為歳を六つも誤魔化していたことがバレてからというものそれをネタにからかうようになった恩師に辟易し思わず嘆息する千葉。
そんな千葉の心情を理解していながら尚、膝をばんばん叩きながら愉快そうに笑い転げていた白鳥は、千葉が予告無しでまたもやドリフトを披露したことで本当に転がることとなった。
0090創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:36:55ID:GgLNIVab0091創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:39:18ID:y9YWKKzX0092千葉はライの嫁
2009/02/28(土) 00:43:52ID:AU2QOMzk長すぎましたね、二つに分けるべきだったかもしれません。それでも無事投下を終えられたのは、支援してくださった方々のおかげです。
以前からこの河口湖の事件は書きたかったのですが、ユーフェミアやニーナのことを考えて書いてたら大変な難産になりました。それだけに、支援してくださった方々が「支援した甲斐があった」と思えるような出来になっていれば幸いです。
それでは、この辺で。千葉はライの嫁でした。
0093創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 00:48:36ID:y9YWKKzXライかっこい〜強いライはいーなー
リーライナやマリーカに、小笠原まで出てきての豪華なストーリーでした
ライの異能に触れたゼロ=ルルがこの後いかに関わってくるのかに期待です〜
力作が投下されると、自分もやるぞって気になります
負けずにがんばりますので、千葉ライさんも次回をがんばです〜
0094創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 01:47:02ID:GgLNIVab千葉はライの嫁卿、GJでした!
いいね、いいねぇ!
たっぷり出てきたキャラ皆が活きてるってかんじかします!
読みごたえもあるし……ディ・モールト良い!
ここからどう物語が動くか大変楽しみです!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0095創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 06:04:45ID:EuyzYemOいや〜、ライ君の無双ぶりは痛快でした。
欲をいえばライ君はスザクのような派手な立ち回りより、『●ィンランド・サガ』に登場する「ヨームの戦鬼」なオヤジみたく、
無駄なく最小限の動作で最高の結果を出すような戦い方のほうが「らしい」と思うのですがw
色々、勝手なことばかりスミマセン(汗
今回で各方面にフラグを立てまくりましたねw
これで解放戦線以外ならばどのルートに進んでも違和感はないと思います。
偉そうで申し訳ありませんが、それを意識させて読ませる千葉はライの嫁卿の文才には、本当に脱帽です。
何にせよ彼がどの組織に属することになるか、続きが楽しみです!
執筆ガンバってください!!
0096創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 12:58:17ID:fWR+SAu50097創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 14:06:27ID:flb6L2l10098創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 14:41:28ID:y9YWKKzX前スレを埋め立てないことがなんの迷惑になるのか・・・ご説明を賜りたいものですね
さぞ香ばしい・・・もとい、こちらの住人が三跪九叩頭して泣いてお詫びしないとならない
そんな理由を証明してくれることと思いますが
0099創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 14:44:46ID:y9YWKKzXって言い方はちょっと上から目線で偉そうでしたね〜
どういう風に迷惑になるのか
に訂正しましょうか
謝罪と賠償も必要ですか?
必要だと言われてもしませんけどね
0100創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 15:26:59ID:flb6L2l1これでわかりますか?
0101創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 16:24:00ID:qxMsE7+Cちょっくら行ってきます。
>>98
気持は解りますが、もうちょっと普通に訊いたほうがいいのでは…
0102創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 17:12:19ID:iTCK7njw98が辛辣にすぎるのは確かだが、荒らし同様な書き方する97をあえて擁護する気にはならないね
むしろこういうことは単一スレだけに狙って言うより自治スレに発言して全板的に言うことだろうに
喧嘩腰でまず書き込みをしたのはどっちの方なんだ?
俺は98の方は責められないね
もっと言ってやりゃ良かったのにと思う
0103創る名無しに見る名無し
2009/02/28(土) 19:47:18ID:xWTjm6+0ただ前スレ30Kくらいは残ってるので
容量的に行けそうな短編等は前スレ投下も推奨
ただ埋めるには大容量だし
0104POPPO
2009/03/01(日) 00:45:15ID:+ZWAjzRR今から『反逆のルルーシュ。覇道のライ』 TURN00「終わる日常」(後編1)
を投稿したいのですが、
その前に(中編7)の修正版を投稿したのですがよろしいでしょうか?
修正、追加した部分が、管理者トーマスさんにお願いできるレベルではないのでどうしようか
迷っています。
皆さんの意見を聞きたいので書き込みお願いします。
0105POPPO
2009/03/01(日) 00:49:02ID:+ZWAjzRRその前に(中編7)の修正版を投稿した(い)のですがよろしいでしょうか?
の間違いです。
0106保管者トーマス ◆HERMA.XREY
2009/03/01(日) 01:04:39ID:fQPmbK6p多岐に渉るものですか?単なる誤字脱字なら当方でいくらでも修正いたしますが…。
まあ個人的には、POPPO卿のお好きになさっても宜しいかと。
0107保管者トーマス ◆HERMA.XREY
2009/03/01(日) 01:10:37ID:fQPmbK6pお待ちしております。
0108保管者トーマス ◆HERMA.XREY
2009/03/01(日) 01:11:55ID:fQPmbK6p36スレ目が24kBの余裕があるので、出来ればそちらに投下していただければ
0109POPPO
2009/03/01(日) 01:16:50ID:+ZWAjzRR(中編7)が41KB
(後編1)が31kBあるのですが、どうすればいいでしょうか?
0110保管者トーマス ◆HERMA.XREY
2009/03/01(日) 01:21:49ID:fQPmbK6p途中まで前スレに落として埋まったらこっち、というのが理想(当然ちゃんと保管はしますよ)ですが…
ややこしいかも知れませんね。まあPOPPO卿の御意志にお任せするということで。
0111POPPO
2009/03/01(日) 01:32:26ID:+ZWAjzRRではこの37スレに書き込みたいと思います。
保管されている中編7)は今から投稿するものに書き換えてもらってもよろしいでしょうか?
それでは(中編7)修正版いきます!
