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コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ37

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001創る名無しに見る名無し2009/02/24(火) 23:43:06ID:eaiT05oZ
ここはPS2/PSPソフト「コードギアス反逆のルルーシュ LOST COLORS」SS投稿スレです。
感想等もこちらで。このゲームについて気になる人はギャルゲー板のゲーム本スレにもお越しください。
基本sage進行で。煽り・荒し・sageなし等はスルーするか専ブラでNG登録して下さい。
(投稿前に読んでください >>2-)

■SS保管庫 http://www1.ocn.ne.jp/~herma/CodeGeass_LostColors/2ch/0.html

■前スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1233659495/ 
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■関連スレ
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 21 (本スレ)
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gal/1225489272/
コードギアス ロスカラのライ 強くて優しい真の7(ナ)イト(主人公スレ)
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamechara/1233048852/
【PSP】コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1207641630/
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 攻略スレ4
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gameover/1209720651/

■公式サイト http://www.geass-game.jp/ps/
■アニメ公式サイト http://www.geass.jp/
■攻略wiki http://www9.atwiki.jp/codegeasslc/
0436創る名無しに見る名無し2009/03/10(火) 21:39:25ID:oAxH7bt+
>>435
乙です。最初違和感あったがパラレルとして割り切るとむしろ新鮮な感じだ。
続き楽しみに待ってます。
0437創る名無しに見る名無し2009/03/10(火) 21:46:39ID:7KylQZoY
>>436
GJでした!
注意点www >寄生されちゃった 吹いたw
まさかのアーニャ武器化w
そしてゼロktkr
次回予告の微妙な投げやり感もまたいいかんじ。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0438創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 08:18:55ID:TmZWW03p
未定…?生殺しもいいところだ…面白いだけに
0439創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 19:44:55ID:y8KlM9Gm
このスレあと容量どれくらいなんだろ
0440創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 19:49:10ID:LQhUgji2
現在389kBですね
0441創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 20:33:49ID:4xQWja0d
代理投下予告。
本日20時50分から、投下いたします。
支援等よろしくお願いいたします。
0442代理投下2009/03/11(水) 20:49:29ID:4xQWja0d
そろそろ時間なので投下します。 
ここから下は、ライカレ厨さんの書かれた文章です。

             ↓

お久しぶりです。随分と投下間隔が開いてしまいましたが、前作の続きを投下します。

【メインタイトル】コードギアス 反逆のルルーシュ L2  

【サブタイトル】〜 TURN02 逆襲の処刑台(前編)〜

【  CP  】無し、敢えて言うならライ←カレン

【 ジャンル 】 シリアスだと思います。

【 警告 】●根幹は黒騎士ルートを準拠してのR2本編介入ものですが、オリジナル設定と話も多々あります。
      ●王様ライの性格は自分の考えに依存してます。苦手な方はご注意下さい。
      ●オリキャラ及びオリジナルの名称が出ます。同じく苦手な方はご注意下さい。
      

それでは、投下行きます。
0443代理投下2009/03/11(水) 20:51:37ID:4xQWja0d
シャルルとライ、二人の声が黄昏の間に響く。
 二人は互いに顔を会わせる事無く言葉を交わしていた。ただ遥か雲海の先より差し込む夕日をその身に受けながら。
 「そうか、ゼロが……」
 シャルルが独り言のように言葉を零すと、ライは軽く相槌を打った。
 「ああ」
 「御主はどう見る?」
 「まだ何とも言えない。状況証拠はルルーシュを否定しているからな。だが……」
 「申してみよ」
 珍しく言葉に詰まるライを尻目に、シャルルが僅かに笑みを含んだ声色で告げると、ライは自身の想いを告げた。
 「ルルーシュは目覚めた。いや、これは違うな。私は望んでいるのだ。そうであって欲しいと」
 ライはルルーシュが目覚める事を、ゼロの復活を心の片隅で望んでいた。
 それは、C.C.を捕らえるにあたり最大の障害に成りうる。本来であれば絶対に避けるべき事項である。
 しかし、ライは報告書で知ったゼロのカリスマ性。それに惹かれていた。
 端的に言えば、戦ってみたかったのだ。
 一方でそれを聞いたシャルルはただ一言、そうか、と告げるのみ。
 暫しの間、沈黙が辺りを支配する。
 やがて、ライは今後の方針を告げた。
 「騎士団の残党の件だが、今は領事館に逃げ込んでいる。なに、直接占拠してしまえば――」
 「中華連邦との対立は、現時点では避けよ」
 予想だにしていなかったシャルルの言葉にライは僅かに瞳を見開いた。が、そんなライを余所にシャルルは更に続ける。
 「あの国とは、シュナイゼルが話を進めておるのでな」
 「シュナイゼルか、鼠の親玉だったな」
 シャルルが告げた一人の男の名。その名を聞いたライの瞳に鋭さが増した。
 この一年の間、シュナイゼルは再三に渡り機情に密偵を送り込んでいた。
 正確にはシュナイゼルの命を受けたカノンが送ったのだが、王の力の前ではどれ程優れた密偵であろうとも無力だった。
 「煩わしい連中だった。ギアスを使えば駆除は容易かったが……そういえば最近は無くなったな。咎めたのか?」
 「何も言ってはおらぬ。何れにせよ、再び挑んで来た時は好きにさせよ」
 表向きは宰相という皇帝の右腕たりえる地位を以て、その辣腕振りを発揮しつつも裏では密かに暗躍する。
 シュナイゼルのその姿に、嘗ての王宮に蔓延っていた唾棄すべき存在を思い出したライは心底不愉快そうな顔になる。
 「ブリタニアらしいな。いや、貴族らしいと言うべきか?私の居た頃と何も変わらない」
 だが、それも一瞬の事。直に普段の冷めた表情に戻したライは話題を変える。さっさと忘れたかったからだ。
 「ゼロはどうする?」
 「未だ真偽が定かでないのであれば、今はC.C.捜索を優先せよ」
 「無茶を言ってくれるな。相変わらず何処に居るか分からないのだが?」
 不快感を滲ませながら問い掛けるライに対して、シャルルは助言を与えた。
 「C.C.は必ずゼロの近くに居る」
 だが、それを聞いたライは今度こそ不快感を露わにする。
 「そう仮定するなら確率が一番高いのは領事館になるが、お前は対立は避けろという。無理難題を押し付けるな」
 「出来ぬと申すか?」
 シャルルの口元が弧を描く。その挑発ともいえる笑みを横目に捉えたライだったが、直ぐに視線を戻すと暫しの間押し黙った。が、やがて独り言のように呟いた。
 「C.C.はゼロの傍に居る、か。では、ゼロを引き摺り出す方法は任せてもらおうか」
 笑いを含んだ口調で呟くライ。それに気付いたシャルルが問い掛ける。
 「何を考えておる?」
 「簡単な事だ。餌を使う。だが、お前はどうせ私が指揮を取る事は許さないのだろう?そうなると実際に指揮を取る者次第だが、奪われる可能性がある」
 「C.C.が何処に居るか。今はそれだけでも分かれば良い」
 「では、いいのだな?」
 最後にライが釘を刺すと、簡潔な答えが返って来た。
 「好きにせよ」
 「ああ、そうさせてもらおう」
 ライが満足げな笑みを浮かべてその場を後にしようと踵を返した時、不意にシャルルが呼び止めた。
 「これを渡しておく」
 そう言ってシャルルは外套の下に隠していた二対の剣を取り出した。一方は刀。そしてもう一方は剣。
0444代理投下2009/03/11(水) 20:54:11ID:4xQWja0d
 「お前が持っていたのか」 
 ライは些か驚いた様子で答えながらも受け取ると手元に視線を落とす。
 刀は白鞘に収まっており鍔には見事なまでの装飾が施されている。
 だが、もう一方の剣に至っては一切の装飾も施されてはいない。
 対照的なそれらを暫しの間無言で見続けたライは、やがて慣れた手つきで刀を鞘より抜き出した。
 夕日に照らされて目映く輝くその刀身には美しい刃文が浮かび、そこには一切の錆も見受けられない。
 それを認めたシャルルは思わず感嘆した。
 「見事なものよ」
 その言葉にライはまんざらでも無いといった様子で答える。
 「ああ、母が私に与えてくれたのだ。何でも、母の国で作られた剣…刀と言うらしい」
 「形見、か……」
 そんなシャルルの問い掛けとも取れる呟きに、ライは僅かに眉を顰めた。
 しかし、それも一瞬の事。
 直ぐに表情を変えると、ライは暫しの間感慨深げにその刀身を眺めていた。
 そこには普段の鋭さを秘めた瞳は無かった。嬉しそうでもあり、しかし何処か悲しみを湛えた横顔。それは、年相応とも言える一人の青年の姿だった。
 やがてライは刀を鞘へと収め腰に据えると、次に剣を抜き出した。
 その剣の刀身は血のように紅く、また先程の刀と同じく一切の錆も見受けられなかった。
 が、造形美は明らかに刀より劣るものだった。
 「何の意匠も感じられぬな」
 そう言って笑うシャルルを余所に、ライは特に気分を害した様子無く淡々とした口調で答える。
 「剣は所詮人殺しの道具に過ぎない。装飾など無意味だ」
 「ほぅ、では先程の刀はどう説明する?」
 その問い掛けに、ライは臆面も無く言い放った。
 「これは刀では無く宝だ。そもそも、母より頂いた物を敵の血で汚せというのか?」
 「では、その剣は?」
 「ああ、これか。これは……V.V.からだ」
 「V.V.……」
 その言葉を聞いたシャルルの瞳が光る。
 「ある日突然現れて、王位に就いた祝いだと言ってこの剣を寄越した。しかし、見た目とは裏腹に切れ味だけは見事なものだぞ?他国を攻める際には大層世話になった」
 「そうか、それをV.V.が……」
 シャルルが何やら考え込む素振りを見せると、ライは悪戯っぽく笑いながら告げた。
 「何なら試してみるか?」
 「いや、遠慮しておこう」
 一切動じる事の無いシャルル。
 それを見てライはつまらなそうな表情を浮かべた。
 「件の件だが、取り急ぎ行動を起こすがよい」
 「ああ、そうさせてもらう」
 ライは剣を鞘に仕舞い込むと再び踵を返す。
 「これは有り難く貰って行く」
 最後に振り返る事なくそう告げると、今度こそその場を後にした。
 ライが立ち去るのを確認すると、一人残ったシャルルは独り言のように呟いた。
 「聞いていましたか?兄さん。……ええ、その様に……」
 短く言い終わると、シャルルは暫しの間思慮に耽るかの様に瞳を閉じた。
 「フフフッ」
 やがて、我慢出来なくなったのか愉悦を含んだ笑いが口元から溢れると、シャルルはゆっくりと双眸を開く。
 そして、誰に聞かせるでもなく呟いた。
 「間違いない。あれこそが真のエクスカリバー」
 聖剣エクスカリバー。
 それはあらゆるモノを打ち砕く剣。

 ――神を殺し、世界の嘘を破壊する――

 そのシャルルの望みを叶える上で、必要なモノ。ライと同じく無くてはならない鍵の一つ。
 「神よ!待っているがいいっ!」
 シャルルは心底嬉しそうな、それでいて残酷な笑みを浮かべると両手を広げ天に向かって高らかに吼えた。
0445代理投下2009/03/11(水) 20:55:41ID:4xQWja0d
―――――――――――――――――

 コードギアス 反逆のルルーシュ L2  
 〜 TURN02 逆襲の処刑台(前編)〜

―――――――――――――――――
 エリア11、その中心地でもあるトウキョウ租界。 
 その政庁は突然のゼロ復活という事態に、蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。
 「中華連邦は何と言ってる!?」
 「何も。領事の独断の可能性も……」
 「初めから話しがついていたと言うのか?」
 「クソッ!情報が少な過ぎるっ!」
 指揮所では兵士達が慌ただしく動き回っている。
 その場所で眼鏡を掛けたオールバックの長髪の男、コーネリアの騎士、ギルバート・G・P・ギルフォードはモニターに映る領事館を眺めながら呟いた。
 「ゼロが甦ったとは……」 
 その呟きを聞いたグラストンナイツの一人、クラウディオ・S・ダールトンは他の兄弟を代表するかのように問い掛ける。
 「ギルフォード卿、あれは本当にゼロですか?ゼロを語っているだけでは?」
 「いや、あの手際の良さは間違いなくゼロだ。私には分かる」
 ギルフォードが断定するかのように言い切ると、背後に控えていた他のグラストンナイツの面々は思い思いの言葉を口にする。
 「だとしても……」
 「ああ、厄介な場所に逃げ込まれた」
 「袋の鼠だ。父上の仇を――」
 「馬鹿、どうやって誘き出すつもりだ?」
 そう、ゼロが逃げ込んだ先は中華連邦総領事館。
 そこは中華連邦の領地と同位なのだ。仮に武力を以て制圧しようものなら外交問題は必死。
 EUは弱体化したとはいえ、未だブリタニアと戦火を交えている。ここで現場の独断で下手に中華連邦を刺激する事は避けねばならなかった。
 「頭が痛いな」
 思わず眉間に皺を寄せるギルフォード。
 彼自身、ゼロを領事館から誘き出す手立てが全く思い付けないでいた。
 それは即ち、主であるコーネリアの仇が討てないという事。ギルフォードは何も出来ない自分に歯痒さを覚えていた。
 その頃、彼等の直ぐ近くで慌ただしく作業をしていた兵士の一人が、見慣れないチャンネルからの通信を拾った。
 気になった兵士は、報告する前にそれとなく発信元をトレースしてみる。が、不明だった。
 気になりもう一度試すと、それは隣の端末から発信されていた。
 不思議に思った兵士が次に試すと今度は帝都から。
 発信元が目まぐるしく変わりどこが正しいのか皆目検討がつかない。
 「何だ、これ」
 その時、同僚の戸惑いに気付いたのか隣に座っていた兵士が問い掛ける。
 「どうしたんだ?」
 「いや、見たこと無い周波数から通信が入ってるんだが……」
 「どれどれ?……何だ、帝都からじゃないか」
 「いや、さっきはお前の端末からだったんだが……」
 すると、兵士達の話し声に気付いたギルフォードが咎める。
 「どうした?私語は慎め!」
 「も、申し訳ありません!ですが、ギルフォード卿。見慣れない通信が入っております」
 「見慣れない通信?出してみろ」
 ギルフォードが怪訝な表情のまま命じると、暫しの間を置いて彼等の眼前にその者は現れた。
 「「「なっ!!」」」
 巨大なモニターに映るその姿を見た彼等は、驚きのあまり言葉を失った。
 先程の喧騒さも何処へやら。指揮所が静寂に包まれた時、モニターに映る者が口を開いた。
 「オ初ニオ目ニ掛カル、ギルバート・G・P・ギルフォード」
 「何だ……お前は……」
 それは無知の成せる技と言えた。だが、その者はギルフォードを咎める事無く答える。
 「私カ?私ハ"カリグラ"」
 その名はその場に居た全員に聞き覚えがあった。
0446代理投下2009/03/11(水) 20:58:39ID:4xQWja0d
 ――機密情報局長官カリグラ、それはライのもう一つの顔――

