コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ37
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0001創る名無しに見る名無し
2009/02/24(火) 23:43:06ID:eaiT05oZ感想等もこちらで。このゲームについて気になる人はギャルゲー板のゲーム本スレにもお越しください。
基本sage進行で。煽り・荒し・sageなし等はスルーするか専ブラでNG登録して下さい。
(投稿前に読んでください >>2-)
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■関連スレ
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 21 (本スレ)
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gal/1225489272/
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http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1207641630/
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 攻略スレ4
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gameover/1209720651/
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■攻略wiki http://www9.atwiki.jp/codegeasslc/
0281創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 00:43:45ID:JHkrJfDaへへ… 続きが気になるぜ…
0282創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 00:49:06ID:eb7dM8huあしっど・れいん卿、GJでした!
というか相手をした女性は誰なんだw
ノリノリなロイドさんがらしいなぁ、と思えますね。
相手の動きを見つつ、勝負にかかる……ところで「つづく」の文字が。
さてさて、どうなることやら……
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0283創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 14:51:58ID:xZlwbMuZライアニャはかなり好きなカップリングなので、
これからアーニャがライにどう惹かれていくかがすごく楽しみです。
続き期待しております!
0284創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 21:42:07ID:BTYjPBJCあいつこのままいなくなればいいのにww
0285創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 22:09:34ID:h3rG6tSq0286創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 22:11:04ID:h3rG6tSqそれがモニカの日課であり、趣味だ。
「うん、美味しいね」
「でしょう?」
目の前でモニカと同じようにカップを傾ける少年、ライの賛辞の言葉にモニカは表情をほころばせた。
やはり自分の趣味が理解されるというのは嬉しい。
ラウンズは貴族出身が多いというのに、貴族らしい貴族という者があまりいない。いつもモニカは一人寂しく日課をこなしていたのだ。
「アーニャは紅茶よりもジュースだし、ジノやノネットなんて論外。ヴァルトシュタイン卿とお茶なんて出来ないし……」
「はは、確かに」
「でも、ライって本当に貴族出身じゃないの? 作法も完璧だし……」
そう言うと、ライは珍しく動揺を見せた。
「そ、そうかな? 僕は僕ほどがさつな人間はいないと思うよ」
「ふふっなにそれ」
あまりに稚拙な誤魔化しに、思わず笑みが零れてしまう。ライ本人はそれではぐらかしているつもりなのだろうが。
それにしても、
(出身を聞かれるのが困るのかしら……ま、これ以上はいっか)
人が隠している物をわざわざ暴きたいとも思わない。興味はあるが、本当に大切な事ならいずれ彼の方から話してくれるだろう。
それくらいには親しくありたいと思う。そういう相手だ。
「あ、」
と、何かに気付いたライが声を上げた。
首だけ振り返って見る。見た瞬間、モニカは嫌そうな表情を、隠す素振りも見せずに表に出した。
「ルキアーノ・ブラッドリー……何の用?」
「ほう、これはこれはクルシェフスキー卿。私に向かって何の用とは、無礼極まりないな」
そういうのいいから、帰って。そんな無言の要求を視線で送る。
しかしルキアーノは気にした様子もなく、
「まあいい。私が用があるのはこちらの男だ――ライ・ランペルージ」
「へ? 僕ですか?」
ライは心底意外そうに首をかしげた。
ルキアーノは続ける。
「就任の儀以来、挨拶をしていなかったからな。それでこのルキアーノ様が直々に来てやったという訳だ」
なにを、いちいち偉そうに。モニカは忌々しげにルキアーノを睨んだ。
こんな男を相手にする必要はないと言いたかったが、ライは真面目にルキアーノの言葉を受け取ったようだ。
0287創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 22:12:21ID:h3rG6tSq「わざわざありがとうございます、ブラッドリー卿。新たにナイト・オブ・イレブンに就任したライ・ランペルージです。以後お見知りおきを」
「ああ」
ルキアーノは一度頷いて、
「ところで……貴様の大切な物は何だ?」
これにはライも質問の意図が理解出来なかったのか、
「大切な物……ですか? それはどういう意味でしょう」
と、これまた真摯に答えた。
ルキアーノはふん、と鼻を鳴らし高らかに宣言する。
「なに、個人的な興味だ」
「はぁ……」
納得出来ない様子のまま、ライはすっと両目を閉じて思考に入った。
それを見たモニカは、昔同じ事を問われた時の自分を思い起こしていた。
(私は何て答えたっけ?)
確か、適当にあしらった記憶がある。
(大切な物……)
ルキアーノは命という答えを持っている。だが、自分はどうだろうか。
大切な物と言われても、明確な答えをそう持ち合わせてはいない。だからこそ自分ははぐらかしたのだ。
(ライは、何て答えるんだろう)
普段なら追い払っているルキアーノを放置したのは、彼に対する微かな期待があったからだ。
ライならば、きっと自分の出せない答えを持っている気がした。それを聞きたい。
「そうですね……」
やがて、ライはゆっくりと口を開いた。
真っ直ぐな視線をルキアーノに向けて、
「僕の大切な物。――それは、僕が今まで経験した出来事、そして出会ってきた全ての人々との思い出です」
他の誰かが言ったなら、気恥ずかしくなるような台詞を、ライは誠実な表情で語った。
「ふん……変な男だ」
ルキアーノはそれだけ言い残して去っていく。
ただ、モニカの感想はルキアーノの物と同じだった。ルキアーノがいなくなったのを確認した後、
「本当、変よね。ライって」
「ええっ」
少しショックだったらしい。ライは悲しげな表情を紅茶のカップで隠す。
そんなライを微笑ましく思いながら、モニカも紅茶を一口飲んで、ふと、考え付いた質問をしてみた。
「ねぇ、ライ」
「ん?」
「さっき言ってた大切な物に、私も入ってるの?」
ライは一瞬驚いたように目をまんまるに見開いた後、すぐに笑顔を浮かべて頷いた。
――もちろん。
0288創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 22:13:06ID:h3rG6tSq0289創る名無しに見る名無し
2009/03/04(水) 22:55:58ID:JHkrJfDaライはサラッと恥ずかしい事を言いますね!
GJでした!