今から相当な量が来ると思いますので覚悟してください。(苦笑)
0112創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:33:40ID:fQPmbK6p0113POPPO
2009/03/01(日) 01:35:19ID:+ZWAjzRRルルーシュは主治医と看護士たちにギアスをかけた。正体を知られない為とはいえ、仲間にギアスをかけるのは辛いものがある。
緊急手術が行われ、ギアスをかけられた医療スタッフは淡々と治療をこなしていった。患者が仮面を外した『ゼロ』だというのに全く気にする素振りを見せない。
彼らには一団員を治療しているという認識しか無い。僕から見ても少し異様な光景だった。
弾丸は貫通していて、出血がひどかったが、医師によればルルーシュの命に別状は無いということだった。
僕はルルーシュの手を握った。
温かい。
生きているという証。無事だとわかっていても僕は落ち着いてはいられなかった。
目の前で大切な人が傷つくのはもうたくさんだ。
「…ライ」
僕の手を握り返してきた。声を聞いた僕は顔を上げた。ルルーシュは僕の顔を見て、少し驚いていた。
「…泣いているのか?」
「…泣いちゃ、悪いか?」
「フン…そんなことは、言っていない」
僕は両手でルルーシュの手を握る。
男とは思えないほどの白い肌と細い指。これが日本の救世主と言われるゼロの手だ。
でも、彼の手はこんなにも弱くて儚い。
「…ライ」
「ん?何だい?ルルーシュ」
「…俺は、ゼロは、利用されたのか?」
「…ああ、おそらく僕たちに似たギアスの持ち主だ」
「俺は、おれは…」
「今は安静にしてくれ。俺が捕まえる。いや、殺す。だから…」
「ユフィはどうなった?」
その言葉を聞いた途端、僕の体が無意識に動いてしまった。
平静を装うつもりだったのに。ルルーシュに悟られてしまったのだろう。苦笑いで僕を見つめた。
「相変わらず…お前は優しい嘘は下手だな」
「…ごめん」
ルルーシュの手を握る僕の手が震えてきた。ルルーシュは笑っているが、涙を必死に堪えていることは丸分かりだ。
先ほど、連絡員からユフィの状況が伝えられた。言おうとすると声がかすれてしまって、うまく喋れない。
どうして、こんなことに。
どうして、どうして!
「ライ。嘘は言ってほしくない。…ユフィは、どうなった?」
「ゆ、ゆう、ユフィは―――――――――――――――――――――――」
0114創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:35:24ID:dtQvlL/A0115創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:36:12ID:fQPmbK6p0116POPPO
2009/03/01(日) 01:39:33ID:+ZWAjzRR「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」 (中編7)
「死んだ――――――――――――――――――――――――――」
クレイン総合病院。
優秀な医療人を多く輩出する名門貴族、クレイン家が経営する病院の一つであり、トウキョウ租界にある医療施設。
最新鋭の設備に優秀な医療スタッフを集めたVIP専用の施設であり、エリア11に来訪す大貴族や皇族もこの病院を利用している。
貴族らしく豪華に装飾された病院の内部。
その一室で、一人の少年が天井を見上げていた。室外では多くのブリタニア軍人が周囲を警備している。
彼の顔は涙の跡が濃く残っていた。放心状態で視点が定まっていない。
血塗れになった服を着たままで、スザクは呆けていた。
悪い夢だと思った。
ユフィがゼロを撃つなんて。
ユフィが撃たれるなんて。
ユフィが、死ぬなんて。
これは夢だ。そう思いたかった。
でも、僕の手が現実だと言っている。
ユフィの手が冷たい。
僕が握っても、どんどん体温が失われていく。強く握っても、少しも動いてくれない。
それが許せなくて、僕はユフィの体を抱きしめた。
強く。強く。
僕がこうするとユフィはいつも決まってこう言うんだ。
≪痛いよ。スザク。でも、大好き≫
でも、ユフィは目を閉じたまま何も言わない。
何も喋ってくれない。
ユフィの体から薬品の匂いともに彼女の匂いがした。
その匂いを胸一杯に吸った。
ユフィを抱いてる時に感じた匂いを。
体温を。
温もりを。
愛を。
僕は思い出していた。
また、視界が滲む。
あれだけ泣いたのに。
あれだけ叫んだのに。
まだ僕の瞳から涙が零れ落ちた。
「ユフィ…僕は…君が……何であんなことを、したのか…分からないよ」
僕の腕にいっそう力がこもる。自分の涙を拭わず、ユフィを抱きしめた。
ただ悲しかった。
一体、何が起こったんだ?
あの時のユフィはユフィじゃなかった。
ユフィは一度も日本人をイレブンと言ったことは無かった。
公の場でもイレブンという言葉を使うのは極力控えてた。それはユフィがナンバーズという区分を嫌っていたからだ。
僕の手を払って…
あれじゃ、まるで…
その時、スザクの脳裏に一つの記憶が蘇った。
0117創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:40:19ID:fQPmbK6p0118POPPO
2009/03/01(日) 01:40:33ID:+ZWAjzRR(ちょっと待て。たしか、半年前の式典で…)
(あの時は確か、僕は気を失って…気が付いたらライが撃たれていて、ユフィが倒れていた)
(今回はゼロが撃たれて…まさか)
(半年前は失敗して…)
(今回は、成功した?)
スザクは自分が知る由もない、巨大な陰謀の輪郭を見た気がした。
体中の熱が冷め、もう一度ふつふつと『何か』がこみ上げてきた。
自分の身も心も染め上げてしまう『何か』が。
(一体、何が、いや、誰が。この事件には黒幕がいるのか。裏で手を引いている誰かが!)
(ゼロか!?しかし、自分を撃たせるわけが無い。でも、あのゼロが影武者だとしたら…だとしたら!)
「教えてあげようか?」
唐突に後ろから声が聞こえた。
スザクが振り向くと一人の少年がいた。
「…君は」
地面に届くほどの長いブロンドの髪。貴族のような煌びやかな衣装。
整った容姿に全てを見透かすような真紅の瞳。病院には相応しくない格好をしていた。
彼の口元が薄く開く。
「はじめまして。枢木スザク。僕の名前はV.V.(ブイツー)」
「…V.V.?」
そして、彼は語りだした。彼の知る『真実』を。
0119創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:41:31ID:fQPmbK6p0120POPPO
2009/03/01(日) 01:42:28ID:+ZWAjzRR煙と炎が辺りに漂う中、私はアンの前にしゃがみ込んで傷を確認した。
深い。
そして大きい。
白いカーディガンが真っ赤に染まっていた。
それだけでは留まらず、床にアンの血が広がっていく。
両腕が折れていて、腹部の傷が酷過ぎる。純白のワンピースが真っ赤に染まっていた。
私のジャケットを被せたのに、紺のジャケットが黒く染まっていく。
纏まっていた金髪が散乱していて、髪の先が焦げていた。
瞳孔が少し開いていて、両眼の焦点が合っていない。メガネの破片が額に食い込んでいる。
口が震える。
私は思ってしまった。
近頃、医学書を読みあさっていて、断片的に知識があるからこそ、冷静に事態を把握してしまった。
もう、アンが助からないことを。
「い、いたい、い、いい、いたいよぉ…」
「アン…お、おおお、お願い、死なないで!お願いだから!!」
私はメガネを外して、アンにギアスをかけた。
この近距離だと対象者の神経を遮断できる。
だから!