 しかし、その姿はつい先程甦ったゼロを前にしては不謹慎以外の何物でもない。
 ギルフォードが思わず怒りを孕んだ口調で問う。
 「機情の長が、一体何の用ですか?」
 「"ゼロ"ガ現レテ喜ンデイルカト思エバ怒ッテイルノカ」
 それに気付いたカリグラはそう言って笑いを溢した。
 だが、それはギルフォードにとってはまるでゼロに笑われているような錯覚を覚えさせた。
 「貴卿のその姿が不愉快なのです」
 「噂ニ違ワヌ正直者ダナ」
 「一体何の用でしょうか?」
 「ソウ突ッ掛カルナ。コノ姿ハ陛下ノ命ダ」
 予想だにしていなかったカリグラの答えに、ギルフォードは思わず眉を顰める。
 同時に彼の後ろに控えるグラストンナイツは訝しむような眼差しでカリグラを見やる。
 が、カリグラの仮面の下、ライはそんな彼等の様子を特に気にした様子も無い。
 「ソレヨリモ"ゼロ"ニ対シテ大層思慮シテイル様ダナ?」
 「お心遣い感謝します。ですが、これは我々の問題です」
 「ソレハ違ウナ。帝国ノ問題ダ。ソコデ一ツ、提案ガアルノダガ?」
 「提案、とは?」
 「"ゼロ"ヲ、アソコカラ引キ摺リ出シタクハ無イカ?」
 「方法があると?」
 ギルフォードの問い掛けにカリグラは無言で返すと、それを肯定と受け取ったギルフォードは更に問う。
 「お聞かせ願えますか?」
 「特収ニ居ル囚人共ヲ殺セ」
 特収。それは、特別収容施設の事だ。そして、そこに居る囚人達と言えば――。
 「今、なんと?」
 ギルフォードは聞き間違いかと思い反芻した。だが、聞き間違いなどではなかった。
 「公衆ノ面前デ、アノ者達ヲ処刑シロ」
 カリグラから返って来た言葉は、明確な使い道だった。
 俄にざわめき出す指揮所内。 
 しかし、ギルフォードは一人冷静さを失わないでいた。
 「ゼロが見捨てる可能性は?」
 「無イナ。"ゼロ"デ無クトモ、指揮官デアレバアノ者達ハ喉カラ手ガ出ル程欲シガル」
 「しかし、処刑とは……」
 ギルフォードは思わず口籠もる。しかし、カリグラはお構いなしといった様子で語り続ける。
 「何レニシテモ"ゼロ"ガ復活シタ今、アノ者達ノ利用価値ハソノ程度ダ。仮ニ現レナケレバ処分スレバイイ。ダガ……」
 そこでカリグラは敢えてひと呼吸置いた。続きが気になった者達は固唾を呑んで待つ。
 指揮所内が再び静寂に包まれる。
 それをモニター越しに認めたライは、カリグラの仮面の下で嘲笑いながらも一人の男に狙いを定めると、囁くように告げた。
 「"ゼロ"ガ出テクレバ決着ヲ着ケラレルゾ?主ノ汚名ヲ濯グ又ト無イ機会デハ?」
 それはギルフォードにとっては甘い誘惑だった。
 ブラックリベリオンにおいて、コーネリアは黒の騎士団を退けた。
 その事に対して、当初、本国の貴族達はコーネリアを手放しで賞賛していた。
 が、彼女はゼロによって手痛い手傷を負った。
 そして、その傷が癒えると同時に雲隠れするや否や、貴族達は掌を返して陰口を叩くようになっていた。
 曰く、戦う事が恐ろしくなった臆病者だ、と。
 彼女の性格を誰よりも知っているギルフォードがそれを聞いて我慢出来る筈も無い。
 しかし、コーネリアが行方を眩ませている事は紛れもない事実である。
 そして、ここに来てのゼロ復活。情報は瞬く間に世界中に広がった。
 今頃本国では一体どんな噂が流れているのか。ギルフォードにとっては想像する事さえも腹立たしい事。
 最も好ましいのは、コーネリア自身が今度こそゼロを討つという事だが、前述の通りそれは叶わない。しかし……。
0447代理投下2009/03/11(水) 21:00:20ID:4xQWja0d

 ――騎士はその者の鏡――

 正に、ゼロを討つのは己しかいないのだ。しかし、ギルフォードは決断出来ないでいた。
 一方、ギルフォードの傍で事の成り行きを見守っていたグラストンナイツは違っていた。
 彼等にとっては、父と慕ったダールトンの仇を打てる又と無い機会なのだ。
 まだ若く、血気盛んな彼等にとってこれ以上の言葉は要らなかった。
 しかし、愚直なまでに騎士道に殉ずるギルフォードはあくまでも撥ね除けようとする。
 「それは無理です。陛下は今まであの者達の処刑をお認めにならなかった」
 そう言って撥ね除けようとしたのだが、続けざまに紡がれた言葉は更に甘美なものだった。
 「モウ許可ハ得テイル。ダカラコソ、コウシテ進言シテイルノダ。ダガ、決メルノハ貴公ダ。サテ、ドウスル?」
 その言葉を聞いた時、ギルフォードは確かに見た。
 銀色の仮面が怪しく光るのを。
 それがまるで笑っているかのように感じ取れたギルフォードは念を押す。
 「誠、でしょうね?」
 「私ガ嘘ヲ言ッテイルト?」
 「その容姿で言われれば、誰でもそう思うと思いますが?」
 挑発にも似たその言葉に、仮面の下でライは密かに笑った。
 「真偽ノ程ハ貴公ニ任セル。ダガ、私ガ機情ノ長トシテ話シテイル事ハ、心ニ停メテオクガイイ」
 その言葉と共に通信が切られると、指揮所内は再びざわめき出す。
 ギルフォードは未だ信じられないでいた。
 だが、皇帝直属である機密情報局。その長が言った言葉ならば事実なのだろうという事は十二分に考えられた。
 機情の長が嘘を吐くという事は、それ即ち皇帝が嘘を吐くという事になる。皇帝の名を汚すような、そんな存在が付ける地位では無いという考えからだ。
 「ギルフォード卿!!」
 突然背後から呼び掛けられた事にハッとなり振り向いたギルフォードが見たのは、自身を決意の眼差しで見つめるグラストンナイツの面々。
 その瞳を見ても分かるように、彼等はギルフォードとは打って変わって冷静さを失っていた。余りにも若過ぎたのだ。
 しかし、そんな彼等を見たギルフォードは若さに当てられたのか、自分の心が大きく揺れ動いた事に気付く。
 が、依然としてカリグラより告げられた策は軍人として到底認める事が出来ないもの。
 ギルフォードは、藤堂に対して優れた武人だと一定の評価を下していた。
 そんな彼を戦場では無く、よりにもよって道具として使うのだ。
 それは余りにも卑怯と言う他無い。
 自身が仮にそうされた場合は、一体どれ程の屈辱だろうかと。
 しかし、一方でゼロを誘い出せる可能性が有る事も否めないでいた。
 ――こんな方法が、認められるのか?
 彼の軍人としての尊厳がその甘言を必死に阻もうとする。
 だが、そこで思い直す。
 ギルフォードは確かに軍人である。しかし、それ以前に彼はコーネリアの騎士。
 そして主の汚名を濯ぐにこれは又と無い機会。
 ――姫様の為……ならばっ!
 そう思った瞬間、ギルフォードは生まれて初めて誘惑に負けた。
0448代理投下2009/03/11(水) 21:02:10ID:4xQWja0d
―――――――――――――――――
 今後の事をC.C.達に任せたルルーシュは学園に戻っていた。
 しかし、そんな彼を待ち受けていたのはイベント好きで有名な学園の首魁たるミレイ・アッシュフォードの企みだった。
 それは名目上テロ事件より無事に生還したルルーシュとロロを祝う記念パーティーだった。
 本来なら主賓である筈のルルーシュは、何故かその準備や片付けに追われゆっくりと今後の事を考える暇もなかった。
 そして、やっとの思いでそれらのイベントから解放されたルルーシュは、クラブハウス内の自室で一人ロロについての考察とナナリーの安否について思慮に耽っていた。
 結果として分かった事はそう多くない。
 ナナリーが偽りの弟にすり替わっている事。
 そして、生徒会のメンバーからナナリーの記憶が無くなっている事。
 それらを考慮した結果、導き出された答えはブリタニア皇帝がナナリーを握っている可能性が高いという事だった。
 しかし、そこでルルーシュの脳裏に一つの疑問が浮かんだ。
 「ナナリーだけではなく、何故ライの記憶までも?」
 そう、生徒会メンバーはナナリーの事だけでは無くライについての記憶までも奪われていたのだ。
 ナナリーに関する記憶を奪った理由について、ルルーシュは直に理解した。
 だが、ライの事まで何故消す必要があったのか。
 当初、ルルーシュにはそれが全く理解出来なかった。
 しかしある仮説を元に考えた時、それは実にあっけなく解消された。
 「まさかとは思うが……」
 その一つの可能性に気付いた時、ルルーシュの足は自然とある場所へ向けて歩き出していた。
 やがて目的の部屋の前まで来ると、ルルーシュは軽く扉をノックする。しかし、反応は無い。
 分かっていた反応ではあったが、それはルルーシュの心を物悲しくさせるには十分なものだった。
 暫しの沈黙。
 やがて、意を決したルルーシュは僅かに震える手でドアノブを掴むとゆっくりと扉を開けた。
 その部屋の中は薄暗く、閉め切られたカーテンからは夕日が僅かに差し込んでいた。
 ルルーシュは埃っぽい匂いを感じながらも足を進めて行く。
 そこは、嘗てライが間借りしていた部屋。
 今は、生徒会のイベントで使われた数々の小道具がその部屋の主となっており、生活感の全くない倉庫となっていた。
 部屋の真ん中まで歩みを進めたルルーシュは、ふと立ち止まると確かめるかのような言葉を発する。
 「ここに、ライが居た」
 そう、確かに居たのだ。一年前まで。
 その時の光景を思い出した時、ルルーシュの胸に去来したのは悲しみ。
 それに心が蹂躙されながらも、じっとそれに耐える。
 すると、突然背後から声を掛けられた。
 「あれ?ルル、倉庫に何か用でもあるの?」
 声をかけたのはシャーリー・フェネット。ルルーシュに恋心を抱く女性だ。
 しかし、声を掛けても想い人からの返事は無い。
 その事を少々不満に思ったシャーリーは、先程より幾許か大きめの声で問い掛ける。
 「おーい、ルルってばっ!」
 「あ、ああ。シャーリーか」
 その事が功を奏したのか、ようやっと振り向いたルルーシュ。しかし、その表情は芳しく無い。
 それが少し引っ掛かったシャーリーだったが、呼んでも直に振り向いてくれなかった事への不満から少し拗ねた様子で重ねて問い掛ける。
 「もう、ルル大丈夫?」
 「ん?何がだ?」
 だが、返って来たのは先程とは打って変わってあっけらかんとした様子でいるルルーシュだった。
0449代理投下2009/03/11(水) 21:03:55ID:4xQWja0d