0290Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:02:07ID:UDEtnOjt20スレぐらい予定しています。
0291創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 00:07:49ID:imDfnNht0292Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:08:27ID:UDEtnOjtAnother Lost Colors 色とりどりの世界を君に
第三話
アニメともゲームとも違うパラレルワールドと思ってください。
話の展開上オリジナルキャラ、オリジナル設定、オリジナル展開多数です、
そういうのが苦手な方はスルーしてください。
一応ライが主人公ですが設定がかなり違います。
0293Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:10:02ID:UDEtnOjtヘリポートにライはコーネリアを迎えていた。
後にはアルもついている。
「ライエルか、モスクワをおとしたそうだな」
「いえ、あれは兵達や部下達ががんばった結果です、私は何もしてません」
「ふん、相変わらずその自信に裏打ちされた謙虚さ、変わってないな。
それよりそのしまりのない顔何とかならんのか」
「いえ、この顔は生まれつきですから・・」
ライは多少苦笑した。
確かにライの顔は軍人にしては柔和過ぎるというかあまり威厳がない。
「まあいい、それよりそっちの話は・・」
コーネリアはもう1人いたエリア11の官僚に顔を向ける。
「はい、総督閣下の歓迎パーティー・・」
その話を聞いてライは眉をひそめる。
(パーティー?今このエリアはそれどころかじゃないはずだ)
案の定コーネリアはその官僚に銃を突きつける。
「ぬけている、ほうけている、堕落している、ゼロだ、早く私のもとへゼロを差し出せ」
「まあまあ、総督閣下、銃をお納めください、君、後で正副総督執務室にゼロに関する
資料とこのエリアに関する資料を後でまとめて持ってきてくれないか」
「え?それはいつまでにございますか」
「いつまで?今日中か遅くても明日までに、ってもしかして用意してないの」
ライはすでにそうゆう資料はすべてまとめて用意されているものと思っていた。
「いえ、その、事前に命令がございませんでしたので・・」
官僚の言い訳がましい言葉を聞いて呆れた。
(普通命令がなくても事前に用意しておくものでだろう、コーネリアの言うとおり
ほんとにほうけてるとしか思えない)
「総督閣下、副総督閣下、すでにそれらの資料はまとめてありますので今日中に
提出いたします」
官僚に代わって答えたのはアルだった。
0294Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:13:37ID:UDEtnOjt執務室のドアには統帥府直属帝立特務遊撃師団暫定司令部と書かれた手書きの紙が張られている。
特撃はその性質上一箇所に留まることはなく、司令部は司令のライがいる場所におかれることがある。
現在特撃は政庁基地に駐留し、一部は政庁を間借りしており司令部は執務室におかれることになった。
「こちらが資料になります」
アルが持ってきた資料をライは目を通す。
「ゼロに関する資料はこれだけしかないのか」
「はい、警察もほとんどゼロに関する情報はつかめてないようです」
「これじゃあ、雑誌に書いてた内容とほとんど代わらないな」
「それとゼロが映っている唯一の映像をTV局から借りてきました。
パソコンの中にすでに送ってありますのでご覧ください」
ライはパソコンの中から映像データのアイコンをクリックした。
パソコンと執務室のテレビにその画像が映った。
枢木一等兵強奪事件の映像である。
(これがゼロ、それにしても大胆不敵だな、クロヴィスの専用車に模した車で
正面から現われるとは)
映像ではジェレミアとゼロの掛け合いが始まっている。
『言うぞ、オレンジだ』
『何、何のことだ、えーいこやつをひっとらえよ』
『全力で私を見逃せ』
「!!」
この瞬間、ライは驚愕した。
「ちょ、今の!?」
「どうされました」
ライはすばやくパソコンのキーボードを打ち、先ほどの映像をまき戻し再生した。
0295Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:14:39ID:UDEtnOjt『全力で彼らを見逃すのだ』
ジェレミアの顔を拡大し映像をクリアにしていく。
「ジェレミア卿の目が赤くなっている、ゼロはギアスを使ったんだ」
「!!ゼロも司令と同じギアスユーザーということですか」
ライは書類をひっくり返してある書類をみつけた。
「前幕僚長バトレー将軍、クロヴィスの護衛を勤めていた親衛隊も
クロヴィスの殺害された時間の記憶がないと証言している。
ジェレミア卿はこの時のことをなんと言っている」
「確か記憶に無いと・・」
「やはりな、前後の記憶が混濁するのはギアスの後遺症だ。
ゼロは私と同じ絶対遵守のギアスユーザーだ」
ライはパソコンを先ほどの映像からシンジュク事変のデータに
切り替えた。
パソコンではシンジュク事変のナイトメアの動きが出ている。
「この時からレジスタンスの動きが格段に良くなっている」
「恐らくゼロが指揮したのでしょう」
「まるでナイトメアをチェスの駒の様に扱ってるな。
これがゼロの指揮だとしたらゼロは相当な用兵家だな」
ライは一旦書類とパソコンから目を離し考えた。
「アル、戦略研究班に言ってゼロを徹底的に分析させろ。
情報部にはゼロに関する情報収集、どんな些細な情報も私に報告するように言え。
ギアス解析班にはゼロのギアスの解析を頼む」
「イエス、ユアハイネス」
(ゼロ、もしかしたら僕にとって最大の敵になるかもしれない
いや、もしかしたら味方以上に必要な敵かもしれないな)
ライは再び書類に目を通した。
「ん?」
「どうしました」
「いや、これなんだがこのお金の流れ、うまくごまかしているけどどう見ても不自然なんだよ」
アルはライから渡された書類を見る。
「確かに、科学技術向上のための研究費となってますが金額が大きすぎます」
「アル、すまないがこれについても調べておいてくれないか」
「わかりました、もしこれが本当だとしたらクロヴィス前総督は相当な予算を
流用したことになります」
「死人に鞭打つまねはしたくないけどね、何か気になるんだよ」
0296Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:16:13ID:UDEtnOjt政庁奥にあるクロヴィスの私邸
ライはここに訪れクロヴィスの書いた絵を見ていた。
「これを全部、クロヴィス前総督が」
「はい」
クロヴィスの執事だった男が言った。
ライは沈痛な面持ちでその絵を見た。
(素人の僕にもわかるほど良い絵だ。
クロヴィス、皇族にさえ生まれてなければ
芸術家として大成してたかもしれないのに
哀れだ)
ライは下を向いて少し涙をこぼした。
ふとある絵に気づいた。
「この絵は?」
「亡きマリアンヌ様とそのお子様達の肖像画でございます」
(マリアンヌ様のご子息にご息女、確かこのエリア11で亡くなったと聞いたが