アンが私の顔を見た。両目の焦点が私の顔で合わさった。
「…あれ?い、痛みが」
「アン!動いちゃだめ!今、薬で痛みを止めてるから!!」
「……リリーシャ?何で、カツラなんて、被ってるの?」
「そ、そんなことはどうでもいいから!じっとしてなさい!い、いいこと!救命医が来るまでアンは…」
「あはは。リリーシャ。涙で顔が、グシャグシャだよ…」
「笑わないでよ!!お、お願い!アン!あなたがいないと、私…」
「う、うふふ…。リリィが取り乱すなんて、初めて見た」
「うぐっ!い、いいじゃない!私は、完璧な人間じゃないんだから!た、ただ粋がってる、ただの…」
私の視界は涙で歪む。
アンの顔に、大粒の涙が零れ落ちた。
ハンカチで血と一緒に優しく拭う。
「私、わたし、アンがいないと何もできないの。昔に戻っちゃう。だから、だから…」
「…変なの。リリィが、弱音を吐くなんて…似合わないよ」
「わ、わたしは、つ、つよ、つよくなんか、ないぃ。私は弱虫で、それを隠すために…」
「…うん、知ってる」
声が震えていた。鼻水だって出ているかもしれない。
頭が真っ白で。でも、アンの顔がたくさん出てきて。何で。何で…
「昔…と、友達を、私が、死なせてしまったから、本国から、に、逃げてきただけで…」
「…うん」
「ただ、じ、自分が、天才だって、自惚れてて、ほ、ほかの人を、見下してい、た、だけでっ…」
「…知ってる」
「アンが、はじめてなの、わ、わたし、を、怒って、くれたのは。アンが、き、きき、気づかせてくれたの。わ、私がぁ、わ、あああぁ」
アンがいつの間にか私を抱きしめていた。
痛みが無くて、骨折していることに気づかずに。
『あの時』みたいに、
アンが私を包み込む。
「全部、知ってるよ」
0121創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:42:40ID:fQPmbK6p0122創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:43:00ID:dtQvlL/A0123POPPO
2009/03/01(日) 01:43:44ID:+ZWAjzRR私はもう何も言えなかった。
目も、声も、震えて、上手く動いてくれない。
アンの血の匂いがする。
私は汚れることも厭わず、アンの背中に手をまわした。
ビチャ、といやな音がした。
「リリィ。私ね。今日、パパに、会いに、行ったんだ…」
うん……仲直り、したの?
「ママも、来るはず、だったのに、来な、かったんだよ」
うん…
「パパ。もう一度、や、ヒュッ、こほっ…、やり直したいんだって、私たち3人で…」
うん…うんっ…
「でも、パパ。次も誘うって、絶対、やり直す、って。パパのあんなに真、剣な顔、はじめて見た」
うっ、うん。アンのパパが、ようやく…よ、よかっ…
「わ、わた、ひ、ヒュー、し、パパのこと見、なおした、んだ」
「リ、リィが、アドバイス、してくれたおかげ、だ…よ?」
私はただ、結婚記念日に、何かプレゼントしたほうがいい、っていっただけで…すごいのはアンの…
「わたし、リリィ…に、かん、しゃ、して……」
―――――――――――――――アン?
アンの腕の力が抜けた。
私はハッとしてアンの顔を見つめた。
瞳を閉じたまま、口が開いて動かない。
体中に怖気が走る。
「…アン?……目を開けてよ。目を閉じてないでさぁ」
私の足元にヒビが入るような、そんな感覚が、私の全身に伝わる。血に染まった手でアンの頬を触った。べったりと赤い跡がつく。
「…私、言うこと聞くからさ。じゅ、授業は、真面目に受けて、に、二度と、サボったりしないからさぁ、お願いよぉ」
「あなたと、ま、また、遊園、地に行ったり、ふ、服を買いに、行った、りしたいよ…」
私の左目に赤の紋章が輝いた。
その目でアンを捉えた。
私のギアスは対象者に意識が無くとも、対象者が生きていれば体を動かすことができる。
そう、生きてさえいれば。体を操ることができる。
しかし、アンの体は動かなかった。
いくら強く念じても、強く『命令』しても、
指一つ動かない。
アンの瞳は閉じたまま。
つまり、アンはもう死ん―――――――――
「いやっ、いやあ、いっ、いやああああああああああああああああああああああああ!!!」
0124創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:44:23ID:fQPmbK6p0125POPPO
2009/03/01(日) 01:45:43ID:+ZWAjzRR式典会場から遠く離れた場所に、数十機の月下と一台のKMF運搬用のトレーラーが止まっていた。その周囲には黒のジャケットを着て、武装している人間が多数いる。
副司令が率いる壱番隊の部隊だ。
杉山賢人は壱番隊の副隊長。
月下の腕に寄りかかりながら、無線機で連絡を取っていた。
『ユーフェミアぁ。よくもゼロを撃ちやがって!』
「吉田!落ち着け!藤堂弐番隊長がプランF の指示が出てる。早く所定の場所に行け」
『プランF!?まさか…』
「…ああ。最悪の状況だ。今、参番隊もそっちに向かってる」
通信を切った後、またすぐに連絡があった。
零番隊長からの通信だ。
「カレン。どうした?」
『ねえ、杉山さん。ライは、ライはどうしたの!?まだそっちに来てないって本当!?』
「今、こっちからも連絡を入れてる。プランFはライの指示らしい。あとは…」
『ライに何かあったの!?ねえ!』
「…まだ情報が回ってきてないんだ。会場で何かがあった事は間違いないみたいだが、今は何とも言えない」
『くっ!ごめんなさい。杉山さん。今、朝比奈参番隊長から連絡が入ったから…』
「ああ、分かった。ライと連絡がとれたらすぐ報告するよ」
『ええ!お願い!』
そう言うと通信が切れた。
杉山は無線機を握りしめた。
歯を食いしばると、杉山は思い切り小石を蹴り飛ばした。前方にいた月下に当たり、その月下が振り向いた。
いまだライから連絡が無く、行動が起こせない自分に苛立っていた。
「クソッ!カレンを心配させるなよライ。カレンを泣かせたら、タダじゃおかねえからな」
杉山はもう一度バンダナを締め直して、夕日に染まった空を見上げた。
徐々に大きな暗雲が太陽を覆い始めていた。
同時刻。
「ゼロ様が撃たれた!?」
シズオカにあるキョウト六家の別荘。
巨大な日本庭園があり、かつては文化遺産の一つであった屋敷。
その一室にある大スクリーンに桐原の顔が映し出されていた。
皇家の代表、神楽耶はその報告に身を震わせた。
『命に別状は無いということだが、安心は出来ない。そして、日本に戦が訪れる。7年前と同じようなブリタニアとの戦争が』
「……ゼロ様」
崩れ落ちる神楽耶を二人の従者が支えた。
「「神楽耶様!」」
その姿を見た桐原は目を吊り上げて、大声を上げた。
『神楽耶!気をしかと持て!皇家たる者。弱き姿を民衆に見せるでない!』
「…はい。叔父様」
『神楽耶は今からキョウトへ戻れ。神楽耶の身に何かあれば…』
神楽耶は目もとを袖で拭うと、桐原に視線を送った。
少女に相応しくない、強い決意を秘めた瞳を宿した表情で。
「なりませぬ!私はゼロ様と共に闘いとうございます!私の力をもって、今から全部隊に召集をかけます!わたくしにできることであれば何でも致しますわ」
『…分かった。そちらの好きなようにしろ』
通信が切れると、従者に命令を下す。
その場を立ち去った後、彼女は袖を捲りあげて、屋敷の奥に消えていった。
「ゼロ様。あなたは日本の救世主なのですよ。待っててくださいまし!今度は私がゼロ様を!」
0126創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:47:10ID:dtQvlL/A0127創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:47:10ID:K07SMB6p0128POPPO
2009/03/01(日) 01:47:56ID:+ZWAjzRRアンの命まで踏みにじった。
憎い。
自分が憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
計画が上手くいって喜んでいた自分が憎い!