 その事に少し安堵したシャーリーだったが、続けざまに問われた言葉に不安になる。
 「それよりも、シャーリー。ここは倉庫だよな?」
 「何言ってるの?ここはずっとそうだったでしょ。ねえ、ルル。本当に大丈夫?」
 シャーリーが心配するのも当然だった。
 彼女の記憶の中でもこの部屋は倉庫以外の何物でも無く、それはルルーシュも承知している筈だと思ったからだ。
 そして、更に言えばタイミングが悪かった。
 シャーリーはルルーシュがテロから無事に生還したとはいえ、何処かで頭でも打ったのかと不安になったのだ。
 それが想い人であれば尚更だろう。
 しかし、朴念仁であるルルーシュがそんなシャーリーの気持ちに気付く筈も無い。
 「ああ、済まない。少し疲れてるのかもな」
 そう言ってルルーシュはわざとらしくこめかみに手をやる。
 「ちょ、ちょっとルル。大丈夫?」
 その仕草にシャーリーは心底驚いたようで、慌てて駆け寄ると心配そうにルルーシュの肩に手を置いた。
 「大丈夫だ。暫く部屋で横になるから」
 「それなら……いいけど」
 不承不承といった様子で承知したシャーリー。ルルーシュはそんな彼女に対して、静かに微笑みながら感謝の言葉を口にする。
 「ありがとう、シャーリー」
 「ど、どういたしまして」
 それを間近で見てしまったシャーリーは、頬が紅潮するのが分かり思わず顔を背けた。
 しかし、果たしてその行為で誤魔化せるかといえば、答えは否だ。既に耳まで真っ赤なのだから。
 普通の男なら女性のこういった反応に何かしらの結論を出しても良いものなのだが、朴念仁たるルルーシュが気付く筈も無い。
 それどころか、ルルーシュは全く別の結論を導き出していた。
 ライは生きている、と。
―――――――――――――――――
 ルルーシュとシャーリーが端から見れば青春そのものであった時。
 学園地下に設置された機情の一室では、先日現れたゼロとルルーシュの関係性についての考察が行われていた。
 しかし、学園内に配置された監視員からの報告はルルーシュがゼロであるという可能性を明確に否定していた。
 その為、他の隊員達はあのゼロはルルーシュでは無いだろうと結論を出していた。
 が、隊長であるヴィレッタだけは未だに怪しんでいた。機情の中でロロを除いてたった一人、ギアスの恐ろしさを身を以て知っているヴィレッタが慎重になるのも無理は無い事。
 片や、それを知らない隊員達はヴィレッタの慎重さを訝しみつつ、今後の方針について会議を続けていた。
 だが、そんな彼等を余所に突然それまでの話を聞き流していたロロが口を開く。
 「結局、C.C.は何処に居るんです?」
 辟易した口調で問われた事に対して、隊員達はロロを睨み付ける。
 ヴィレッタも思わず眉を顰めるが、ギアス使いである上に命令系統の違うロロとやり合う気は更々無い。
 「ルルーシュと接触していないのなら、領事館に居る可能性は低い」
 「つまり、事件前と一緒。何処に居るか分からない」
 感想のように告げるロロ。
 その口調からヴィレッタは今度は暗に批判されている事を感じ取ったが、あくまでも眉を顰めるのみに停める。その時、短い着信音と共にパネルを操作していた隊員の一人が口を開いた。
 「ヴィレッタ隊長。カリグラ卿からです」
 「出せ」
 ヴィレッタは表情を引き締めると部下にそう命じながら立ち上がる。
 同じく他の隊員もそれに習うが、ロロだけは一人ソファに腰掛けたまま立ち上がる事は無かった。
 モニターに銀色の仮面が映ると、隊員達は一斉に頭を垂れた。
 それを受けてカリグラの仮面を被る男、ライは開口一番問い掛ける。
 「"ルルーシュ"ノ状況ニ変化ハ?」
 「いえ、今の所は何も。ですが、急にどうされたのですか?報告書の件で何か不備でも――」
 定時連絡の時刻までは些か早く、バベルタワーの一件を報告書に纏めて提出したヴィレッタは内心気が気でない。
 だが、それは杞憂に終わる。
 「イヤ、ソウデハ無イ。早急ニ聞キタイ事ガ出来タノダ」
 カリグラはそこまで言うと、我関せずといった様子でソファに座っているロロに視線を移す。 
 「"ロロ"、何故"ルルーシュ"ノ傍ヲ離レタ?」
 皆の視線がロロに集まる。
 「不測の事態が起きたんです」
0450創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 21:05:21ID:LQhUgji2
支援
0451代理投下2009/03/11(水) 21:06:03ID:4xQWja0d

 ロロはそれを一身に受けながらも平然とした様子で答えるが、その言葉で納得するカリグラ、もといライではない。
 「ソノ一言デ片付ケルツモリカ?貴様ノ役目ハ何ダ?」
 「僕はあなたの部下じゃありませんから」
 そう、ロロはモニターに映る銀色の仮面、その下に隠された素顔の持ち主が自分に名を与えてくれた存在、ライだという事を知らないのだ。
 「答える必要を認めません」
 そう言うと、ロロは冷めた視線を飛ばす。
 事の経過を直立不動で見守っていたヴィレッタ達は、それを見た瞬間まるでこの世の終わりだと言わんばかりに顔を蒼くする。
 一方でロロの口撃を予想だにしていなかったライは、仮面の下で思わず柳眉を逆立てた。
 しかし、ロロの反応は嘗てライが命じた言葉。

 ――機情と連携を取る必要は無い――

 その通りである。従ってこの反応は自業自得といっても仕方無い。
 仕方無いのだが、こうも平然と言われて我慢出来るライでも無い。
 ライの心に青白い炎が灯ると、モニター越しにそれを感じ取った隊員達はそれ見た事かと思わず顔を強ばらせた。
 しかし、ここでライに仮面を取るという選択肢がある筈も無く……。
 「……良イダロウ」
 僅かな沈黙の後、ライは憎々しく思いながらもそう告げると、ホッと胸を撫で下ろしている隊員達に命じた。
 「オ前達ハ引キ続キ餌ノ監視ヲ継続セヨ」
 「「「Yes, My Lord!」」」
 ヴィレッタを筆頭に隊員達が答えると通信は切られた。
―――――――――――――――――
 学園に夜の帳が落ちた。ここはロロの部屋。
 時計の秒針がその時刻を告げた時、ロロの携帯が震える。
 すると、ロロは待ち望んでいたかのように素早く携帯を手に取ると通話ボタンに手を掛ける。
 今日はゼロが現れた。
 一年前、ゼロ捕縛の一報を聞いたライは自ら帝都に出向いた程。
 そのライのゼロに対する関心の高さを知っていたロロは思う。
 どんな返答があるだろうか。少なくとも今までの事務的な会話などではないかもしれないと、頬を僅かに緩ませ淡い期待に胸踊らせながら電話に出る。
 しかし、そんなロロの表情はライの声を聞いた瞬間凍りついた。
 電話口から聞こえてきたのは、今まで聞いた事もないような憤怒の声だったからだ。
 「機情の報告を聞いた。ロロ、お前はあの時ルルーシュの傍を離れていたな?何故言わなかった!!」
 「そ、それは……」
 開口一番に告げられたのは叱責。
 ロロはそれ以上何も言えなかった。
 あの時、ライが問い掛けた際に正直に言っておけば良かったと後悔したが、もう後の祭。
 「ロロ、お前はルルーシュを見失っただけでは無く、私に嘘を吐いた事になる。…お前には失望した」
 「っ!?ま、待って」
 慌てて携帯を両手で掴んだロロが懇願する。
 だが、全ては遅すぎた。怒りに身を任せてしまったライを止める事など誰にも出来ないのだから。
 聞く耳持たぬと言わんばかりに通話は切られてしまい、それ以降ロロの携帯が鳴る事は無かった。
 「僕は…僕はどうすれば…」
 ガクリと床に両膝をつき、瞳に涙を浮かべながら哀しみに打ち震えるロロは絞り出すかのような声でそう呟いたが、その答えが返ってくる筈も無かった。
0452創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 21:07:05ID:WHLEya4t
支援
0453代理投下2009/03/11(水) 21:08:55ID:4xQWja0d

―――――――――――――――――
 ライが通信を切った時、それまで呆然と二人のやり取りを聞いていた子供達は我に返ると囁き出す。
 「ロロお兄ちゃん可哀想……」
 「だよね」
 「シッ。滅多な事言うんじゃないの」
 「でも……」
 そんな子供達の声が聞こえたライは苛立ちを隠すこと無く告げる。
 「子供は寝る時間だ」
 「「「は、は〜い。お休みなさ〜い」」」
 慌てた様子で立ち上がると、手を振って立ち去る子供達に対してライは軽あしらうように2、3度手を振り返す。
 やがて、その姿が施設の奥に消えて行くと、それを認めたライは側に居たV.V.に視線を移す。
 「僕は子供じゃないよ」
 「そうだったな」
 気勢を制される形となったが、ライは特に異に介した様子も見せず正面に向き直るとそれ以上口を開く素振りを見せ無かった。
 そんなライの様子に真意を計り兼ねたV.V.が問い掛ける。
 「ねぇ、あの子達が言ってる通り今回の処分は僕も厳し過ぎると思うけど?」
 しかし、ライは何も答えない。ただ思慮するかのような瞳で相変わらず真正面を見据えるのみ。
 だが、そんな態度にV.V.が納得出来る筈も無い。
 「ロロは君に依存してる。それが分からない程君は鈍感なの?」
 すると、遂に聞き流すのも億劫になったのかライが口を開く。
 「知っている。そう仕向けたのは私だからな」
 「なら、尚更ロロを切るのは早いと思うけど?一体何を――」
 「切った訳では無い」
 ライが言葉を遮ると、V.V.は目で続きを促した。
 それを尻目にライは玉座に深く身を委ねる。
 余談だが、V.V.は最近になって知ったライの癖がある。
 こういった時、ライは決まってある仕草を取るのだ。
 それは、足を組み膝の上に両手を重ねて純白の手袋の上から何かを触る行為。
 初めてその仕草を見た時、V.V.はライが何に触れているのか分からなかった。
 尋ねてみるべきかと迷ったが、ライは自分のその行為を意識的にしているとも思えなかった。
 何に触れているのか。
 やがて、それを理解したV.V.は心の底から後悔した。
 今もまた、その仕草を取りながらライは静かに語り出す。
 「ああでも言っておけば、二度とルルーシュの傍を離れたりはしないだろう。次に控えている作戦の事もあるからな。……確かに、少し言い過ぎた感は否めないが――」
 最後に珍しく後悔した様子を見せたライだったが、だからと言って謝るという選択肢は端から無い。
 「ライ、君はロロの事をどう思ってるの?」
 突飛な質問だったが、ライは特に驚いた様子も見せずに向き直ると口元に三日月を浮かべた。
 「お前と同じだ、V.V.」
 何を言いたいのか分からないといった様子で不思議そうな表情を浮かべるV.V.に対して、ライの三日月が鋭さを増す。
 「只の駒だ」
 それを受けたV.V.は一瞬呆けたような表情を浮かべたが、次には同じように三日月を浮かべた。
 ――ライ、君も僕の駒に過ぎないんだよ?
 ――V.V.。私を利用するならすればいい。ただし、私もお前を利用させて貰うぞ?
 両者が互いの心の内を知る由も無い。しかし、考えている事は全く同じ。
 二人の視線が交差する。
 「フフフッ」
 「ハハハッ」
 やがてどちらとも無く笑い始めると、それは徐々に大きくなり施設内に木霊する。
 「「ハハハハハッ!!」」
 二匹の悪魔が其処に居た。
0454創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 21:10:28ID:LQhUgji2
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0455代理投下2009/03/11(水) 21:12:04ID:4xQWja0d
―――――――――――――――――
 隊員達が領事館に立て籠ってから早三日。
 当初以降、ルルーシュからの指示は完全に途絶えていた。
 脱出の際のゴタゴタで、ルルーシュの連絡先を聞く事が出来なかったカレンは連絡手段を持っていない。
 その事に一日経って気付いたカレンは慌ててC.C.に訪ねたのだが、彼女がそんな気の利いた事をしている筈も無い。
 逆にC.C.は、「連絡先を聞くのは男の義務だ」とまで言い放つ始末。
 風呂場から上がったカレンは、これからどうするべきか一人考える。しかし、どれだけ考えてもこれといった手段が見つからない。
 活路が見出せない事に歯噛みしながらもカレンは自身の左手の薬指、そこに有る指輪に向かって問い掛ける。
 「ライ、ルルーシュは一体どうしたと思う?彼は、ゼロなのに……」
 指輪が応える筈も無い。
 しかし、カレンにはこれで十分だった。

 ――ライから貰った指輪――

 それを見るだけで、今でもライは一緒に居てくれていると思えるのだから。
 先程までの焦りが夢散していくのを感じたカレンは、着替えに手を伸ばす。
 すると、脱衣籠に入ったそれを見て思わず手を止めた。
 「あっ!そっか…」
 先程までの憂鬱な表情も何処へやら。
 何かを思い出したのか素っ頓狂な声を上げたカレンは、自身の今の身形の事も忘れてすっ飛んで行った。
――――――――――――――――― 
 所変わってここは領事館の一室。
 そこでは中華連邦と黒の騎士団、現時点での互いの代表者が膝を付き合わせていた。
 中華側からはここの主、総領事たる高亥と彼に着き従うかのように佇む長髪の武官、黎星刻。
 対する黒の騎士団からはC.C.と卜部。
 「ブリタニアからの引渡し交渉は遅延させております。一週間程度は保つかと」
 「ゼロに伝えておく」
 高亥の言葉に、さして興味無く答えるC.C.。それを認めた星刻が僅かに表情を曇らせる。
 「いや、大変助かる」
 C.Cに代わって律儀な卜部が礼を言った時、慌ただしい足音と共にカレンが飛び込んで来た。
 「ちょっとC.C.!考えてみたらあんたがバニーやった方が話し早かったんじゃないの!?」
 「紅月…お前って奴は…」
 突然飛び込んで来たカレン。
 バスタオル一枚という乙女とは思えぬその身形に、卜部は思わず顔を背けた。
 「えっ?キャアッ!」
 卜部の指摘にここに来て漸く自分の身形を理解したカレンは、慌てて衝立の後ろに身を隠す。
 だが、衝立は透けておりその姿が余計に艶めかしく見える事に気付いていない。
 それを見てしまった卜部が、服を着て来いと口を開きかけた時、高亥の言葉がそれを遮った。
 「ゼロは…女…?」
 「そうだ」
 「お、おいC.C.」
 「違いますっ!!」
 間髪入れずに同意したC.C.に、二人は抗議の声を上げる。が、魔女に効果がある筈も無い。
 「ばらすのが早過ぎる。全く、遊び心の無い奴等め」
 二人の抗議は至極まともだ。しかし、何故か怒られた。その理不尽さに卜部は呆れるのみであったが、対照的にカレンは食って掛かる。
 「ゼロで遊ばないで」
 「はぁ……」
 二人の口論が始まった事に、卜部は溜め息しか出ない。
0456創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 21:13:00ID:LQhUgji2
支援
0457代理投下2009/03/11(水) 21:13:58ID:4xQWja0d