ユフィが言ってたな、確か名前はルルーシュにナナリー)
この事が後で重大な意味を持つことになるとはこの時のライは気づいてなかった。
0297Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:18:20ID:UDEtnOjt再び副総督執務室に戻ったライは政務に勤しんでいた。
コンコン
扉をノックする音にライは返事をする。
「はい、どうぞ」
「失礼します、副総督閣下」
入ってきたのはスザクだった。
「突然お呼び出しして申し訳ない、枢木一等兵・・いえ、准尉になられるんでしたっけ」
「まだ、正式な辞令は出てませんがその予定です」
「そうですか、では枢木一等兵でよろしいですね、おかけください。
今お茶をいれてもらいますんで」
執務室のソファーに座らせ、お付のメイドにお茶を入れるように頼んだ。
「いえ、そのお構いなく・・」
「遠慮することはありません、本当はスザクと呼びたいし、ライと私のことは呼んでほしいのですが
今は公務中なので勘弁してもらいたい」
「いえ」
メイドがお茶を入れてライとスザクの前に出した。
「あの、この人は・・・」
「ええ、日本人ですよ、小百合さんっていうです。彼女の入れる紅茶は絶品です」
「恐縮です、ライエル様、今日は良いアールグレイが手に入りました。
スザク様もぜひお召し上がりください」
「はい・・」
スザクは少し戸惑っているようだった。
日本がブリタニアに占領されてから、ブリタニア人からは名誉と差別され
同じ日本人からは裏切り者と呼ばれた。
それは仕方ないことだと思いつつ、悲しかった。
目の前にいるライはブリタニア人の中でもさらに支配者階級の皇族である。
本来なら自分を最も差別するべき立場にもかかわらずライはスザクに対して
礼を尽くしている。
「今日貴方を呼んだのは他でもありません、貴方に聞きたいことがあるからです」
「聞きたいこと?」
スザクは首をかしげた。
「ええ、ゼロについてです」
「ゼロ!?そのことでしたら取り調べのとき何度も・・」
「調書なら穴が開くほど読みました、ただ肝心なことが書かれてないんです」
「肝心なこと?」
「貴方はゼロについてどういう印象を持ったかということです」
「僕がゼロについてですか」
「ええ、話していただけますか」
「・・わかりました」
スザクはしばらく考えた後、口を開いた。
0298Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:19:18ID:UDEtnOjt「ほう、貴方は彼によって助けられたと調書には書かれていますが・・」
「そのことについては感謝しています、でもあんなやり方じゃあだめです。
間違ったやり方じゃ意味なんて無いと思うんです」
「ふんふん」
ライは頷きながらメモを取っている。
しばらくスザクの話に相槌を打っていたライだったが
「なるほど、つまり貴方はゼロに対して否定的ということですか」
「はい」
「わかりました、もう結構です、いろいろ参考になりました、ありがとうございました」
(ゼロについてだけではなくスザクの性格も読めてきたな)
「お役に立てたなら嬉しいです」
そう言ってスザクは執務室から出て行こうとするが
「あ、ちょっと待ってください、肝心なことを伝えるの忘れていた、枢木一等兵
貴方学校へ行く気あります」
「学校ですか」
「ええ、普通貴方の年齢だったら学生やってるほうが自然ですから
学校通ってみませんか、もちろん強制はしませんが」
「僕もできれば学校に通いたいと思いますが・・」
「そうですか、ならこれ・・」
そう言ってライが机の中から取り出したのはアッシュファード学園の入学案内と願書だった。
「特派がある大学から一番近いのはこちらですから何かと都合が良いでしょう。
学費はこちらが持つんで安心してください」
「いえ、そんな、そこまでしていただくなんて」
ライはフッと笑った。
「安心してくれ、これは私の、いや僕の自己満足、権力者の道楽とでも思ってくれれば良い
だから遠慮することはないさ、君みたいなタイプの人間はほっとけないし、親戚には
優しくするのは当然だろう」
「親戚!?」
その言葉にスザクは目を見開いた。
「僕の正式な名前はライエル・スメラギ・ブリタニアって言うんだ、従兄弟殿」
「スメラギ!?」
「そうスメラギ、僕の母はキョウト六家筆頭皇家の出身、君とは従兄弟にあたるんだ」
そう言ってライはメモに何かを走り書きしてスザクに渡した。
「僕のプライベートナンバー、何かあったら電話して力になるよ」
0299Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:20:13ID:UDEtnOjt釈放されたジェレミアは廊下を歩いていた。
「だからオレンジではないというのに・・」
なにやらブツブツ呟いている。
「おい、オレンジ」
「だからオレンジではないと!!何度も・・キューエル卿か何の用だ」
「副総督がお呼びだぞ」
「副総督が私に?」
「ああ、この間のことかもしれないな、あの副総督は改革派のリーダーだ。
ナンバーズと共生と融和などと言う戯言を唱えている連中で、純血派とは対立する派閥だ。
たださえ厄介なのに今回の件を理由に私達を処分する気かもしれん。
貴様がどこぞの最前線にとばされようともかまわんが、私達まで巻き込まれたら
いい迷惑だ」
「何だと!先日の件は貴様のせいだろう、あの件に関しても私が覚えていないと何度言ったら・・」
「また、その言い訳か、それより早く行け、これ以上心証を悪くさせるな」
0300Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 00:21:32ID:UDEtnOjtコンコン
「はい、開いてますよ」
「失礼いたします、ライエル副総督閣下、ジェレミア・ゴッドバルト、
ライエル様の命によりただいまはせ参じました」
(テンション高い人だな)
「急にお呼び出しして申し訳ありません、ジェレミア卿」
「ライエル様の命でしたらいつでもはせ参じる所存であります」
「ジェレミア卿、私のことはライエル卿、もしくは略してライ卿で
結構ですよ、皇族といっても殿下とはつかないんですからわざわざ様なんて
つけなくてもよろしいです」
「いえ、しかし、皇族相手にその様な口のきき方は・・」
「いいですね、ジェレミア卿」
やんわりとした口調だが妙な威厳があるライの声にジェレミアは
「イエス、ユア、ハイネス」
と返事してしまった。
「先日は災難でしたね、無事釈放されたそうで、今回貴公をお呼び出ししたのはその件にも
関わりあることです」
ジェレミアは息をのんだ。
「信じてください、決して私は帝国を裏切るようなまねをしておりません。
オレンジなどというのはゼロのでっち上げです、私は本当に覚えが・・」
「わかりました、信じます」
「信じられないのも無理はありません、ですが私の皇族に対する忠義は・・っと今何と仰いましたか!!」
「信じますって言ったんですよ、ジェレミア卿」
ジェレミア卿は信じられない者を見るような目でライを見た。
今まで同じ純血派の仲間にすら信じてもらえないのをライは立った一回会っただけで信じるといったのだ。
「あの、ですが、しかし・・」
ジェレミアは逆に動揺し言葉に詰まる。
「なんですか、もしかして本当は疑惑どおり不正を働いたとでも・・」