何が成功した!?何が上手くいった!?誰が喜んだ!?誰が得をした!?
自分が天才!?ギアスで何でも出来る超人!?『ゼロ』を超える策略者!?
はっ!自惚れるのもいい加減にしろ!
私は!私は!私はぁ!!
兄の仇を取る為に!死んだ人間の汚名を晴らすためだけに!私のエゴのために!
大切な親友すら犠牲にした、
―――――――――――――タダノヒトゴロシダ。
私は首元からネックレスを取り外すと、私はアンの手に握らせた。
一年前にアンから貰ったネックレス。
私のお気に入りで、外出する時はよく身につけていた。
「今の私に、これをつける資格は無いわ。アン」
私はアンに微笑む。
これがお別れの挨拶。
膝を返すと、私はアサルトライフルを持って私は立ち上がった。
「ゼロだけは…絶対に殺す。それが、せめてもの…」
目の前には幾重の死体が連なっていた。肉片しか無い死体も多くあった。
この虐殺の元凶。
身も心の血で濡れた女。
それが――――――――――――今の私。
私はギアスを発動させた。
左目がマジックミラーになっているメガネをかける。
私の眼球がどの方角を向こうが必ず私の額を映すように細工されている。
自分自身にギアスをかけることで、人間の動体視力を超えた身体能力を引き出すことができる。リスクとして体にかかる負担は凄まじいが、今はどうでもいい。自分の体がどうなろうと。
残っている一本のマガジンは、ポケットに突っ込んだ。
もう、立ち止まらない。
私は『命令』した。
前進しろと。
地面を勢いよく蹴り飛ばした私は前へ進む。
煙で目が眩むが、前方に人影が見えた。銃を所持していることから軍人だと思われる。
だが、彼らに弁明している暇は無い。
私の行く手を阻む人間は容赦しない!
私は『命令』した。
殺せ、と。
パパパパン!
4発の弾丸は4人の人間の頭を撃ち抜いた。糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。
その死体から2丁のアサルトライフルを奪い去った。
両手に持ったアサルトライフルを前方に構えて、行く手にいる人間を全て撃ち殺して行った。ライフルを持った人間なら男も女も殺した。
中には黒の騎士団の団員もいた。
躊躇いもなく撃った。
体中に穴を開けて死んだ。
私は勢いをつけて、座席からランスロットと呼ばれるKMFの肩に飛び乗って、そこから式場の舞台に降り立った。
0129創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:48:30ID:dtQvlL/A0130創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:48:31ID:fQPmbK6p0131創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:48:48ID:j9UkQaCx0132POPPO
2009/03/01(日) 01:49:41ID:+ZWAjzRR私は彼らに考える暇も与えず、そこにいたブリタニア軍人は全て殺し、数人の黒の騎士団の内、一人だけ残して他は撃ち殺した。
両腕両足を撃たれた男は、目の前で起こった事が把握できずにただ地べたをもがいていた。
その男に近付いて、髪を思い切り掴みあげた。
男の耳に障る悲鳴を無視してメガネを上げる。
左目にある赤の紋章が輝く。
対象者に触れている時は対象者の意思すら私の支配下に入る。
正真正銘の傀儡を化すのだ。
私は『命令』した。
「ゼロの居場所を言え」
「…12時の方向に待機しているトレーラーに、副司令と一緒にいる」
「ゼロの正体は?」
「………」
口が動かない。彼は答えを持っていない。つまり、ゼロの正体を知らない。
私は用が済むと、銃口を彼の額に当てた。
「そう、ありがとう」
バン!
腕に軽い反動がきて、男の顔が無残にはじけ飛んだ。
返り血を浴びたが、拭うことはしなかった。
アサルトライフルを捨てて、また死体から2丁奪った。マガジンも持てるだけ持ってポケットに入れる。
人が集まる前に、私は瓦礫と化した出入り口を飛び越えていった。
歯を食いしばりながら、彼女は必死に感情を殺していた。
冷静な判断力を損なわないように。体を焦がす激情と体を凍らせる絶望感に押し潰されながらも。
大粒の涙が、彼女の瞳から零れ落ちていた。
0133創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:50:45ID:fQPmbK6p0134POPPO
2009/03/01(日) 01:51:33ID:+ZWAjzRR僕はディートハルトに連絡を入れた。
通信機を切った後、ルルーシュの寝顔を見た。
主治医に指示して、ルルーシュには睡眠薬を飲ませて眠っている。
放っておけば傷を無視してでも指揮をとって、命を危機に晒しかねない。
医療スタッフはゼロの素顔に目もくれずに仕事に徹している。
僕は椅子に座りながら思考を始めた。
(…ユフィの言動と行動。明らかにおかしかった。ならば、半年前のようにギアスに操られていた可能性が高い…でも、一体誰が、何のために?)