 「どうでもいいがカレン、見えるぞ?」
 「へっ?キャアッ!」
 C.C.に指摘され、再び身を隠すカレン。勝敗が決した時、それまで一言も言葉を発する事が無かった星刻が口を開く。
 「初めまして。紅月カレンさんですね?」
 「えっ?どうして?」
 突然自分の名を告げられた事に驚きを隠せないでいるカレンを余所に、星刻は柔和な表情のまま告げる。
 「興味があるんです。黒の騎士団のエースにして紅蓮二式のパイロット。そして、双壁の一人」
 その呼び名を聞いた3人、卜部は表情を曇らせC.C.は僅かに眉を顰める。しかし、カレンだけは一人抗議の声を上げる。
 「その呼び名は止めて」
 何故?といった様子でいる星刻に対しカレンは俯きがちに答えた。
 「私がそう呼ばれたのは、彼が居たからよ」
 「ええ、知っています。ゼロの左腕。何でも、相当に頭の切れる方だとか。その方とも是非一度お会いして――」
 「星刻殿、だったか?済まないがあいつの話はやめてくれないか」
 そう言って卜部は星刻の言葉を遮ると、カレンが後に続いた。
 「彼は、ライは……」
 「これは失礼した」
 カレンの悲痛な声から全てを理解した星刻が謝罪の言葉を述べた時、血相を変えた一人の隊員が飛び込んできた。
 「大変です!扇さん達がっ!!」
―――――――――――――――――
 「聞こえるか、ゼロよ!私はコーネリア・リ・ブリタニア皇女が騎士、ギルバート・G・P・ギルフォードである。明日15時より国家反逆罪を犯した特一級犯罪者、256名の処刑を行う。ゼロよ!貴様が部下の命を惜しむならこの私と正々堂々と勝負をせよ!」
 領事館に向けて高らかに宣言するギルフォード。
 「みんな……」
 「中佐っ!クソッ!」
 対して、遠方より囚われの仲間の姿を認めたカレンと卜部は悔しさを滲ませる。他の隊員達も同じように、何も出来ない事に歯痒さを抱いていた。
 「やってくれたな!ギルフォード!」
 生徒会室でその映像を見ていたルルーシュは、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。
 だが、そんな彼等とは対照的にエリア11より遠く離れた地では、二人の人物がその映像を見ながら笑っていた。
 「まさか本当にやるなんてね。これも君の謀った通り?」
 薄暗い嚮団の地下施設で、嚮主たるV.V.は嬉しそうに言った。
 片や問われたライは、例の仕草を取りながら悠々とした様子で答える。
 「愚問だな。あの男は愚直なまでに忠誠心が強い。故に、甘い言葉を囁けばあの通りだ。しかし、よりにもよってゼロと勝負だと?」
 「当てが外れた?」
 「いや、想定内だが馬鹿正直過ぎる。ギルフォードでは、あのゼロがルルーシュだった場合は勝てない」
 「奪われる可能性があるって事?」
 「ああ。……しかし、それならそれで楽しみが増えるな」
 「遊びじゃないんだよ?」
 「ゼロが甦った今、私にとっては遊びとなった」
0458代理投下2009/03/11(水) 21:14:44ID:4xQWja0d
不満げな様子でいるV.V.に対して、ライは事も無げに言い放ってみせた。
 これでゼロが嘗ての力を取り戻し、再びブリタニアに抗うだけの力を得たとしてもそれはライにとっては願ったり叶ったり。
 嘗てのライにとって戦いは決して負けてはならないものだった。二人の為にも。だが最早護るべき存在は居ないのだ。
 「ゼロを甘く見ない方がいい。下手をすれば殺されるよ?」
 「これはテストだ。囚人達を助け出して初めて、ゼロは私のいる場所に立つ力を得る」
 「で、そこから先は互いの命を賭けた戦いが始まるって訳?負けたらどうするの」
 「勝ち負け等どうでも良い。純粋に戦ってみたいだけだ」
 ライは未だC.C.捕縛という使命を忘れた訳では無い。しかし、甦ったゼロを前にしてはその優先順位は下がっていた。
 これからは熾烈な情報戦となる。
 ゼロはライの目をかいくぐり、ライはゼロの真贋を見極める。
 ライは思う。どれ程楽しいだろうか、と。
 「ゆっくりとあの仮面を剥いでやろう。その下にある素顔が誰のものか。考えただけで身震いするとは思わないか?」
 心底楽しそうに語るライに対して、V.V.が心底不機嫌そうな表情を崩す事は無かった。
 それを認めたライが感慨深げに問う。
 「成る程、お前は余程ゼロが嫌いなのだな」
 が、V.V.からの返答は無い。
 「それともルルーシュが?」
 「どうでもいいじゃない」
 その問いにやっと口を開いたV.V.だったが、これ以上話す気はないとの明らかな拒絶を示した。
 「クハハハッ。そういう事にしておこうか」
 ライはこの辺りが限界だと悟ると、この事についてはこれ以上問い掛ける事は無かった。
 その後、二人はたわいもない会話を交わして暇を潰していたが、その日ゼロが現れる事は終ぞ無かった。

0459創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 21:15:21ID:WHLEya4t
しえん
0460創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 21:15:39ID:LQhUgji2
支援
0461代理投下2009/03/11(水) 21:17:14ID:4xQWja0d
以上で投下終了です。


ここからは、代理人が書いています。
        ↓

支援、助かりました。
規制がかかっている方も多いと思いますが、皆さんもがんばって下さい。
では…。
ありがとうございました。
0462ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark 2009/03/11(水) 21:18:46ID:WHLEya4t
携帯から失礼します。
代理投下有難うございました。
大変助かりました
0463創る名無しに見る名無し2009/03/11(水) 21:48:11ID:WRWffvjZ
>>461
代理投下乙でした。
>>462
ライカレ厨卿、GJでした!
やはりこのライはいいねぇ、ゾクゾクするよ。
しかしこのロロ……どうなることやら。
しかし、卜部が生きてるっていいねぇ。
彼の今後の活躍にも期待。
ふぅ……続きが非常に気になってきました!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0464創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 00:04:13ID:AaHeXIbK
>>462
やっと来ましたかっ。
やばいよなぁ…。
何がやばいかって?
そりゃ、続きが早く読みたいという衝動に駆られるところが……。
面白いし、ぐいぐい引っ張られるストーリー。
さらに先が読めない展開にわくわくします。
GJでした。
続き、お待ちしております。
0465創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 00:54:58ID:OLMdJlAm
容量調べるのってどうやるんでしょ?
どうも今書いてるのが40か50kくらいにはなりそうだから、投下しきれるかちょっと不安なのね
0466創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 01:02:41ID:veHNwspC
>>465
志村ー! 左下、左下!
0467創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 06:11:18ID:tuIw9R1B
ギコなら右下ね
0468創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 06:43:54ID:jyB1t4KE
うわっ! 俺、今まで一々ブラウザで表示し直してたよ
0469創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 07:22:03ID:hZXOlyiS
お久しぶりです!ライカレ廚卿!長編お待ちしておりました。
ライがキてますねえ。ライカレの婚約から始まったこのシリーズ。再び二人が結ばれる日を期待し、投下を待ち続けます!
また近いうちに卿の作品と会えることを祈っております。
0470簡単に書いてみた その32009/03/12(木) 11:14:28ID:AaHeXIbK
どうもです。
未定のつもりでしたが、やっぱり感想の力って大きいですね。
結局、続き書き始めてました。
そういうわけで第3話です。
まぁ、深いことは考えず、気軽に楽しんでいただければ幸いです。

タイトル 「閃光の魔法少女マリアンヌ」 第3話 我が名はゼロ
カップリング ライ×アーニャの予定
ジャンル ラブコメ魔女っ子バトルストーリー(予)


注意
パラレルワールドの為、キャラクターの設定等がオリジナルとは違っています。
ご注意ください。 
・アーニャ・ 平凡な家庭で育てられたあくまで普通の中学生。
      マリアンヌに寄生されてからは気苦労が耐えない日々を送っている。
      最近、親身なってくれるライが気になる様子。恋に恋するお年頃のようです。
・マリアンヌ・ ブリタニアから"異形のもの"を封印する為にこの世界に来た魔法使い。
       だが、単身ではこの世界に実体化出来ず、契約を交わしたものの身体を借りている。(寄生しているとも言う)
       現在、契約したばかりという事もあり、力を出し切れていないようだ。また、回復者がいないという事も彼女の力を引き出せない原因になっている。
・ライ・ ふとしたことからアーニャやマリアンヌと関わるようになった普通の高校生。
    しかし、記憶喪失の為、3年以上前のことは覚えていない。マリアンヌの美しさに惹かれている。
・ルルーシュ・ ライの親友でナナリーの兄。
・ナナリー・ ライの妹でアーニャの友達。最近、アーニャの行動がおかしい事に疑問を抱いており、何も相談してくれない事に寂しさを感じている。

では、第3話スタートです。
0471簡単に書いてみた その32009/03/12(木) 11:15:23ID:AaHeXIbK
「ブリタニアの魔女よ、お初にお目にかかる」
黒尽くめの服装、それにマントにマスクをつけた男が私に恭しく頭を下げる。
だが、その丁寧な仕草は、私をカチンとさせるのに十分だった。
「誰よ、あんたっ」
どうしても語尾が怒りに震えてしまう。
そんな私にわざと少し怯えてみせる男。
「おおーっ、怖い、怖いっ…。さすがは閃光のマリアンヌと呼ばれるだけはありますな」
その仕草にますますイライラする私を楽しそうに見ていやがる。
えーいっ、腹立つなぁっ。
異形のものを始末した後で消耗してなかったら、すぐに呪文や術式の一つくらいはぶち当ててやっていたかもしれない。
それほど私は怒りに支配されていた。
だが、私は我慢する。
どうやら、異形のものについて何かしらの情報を知ってそうだ。
そういう確信に似たものがあったからである。
だが、そんな私をいいことに、やつは実に楽しそうに言い切った。
「くっくっくっ……。下手な駆け引きなんて貴方は似合いませんよ。いつもどおりにやったらどうです?」
その言葉に、ついに私はぶち切れた。
「わかったわよ、聞きたいことは、力ずくで聞かせてもらうわ」
そう言い切ると準備しておいた術式を発動させた。
やつの周りに魔方陣が浮かび上がり、いくつもの魔法の鎖がやつを捕らえていく。
ふんっ。これで捕獲したわよ。
その怪しい仮面をひっぺがして、知っていること洗いざらい喋ってもらうから。
そう思った時だった。
ひゅんっ……。
一筋の紅い線が走ったと思うと、すべての魔法の鎖が切り裂かれ、魔方陣が崩壊した。
「な、何っ……。今のっ……」
驚く私が再び術式を走らせようとした時だ。
私の首筋に紅く鋭利な爪が突きつけられた。
「動かないで下さい……」
爪とその言葉に私は用意しかけていた新たな術式の発動を止め、後ろを振り向いた。
そこには、赤毛でサングラスをかけた黒ずくめの女が立っおり、その女の右手にはめられた手袋から伸びる爪が私の首に当てられていたのだ。
「くっ……」
私に察知されないで後ろをとるなんて、なんて奴なの……。
私はそいつを睨みつけたが、そいつは涼しい顔のまま私の視線を無視した。
静寂がその場を支配する。
0472簡単に書いてみた その32009/03/12(木) 11:16:21ID:AaHeXIbK
そして、その均衡を破ったのは、マスクをかぶった野郎だった。
「紹介しておこう。私の右腕の『紅蓮』だ」
ぬけぬけとそう言ってマントを翻して去ろうとする。
「こらっ…待ちなさいよっ……」
そう言いかけたが、私の首筋に当てられた爪が皮膚に食い込み、黙るしかない。
だが、それで思い出したかのように仮面の野郎は振り返った。
「そうそう、言い忘れていたね。我が名はゼロ。覚えておきたまえ……。ふっははははははは」
憎たらしいほどの高笑い。
その笑い声が段々と小さくなっていく。
それにあわせるかのようにぼんやりと薄くなっていく奴の姿。
そして、声が消えたのと同時に掻き消すように奴の姿も消え、同時に私の後ろに立っていたものの気配も消える。
そこに残されたのは、私と静寂だけ。
くそっ…。くそぉーーーっ……。
私は、自分の不甲斐なさと怒りでどうにかなりそうだった。
こんな屈辱っ……。
ギリギリとかみ締めた歯が軋み、握り締めた拳が震える。
「マリアンヌ……」
心配そうなアーニャの声が遠慮がちに聞こえた。
だけど、今の私にはそれに答えてあげられる余裕はなかった。