「いえ!!決してそのようなことは!!」
「フフ、すいません、私は一目見ればその人が嘘をついてるかどうかはわかります。
貴公は嘘をつける人ではないとわかります」
「あ、ありがとうございます」
ジェレミアは頭を90度下げた。
0301創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 00:25:04ID:i+/04ORK支援
0302創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 00:40:56ID:LJVWszdd0303創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 00:52:43ID:ldn4s/CS0304Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 01:00:45ID:UDEtnOjt恐らく貴公は混乱と興奮のあまり、自分の意思と全く別の行動をとってしまったのでしょう。
記憶がないのもその辺の影響でしょう、精神医学的にありえない話ではありませんから。
あれは不幸な事故です。
さすがに貴公を前の階級に戻すことはできませんが貴公や純血派の復権できるだけ
お手伝いさせていただきます」
さすがにギアスについて説明するわけにはいかなかった。
ジェレミアはボロボロ泣き出した。
「どうしました!?」
「うう・・失礼しました、命を助けられたばかりかこのような私の言うことを
信じてもらえて大変感動しております。
この恩義このジェレミア命に代えましてもかえさせていただきます」
「はは・・気が向いたらでいいですから・」
(本当に感情が顔に出る人だな)
「一つ聞きたいことがあります」
「はい、何なりとお申し付けください」
「貴公はゼロにどういう印象を持ちましたか」
「ゼロ・・ゼロー!!」
急に叫びだしたジェレミアにライはビクッとする。
「ゼロ、奴こそブリタニア帝国臣民の敵!!世界の敵!!私の敵!!・・」
その後ジェレミアはよくもまあこれだけボキャブラリーが続くなとライが
感心するくらいゼロに対する罵詈雑言を叫び続けた。
10分後
「つまり、ゼロを倒すことこそが・・」
「あの、もう結構です、貴公がゼロにどういう想いを抱いてるか十分理解しました」
「は、しかし、まだ20分ぐらい続きが・・」
「本当に結構ですから、私の用件は以上です、下がって良いですよ」
「は、失礼します、最後に一つお聞きしてもよろしいでしょうか」
「?なんですか」
「ライエル卿の実の母親がマリアンヌ様と言うのは本当なんでしょうか
今は亡きルルーシュ様の双子の兄弟というのは」
ライはその質問に顔をしかめた。
「マリアンヌ妃の二つ名『閃光』を私が受け継いだからそういう噂も出ているのも知っています。
亡き従兄弟のルルーシュと誕生日が全く同じ日だというのも噂の出所の一つですが
それはまったくのでたらめです、DNA鑑定でもそれは証明されています」
「も、申し訳ありません、出すぎたことを聞いてしまって・・」
「いえ、貴公がマリアンヌ妃を敬愛しているのは知っています。
私もその2つ名に恥じぬ振る舞いをするつもりなのでよろしくおねがします」
「ははぁぁ」
ジェレミアは恭しく頭を下げた。
ジェレミアが出て行った後、アルが執務室に入ってきた。
「いいんですか、今更純血派を取り込んだところでたいしたメリットはありませんよ。
彼らはあまりにも私達と思想が違い過ぎます」
ライは机にひじを突き
「別に純血派を取り込むつもりはないよ」
「だとしたら何故ジェレミア卿をかばうのですか。
こっちまで余計な火種を抱えることになりますよ」
「う〜ん、彼みたいな人間も何だかほっとけないんだよね」
アルはライの人の良さにため息をつく。
「それに」
「それに?」
「彼の忠義心は本物だよ、味方にしておいて損はない」
0305Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 01:01:41ID:UDEtnOjt「本日はクロヴィス様のご葬儀があります」
アルはスケジュール帳を見ながら話す。
「そういえば今日だったな、本当なら直に参列したかったが
今ここを離れるわけにはいかないな」
「衛星中継される予定なのでそちらをご覧ください」
予定の時間になってアルは執務室のスクリーンとプロジェクターを
動かす。
スクリーンには亡くなったクロヴィスの巨大な肖像画がうつり
ブリタニアの国歌が流れ荘厳な雰囲気だ。
『神聖ブリタニア帝国第98代唯一皇帝陛下よりお言葉』
髪がロール巻きの威厳のある男性が壇上に立った。
ライは皇帝を見るたびに思うことがある。
(どうやってあの髪セットしてるんだろう)
『人はァ! 平等ではない・・・』
ライは皇帝の演説を聞きながら思った。
(やれやれ、伯父貴は相変わらずだな、確かに平等なんて人間の幻想に過ぎないが
人の多様性において差別主義もナンセンスだ、平等、不平等に善も悪もない、
もしブリタニアが本当の意味で進化しているのならとっくに戦争なんてやめているはずだ)
演説が終わった後、ライはため息をついた。
「相変わらず伯父貴は当たり前のことを大げさに言う才能に満ちてるな。
息子の葬式まで、こんな政治的プロパガンダを垂れ流さなくても・・」
「今の発言、不敬罪にあたりますよ」
「君が言わなければいいだけだろう」
「私が密告するとは思わないですか」
「その時は僕の人の見る目がなかったというだけさ」
ライはアルとの会話を楽しんでるようだった。
アルはメガネの位置を直しながら
「特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)がエリア5での反乱鎮圧の任を終え
近日中にもこのエリア11に着任します」
「そうか、ようやく彼女達が」
0306Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 01:02:39ID:UDEtnOjt「くそ、何なんだ、奴らは」
「あのような少数精鋭部隊がブリタニアにいるなんて聞いてないぞ」
破壊された市街地において反乱軍のナイトメアが次第に追い詰められていく。
「我が軍随一の機械化部隊がこうも簡単に追い込まれるとは」
「答えは単純明快『弱い』からさ」
一機のナイトメアが放つ銃弾は反乱軍のナイトメアを次々と打ち抜く。
「奴らはコーネリアや、シュナイゼルの親衛隊でもありません」
「展開していた支援部隊、すべて破壊されました!!?」
「少佐!!」
「残りのナイトメアで市街建造物の残骸を盾に頭を叩く、最早これしかない」
部隊の指揮官は部下に指示をだす。
「散開!GO!」
「ジ・オドに反応、気配が殺気だったな、動いたか、ルクレティア」
ナイトメアに乗る黒髪のクールな印象を持つ少女が呟いた。
その額にはギアスのマークが
「はい、大尉、ザ・ランドとGPSの照合完了、残存騎、予想経路2でこちらに進撃してきました」
真面目そうな三つ編みの少女が冷静に言った。
「単純な奴らだ、司令がここにいたら笑っているところだ、ダルク」
「あいよ」
返事をして出てきたナイトメアに乗っているのはショートカットにリボンをつけた
活発そうな少女。
「レセプター同調、ナイトメアフレームへのギアス伝導開始」
ゴゴゴ!!!