そして府に落ちないことはそれだけでは無い。
(『新日本党』のリーダー、鬼頭もおかしなことを言っていたな。
『ゼロ』の指示でやった、と。
でもルルーシュからそんな話は聞いていない。
それに『新日本党』と組んでも、黒の騎士団側に何のメリットも無い。ルルーシュは関わっていないことは確かだ)
『ギアス』、『新日本党』、『ゼロ』。
これをキーワードに様々な思考を巡らせていったが、もう一つ、重要な要素が欠けている。
それは動機。
事の発端はそれに繋がる原点が絞り込めないのだ。
今回の事は日本にとってもブリタニアにとっても不利益を被る話でしか無い。
ブリタニアの有力貴族たちの介入が一番疑わしいが、根拠が薄すぎる上に勢力は不特定多数だ。
情報が少なすぎる。
分かっていることはゼロの命を狙っていて、失敗したということだけ。
今はそれが分ればいい。
「だから、ここを守ることが最優先だ」
僕は手元にある銃を見た。扱い方は『識っている』。
今一度、マガジンにある弾を確認した。
そう、もう過去は変えられない。
本当に大変なのはこれからだ。
このままではブリタニアとの衝突は避けられない。しかし、それを避ける手が無いわけでは無い。
僕はそれを見越して早急に手を打った。
ディートハルトに下した命令が無事に完遂すればいいのだが…
(そういえば…)
カレンや壱番隊に連絡を入れてない。ルルーシュの手術中は警備と担当していただけだった。
連絡もディートハルトと藤堂弐番隊長だけだ。
壱番隊には待機命令とKMFが揃うまで動くなという指示を送ったはずだけど、大丈夫かな?
そう思って無線機に電源を入れた時、
パパパパパパン!
外で銃声の音がした。
悲鳴を上げる看護士たち。
僕はそれを手で制して、アサルトライフルを握る。
外に待機させていた団員から連絡が入った。
「どうした!?何が起こった?」
『い、いきなり団員の一人が発砲して、相撃ちに…うっ、グアッ!?』
「おい。応答しろ。藤原。藤原!」
0135創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:51:35ID:dtQvlL/A0136POPPO
2009/03/01(日) 01:53:38ID:+ZWAjzRR突如、大きな音と共にトレーラーが傾き始めた。
それをいち早く察した僕は、銃を肩にかけて、ルルーシュの体を掴んで、反対方向へ跳んだ。
(――――――ッ!!)
背中に激痛が走り、医療器具が飛んでくる。
僕はそれを無視して非常ボタンをガラスと共に叩き壊した。
いきなりトレーラーの天井が展開し、その小さな隙間を掻い潜って転がるようにルルーシュを抱きかかえたまま脱出した。
医療スタッフたちは何が起こったかもわからず、体を揺らされてトレーラーの中に取り残された。
地面に僕は転がった。シーツに包まっていたルルーシュの体が二転、三転してしまう。
泥が顔に付いたが、拭っている場合ではない。
周囲から押し寄せてくるのは炎から来る熱気。僕の背後では黒の騎士団員の死体が転がっていた。
横倒しになったトレーラーから小さな足音が聞こえた。
咄嗟にルルーシュの前に出る。
「誰だっ!!?」
僕は反射的に銃を構えた。
しかし、そこに『敵』はいなかった・
「ど―――――!?」
『敵』は僕の視界の下にいた。
刹那、風を切る音と同時に拳が飛んできた。
咄嗟にアサルトライフルで顔を守った。
バッドで殴られたような衝撃が両腕にかかる。
(ぐっ!)
そして、即座にライフルを蹴り上げられた。隙も与えずに回し蹴りが僕の左腕に炸裂する。
左腕が強烈な攻撃力に悲鳴を上げる。
振り張らわれた左腕の隙から、拳が僕の胸を突き刺した。
重い衝撃が僕の体を揺らした。
(ごっ、が――――!!)
揺らぐ視線の先で、迫りくるアーミーナイフと共に『敵』の顔を見た。
青の長髪が、僕の視界で揺れている。
琥珀色の瞳に整った容姿。
血塗れの服。
僕は目を見開いてしまった。
(お、女の子!?)
僕が驚く暇も無く、彼女のナイフを持った右手が直進してくる。
体を瞬時に仰け反らせたが、鋭利な刃物は僕の頬をかすめた。
僕は彼女の右腕を上に払うと、彼女が態勢を崩す。僕は右足に力を込めて、彼女の腹部を思い切り蹴とばした。
華奢な体は宙を舞い、鈍い音を立てて勢いよくトレーラーの壁に激突する。
激痛が走る胸を手で抑えながら、背中のホルスターに入れていた拳銃を取り出し、彼女に構えた。
(な、なんだ。さっきの威力は…女の子が出せる力じゃない…)
同時に彼女も拳銃を僕に突き出していた。長い前髪に隠れた瞳が僕を捉えた。
距離は5メートルも無い。射程範囲内だ。
後ろにはルルーシュがいる。
しかも、マントもシーツも無く、顔をさらけ出している。
まずい!
『敵』を射殺するためにトリガーを引こうとして、
引けなかった。
なぜなら、目の前にいる『敵』がこんな事を呟いたからだ。
小さな唇が動く。
「え?…ライ、先輩?」
僕の体が硬直した。
0137創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:53:58ID:fQPmbK6p0138POPPO
2009/03/01(日) 01:55:07ID:+ZWAjzRR血で濡れた服を着た青髪の少女は目を見開いて、僕を見ていた。
目の前の光景が信じられないと言っているように。
「き、君は…アッシュフォードの?」
彼女の左目に輝いている紋章を僕はとらえた。
見間違えることの無い、悪魔の紋章。それを彼女は宿していた。
眼鏡の奥で、赤の紋章が輝いている。
(左目は、まさか…ギアス!?)
真っ赤に染まった全身で、僕に銃を向けている彼女。
長い青髪が風に揺れた。
「え?…な、なんで?…へ?」
私の目の前には黒の騎士団のジャケットを羽織った少年。泥で顔が汚れていて、鋭い目つきをしているが、その端正な容姿が陰ることは無い。
燃え盛る炎を背に、私を睨みつける美少年は間違いなく我が校の『銀の王子様』、ライ先輩が其処にいた。
医療用のトレーラーの中にはゼロと副司令がいると言っていた。
私が転倒させたトレーラーから、二人の少年が出てきた。
そして、ライ先輩のうしろにいるのは…
腹部に包帯を巻いた黒髪の美少年。目を閉じて眠っているが、その顔に見覚えがある。
彼もライ先輩と同じく、整った容姿をしている美少年だから。
「る、ルルーシュ先輩?…は?…え、え?」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
…何の冗談?
ル、ルルーシュ先輩の格好って…は?ウソでしょ?
裸体の上半身に紫色の生地に黄色のラインが入った特徴的なズボン。
腹部には負傷したと言わんばかりの包帯。
信じられない。
信じたくない。
私の手が無意識に震えていた。
銃口が定まらない。
ギアスの力で体を制御してるのに。
「貴方が…」
(…この騒乱、まさかこの少女が!!)
「君が…」
ライ先輩とルルーシュ先輩が!!
「何でこんなところにいるんですかああああああああああああああ!!」
「何でこんなところにいるんだああああああああああああああああ!!」
0139創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:55:29ID:j9UkQaCx0140創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:55:35ID:fQPmbK6p0141創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:55:40ID:dtQvlL/A0142POPPO
2009/03/01(日) 01:56:14ID:+ZWAjzRRズゥゥゥウウウウウン!!