「閃光の魔法少女マリアンヌ」 第3話 我が名はゼロ




「ふむー、さすがは閃光のマリアンヌだな。契約したばかりだというのに、あんな術式を使ってくるとは……」
暗がりの部屋の中で、ゼロはさっきの術式で縛られた部分を手でさすりながら呟いた。
かなりきつかったのだろう。
言葉の節々には驚きが含まれているように聞こえる。
「ゼロ、お戯れは程々にしていただかないと困ります」
さっきまでの無表情とはうって変わって、心配そうな表情で駆け寄ろうとする紅蓮。
それを大丈夫だと手で制するゼロ。
「すまんな…。これも性分だと思ってくれ」
そう言って、苦笑を漏らす。
そして、紅蓮の顎に指を添えて囁いた。
「すまない、カレン。迷惑をかけて……」
その手を両手で包み込み、微笑みながら答える紅蓮、いやこの場合はカレンの方がいいだろうか…。
「迷惑なんて思った事は一度もないよ……」
0473簡単に書いてみた その32009/03/12(木) 11:17:06ID:AaHeXIbK
だが、そんな恋人同士の語らいのような甘い雰囲気を壊したのはいきなり入ってきた1つの映像連絡だった。
部屋にある大きなディスプレに映し出される女性の姿。
そして、ゼロに寄り添うようなカレンの姿を目に留めて、ニタリと笑う。
「あのさ〜、立て込んでるとは思うんだけどさ〜、いい?」
慌てて、ゼロから離れるカレン。
咳払いして、映像の方を向くゼロ。
「なんだ、ラクシャータ」
「あのさ……、本当に、アレぶつけるの?」
ラクシャータと呼ばれた女性は、細長い愛用のタバコパイプで自分の後ろにある培養液に満たされた巨大な筒を指した。
そこには、まるでこの世のものとは思えないグチャグチャとした異物が生かされている。
「ああ、そのつもりだ」
「でもさ、アレって…ランクSS相当だよ。いいの?」
そのラクシャータの言葉にゼロは笑いを漏らして答える。
「ふふふ……。魔女の力がどの程度かを見極めないと計算できないからな」
そして、暫く間をあけて言葉を続けた。
「それに……ギアス能力者が傍にいるとなるとそれぐらいは必要だろうしな」
だが、その言葉はまるで呟くような感じだった。

「あのさ、どうしたんだい?」
心配そうにライさんが顔を覗き込んでくる。
「う、ううんっ…なんでもないよっ」
わざと陽気に否定する。
だが、ライさんの寂しそうな表情が胸に痛い。
ライさんにあんな顔させたくない。
でも話せない。
マリアンヌの気持ちを考えるとどうしても口が重くなる。
あんな悔しそうなマリアンヌ……初めてだった。
どうしたらいいの……。
そんな私を気遣ってか、ライさんは私の手を握って励ましてくれる。
「わかったよ。今は話せないかもしれない。でも、どうしても苦しい時は、頼って欲しいんだ、アーニャ」
その言葉と手の温もりが私の心に響く。
マリアンヌ、貴方も感じているよね、ライさんのやさしい気持ち。

0474簡単に書いてみた その32009/03/12(木) 11:18:36ID:AaHeXIbK
ああ…、感じているよ、アーニャ。
私は答えなかったが、心の中でそう返答していた。
だが、そんな優しい雰囲気は、突然の乱入者によって壊された。
そう、異形のものの襲撃によって。
しかし、こんな近くに近づくまで判らないなんてどういう事?
そんな疑問が最初に湧いたが、今は考えている暇などない。
こいつを倒さないと……。
そう考えて、素早く戦いに向けてへの思考に切り替えるとアーニャから身体の支配権を受け取った。
変身し、ライくんを巻き込まないように敵を別の場所へと誘導する。
妖気からしてそれほどランクは高くないようだ。
せいぜいランクBぐらいか……。
なら、だらだらやるよりも一気に決める方が効率がいいだろう。
「アーニャ、一気に決めるわよ。いいっ?」
「うんっ。わかった」
敵の攻撃をかわしつつ、詠唱する。
「我、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアが命ずる。我の心と共に歩むものの力を我が剣に宿らせ、光の輪廻へと切り捨てよ。ファン・ルーファー・イズシス」
そして、光の剣が完成すると一気に決着をつけるべく相手を切り捨てた。
「斬っ!!!」
光の一撃を受け、光に包まれていく異形のもの。
ふう。
たいした事なかったわね……やっぱり。
そう思った瞬間だった。
「あぶないっ……」
そのライくんの叫びに反応して無意識のうちに魔法防御壁を展開する。
すると完成と同時にびりびりという衝撃が防御壁を振るわせた。
間一髪……。
だが、それよりも私は目に映る光景に唖然としてしまう。
そこには、倒したはずの異形のものの姿があり、そして……私の必殺の一撃は、まったくと言っていいほどダメージを与えていなかったのだ。
「う、嘘っ……」
言葉に詰まる。
確かに、今の私の力は、条件が悪い為に通常の半分程度だ。
だが、リミッターを外し、契約者の力をも借りたあの攻撃はランクAでさえ一撃で倒す。
それなのに……。
嘘だ……。
そんな馬鹿な……。
こんなランクBにも満たないやつに……。
そう思った瞬間だった。
今まで抑えていた妖気を開放する異形のもの。
みるみる高濃度の妖気が回りに広がっていく。
そして私を包み込む妖気。
その妖気でわかった。
こいつ、ランクSSだ。
駄目だ……。
駄目だよ……。
今の私じゃ……勝てない。
私の膝から力が抜け、がくりと姿勢が崩れる。
そして、私は呆然とした表情でその場に力なく座り込んでしまっていた。
0475簡単に書いてみた その32009/03/12(木) 11:19:40ID:AaHeXIbK


「ふむ……。あの程度では呆けてもらっても困るのだがな」
少し離れた場所で戦いを見守るゼロ。
そして、その傍には紅蓮がいた。
「いかがなさいますか、ゼロ」
その自信に満ちた言葉からは、命令とあらば、すぐにでもあの異形のものを始末しますというニュアンスが含まれていた。
「いや、待て……。あのギアス能力者がどう出るか……。それを見極めたい。だからそれまでは手出しするな」
その言葉に、紅蓮は頷くと視線を戦いへと戻した。
彼女の目から見れば、敗北濃厚な戦いに……。


 

第参話 終了




次回予告
襲い掛かるランクSSの異形のもの。
その圧倒的な力の前にマリアンヌの傷ついた心が諦めへと染まっていく。
そして、何も出来ない自分に絶望するライ。
絶望が…諦めが…その場を支配した時、それはおこった。
次回 「閃光の魔法少女マリアンヌ」 第4話 ライが命じる… にご期待ください
0476簡単に書いてみた その32009/03/12(木) 11:22:16ID:AaHeXIbK
以上で第3話終了です。
普段なら、最後を決めて書き始めるのですが、このシリーズは決めてません。
さてさてどういう感じになるのかは、私自身もすごく楽しみです。
では、第4話でお会いしましょう。
0477創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 17:36:19ID:veHNwspC
>>476
GJでした!
ゼロキターwww
そして紅蓮(カレン)にラクシャータ。
魔物? を創っているのか、それとも……
次回予告……ライがどうするのか気になる。
あと、ランクって何さ? という疑問を抱きつつ
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0478創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 19:31:02ID:jyB1t4KE
>>470
ナナリーの設定……誤字?
0479創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 20:28:03ID:BIZJyTDH
a
0480創る名無しに見る名無し2009/03/12(木) 23:46:30ID:wRfMr2Ys
>>476
実質オリキャラなのになぜこんなに面白いんだろう。
作者の力量を感じる。乙です。
0481創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 19:02:08ID:1tRtB616
こんばんわ。
19時15分頃から投下いたします。
よろしくお願いいたします。
0482簡単に書いてみた その4  ◆M21AkfQGck 2009/03/13(金) 19:14:23ID:1tRtB616
そろそろ時間ですかね。
では・・投下したいと思います

さて、第4話です。
相変わらず、勝手に突っ走ってますが楽しんでいただいているでしょうか?
まぁ、気難しく考えずに読んで楽しんでいただければ幸いです。。


●タイトル 「閃光の魔法少女マリアンヌ」 第4話 ライが命じる…
●カップリング 今のところ…マリアンヌ←ライ←アーニャ
●ジャンル ラブコメ魔女っ子バトルストーリー(予)


●注意
パラレルワールドの為、キャラクターの設定等が大きく変わっています。ご注意ください。
 
・アーニャ・ 普通の人として今まで生活してきた為、あくまで普通の中学生。
      マリアンヌに寄生されてからは気苦労が耐えない日々を送っている。
      最近、親身なってくれるライが気になる様子。恋に恋するお年頃のようです。
・マリアンヌ・ ブリタニアから"異形のもの"を封印する為にこの世界に来た魔法使い。 
       だが、単身ではこの世界に実体化出来ず、契約を交わしたものの身体を借りている。(寄生しているとも言う)
       現在、契約したばかりという事もあり、力を出し切れていないようだ。また、回復者がいないという事も彼女の力を引き出せない原因になっている。
・ライ・ ふとしたことからアーニャやマリアンヌと関わるようになった普通の高校生。
    しかし、記憶喪失の為、3年以上前のことは覚えていない。マリアンヌの美しさに惹かれている。
・ルルーシュ・ ライの親友でナナリーの兄。
・ナナリー・ ルルーシュの妹でアーニャの友達。 
      最近、アーニャの行動がおかしい事に疑問を抱いており、何も相談してくれない事に寂しさを感じている。
・ゼロ・ 黒尽くめの仮面の男。ライの事をギアス能力者と呼び危険視する。秘密結社「黒の騎士団」を率いて何やら暗躍している様子。
・紅蓮・ ゼロの右腕として暗躍する黒の騎士団幹部の一人。本名はカレン。
・ラクシャータ・黒の騎士団の幹部の一人。騎士団随一の科学者で、科学・技術部門のトップ。


・ランクについて
 簡単に言うと異形のものの強さの目安。Dからスタートして、最高はSSSまで。
だが、これ以上のものも存在しており、それらはランク外、或いはカテゴリーゼロと呼ばれ別扱いにされている。


では、スタートします。
0483簡単に書いてみた その4  ◆M21AkfQGck 2009/03/13(金) 19:16:01ID:1tRtB616
勝利を確信したのか、異形のものはゆっくりと私に近づいてくる。
だけど、それを呆然と見ているだけしか出来ない私。
なにが『閃光のマリアンヌ』よ。
ただの哀れな道化じゃないの。
自虐的な苦笑が漏れた。
「しっかりして!!」
アーニャの叫びが聞こえたが、私の心はその叫びでさえ動かなかった。
ただ、心を支配するのは、自分の惨めさ。
そして、恐怖……。
そう、初めて味わう死への恐怖が私の心をがんじがらめに縛りつけ、麻痺させてしまっていた。
私……。
ここで……死ぬんだ……。
諦めという甘い誘惑が心に染み込んでいく。
その甘美な味に、私はもう逆らえない気がした。




「閃光の魔法少女マリアンヌ」 第4話 ライが命じる…




駄目だっ。
完全にマリアンヌさんは、戦意を喪失してしまっている。
このままじゃ……。
そう思った瞬間、僕は走り出していた。
させないっ。
させるものかっ。
絶対にマリアンヌさんは、死なせない。
僕が絶対に守る。
だが、彼女の傍に駆け寄ろうとした瞬間、異形のものの触手が僕を襲う。
鞭のように撓りながらの一撃。
奴にしてみれば、軽く牽制程度に振ったものなのかもしれない。
でも、それを受けて、僕は壁に叩きつけられた。
背中を思いっきり打ちつけ、一瞬息が止まる。
一気に身体中がガタガタになる感覚……。
いや本当にガタガタなんだろう。
再度立ち上がろうとしているのに身体は痙攣し、動こうとしなかった。
くそっ…、なんで僕は無力なんだ。
絶望が心を蝕んでいく。
くそっ、くそぉーーーっ。
そして……。
僕の意識は、絶望の中に沈み込んでいった。
0484簡単に書いてみた その4  ◆M21AkfQGck 2009/03/13(金) 19:18:18ID:1tRtB616

私達を庇おうと走り出したライさんが、吹き飛ばされるのが目に入る。
宙を舞い、壁に叩きつけられるライさん。
その瞬間、私は叫んでいた。
「い、いやぁぁーーーーーーーっ」
一気に体温が失われたように身体が、そして心が震える。
ライさんがぁ……。
私の大切な……ライさんがぁ……。
私の心が悲鳴を上げる。
いやだよぉ、こんなの……。
絶対に……。
絶対にいやだよぉーーっ。
そして、その絶叫を合図に私、アーニャ・アールストレイムの意識のブレーカーが落ちた。