轟音があたりに響く。
「いっけえええ!!!」
「何だ!?」
ナイトメアが何とビルを担ぎながら落ちてきた。
「これがあたしの能力(ギアス)ザ・パワー」
「こんなバカな!」
反乱軍のナイトメアはビルの残骸に押しつぶされ爆発した。
「これで当該エリアでのわれわれ(特殊名誉外人部隊)のミッションは
終了した」
サンチアは爆発するナイトメアを見ながら冷静に言った。
「次は、どのエリアでの作戦になるんですか」
「エリア11旧日本だ、大佐から連絡があった。
本隊はすでに駐留している」
「んじゃあ、久しぶりにライに会えるね」
「ダルク、司令かライエル様でしょう」
「え〜、ライも呼び捨てで良いっていってるよ」
「まったく・・たしかエリア11は・・」
「ああ、すでにアリスが潜伏している」
「アリスとも久しぶりに合流できるね、そういえばターゲットは?」
「ゼロ、ギアスユーザーだ」
パチパチ
瓦礫の上にはD.D.が座って彼女達を見ながら拍手をしていた。
「素晴らしいな、実に素晴らしいな
ようやく彼女達も舞台に上がる、本来出会うはずのなかった英雄達の
一大叙事詩、主演はゼロかそれとも君か、私は観客として
そして演出家としてこの舞台を見届けさせてもらうよ、我が契約者ライ」
0307Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 01:04:45ID:UDEtnOjtこれからはキャラ、用語説明です。
特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)
通称イレギュラーズ 隊長はサンチア
特撃に所属している部隊 司令であるライ直属の部隊でライの親衛隊のような部隊である。
(ただしライに騎士はいないので正式に親衛隊とは認められていない)
名前の通り全員ナンバーズでありギアスユーザーでもある。
戦災孤児になり響団の実験体にされ脱走したところをライに助けられてそのまま
特撃に所属している。
各隊員の紹介は次回
小百合
ライのお付きのメイド
苗字や詳細はネタバレになるのでここでは詳しくは書けません。
(この時点で気づいた人は気づいてると思う)
日本人でお茶を入れるのがうまい。
詳細はおいおいと語られる予定。
0308Mrスケアクロウ
2009/03/05(木) 01:13:06ID:UDEtnOjtしかしライがやってること完全にナンパだな。
人脈を作っているところなんですけど。
そしてイレギュラーズの登場。
アリスは次回登場予定。
しかしコードギアス小説版最終巻読みましたが
マリアンヌのいかれっぷりに正直引いた。
さらにナナリーの闇の部分も垣間見れたところとか。
その辺も今後生かしていきたい。
ナナナは登場人物がまともでよかった。
皇帝もマリアンヌも最後はナナリーの選択を支持したし。
あとがきが長くなりました、すいません、では又次回
0309創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 01:47:45ID:bTaKc7zrGJでした!
モニカ……結局のところ性格がイマイチ分からない私。
小説にでも書いているのだろうか。
……ルキアーノ実際何しに来たんだろう?
ライ、まっすぐだ……凄くまっすぐだ……
なんかいいねぇ。
>>308
Mrスケアクロウ卿、GJでした!
ジェレミアァァァァァ!
副総督が自分を信じてくれたことにより、彼はどういう道を行くのか……
でも、ゼロへのうらみは深いなぁ……紅蓮にチンされるフラグはまだ残っているっぽいですね。
しかしこの展開……イレギュラーズもでてるし……
続きが非常に楽しみです!
貴公らの次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0310創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 04:19:06ID:zx2rODTI更新、一日千秋の思いでお待ちしておりましたが、まさかイレギュラーズが登場するとは・・・
GJ!激しくGJです!!
イレギュラーズとライ、SSのネタにすれば妙にうまく絡むんですよねw
しかも、何だか全員とフラグ成立しているみたいだしww
次回も全力でお待ちしております。
P.S
「黒髪のクールな印象を持つ『少女』」
サンチア姐さんって確か20代前半か半ばだったような・・・
0311貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
2009/03/05(木) 12:59:34ID:LJVWszddいや〜かなり間を空けまくりましたが、やっぱり書きたくなっちゃうんだよねw
『姫と騎士にて、愛しきかな』の続編をリハビリな感じで執筆してみた。
……この時間って人いるのかしら? 大して長くないけど、支援が欲しい今日この頃。
0312貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
2009/03/05(木) 13:13:05ID:LJVWszddけれどそれを貴族や皇族が行うものと考えると内容は似通ったものに成ってくる。
即ち『悪巧みの場』であり、『人脈を広げる場』でもあり同時に『万魔殿』と同義。
歴史は言うに及ばず、現代の神聖ブリタニア帝国でもその定義は適用されるだろう。
懇意である者、お近づきになりたい者をこれらのイベントに招待する事で、有効に親交を深めたり新しい関係を築くのだ。
お茶や食事、華麗なダンスの裏ではただの親交と表現するには生ぬるい策謀が飛び交う。
主催者は多くの交友関係を築くべく努力するし、出席者は自分のライバルとなりそうなものを見繕う。
戦いは常に行われているが、それは決して人目に触れることは無い。
『笑顔の敵に後ろから狙われているようで気分が悪い!』
ナイトメア・フレームの操縦に定評があったゴッドバルド家跡取りの言葉だが、正にその通りである。
笑顔で居ない者は居ないが、それは決して善意の体現でない。笑顔とは仮面であり、悪意と打算に満ちた本心を隠す為のフェイク。
偽りの微笑みの下では戦場とは違う戦いが常に行われる修羅の庭だが、そこでの争いが今のブリタニアを作り上げているのだ。
故にこの国で上流階級に属すればイヤでも通らなければならないイベントであり、それは最近になって騎士を持った出戻り皇女とて例外では無い。
「おはようございます、ナナリー様」
ナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下の朝のご機嫌と言うのは、朝一番にかけられた声によって二段階に変化する。