突然、轟音と共に視界一杯に黒い物体が広がり、『それ』は炎上していたトレーラーを踏み潰した。
僕と彼女の間を隔てる壁のように立ちはだかった。
小さな銃声がかき消され、周囲に粉塵が舞い上がった。恐る恐る上を見上げると、それがKMFであることが分かる。
『無事か!?』
「C.C.!!」
ゼロ専用のKMF、ガウェイン・ラグネルからオープンチャンネルで彼女の声が聞こえた。
赤いハッチが開き、C.C.の姿が見えた。
「今、ワイヤーを…」
「そんな暇は無い!」
僕はルルーシュを担ぎあげるとガウェイン・ラグネルの右腕を足蹴にして、コクピットに飛び乗った。
ベルトは締めずに、即座に操縦桿を握ってハッチを閉める。
膝にルルーシュの体を置くと、両側から現われたキーボードに打ち込んで生体反応を確認した。
モニターには炎上した機器が周辺に多くあり、温度による生体反応が確認できない。
思わず舌打ちをする。
「…逃げたか」
「?一体どうしたんだ?」
前部座席から僕を見上げながらC.C.が訪ねてきた。
「さっき僕たちの目の前に女の子がいただろ!?彼女はギアスを持っていた!」
「何だと!?」
「!?C.C.も知らないのか…おそらく身体を操るギアスだろう。さっきの異常な身体能力も自分自身にギアスをかけていたなら説明がつく!そして、この事件のっ!…」
ガンッ!と僕は右横のフレームを思い切り叩きつけた。少し拳形に凹んでしまっていた。
その時、コクピット内にアラーム音が鳴った。
モニターを確認する。周囲に5機のサザーランドが接近し、発砲してきた。
ガウェイン・ラグネルの前方に絶対守護領域が展開された。
『ゼロォォォオオ!!自分だけ逃げる気かああああ!!』
銃弾を完全に防ぎきれたとしても衝撃はコクピット内にも伝わってくる。
ルルーシュの体が揺れ、ジャケットに彼の血がこびり付いた。ルルーシュの腹部に巻いてある包帯が血で滲み始めていた。
傷口が開いている恐れがある。
「――ッ!!」
それを見た瞬間、僕の頭は沸騰した。
操縦桿を強く握り、サザーランド全てをロックオンした。そのままボタンを押す。
「お前らは…」
ワイヤーカッターが装備されたスラッシュハーケンが発射され、2機のサザーランドに巻きつく。ナイトメアのアサルトライフルがいとも簡単に切り落とされる。
「邪魔なんだよおおおお!!!」
そのままガウェイン・ラグネルの上半身を回転させた。同時にフロートシステムを展開する。
他のサザーランドに激突しながら、サザーランドの機体が切り裂かれた。周囲の破片と粉塵をまき散らしながら黒い機体は空高く飛び上がる。
一瞬遅れて、5機全てコクピットごとサザーランドが炎上した。パイロットの生死など確認するまでもない。
その光景をモニターで見ること無く、ガウェイン・ラグネルを発進させた。
ルルーシュの傷にタオルを押し当てながら、僕はC.C.に声をかける。
「このままシズオカの本部に向かってくれ。ルルーシュの傷が開きかけてる」
「分かった。…ライ。お前はどうするつもりだ?」
「…ルルーシュを休ませている間、僕がゼロを代行する。そして、あの少女を捕まえる。黒の騎士団総力を挙げ…うっ!?」
僕の頭に激痛が走った。
視界が歪んだ。意識が一瞬飛びそうになった。
「どうした!?ライ!」
しかし、痛みはすぐに引いていった。
僕は頭を振りながら、C.C.に大丈夫だと返事をした。
僕を見つめていたC.C.は言葉を返す。
「…ライ。私も同行する」
「何を言ってるんだ?C.C.はルルーシュの傍にいてくれ。万が一の事態に対処できないだろ?」
「私はルルーシュの共犯者だが、子守をする気はない」
「…冷たいな。君は」
「フッ。恋人からの連絡をほったらかしにしているお前に言われたくないな。不審に思われるぞ?」
0143創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:57:04ID:fQPmbK6p0144創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:57:53ID:p0CBOY1f0145創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 01:58:59ID:j9UkQaCx0146POPPO
2009/03/01(日) 02:01:38ID:+ZWAjzRRQ1
相手はカレンだ。紅蓮可翔式からの通信だった。
僕は言い知れぬ冷や汗をかき始めた。
何でかって?
それはC.C.がニヤついているからさ。
「C.C.…ゼロの仮面は無いか?声でバレる」
「そんなものは無い。繋ぐぞ」
「ちょっと待っ!」
僕の言葉も空しく、チャンネルがつながれた。
眼前のモニターには『SOUND ONLY』の文字だけ表示されている。
『ゼロ!ご無事でしたか!?…報告します。現在、ポイント甲七十八に待機させているトレーラーに副司令が到着していません。
『蒼天』のスタンバイは既に完了していますが、連絡も途絶えたままで…』
「…そのまま『蒼天』をポイント丙二十一まで後退させてくれ。零番隊はポイントB2に移動を開始しろ」
『…ええっ!ライ!?何でガウェインに乗ってるのよ!?』
やっぱりばれた。声をゼロに真似てドスの利いた命令口調で言ったのに。
映像は無いものの、何故か焦ってしまう。
僕は仕方ないので正直にしゃべることにした。
「すまない。カレン。成り行きでこうなった」
『成り行きでって…!!ゼ、ゼロは?ゼロは無事なの!?』
「ああ。今は眠ってるけど命に別状はない。あと、カレン。今から数日程度、僕がゼロの代わりをするから。心配しな…」
『はあああああ!!?』
0147POPPO
2009/03/01(日) 02:02:09ID:+ZWAjzRR…ルルーシュ。よく起きないな。睡眠薬効きすぎじゃないか?