僕は暗闇の中にいた。
ふわふわと漂うような感覚。
僕は死んだのか?
だが、その思いは、否定される。
「それくらいで死にはしないさ。特にお前はな……」
その女性の声に僕は聞き覚えがあった。
だけど、誰だったか思い出せない。
大切な人だったような気がする。
だけど、どうしても思い出そうとすると頭に激痛が走る。
「無理はするな……」
ぶっきらぼうだか優しさを含んだ声。
そして、その声は語りかける。
「お前はどうしたい?」
その言葉と同時に視界が開け、目に入るのはマリアンヌさんに迫る異形のものの姿。
「僕は……」
その光景から目が離せない。
「僕は、あの人を守りたい」
「いいのか?危険な目にあうのだぞ。死ぬかもしれないのだぞ」
確かに声の言うとおりだろう。
だけど、僕は……。
そう、僕はそれでも……。
「それでも、僕はあの人を守りたい。彼女の支えになりたいんだ」
0485簡単に書いてみた その4  ◆M21AkfQGck 2009/03/13(金) 19:19:47ID:1tRtB616
その僕の言葉にくすりと微笑が返される。
「ふっ、男の顔をするようになったな、坊や。三年前とは違うということか……」
「えっ?三年前?!どういう……」
その言葉に僕は混乱する。
そう、僕は3年前、半年間の記憶を失っている。
その記憶がない時の事をこの声の主は知っているのだろうか……。
だが、そんな混乱する僕を無視して、声は喋り続ける。
「いいだろう。記憶は無理だが三年前に封印したお前の力を開放しょう。偉大なる王の力を……」
「力?!そんなもの……僕には……」
「いいや…。お前はもう持っている。ただ、使い方を忘れただけだ」
その言葉と同時に、まるで女性に抱きしめられて包み込まれるような感覚が僕を襲う。
ああ…、なんて安心できる心地よさなんだ。
「思い出せ…、ライ」
混乱していた僕の心がだんだんと落ち着いていく。
そして、心の中に浮かび上がる光。
そうか…。
そうだよ。
僕はその光を知っている。
そう、僕の持っている力……。
ギアスの力を……。
「そうだ。お前の力だ」
声が優しくそう囁く。
「うん、わかるよ、C.C」
僕は、無意識のうちにそう答えていた。
そして、一瞬、僕の頭の中に、緑色のロングヘアの女性の姿が浮かぶ。
その女性は、僕を見て微笑んでいた。

「ふむ。ここまでのようだな」
ゼロが、無意識のうちに落胆したような声を漏らす。
あのギアス能力者が何かすると思ったのだがな。
それとも、まだ完全に覚醒していないのか?
どちらにしても、まだあの魔女には生きて駒として動いてもらわなければならない。
「紅蓮、すまないが……」
そう言った瞬間だった。
壁に叩きつけられ倒れた男がゆっくりと立ち上がる。
そして異形のものを見て叫んだ。
「ライが命じる……」
男の顔が狂気で歪んだようにゼロには見えた。
「異形のものよ、お前は………死ね!!」
男の声が辺りに響く。
そして、自らを切りつけ、血反吐を吐きながら崩れ落ちる異形のもの。
「あれはっ……『絶対遵守』の力かっ…」
驚いたような声がゼロの口から漏れる。
そして、しばしの沈黙の後、彼は呟いた。
「そうかっ、そういう事かっ。やつは、三年前の……」
「ゼロ……」
恐る恐る紅蓮が声をかけるが、まるで聞こえていない様子だ。
「いいぞ。いいぞぉ……。これで……うまくいく。うまくいくぞっ。あははははははは……」
まるで何かに取り付かれたかのようにただ笑い続けるゼロ。
それを驚き、ただ見ている事しか紅蓮には出来なかった。
0486簡単に書いてみた その4  ◆M21AkfQGck 2009/03/13(金) 19:20:52ID:1tRtB616

「あれ?私……」
気が付くと見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。
きょろきょろと周りを見渡しているとドアが開いた。
「よかった。気が付いたね」
そう言って入ってきたのは、ライさん。
「あっ……えっと……」
どういうことなの?
私達、異形のものと戦っていたんじゃ……。
状況把握が出来なくてきょとんとしてしまう私。
そんな私の疑問や混乱がわかったのだろう。
ライさんは、優しい微笑と一緒に状況を説明してくれた。
どうやら私が気を失った瞬間、マリアンヌの変身が解けで本来の私に戻ったらしい。
そして、私を学校の健康管理室に運び込んで、汗を拭く為にタオルを濡らして戻ってきたら私が目覚めていたという事らしかった。
そうなんだ……。
その説明に納得しかけて、やっと私は大事な事を思い出す。
そういえば、異形のものはっ……。
その事を思い出し、私は慌てて起き上がろうとした。
しっかりかけられていたシーツがめくれる。
そして目に入ったのは大きく開らかれた自分の胸元だった。
「えっ?!」
きっちりボタン上までしてネクタイつけていたのに…。
そして、ライさんと目が合う。
真っ赤になって慌てて横を向くライさん。
その瞬間、私は悲鳴を上げていた。
「きゃーーーーーっ」
真っ赤になって慌ててシーツで胸元を隠す。
「な、なんで……」
「ご、ごめん……。苦しそうだったから…少し外したんだ……」
胸が激しく動悸し、ますます恥ずかしくなる。
「み、見ました?」
その問いに慌てて即答するライさん。
「み、見てないよっ。白のキャミソールなんて…」
あー…。
正直すぎるライさんの言葉。
それって見たっていう事じゃないですかっ。
でも、それを聞いて沸き起こったのは、怒りではなかった。
そう、私は呆れかえって笑い出していたのだ。
もう本当にライさんってしょうがないんだから……。
でも、ライさんなら……いいかな。
そんな気持ちさえしてしまう。
いきなり笑い出した私をきょとんとした顔で見ているライさん。
そして、その様子にますます笑ってしまう私。
ああ、そういう事なんだ。
笑いながら私は湧き上がる感情に気が付いた。
私、ライさんの事……好き…なんだ。
0487簡単に書いてみた その4  ◆M21AkfQGck 2009/03/13(金) 19:21:55ID:1tRtB616


そこは周りが黒に塗りつぶされたような空間だった。
その中で、私はまるで迷子の子供の様にただ泣きじゃくっていた。
たすけて……。
必死に助けを呼ぶが、その声は、闇の中に響くだけ。
アーニャっ……。
ライくんっ……。
必死に名前を呼ぶ。
だけど返事は返ってこない。
いやだ…。
一人はもう嫌だよぉ……。
だれか……たすけてよぉ……。
私はただ一人泣き続けた。
暗い暗い闇の中……ただ一人で……。
そして、彼女は呟いた。
シャルル……もう嫌だ。
帰りたい……。
帰りたいよぉ……。



第四話 終了




次回予告 (アーニャ)
あの戦いの後、マリアンヌは心の中に閉じこもったままだった。
そんな彼女に私は何が出来るの?
私は、どうすればいいの?
迷う私を心配してくれるライさん。
だけど、ライさんの傍には、女性の姿が……。
次回 「閃光の魔法少女マリアンヌ」 第5話 ゼロの命令とあらば… にご期待ください。
0488創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 19:23:19ID:1tRtB616
以上で4話終了です。


まず、謝らなきゃいけません。
前回、第3話の前ふりの中にある設定に大きなミスが。
すみません。ナナリーはルルーシュの妹です。
何で気が付かなかったんだろう。
指摘され、初めて気が付きました。
本当にお恥ずかしい。
まぁ、そんな馬鹿みたいなミスしたりとうっかり者ですが、これからもよろしくお願いいたします。
また、設定とか知りたい方は、感想とかと一緒に書いてもらったらお答えしたいと思います。
もっとも言える部分と言えない部分がありますけど……。

では次回5話でまたお会いいたしましょう。
0489488です。2009/03/13(金) 19:30:10ID:1tRtB616
すみません。
482の説明でライの部分で間違っている箇所があります。
(またやったよ。すみません。古い方の設定コピぺしてしまった)

      正
      ↓
・ライ・ ふとしたことからアーニャやマリアンヌと関わるようになった普通の高校生。
    しかし、3年前、半年間の記憶を失っている。マリアンヌの美しさに惹かれている。
0490創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 20:35:53ID:mDDhnAGp
>>488
GJでした!
異形のもの+記憶喪失のライ……くとぅるふチックなかんじ。 C.C.がイスの偉大なる種族っぽい。 ……っと、本題からハズレてた。

異形のもの強ッ!
マリアンヌ→ライ→アーニャと次々とやられていって、ライの意識下にC.C.登場!
絶対遵守、やっぱり反則気味だなぁ……
それにしてもゼロの目的はなんなんだろうか。
マリアンヌがこもりきり……変身できなくなるのかな?
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
0491創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:27:46ID:YH1JjJ2Q
ssの代理投下したいのですが、容量が60KBを超えているので37スレに投下できません。
私はスレの立て方がよく分からないので、誰か次のスレ立てお願いします。
0492創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:33:33ID:WUUcIWOI
では私が試みてみます。暫くお待ちください。
0493創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:38:17ID:mDDhnAGp
>>491
次スレが立ってもまだ48KB程容量が残っているので
こちらに限界まで投下してから次スレに移った方がいいと私は思います。
0494創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:39:23ID:E35NcNpL
もうここ埋めたほうがいいの?
また全部埋めろとか言われそうな
0495創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:40:59ID:WUUcIWOI
建てました
コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ38
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236947805/
0496創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:50:18ID:WUUcIWOI
>>494
取り敢えず大きなものは次スレに投下してもらって、このスレは納まるものを投下でいいんじゃないでしょうか。
0497創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:53:48ID:YH1JjJ2Q
了解しました。
支援お願いします。
POPPOさんがアク禁をくらってしまったらしいので、回ってきたデータをそのまま
投下します。
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」

TURN00 「終わる日常」 (後編2)
TURN00 「終わる日常」 (後編3)
2人のオリジナルキャラクター、3機のナイトメアフレームの設定資料を投下します。
0498創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:54:02ID:CI84fX/y

ちょっとばかし質問が。
此処ってライが登場するSS限定?
セシル×ロイドなSSがあるんですが〜(ロスカラやってる最中に何となく思い付いたので気持ちはロスカラSS)

大丈夫そうなら埋めついでに投下しようかと思っております。
0499創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 21:59:26ID:WUUcIWOI
>>497
了解、支援はおまかせあれ。
0500創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:04:42ID:mDDhnAGp
支援

>>497
後編2をこちら、後編3と設定を次スレ
ぐらいでいいんじゃないかな?
それぞれ何KBかは分かんないけど
0501創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:07:06ID:WUUcIWOI
>>500
確かに…。可能ならそれがベストかな
0502創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:14:00ID:YH1JjJ2Q
了解です。
ssを投下したことがないので、至らない部分もあると思いますが今から投下します。
0503代理投下2009/03/13(金) 22:16:33ID:YH1JjJ2Q
青い月だった。
空は暗く、月の明かりと静寂だけが世界を支配していた。
淡く仄かな光だけが窓から差し込んでいる。
アッシュフォード学園の女子寮。その一室に私たちはいた。
窓の淵には秘蔵のピュアモルトウイスキーのボトルが置いてあり、もう半分も残っていない。叔父様が敷地に持っている酒蔵からくすねてきたもので、本国から持ってきた最後の一本。
それを今日、開けた。
だって明日は私にとって『運命の日』なんですもの。
兄の仇をとる決行の日。
そんな前夜に開けずに、いつ開けますか!

時刻は既に深夜を回っていた。
グラスを口につけた。
最初は、大人が何でこんなものを好んで飲むのか分らなかったけど、飲み続けているといつの間にか自ら進んで飲んでいる。
こういうものなのかしら?アルコールって。
「リリーシャ。飲み過ぎなんじゃない?」
向かい側の椅子に座っている少年から声が聞こえた。月に照らされる彼は、どこか神秘的な雰囲気がある。
まあ、本当に神秘的な存在なんだけど…
「…まあ、今日はね。そういうX.X.だって結構飲んでるじゃない」
「すっごく美味しいからね。これ。ついつい飲んじゃうんだ」
「でしょ?叔父様のお墨付きなんだから。それに、家族そろってこの銘柄が好きなのよね。
遺伝かしら?」
そう言って、私は少年に微笑みかけた。
突然、風が窓から流れ込んで純白のカーテンを靡かせた。
風が肌に吹き付け、私とX.X.の髪を揺らす。
窓を中心にして左右対称に椅子を向き合わせて、私たちは椅子に腰かけていた。
「ねえ。アンジェリナちゃん、起きちゃうんじゃない?窓閉めようか?」
「アンなら大丈夫よ。一度目を閉じたら、いくら騒いだって起きないから」
「そうなんだ。じゃあ安心だね」
「ええ。だから呼んだのよ。夜遅くに子供を部屋に呼んで飲酒してるなんてバレたら、即、本国に還されるわ」
「僕は子供じゃないんだけどなぁ」
首をかしげながら、X.X.は苦笑していた。
そうはいっても、グラスに入っている飲み物がウイスキーでなければ、子供にしか見えない。
底をついたグラスにウイスキーを注ぎ足した。
わたし、この時の『トクッ、トクッ』っていう音が好き。
「X.X.がイケるクチなんて、すごく意外だったわ」
「そうかい?伊達に長生きしてないからね。僕は」
「うふ。それもそうね。だって私たち人類の大先輩だもんね」
どちらともなく、お互いに微笑みあった。
子供である私が、大人ぶった態度で大人ぶった一時を味わってみる。
そんな時間が私は大好きだった。

「乾杯しましょ。私たちの未来に」
「うんっ。乾杯」
私たちはグラスを合わせて、小さな音を立てた。




0504代理投下2009/03/13(金) 22:17:44ID:YH1JjJ2Q
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」

TURN00 「終わる日常」 (後編2)




そんな夢を、私は見ていた。

私は目を開く。

ぼやける視界には白い天井と、見覚えのある顔。
茶髪のショートカットに赤い瞳。黄色に近い素肌。
その顔からは大粒の涙がこぼれていた。

「…………ノエル?ここは?」
周囲を見回した。
私はベッドに寝ていて、カーテンで周囲を遮られている。このカーテンの白い色に見覚えがあった。
一番窓際のベッドで、ノエルの後ろには真っ暗な光景が広がっていた。
どうやら夜らしい。
廊下のほうから騒がしい足音が聞こえるあたり、日が暮れてから時間は経っていない。
「アッシュフォードの保健室だよぉ…やっと起きた……よかったぁ」
泣いているノエルの目元には大きなクマが出来ていた。
涙をぼろぼろと零しながら、ノエルは言葉を紡ぐ。
「リリーシャが正門の前で倒れてたのを、見つけて、私が、ここまで、運んできたんだよぉ…うぐっ、ぐすっ…二日も目を覚まさないから…えぐっ、わたし、わたし…」
「……え?」