もっとも目が見えず、足が動かないハンデを持ちつつも真っ直ぐ誠実に育った彼女にとって、機嫌が悪いなんて事は自意識下には無い。
強いていうならば『普通』と『上機嫌』である。
「はい、おはようございます」
見えない目で捉える先に居るのはメイドである事が、視覚以外の全ての感覚でナナリーには解った。
故に今朝のご機嫌は……普通である。
「おはよう、ナナリー。よく寝られたかい?」
でもその『普通』は朝食の場で掛けられる声によって、『上機嫌』へと変化し、後はそれが一日中続く。
声の主は先にテーブルについていた銀髪の青年 ライ・ランペルージ。本当の名をライとしか解らない元記憶喪失者。
しかし今では皇帝を初めとした皇族に認められたナナリーの騎士である。
「おはようござます、ちゃんと寝られましたよ? ライさん」
「そうかい? もしかしたら緊張して眠れていないのかと思ってさ」
足が動かないナナリーは車椅子のまま席に着き、メイドたちが料理をテーブルに並べ始め、朝食の準備が整った。
コックの技量が光るブリタニア風ブレックファーストを口にしながら、ライとナナリーの会話は続く。
0313貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
2009/03/05(木) 13:15:20ID:LJVWszdd「ゴメンゴメン。でも始めてのお茶会だからね? 色々と準備する事もあったし」
頬を膨らませる様すらも恐ろしく愛らしいナナリーと宥めつつもその身を案じるライ。
『お二人の会話だけで食パンが幾らでも食べられる』
二人の居住するベリアル宮のメイドなら頷いてしまう、上記の言葉が似合う理想的ストロベリートーク。
「お母様が主催したり、ユフィお姉さまの所へお呼ばれした事はありますけど……ゴメンなさい」
「どうして謝るんだい?」
不意の謝罪にライは首を傾げ、ナナリーは瞳を閉じたままの可愛い顔を苦悶に歪める。
「自分じゃ何も出来ないくせに、『お茶会を開いてみたい』なんてワガママを……」
「前にも言ったと思うけど、君のワガママなら僕は何でも叶えるよ? ナナリー」
『ブリタニアの皇帝になりたい』と真摯に言われたならば、ギアスや策謀の限りを尽くして彼女を世界の頂点に導く用意がライにはある。
万が一にもそんなお願いされないだろうと解っていたが、皇族や貴族の嗜みにして重要命題たるお茶会の開催くらい楽なものだ。
「もう……ライさんと居ると世界一悪い娘になってしまいそうです」
「それは光栄の極みです、プリンセス?」
挟んだテーブルさえも障害であり、僅かな距離すら二人の間では無粋なもの。
だが『それに』と前置きをして、ライは真剣な顔で語り出すのは現実のお話。
「これからブリタニア皇族として生きていくなら、どうしても必要な物を手に入れる絶好の機会でもあるからね」
ブリタニアと言う国で『皇族』と言う存在はただソレだけでも大きな意味を持つ。
しかしそれだけで血を別けた間からでの凄惨な共食いに勝利できる訳ではない。
次に世界を統べる皇帝に相応しい者か否か? 図るべき点としては総合した知力が筆頭に上げられるだろう。
「後ろ盾ですね?」
そして次に重要に成ってくるのが後ろ盾。簡単に言えば支援者・支持者を持つ事。
有力な後ろ盾を例に出せば国の経済を動かす大企業の社長、大隊以上を任せられた高級軍人、エリアを統括する大貴族。
彼らは皇族と言う箔を付ける事を、皇族は一人では得られない影響力を確立する為にその関係を結ぶ。
「それでライさん……どれくらい来て頂けそうですか?」
本来そんな後ろ盾候補を出戻り皇女が、会合の場に引き出すのは難しい。
なぜならばそんな存在は既に他の皇族や大貴族の傘下に入っている可能性が高いからだ。
すなわち皇位継承権を上げるレースとはそう言った後ろ盾たちの獲得競走なのである。
「大丈夫だよ、ナナリー。君が会いたいと言っていた面子は、普通ならば皇族や貴族の後ろ盾になるような人たちじゃないからね
まぁ、儀礼的にお誘いした兄弟や姉妹の皆さんは難しいから抜きにして……」
0314貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
2009/03/05(木) 13:16:42ID:LJVWszddけれども今回は実に楽な交渉に終始した。その理由はナナリーが会いたい人々がブリタニア内で高い存在では無いからである。
「それ以外はリスト通り、全員が参加してくれるみたいだよ?」
そういう意味では姫が心配する騎士への負担は小さいと言う事になるのだろう。
ナナリーはホッと息をついて、数時間後に控えるお茶会へと考えを巡らせる。
「そうですか……楽しみです」
何時でも優しく華やいだ空気が流れるベリアル宮。
そんな場所でもメイド達が準備の為に動き回り、主が夢想を巡らせる今の状況は特筆すべき状態と言えた。
「「「「「ようこそいらっしゃいました、ジョン・マクドナルド様」」」」」
迎えに来た黒塗りのリムジンから降り立った私 ジョン・マクドナルドは呆然としていた。
ここは皇族のプライベートハウスが並ぶ一角、その中では小さいとは言え一般人からすれば大きく豪華な建物 ベリアル宮。
そして自分を出迎える複数のメイドたち……私は場違いだ。
「荷物やコートはこちらでお預かりします」
「あっはい」
何とか小さく返事をすれば、テキパキと自分のコートは剥ぎ取られ、鞄は強奪された……これぞ正しくプロの手際。
空回りする思考回路の片隅で無駄な考えを巡らせてみる。
「どうぞ、こちらへ」
案内された先は充分に手入れされた庭園だった。美しい離宮の佇まいを更に引き立てている。
地面には丁寧に刈り込まれた緑の芝生、過敏に過ぎず咲き誇る淡い色合いの花々たち。
そして中央には白いクロスを纏ったテーブル、その上には白亜に精細な縁取りが成されたティーセットが並んでいる。
これがいわゆるガーデンパーティ? こういった場所に初めて呼ばれるので詳しくは解らない。
「まもなく主が参られます。どうか寛いでお待ち下さい」
案内してくれたメイドにそんな事を言われるも、ガチガチになった体を解す術は無い。
医科大の同僚たちは知らないが、こう言った場所には縁がないと思っていた。
内科や外科を筆頭とした花形を専攻していれば、皇族や貴族にお呼ばれもあるだろう。
だが自分が専門にしているのは精神科、しかも幼児や高齢者を多くの対象にしており……弱者が嫌いなブリタニアでは人気が無い分野なのだ。
ふと周りを見れば参加者は十人に満たず、その大部分がそれなりの格好をして学を収めているが、こんな場所に馴れていない雰囲気。
良かった……自分だけ場慣れしておらず、無礼を働いたら如何しようかと思っていたのだ。
ふいに空気が変わった。メイド達が緊張の糸を張り、私たち招待客にもそれが伝わる。