僕の耳にも響くものがあったが、それが逆に心地よかった。
カレンの声を聞いただけで心が癒されるなんて…僕はもう、取り返しがつかないほどカレンに依存しているのかもしれない。
『ちょ、ちょっと何言ってんのよ!?た、確かにライは指揮能力が高いけど、ゼロの代わりなんて…』
「大丈夫だ。カレン。ライの腕なら私が保証する」
『え!?C.C.!?何で貴女が其処に、って、まさか!ライと二人っきりでガウェインに!?』
「…ゼロも乗っている。負傷中だからあまり大声を出さないでくれ。カレン」
『あっ!も、申し訳ありません!』
「だから、ゼロは眠ってるって…」
カレンの声に、僕とC.C.は思わず笑ってしまった。
いつの間にか、さっきまで張り詰めていた緊張感が無くなっていた。
ここでようやく僕は気づいた。
C.C.がカレンと連絡を取ったのは、僕を気遣ってくれてのことだったということを。
『…ねえ、ライ』
「ん?何だい?」
『ライは、大丈夫なの?怪我とか、してない?』
「ああ。心配してくれてありがとう。カレン」
『…良かったぁ』
…カレン。君って人は本当にやさしい女の子だ。
君を好きなってよかったよ。
心がすごく落ち着く。
通信が切れる前に、僕はカレンに言った。
彼女だけにかける、魔法の言葉を。
「カレン」
『えっ?何?』
「愛してるよ」
『〜〜〜!!!』
ブチッと、通信を強引に切る音が聞こえた後、コクピット内に静寂が生まれた。
C.C.が小さく笑うと僕のほうを見上げながら言葉を紡いだ。
「カレンの扱い方が上手くなったな」
「その言い方は酷いな。でも、カレンが考えていることは手に取るように分かるよ」
「…乙女心まで知り尽くす気か。末恐ろしいな。お前は」
「?何がだい?」
「いや、何でも無い。ただの一人言だ」
「そうなんだ。ところでさ。C.C.」
「何だ?」
タイピングを一旦止めて、僕はC.C.に笑顔で感謝の意を述べる。
「ありがとう」
C.C.は少し面食らった顔をした後、彼女は含み笑いを僕に返した。
ちょっとばかり怖い。カレンの笑顔とは大違いだ。C.C.の笑顔は心を不安にさせる。
「フン。『非』童貞坊やが。生意気だぞ?」
0148創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:02:36ID:dtQvlL/A0149POPPO
2009/03/01(日) 02:02:47ID:+ZWAjzRR混沌とした式典会場。そこには幾多の死体が転がっていた。
悲鳴と銃声。
撃墜されたサザーランドの残骸の上に、ガウェイン・ラグネルの後ろ姿を見守る一人の少年がいた。
帽子を脱ぎ去り、黒髪のカツラをはぎ取った。
彼の綺麗な白い長髪が肩にかかる。
その時、彼の表情には深い笑みが刻まれていた。
少年には相応しくない、狂喜に満ちた、目と唇を歪ませた禍々しい笑顔。
その唇が言葉を紡いだ。
「見つけた…」
左右非対称の瞳は黒いナイトメアが見えなくなるまで、その姿を見続けていた。
0150創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:02:52ID:fQPmbK6p0151創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:04:02ID:j9UkQaCx0152創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:04:02ID:fQPmbK6p0153POPPO
2009/03/01(日) 02:04:55ID:+ZWAjzRR支援ありがとうございます!
ですが引き続き支援をお願いします!
それでは(後編1)
行きます!
0154創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:05:40ID:fQPmbK6p0155創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:06:15ID:j9UkQaCx0156創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:08:21ID:dtQvlL/A0157創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:12:08ID:QRLrdJV30158創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:23:33ID:fQPmbK6p0159POPPO
2009/03/01(日) 02:24:24ID:+ZWAjzRR黒の騎士団の本部であり、その建築物は元あったブリタニア軍の基地を大幅に改装したものである。
今やその規模は、トウキョウ租界にあるブリタニア軍本部に匹敵する軍事力を備えている。
配備されているKMFの総数。軍事研究施設を合わせると日本最大の軍事要塞と言っても過言ではない。
世界各地に支部を持つ『黒の騎士団』の総本山として、申し分無い戦力を有している。
その基地の中心にそびえ立つ巨大な建物。周囲には多数のKMFが警備をしており、24時間厳重な警戒態勢が敷かれている。
その建物に比較的高い階層にあるゼロの個室。
個室と呼ぶには大きな空間で、書庫に寝室、シャワールーム、化粧室、コンピュータ室。さらには客人を向かい入れる居間もある。
3人はゼロの書斎にいた。
現在、インド支部で開発されている浮遊航空艦『イカルガ』に設計されているゼロの自室も、この部屋を参考にして建造されているが、ここの面積は3倍ほどあるだろう。
書類に目を通し終わった僕はコーヒーを啜りながら、束の間の休憩を取っていた。
長いソファに座って、机にはいくつかの書類とノートパソコン、そして数ピースのピザが入っている箱が置いてある。
仮面は外しているが、僕は着慣れないゼロの衣装を着ていた。
少々熱苦しいがマントも羽織っている。
C.C.は僕の隣でもくもくとピザを食べていた。先程からピザの匂いが服に着かないか心配している。
ピザの匂いがするゼロなんて、本当に笑えない。
しかし、僕はそれ以上に気になることがあった。
C.C.もピザを食べながら僕と同じ視線の先を見つめていた。
それは運搬用のベッドにいる一人の少年だった。
上半身は裸で腹部には包帯が巻かれていて、左手には点滴が打たれている。
黒髪の美少年、ルルーシュは携帯を耳にかけて会話の真っ最中だった。
二人の会話が僕の耳にも入る。
0160POPPO
2009/03/01(日) 02:25:06ID:+ZWAjzRR「ごめんな。シャーリー。でも心配しないでくれ。命にか…」
『心配するよおおお!!ル、ルルに何かあったら私、わたし…』
「…心配してくれてありがとう。シャーリー。嬉しいよ」
電話からは彼女のすすり泣く声が聞こえてきた。必死に声を抑えていて、それでも抑えきれずに息遣いが途切れ途切れになっていて、それを強調していた。
電話越しでもシャーリーの表情が分かる。それを聞いたルルーシュの顔が少し和らいだ。
「なあ、シャーリー…」
『え?ぐすっ…何?』
「愛してる」
『!!う、うん!私もよ!ルル、愛してる!』
「ありがとう。……あっ、すまない。シャーリー。そろそろ時間だ。…体には気をつけろよ」
『それはこっちのセリフよ!もうっ。…うふふっ。あっ、それと、ナナリーの事は心配しないで。私がずっと傍にいるから』
「!あ、ああ。恩に着る。…これは、デート10回分かな?」
『ううん!ルルが、無事に帰ってきてくれるだけでいいから』
「…っ!……シャーリー」
『じゃあね。ルル。ちゃんと帰ってきてよ?』
「ああ。必ずだ。約束する。…それじゃあ、切るからな。愛してるよ。シャーリー」
ピッ、電話を切る電子音が書斎に響いた。
コーヒーを飲み続ける僕。ピザを淡々と口に運ぶC.C.