…正門の前で倒れてた?私が?
朦朧とする意識の中、私は記憶を探った。
確か、隠れ家に逃げこんで、ずっと閉じこもってて、食事もろくにしなかった。
トイレ以外、ベッドから一歩も動かなくて、何もしたくなくて、体中が死ぬほど痛くて…
一度、頭に血が上って証拠隠滅も兼ねてパソコンを床に叩きつけて…
バッグもデスクも散らかしたままで。
それからしばらくして、部屋に音がして、銃を撃って、
それから…


『悪魔』の笑顔が脳裏に蘇る。


瞬く間に記憶が鮮明になり、全身に怖気が走った。
「――――――――――――――ッ!!!」
私は悲鳴にならない声を上げた。
「だ、駄目っ!リリィ!急に体を動かしちゃ!全身怪我してるんだから!」
起き上がろうとして、体中に激痛が駆け巡る。
覚ましたばからの脳に直接電気を打ち込まれような感覚が襲う。
「――――――――ンッ!―――――あ、あああっ!かっ、はっ…」
無意識に胸を抑える。
まともに呼吸が出来ない。
苦しい。
ノエルが優しい手つきで背中をさすってくれる。
胃から込み上げる嘔吐感を両手で押さえつつ、私は徐々に呼吸を整えていった。
「ほらっ。水をお飲みなさい。貴女、脱水症状ですってね」
私の口にコップを当てて、少しずつ口に運んでくれた。
コクコクと、乾ききった喉に生ぬるい水が沁み渡っていく。
コップにある全ての水を飲み干して、深呼吸を繰り返して、心身ともに落ち着かせた。
0505創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:17:59ID:WUUcIWOI
支援
0506代理投下2009/03/13(金) 22:19:00ID:YH1JjJ2Q
その時、両腕に包帯が巻かれているのに気づいた。黄色のパジャマの袖に隠れていて見えなかった。
顔に手をそっと当ててみる。湿布のようなものが左頬に貼られていて、指の所々には絆創膏が貼られている。
体を少し動かすだけでも痛みが走る。
首に痛みが走らない程度に動かして、薄目で周囲を見回した。
右側には涙の跡が色濃く残っている親友、ノエル・パッフェンバウアーが椅子に座っている。
そして、左側には…


「……ヘンリエット?」


「…今ごろ気付いたのですか?貴女は」
先程まで、心配そうな顔で私を見つめていたのに、私の言葉で気分を害したのか、急に顔を顰めて鼻を鳴らし、腕を組んだ。

彼女は私とノエルと同じクラスメイトの一人であり、絵に描いたような傲慢稚気なお嬢様。
淡い紫色の瞳に、同じ色をした綺麗な長髪。透き通るような素肌に豊満な胸をお持ちである抜群のスタイルの持ち主。
性格さえ矯正すれば中等部のトップアイドルになりうる素質を持つ美少女である。
ヘンリエット・T・イーズデイル。
いつも私をライバル視していて、会話をするたびにギスギスしてしまう同級生。
私の目の前に、意外な人物がいた。

「……なぜ貴女が、ここに?」

「…私がここにいちゃ悪いかしら?」
不機嫌な顔を露わにして、ヘンリエットは言葉を発する。
反射的に両手を振ろうとしたが、腕を少し動かしただけでも痛いので、不自然に体をビクッと震わせただけだった。
「い、いえっ。そんなことは無いわ。…ただ、見舞いに来てくれるとは、思ってなかったから」
「私がお見舞いに来ることが、そんなに意外?」
となりでノエルがうんうん、と首を縦に振っている。
「…いえ、とてもありがたいわ」
私は精一杯の笑顔で返した。
「…………そう」
腕を組んだまま、黙り込むヘンリエットだった。
彼女を見ていて、ふと感じた違和感を口にする。
0507創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:19:24ID:WUUcIWOI
支援
0508創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:20:34ID:mDDhnAGp
支援
0509代理投下2009/03/13(金) 22:21:10ID:YH1JjJ2Q
「ギプスは?肩は、もう大丈夫なの?」
今さら何を言っているんだ、私は、と思う。
私が彼女を痛めつけた張本人なのに。
本当のことを話しても信じてくれそうもないけど、彼女には後ろめたい気持ちがある。
「…先々週からつけていませんよ?貴女、最後に学校に顔を出したのはいつ?」
「22日前…」
「……呆れてものが言えませんね」
「ご、ごめんなさい」
なぜかヘンリエットは目を見開いていた。
ん?私、何か変なこと言ったかしら?
そして、ノエルがヘンリットに目配りをしている。
そのコンタクトはなに?っていうか、ノエルってヘンリエットと仲良かったっけ?
「あっ、あのっ、リリーシャさん…」
「え?何かしら?」
「実は貴女に、謝りに来たんです…」
「……はい?」
「あの時は、その、言い過ぎたといいますか…私も、色々と当たってしまって…今さらなのですが、…申し訳ありませんでしたっ!」
そう言うと彼女は恐縮した態度で頭を下げた。

今度は私のほうが目を見開いた。
あのヘンリエットが頭を下げるなんて…

おそらく、本国の両親に叱咤でもされたのだろう。子ども同士の小競り合いでも貴族にとっては不仲の火種になりかねない。
特に同じ爵位を持つ貴族同士は出土が異なろうと、縦の繋がりだけは無く、横の交友関係も大切だ。貴族にとって人の繋がりは命である。
だからこそ、貴族はこのような些細な出来事でも敏感に反応し対処を怠らない。
大きな失敗も、多くの場合は元を辿れば小さな事柄から派生していることを鑑みれば、当然の対応であるが…
0510創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:21:25ID:WUUcIWOI
支援
0511創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:21:35ID:mDDhnAGp
支援!
0512代理投下2009/03/13(金) 22:22:06ID:YH1JjJ2Q
まだぎこちない態度でも彼女なりの精一杯の謝罪をしていた。
だから、こっちも誠意を返す。
「気にしなくていいわ。ヘンリエット…貴女が私に言ってた事は全部、本当のことだから」
しかし、
その言葉に、ヘンリエットは心底驚いた顔をした。
彼女だけは無い。反対側にいるノエルすら驚いている。
ちょっと待って。
何でびっくりするのよ?
「…リリーシャ」
「…貴女」
そうと思いきや、今度は悲痛そうな表情に変わる。
ますますワケがわからない。
「ちょっと、二人ともどうしたのよ?私、何か変なこと言った?」
「いや…そういうこと、じゃなくて、さ」


「……アンジェリナさんの件、聞きましたわ」


私は、息を飲んだ。
「……やっぱり、知ってたんだ。だから、リリィは学校をとび出したんだろ?」
「…え?」
「え?じゃありません!!ノエルがどのくらい貴女のことを心配していたか!?少しは分ってて!?」
「ちょ、ちょっとヘンリエット!やめなよ!」
「貴女ねぇ…いくら頭が良くても、テロに巻き込まれたらどうなるかお分かりでしょう!?あれほどの騒乱を一人でどうにかできるとでも思って!?思いあがるのも大概にしなさい!!」
唾を飛ばしながら、私の胸倉を掴み上げた。
痛みに体が悲鳴を上げていたが、声を出さずにそれを甘んじて受け入れた。

ヘンリエットの言っている事は正しい。
テロ行為の前では武器を持たない少女なんて無力だ。
そんなことは分っている。
彼女たちは、「事件を知った私はアンを助け出そうとして、騒乱に巻き込まれて帰ってきた」と思っているらしい。
私の性格と状況証拠から判断すると、誰だってそう解釈するだろう。

しかし、実際は違う。
私が、このリリーシャ・ゴットバルトがその事件の黒幕なのだ。
2か月前から準備をして、ギアスを用いて引き起こした大事件。
それに、私は式典にアンがいることを知らなかった。その日、アンは寮で自習をすると言っていた。
だが、奇妙な偶然が重なり、アンは式典へと足を運んで、鬼頭が用意した爆弾に巻き込まれて、
命を落とした。

それが真実だ。
0513創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:22:25ID:mDDhnAGp
支援……
0514創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:22:40ID:WUUcIWOI
支援
0515代理投下2009/03/13(金) 22:22:49ID:YH1JjJ2Q
「うん……ごめんなさい。ヘンリエット。ノエル」

私がそう言うと、ヘンリエットは手を放した。
私はしわくちゃになった黄色のパジャマの襟元を戻していく。
まだ怒っているヘンリエットに、心を覆い隠したまま、笑顔で返した。
誰にも、これを悟られるわけにはいかない。
私の罪を知ったら、この娘たちに迷惑がかかるだけだ。
それだけは絶対イヤだ。
「心配してくれてありがとう。ヘンリエット。貴女、とっても優しいのね」
「なっ!?」
突然、顔を赤らめて慌てはじめる彼女。
「べっ、別に貴女が心配というわけじゃ、ただ、貴女を心配するノエルが不憫に思えて仕方なかっただけですわ!それだけよっ!」
鼻を鳴らして私から目を逸らす彼女。
…ははぁ。
落ち着いて話してみると、彼女の性格がよく解った。
優しいのに、気持ちを伝えるのが不器用なんだ。この娘。
「でも、お見舞いに来てくれた事は本当にありがとう。とても嬉しかったわ」
私は彼女にお礼の言葉を述べた。
「……そう」
こういう人には、ストレートな言い方が一番効果がある。
ヘンリエットの反応に、何だか意地悪心が芽生え始める私。
(この娘、結構面白いかも…)

その時、保健室のドアをノックする音が聞こえた。
この保健室には何故か私たちだけしかいなかった。席を立とうとしたノエルをヘンリエットが制す。
「私が見てきますわ。ノエルさんもリリーシャさんの看病でお疲れでしょう?」
「えっ?私が見てく…」
「人の好意は素直に受取っておくものよ?」
そう言って、ご機嫌な様子が隠せてない顔でカーテンを潜っていった。

二人きりになった時、私はノエルに疑問をぶつけてみた。
「ねえ、なんで私、保健室にいるわけ?体の包帯、誰がやったの?」
「医者。一昨日、医者が学園にいた時にリリーシャが帰ってきたから、本当に幸運だったんだ。病院は何処も満席で、ベッドが足りないらしいよ」
「納得。…ところでさ、ノエル。いつの間にヘンリエットを仲良くなったの?」
「ふふん?それはね〜、ヘンリーって実は…」
それ以上、私はノエルの話を聞くことができなかった。


なぜなら、
「リリーシャ!!一体どういうことっ!!?」
カーテンを乱暴に開くと、凄い剣幕で私の胸倉を掴み上げてきたからだ。
「!!ヘンリッ、い、いたいいたいたいたい!」
激痛が全身に走る。
私、重度の筋肉痛なんだって!それに所々擦り傷があるし!ホントに痛いのよ!
さっきまでの和やかな雰囲気は何処へっ!!?


「貴女に会いたいって、ライ先輩がお見えになってるわよっ!!」


その言葉に、私は凍りついた。


0516創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:23:09ID:mDDhnAGp
支援!!
0517代理投下2009/03/13(金) 22:23:36ID:YH1JjJ2Q
「うん……ごめんなさい。ヘンリエット。ノエル」

私がそう言うと、ヘンリエットは手を放した。
私はしわくちゃになった黄色のパジャマの襟元を戻していく。
まだ怒っているヘンリエットに、心を覆い隠したまま、笑顔で返した。
誰にも、これを悟られるわけにはいかない。
私の罪を知ったら、この娘たちに迷惑がかかるだけだ。
それだけは絶対イヤだ。
「心配してくれてありがとう。ヘンリエット。貴女、とっても優しいのね」
「なっ!?」
突然、顔を赤らめて慌てはじめる彼女。
「べっ、別に貴女が心配というわけじゃ、ただ、貴女を心配するノエルが不憫に思えて仕方なかっただけですわ!それだけよっ!」
鼻を鳴らして私から目を逸らす彼女。
…ははぁ。
落ち着いて話してみると、彼女の性格がよく解った。
優しいのに、気持ちを伝えるのが不器用なんだ。この娘。
「でも、お見舞いに来てくれた事は本当にありがとう。とても嬉しかったわ」
私は彼女にお礼の言葉を述べた。
「……そう」
こういう人には、ストレートな言い方が一番効果がある。
ヘンリエットの反応に、何だか意地悪心が芽生え始める私。
(この娘、結構面白いかも…)

その時、保健室のドアをノックする音が聞こえた。
この保健室には何故か私たちだけしかいなかった。席を立とうとしたノエルをヘンリエットが制す。
「私が見てきますわ。ノエルさんもリリーシャさんの看病でお疲れでしょう?」
「えっ?私が見てく…」
「人の好意は素直に受取っておくものよ?」
そう言って、ご機嫌な様子が隠せてない顔でカーテンを潜っていった。

二人きりになった時、私はノエルに疑問をぶつけてみた。
「ねえ、なんで私、保健室にいるわけ?体の包帯、誰がやったの?」
「医者。一昨日、医者が学園にいた時にリリーシャが帰ってきたから、本当に幸運だったんだ。病院は何処も満席で、ベッドが足りないらしいよ」
「納得。…ところでさ、ノエル。いつの間にヘンリエットを仲良くなったの?」
「ふふん?それはね〜、ヘンリーって実は…」
それ以上、私はノエルの話を聞くことができなかった。


なぜなら、
「リリーシャ!!一体どういうことっ!!?」
カーテンを乱暴に開くと、凄い剣幕で私の胸倉を掴み上げてきたからだ。
「!!ヘンリッ、い、いたいいたいたいたい!」
激痛が全身に走る。
私、重度の筋肉痛なんだって!それに所々擦り傷があるし!ホントに痛いのよ!
さっきまでの和やかな雰囲気は何処へっ!!?