「ようこそ、いらっしゃいました」
0315貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
2009/03/05(木) 13:17:33ID:LJVWszdd「私のような若輩の招きに応じてくださり、本当にありがとうございます」
皇族らしくない前口上を語るのは車椅子に腰掛けた可憐な少女。光を捉えていないらしい眼は伏せられ、栗色の髪は緩やかなウェーブを描く。
そしてもう一人は少女の車椅子を押す端正な顔立ちの銀髪の青年。
「初めてお茶会というものを主催したので、皆さんにご満足いただけるか解りませんけど、どうか楽しい時間をお過ごしくださいね?」
そこで少年が少女に何やら耳打ち。少女の方はパッと顔を羞恥で赤く染め、思い出したように続けた。
「えっと! 私がナナリー・ヴィ・ブリタニアです。そして私の騎士である……」
「遅い紹介になってしまいましたが、ナナリー皇女殿下の騎士を勤めているライです」
どうやら先程の騎士 ライ卿の耳打ちは、皇女殿下に自己紹介を忘れていることを教えるものだったらしい。
『遅い紹介』と言う単語は忘却へのジョークなのだろうが、私を含めて招待客には笑う余裕は無い。
「もう! ライさんが早く教えてくれればよかったんです……」
ツンとそっぽを向き、頬を膨らませる。ナナリー皇女殿下が取るのはそんな余りにも愛らしいアクション。
それを受けてクスリと小さく笑い、ライ卿は続ける。
「とまぁ、こんな主従ではありますが……これから午後のひと時を皆さんとご一緒します。どうかお手柔らかに」
後にして思えば……この二人 姫と騎士はどんな高みに上り詰めても……この暖かく支えあう関係を失うことは無かったのだろう。
――ジョン・マクドナルド 晩年の回想録にて 後に世界を変える者達について記す――
0316貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE
2009/03/05(木) 13:24:56ID:LJVWszddうん、ただ私が久しぶりすぎて四苦八苦し、短く切っただけなんだけどねw
と言う感じで、『姫と騎士にて、愛しきかな 七話』をお送りしました〜
貴族と言えばお茶会→お茶会と言えば陰謀策謀後ろ盾? そんな無茶理論の賜物(ぉ
お茶会の詳しい中身も考えてはいるけど……読む人は楽しいのだろうか?(遠い眼
0317創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 14:16:05ID:SmzSJTJ5ひさしぶりにライナナで2828させていただきました
お茶会の中身ももちろん読みたいです
ここ最近の投下でロスカラはまだ終わっていないと感じました
0318創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 19:02:37ID:osedSFA4ナナリーが可愛すぎる!
久々のライナナごちそう様でした
又の投下をお待ちしてます
0319創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 19:21:53ID:bTaKc7zr貧弱な軍馬卿、GJでした!
良い! ディモールト・良い!
ライナナは癒される、なんだかとっても暖かいかんじだ。
お茶会の中身? 読まなきゃ楽しいも楽しくないも分からない。
お願いです、投下していただきますますか。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0320創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 20:45:00ID:GWAtLcN/このままの勢いでロスカラ2発売まで行くぜ!!
というわけで、ロスカラ2のエンディングを妄想しました。(もちろん、主役はライ!)
@ルルーシュ死亡阻止エンド
Aカレンとラブラブハッピーエンド
Bシャーリー生存、ルルシャリ出歯亀エンド(シャーリー騎士団加入)
CC.C.と不死共存エンド
Dスザクとゼロレク継承エンド
Eラグナレクの接続失敗、ユフィがCの世界から復活、スザユフィ出歯亀ハッピーエンド
Fアーニャとジェレとオレンジ畑でモラトリアムエンド
Gナナリーと世界再興騎士姫エンド
H中華〜超合衆国ルートで星天出歯亀エンド
I藤堂千葉&扇ヴィレを出歯亀しつつ、玉城と日本奪還エンド
Jジノと自分探しエンド
Kルルナナロロ生存で、ロロと義兄弟エンド
L騎士団オペ娘の誰かと友達以上恋人未満で、普通の生活エンド
Mラウンズまたはブリタニア皇族女子の誰かといい仲になりつつ、ブリタニア和平復興エンド
Nシュナイゼルとダモクレス自爆エンド
Oシャルルとマリアンヌと神殺し成立、サードインパクトエンド
Pミレイとニーナとリヴァルと親友関係で、アッシュフォード養子エンド
Qロイセシ、ラクシャータとどこかで研究者エンド
Rカグヤと婚約、皇家復興エンド
Sギアス根絶のための旅に出る孤独贖罪エンド
なんかSSのリクみたいになってしまったw
0321創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 20:47:48ID:kasq1xxR0322創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 20:49:05ID:kasq1xxR星刻を教師に、天子が国政について勉強に励む様子を、ライは香凛のいれたウーロン茶を飲みつつ見守っている。
やがて勉強が一段落したところで、天子が星刻に問うた。
「ねぇねぇ、星刻」
「何でございましょう、天子様」
天子は少しだけためらった後、
「星刻とライはどっちが強いの?」
「っ!?」
いったい何を。ライはそんな視線を送るが、天子はいつも通りのにこやかな笑顔。
どうやら、純粋に子供心から来た疑問らしい。
では、何と答えるのがよいか。ライが言葉に迷っていると、笑顔を崩さず星刻が答えた。
「いいですか、天子様。そのような疑問に意味などありません」
星刻の言葉は真剣だ。
ライは彼の告げるであろう言葉を先読みし、うんうんと頷いた。
(こういう役目は、星刻の方が適任かな)
星刻は続ける。
「我らは天子様をお守りする剣。どちらが強いなどという事実に意味はなく――」
一息。
「また、ライも私も、どちらも天子様をお守りするための力を持っているのですから――まあ、私が上でライが下ですが」
「ぶっ」
「何か文句があるのか、ライ?」
「いえ……」
吹き出し掛けたウーロン茶を喉の奥へ。
敵意剥き出しの星刻をあしらいつつ、ここは一旦この場から離れたほうがいいとライが判断した時だ。