会話を済ませるや否や、ルルーシュは僕たちをほうを見た。
ん?どうしたんだい?ルルーシュ。
「そこでニヤニヤするな!ライ!それにC.C.!」
あははっ。
そんな顔で睨んでも全然怖くないなぁ。ルルーシュ。
0161創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:25:18ID:QRLrdJV30162創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:25:39ID:fQPmbK6p0163創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:26:11ID:QRLrdJV30164POPPO
2009/03/01(日) 02:27:35ID:+ZWAjzRR「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」 (後編1)
「ごめんごめん。ルルーシュ。もう何も言わないからスネないでくれよ」
「すねてなどいない!」
なら怒鳴らないでくれ…っていうかその顔、無茶苦茶すねてるじゃないか。
「フン。あんなノロケ話を私たちの前でするほうが悪い」
「それはライのせいだろう!仕事中にいきなり携帯を持ってくるからこんな事にっ!」
「シャーリーが必死に『ルルはどうしたの!?ねえ!』なんて言ってるのに、切れるわけないじゃないか」
「ぐっ!…それはそうだとしても、後でかけさせるとか、他の手立てがあったはずだろ!?」
「シャーリーだって危険を承知で君に連絡を入れてるんだぞ?無碍には出来ないよ」
「し、しかし!」
「見苦しいぞ。ルルーシュ。自分の女の好意を無碍にするとは、男の風上にも置けんな」
眉間に皺を寄せるルルーシュ。君に言いたいことは分かる。
C.C.にその言葉をそのままそっくり返してやりたい気持ちは痛いほどわかるけど、ここは穏便に、ね?
C.C.はそういうルルーシュの反応をからかっているだけぞ?
「ふふ。しかしなぁ。女の殺し文句まで一緒とは…出自は違えど、血は争えんな。お前たちは」
そうかな?でもこれが一番効果的だろ?ストレートでなおかつインパクトのある言葉だ。
これ以上に愛を伝える言葉を僕は知らないよ。
「だが、安心しろルルーシュ。お前はライよりまだマシだ」
「「……どういうことだ?」」
怪訝な表情をした僕に、C.C.は意地の悪い笑顔を返す。まるでイタズラがうまくいったような妖しい顔だ。
なぜだろう?何もしてないのに背筋が寒くなる。
「お前の告白を聞いたのは私とこいつだけだが、ライの告白は黒の騎士団全員に聞かれたぞ?」
「「はあっ!!?」」
僕は思わず声を上げてしまった。ルルーシュの声と一致してしまったが、そんなことはどうでもいい。
え!何で!?
あの時は音声だけの通信だろ!?まさか、僕がゼロの代理をしているって皆知っているんじゃ…
「お前ほどの男が気づかなかったのか?ライ。会話の最後の部分だけ全部隊のチャンネルに繋いだのさ。…確か、カレンの『心配している』あたりからだったかな?」
僕は絶句してしまった。
嘘だ!と思いたかったが、いくつか思い当たる節がある。
C.C.の話を聞いてそのひっかかりが、紐がするすると解けていくように解決できた。
一昨日の重役会議からカレンが僕と目を合わせてくれなかったのだ。
カレンには僕がゼロの代わりをしていることを知っている。なのに二人きりの時でも、話しかけてこなかった。
なんてことだ!そういうことだったのか!!だから食堂でカレンの前にあんな人だかりが出来ていたんだな!?多くの女性団員に囲まれて冷やかされていたのか!恥ずかしくて目を逸らしてたんだな!?
『今日、ライ副司令はお休みですよね?』ってそういう事だったのか!!
ああ、なんたる失態!
C.C.に一瞬でも気を許すんじゃなかった!僕に気を遣うなんて二の次だったんだ!ちくしょう!C.C.の性格をちゃんと理解していたのに!何故気づけなかったんだ!?
ルルーシュが複雑な表情で僕に声をかける。
「……ライ。すねるな」
ルルーシュ!なんだその顔は!僕を憐れむ気か!?
僕はすねてなどいない!ムカついているだけだ!自分に!
「さて、雑談はこのくらいにして本題に入ったらどうだ?時間が詰まっているんじゃないか?」
顔を見合わせる僕たち。
…まさか、C.C.に主導権を握られるとは。
敵わないな。僕とルルーシュでは。この魔女に。数百年生きてきたのはやはり伊達じゃない。
0165創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:27:36ID:fQPmbK6p誤字報告
少々熱苦しい → 少々暑苦しい
0166創る名無しに見る名無し
2009/03/01(日) 02:28:25ID:dtQvlL/A0167POPPO
2009/03/01(日) 02:29:48ID:+ZWAjzRR「…状況はどうなっている?」
「リアルタイムで君のパソコンに送っているはずだが?」
僕は空になったカップをテーブルに置いた。緩んでいた顔を引き締める。ルルーシュも先程とはうって変わって真剣な表情だ。
「そういう意味ではない。ブリタニアとの衝突は避けられないのか?」
「これを見てくれ」
僕はリモコンでモニターを展開させて、今まで放送されたブリタニアの報道が流れる。
式典以外のニュースを排して、ルルーシュに見せた。
彼の表情が一層険しくなった。握り拳がベッドにあるテーブルに叩きつけられた。
ドンッ!
「馬鹿かっ!!ブリタニアはっ!」
「…最初、僕も言葉が出なかったよ」
それは歪曲された報道だった。軍の息がかかった情報局が、軍に都合のいい情報に作り替えられるのはブリタニアでは日常的なことであって、騒ぐほどのことではない。
しかし、今回はあまりにも常軌を逸していた。
ユーフェミアが『ゼロ』が撃ったことは数万人という日本人とブリタニア人が目撃している。その上、TV局がその瞬間を捉えていた。今や日本中が知る事実だ。
だが、ブリタニアの情報局ではユーフェミアの発砲は無かったと報道し、それどころかゼロが今回の事件の黒幕であると、『新日本党』の鬼頭の発言が大きく取り上げられていた。
これでは日本人に怒りを、ブリタニア人には不信感を買ってしまう。
皇族と軍の情報局の癒着、それを顕著に表わすものでしか無かった。
犠牲者は『新日本党』の爆弾と、KMFの交戦によって五〇〇〇人に上っていた。
「ディートハルトに情報操作をしてもらっていたんだが…」
「ウイルスが仕組まれていたんだろ?確かEUで開発されていたという…」
「それで黒の騎士団のネットワークは一時的に潰されてしまった。完全な状態に戻るまでは時間がかかると言っていた。その間にこんな報道が行われてしまったんだ。これは『新日本党』の…」
「『新日本党』…!口にしただけでも虫唾が走る!」
ルルーシュが苦虫を潰したような顔をした。
「…事件以来、スザクと連絡が取れないんだ。学園にも来てないらしい。…ユフィが、あんなことになって…もう行政特区日本は」
「ライ…それ以上は、言うな」
「…ああ、すまない」
沈黙する僕とルルーシュ。静寂が広い書斎を支配した。C.C.がピザを食べる音だけが聞こえる。
互いに次に繋げる言葉が見つからなかった。
その静寂の中、ジュースを喉に流し込んだC.C.が無表情で言葉を発した。
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