「貴女に会いたいって、ライ先輩がお見えになってるわよっ!!」


その言葉に、私は凍りついた。


0518創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:24:32ID:mDDhnAGp
支援!
0519代理投下2009/03/13(金) 22:26:13ID:YH1JjJ2Q



同時刻。
メジロゲットー。
既に日は暮れ、夜になっていた。
黒の騎士団の前線部隊が周辺を占拠していた。十機あまりの月下とその倍以上の無頼が配備されている。
周囲には物々しい雰囲気が漂っていた。
夜は冷えることもあって、たき火の周りに黒のジャケットを着た男たちが屯っている。
たき火を囲み、休憩を取っている見張り役は配給されたお吸い物を口にしていた。
「またブリタニアと戦争することになるとはな。まあ、いつかこうなるとは思ったが…」
「なあ、行政特区はどうなったんだ?」
「馬鹿野郎!もうお終いだよ!あの裏切り皇女め。ゼロを撃ちやがって!死んで当然だ!」
「ここの指揮官、奥さんがやられちまったらしいぜ」
「…ひでぇ。ブリキ野郎。どこまでも腐ってやがる」
「ゼロは軍人だけだと言ってたが、邪魔をするなら民間人も容赦しねえぜ」
「当ったり前だ。あんなやつら、片っ端から…って、ん?」
団員の一人が、空で光るものを見つけた。
星にしては大きすぎる。
団員が双眼鏡で『それ』を確認した。
それを見るなり、顔が蒼白になる。
「!?あ、あれはっ!」
「あ?一体どうした?」

ドォン!!
爆発した。
粉塵を舞い上げて、コンクリートが深く抉り取られた。
大きな爆音と共に彼らは吹き飛ばされた。


周辺に警告音が鳴り、多くの団員が動き出した。
それを上空五〇〇メートルから確認する一機のナイトメアがいた。
両腕に装備された大型ガトリングが火を噴く。
ダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!
パイロットは、モニターでロックオンされたナイトメアや倉庫に容赦なく口径1213mmベネディクト弾を撃ち込んでいく。
着弾地点から次々と火の手が上がった。
KMFが空を飛べると飛べないとでは、戦力的に天を地の差がある。
一方的な虐殺に、そのナイトメアのパイロットは納得いかなかった。
このような戦術は彼女のスタンスではない。
口径1213mmベネディクト弾の雨を終わる頃には、倉庫や施設は全て崩壊していた。
0520創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:26:28ID:WUUcIWOI
支援
0521創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:26:32ID:mDDhnAGp
支援
0522代理投下2009/03/13(金) 22:28:07ID:YH1JjJ2Q
「私は遠距離から攻撃は嫌いなんだよなぁ…」
モニターに残存する多数のナイトメアの熱源反応を感知する。
それを見たパイロットは思わず、笑みに口元を歪めた。
「だから!」
瞬時に右手でパスワードを打ち込んだ。
ガチャッという音と共に、両腕に装備されていた大型ガトリングがパージされる。
そして、背中に備え付けられていた、ナイトメアの全長の2倍はあろうかという複雑な形状をした巨大ランスを両腕に持ちかえた。
そのまま、多数のナイトメアが集結している敵陣の中心に猛スピードで突進する。
爆風を周囲にまき散らしながら、自ら境地へと降り立った。

『緑色のグロースター?』
『いや、違う!巨大な槍とあの機体は、まさか!!』 
突然現れたKMFに周囲の人々は目を見張った。

外形はグロースターを緑にカラーリングしたような機体。
しかし、所々の部位がグロースターとは異なっていて、全体的なシルエットはグロースターのよう重厚感では無く、ランスロットのような機動性を重視した印象を受ける。
特に胸部の形がグロースターと大きく異なっていた。
金色の槍のようにとがっていて、嘴のように展開した奥には大型のファクトスフィアが顔を覗かせている。
背中にはフロートシステムに漆黒のマント。
明らかに量産機ではない専用機体。一人のパイロットがそのKMFの名を口にした。


『まさか、べディヴィエール!?』
『ははっ!ご名答おお!!』
そう、ブリタニアの騎士ならば誰もが憧れ、畏怖する存在。皇帝直属の騎士、ナイトオブラウンズの一角が目の前にいる。
『マリアンヌの再来と謳われる、『あの』!?』
『ラウンズがこんな辺境にいるわけ無えだろ!一斉にかかれ!相手はたったの一機だ!』
驚愕の叫びと共に襲いかかってくる幾多のナイトメア。
0523創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:28:40ID:mDDhnAGp
全力で支援!
0524創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:29:01ID:WUUcIWOI
支援
0525代理投下2009/03/13(金) 22:29:18ID:YH1JjJ2Q
それを見たノネットは声を荒げる。
『やっぱこうでなくっちゃなあ!騎士の戦いというものは!!』
ランスに備え付けられた4つのスラッシュハーケンが4機の月下を捕らえた。
その大槍を何なく振り回し、振り回される月下が周りにいる無頼に次々と激突する。
まるでカーニバルのようにナイトメアは円を描きながら振り回されていた。
それだけではない。
バババババババババババッ!!
ランスの中心が回転し、槍に装備されているバルカンが火を噴いた。槍の先には無数の弾丸が飛び交う。
被弾したナイトメアは黒煙を上げて沈黙する。
スラッシュハーケンが『べディヴィエール』の手元へ引き戻され、4機のナイトメア
が宙に舞う。
ランスの先端の回転数が更に増し、コーン状のブレイズルミナスを形成した。それだけでは留まらず、ブレイズルミナスの槍はさらに伸びる。

そして、一列に並んだ4機のナイトメアのコクピットを串刺しにした。

4機のナイトメアを串刺しにしても、ブレイズルミナスコーンの先端は4機目のコクピットから突き出している。
それを肩手だけで持ち上げる剛腕のKMF。
そのまま、『ベディヴィエール』はランスの先端に最後の一機を捉えた。
亡き骸を貫いたまま、『ベディヴィエール』はフロートシステムを展開し、黒いマントを靡かせながら最後の1機に突進していった。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
抵抗も空しく、その無頼改は貫かれた。
しかし、べディヴィエールの勢いは止まることなく突進を続け、後方にある倉庫に激突した。

ドォォォオオオン!!!
5機のナイトメアは爆発し、倉庫を巻き込んで周囲に爆炎が吹き荒れた。

通常、サクラダイトの爆発に巻き込まれたナイトメアは同等の被害をこうむる。
多くは誘爆、良くて戦闘不能の大破。

しかし、燃え盛る炎の中にいた緑色のKMFは傷一つ負ってはいなかった。
槍を中心に、べディヴィエールの全身をカバーできるほどの六角形のブレイズルミナスが展開されている。

最大の攻撃力と最高の防御力を備えた巨大ランス。
それがこのKMFの唯一の矛にして、盾。

周囲は火の海だった。
一瞬で20機近くのナイトメアは撃墜され、攻撃開始からわずか数十秒でこの一帯の戦力は皆無と化した。
周辺にいた黒の騎士団の団員も灼熱の炎に身を焼かれ、絶命している。

0526創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:30:11ID:mDDhnAGp
支援
0527創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:30:34ID:WUUcIWOI
支援
0528代理投下2009/03/13(金) 22:30:58ID:YH1JjJ2Q
コクピット内にいる凄腕のパイロット、ノネット・エニアグラムは大きなため息をついた。
戦闘終了後、すぐに通信が入った。

「まったく手応えが無い。これではつまらん」
モニター画面に映っている開発主任は、苦笑しながら言葉を返す。
『ノネット様。『ゲイボルグ』の調子は如何でしたか?』
「ああ。悪くない。突貫作業、感謝するよ。短期間でよくここまでやってくれた」
『勿体なきお言葉です。連中もその言葉だけで疲れも癒えましょう』
「いや、お前たちには本当にすまないと思っている。ロシア戦線に続いて疲労も溜まっているだろう。ここが済んだらたっぷりと休暇を与えてやる。それまで楽しみに待ってろ」
『はははっ。本当にお優しい方です、ノネット様は。優秀な上司を持つ我々は果報者ですな』
「あはっはっはっはっ!お前は人を持ち上げるのが上手いなあ!」
『私は本心を述べたまでですよ』
「私が優秀な上司かぁ?ならこの『べディヴィエール』を駆動系がいかれるまで使ってやろうか?お前らの休暇を短くしてやる」
『…開発者として嬉しいのですが、それだけはご勘弁を』
「なはっはっはっはっ!本当に正直だな、お前は」
豪快な大笑いを返した後、ノネットは再び操縦桿を握りしめた。
「よし!私はこれで帰還する。『ゲイボルグ』の肩慣らしは済んだしな。コーネリア様に伝えておいてくれ。決戦では噂に聞く『ゼロの双璧』とやらを相手にさせろ、とな」
『イエス、マイロード』

この日、メジロゲットーにある黒の騎士団の中継基地は一分足らずで壊滅した。
たった一機のナイトメアによって。
だが、その事実が黒の騎士団の本部に通達されること無かった。
駐屯していた連絡員も一人残らず殺されていたからだ。

もしこの時、『彼ら』がナイトオブラウンズの存在を知っていれば、未来は変わっていたのかもしれない…





0529創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:31:20ID:mDDhnAGp
支援!
0530創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:31:38ID:WUUcIWOI
支援
0531代理投下2009/03/13(金) 22:32:53ID:YH1JjJ2Q
私はノエルとヘンリエットを退出させた。
幸いにもこの部屋で休んでいるのは私だけだった。
窓際のカーテンを閉めて夜空を覆い隠し、そのままライ先輩は立ったまま私を見降ろしていた。

笑顔が印象的なライ先輩の顔に、一切の表情が無かった。
それを見ただけでも、あの光景が嘘ではなかった事を切に訴えている。
ライ先輩の口が薄く開く。
「お友達は、いいのかな?」
第一声はそんな気遣いの言葉。
ひどく意外だった。
「ええ。それに、私の友人たちの前で話せる話でもないでしょう?」
「……君ひとりで、あの事件を引き起こしたっていうのか?」
「………それが何か?」
出来るだけ平然とした表情を取り繕った。
内心は驚愕にうち震えながらも、そんなことは表情に一切出さなかった。
幸い、声も上ずっていない。
「心配しなくてもいいですよ。誰にも話してしません」
「…そうか。それは、助かった」
「それで、要件は何です?私を殺しにきたんですか?」


「…だったら、どうする?」


ライ先輩の眼光が急に鋭くなった。
怖気がした。

冷たい。
冷たすぎる。
人間の目じゃない。
気付くと、無意識に震える体を抑えていた。
手に力が篭もる。
腕に食い込む爪が少し痛い。
「…私の命は先輩にあげます。…焼くなり煮るなり、好きにして構いませんよ……できれば、ひと思いに殺してほしいですけど」
その言葉にライ先輩は目を見開いていた。
私の発言が大層意外だったのだろう。
0532創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:33:10ID:l1qIXJkw
sienn
0533創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:33:33ID:mDDhnAGp
支援
0534代理投下2009/03/13(金) 22:33:42ID:YH1JjJ2Q
「…それは、友達を、失ってしまったから?」
「っ!!!」
そこまでっ、私の事を!!
……隠しても無駄か。
…ここは、素直に答えておくべきだろう。
「…ええ。そうです。…今さらなんですけどね……怖くなったんです」
私はライ先輩から目を逸らした。
夜の景色が見られなくて少し困る。
でも、ライ先輩の行動は正しい。尋問する時、窓が無い個室で行うのは閉鎖的な圧迫感だけではなく、質問に全ての注意を向けさせるための手段でもある。
その上、カーテンには模様も無くて面白みが無い。
目がとまる場所が無かった。ライ先輩の美形を間近に見られるというのに、今は全然嬉しくない。
「…君に聞きたいことがたくさんある。正直に、答えてくれるかな?」
「……ええ、でも、一つ条件があります」
「…何だい?」
「先に私の質問にも答えてほしいんです。勿論、嘘偽りなくですけど」
「…答えられる範囲であれば、いいよ」
ライ先輩は私が何を質問するか分っていないと見える。
おそらく、ゼロの正体が誰かと、もう一度問い詰めるようなことはしないとは分っているようだ。
さっきのやりとりでも何となく私と同じくらいの思考力があることは理解できた。
そうでなければ、学生と黒の騎士団の幹部を両立するなんて出来るわけがない。
私は頬笑みを浮かべながら、爆弾を落とした。


「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア…」


ほんの一瞬だが、ライ先輩の目が見開いた。
「……やっぱり、そうなんですね。隠さなくても結構ですよ。先輩。今の反応で分かりました」
先輩は口を噤んでいた。
肯定と受け取っていいだろう。
うまく不意打ちをかけられたことに私は内心で微笑んでいた。
「本当に王子様だったんだ。先輩は」
「なぜ、分かった?」
「ルルーシュ先輩がゼロって分かって色々考えてたんです。そしたら昔、兄が言っていたことを思い出して。実は、結構前から思ってたんですけど…」
「…驚いたな」
「なぜ、ゼロがブリタニアに歯向かうのか。ゼロの正体を知ったら誰だって気付きます。
…だから、『王の力』を持ってたんですか。納得です」


「……ギアス、か」


今度は私のほうが驚いた。
まさか、知っているなんて…
0535創る名無しに見る名無し2009/03/13(金) 22:34:01ID:WUUcIWOI
支援
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