天子はでも、と前置きして、
「でも、でもでも、ライは星刻にも負けないって言ってたよ」
「いいいいぃぃぃ天子様!?」
「ほう、ライ貴様……」
星刻が腰の剣帯に手を掛ける。
振り返ればもう、香凛は一目散に部屋から逃げ出していた。慣れだろうか。見習いたい。
ライは若干泣きそうになりながら、否定の言葉を並べた。
「言ってない! 言ってないです!」
しかし天子が続ける。
「でもライ言ってたよ。『僕は、天子様が見守って下さる限り誰にも負けませんよ』って」
「そ、それはっ……!」
言ったかもしれない。
ライの躊躇に、星刻が剣を抜いた。
「ライぃ!!」
「うわっ」
首筋に突きつけられた剣先を見て、ライはごくりと唾を飲み込んだ。
まずい。これは殺される。
これ以上下手な事は言えない。そう思いつつ、ライはちらりと天子の方を見て、
(これは駄目だ……)
天子は止めるどころか、ライと星刻の勝負の行方にわくわくと心躍らせているようだった。
0323創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 20:50:35ID:kasq1xxRライは覚悟を決め、星刻に向き直った。ひやりとした嫌な汗が頬を流れ落ちる。
「言っ……たかもしれません」
「…………」
ごくり、と再び唾を飲み込む音が部屋に響いた。
沈黙が支配する空間。
緊張の均衡。
しかし、次の瞬間、それらは破られる。
「へくちっ」
天子の可愛らしいくしゃみが聞こえたと思った時には、星刻が剣を突き出していた。
「シャースーニィィー!!」
ライは反射的に頭を右に傾けてかわす。
そのすぐ横を星刻の剣が一陣の風をもって通り過ぎた。
つつ、と僅かに流れた自分の血を見て、
「殺す気ですか!?」
「ウオ ダ ジエン、グアン チュアン ニー!」
「何言ってるか全然分かりません!」
「ライ、頑張って!」
「あ、止めて下さらないんですね天子様!」
「タァッ、ホゥッ、ハッ!」
「シン……クー! ちょ、……待っ……!」
「ツェンツンツゥイー!!」
ライの言葉に聞く耳もたず、星刻は剣を振り回した。
怒りに我を忘れても剣の動きが一向に鈍らないのは、流石と言うべきか厄介と言うべきか。
ライは豪華かつ高価な家具を盾にしつつ、星刻の剣技を避け続ける。
「頑張れライー!」
天子がこちらに熱心な声援を送ってくる。
家具がいくら破壊されようとも何も気にしない寛容な心に、ライは自然と涙した。
(こうなったら……)
星刻との勝負は避けられない。そう判断したライは、一つの行動を起こした。
「天子様!」
「な〜に?」
「何か競技を決めて下さい!」
「きょうぎ?」
「ええ、星刻と僕との勝ち負けを決める競技を――うわぁ!」
話をしながら逃げていたため、ライは床に落ちていた机の破片に気付かずにつまずいてしまった。
慌てて起き上がろうとした瞬間、星刻の剣が眼前に突きつけられる。
そして星刻は悲しげに、
「ライよ……貴様は我が生涯最大の味方であり敵であった」
「最後に会話が出来てよかったです」
「私は悲しい……」
星刻の瞳から一筋の涙が伝った。ライは頷いて、
「意外です。僕と星刻にはコンセンサスがとれているみたいで」
「許せ、ライ――!」
何を許せというのか。
ライは半ば諦めの感情をもって剣の切っ先を見つめた。短い人生だった、と。
(いや、長い人生だったのか? しかしこの場合は生きてきた実質期間が重要……?)
深い命題だな、とライは鋭利な刃を見ながら思った。
0324創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 20:51:37ID:kasq1xxR「じゃんけん!」
と、場の空気を一喝する声が響いた。
「天子……様?」
正気を取り戻した星刻が、恐る恐ると言った様子で天子に尋ねる。
天子は自身の名案に満足しているのか、満面の笑みで、
「神楽耶から教えてもらったの! じゃんけんでどちらが強いのか決めましょう!」
・・・・
・・・・・・
ライは今、自分の置かれている状況を再確認した。
(ええと、星刻が壊れて、天子様がじゃんけん勝負にしようと……)
周囲を見れば、立会人として香凛や洪古、そして天子が座っている。
皆、どうしてこのおかしな状況を平然と受け止めていられるのかがライは不思議でならない。慣れだろうか。
すると、じゃあ、と天子が手を上げて合図した。
どうにでもなれ、とライは目の前にいる星刻を見る。
彼はすっと両目を閉じ、息を大きく吸って、そして吐くのと同時に奇声を上げた。
「ホオオオゥゥゥゥウ!!」
気功の一種か、星刻の周囲から何か場のようなものが湧き出た。見ると、口元には若干血が滲み出ていた。
かつてこれほどまでに、じゃんけんに命を懸けた男がいただろうか。
ライは思う。こんな星刻、星刻じゃないと。
(終わらせよう……)
そして星刻を元に戻す。それが今出来るのは自分だけだ。
故に、ライは星刻に気圧されまいと構えをとった。
そして思う。ああ、今僕もまたかつてないほどにじゃんけんに真剣になっている、と。星刻ほどではないが。
「最初は、」
「グゥゥゥゥウ!」
でも、と同時に思う。
こんな日々がいつまでも続くのも悪くはない、と。
(僕も慣れてきたのかな)
だが今の星刻のようにはなるまい。自分は合衆国中華最後の良心として、その力は奮うのだ。
この日々を守るために。
「じゃん!」
「ケェェェン!!」
――ポオオオォォォォン!!!
0325創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 20:52:07ID:kasq1xxR0326創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 21:21:18ID:bTaKc7zrGJでした!
何だこのシンクーは! 面白いじゃないかッ!
この壊れっぷりは楽しすぎるw
中国語、わかんないぜ。
誰か、誰か翻訳プリーズ。
じゃんけんでこの覇気……すごいなぁw
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0327創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 22:53:18ID:w9GkRHWm23時ごろ投下します。
よろしければ、途中数回の支援をお願いいたします。
0328あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:00:36ID:w9GkRHWmタイトル 賭け 後編
カップリング ライ×アーニャ
ジャンル ラブコメ?
前回の続きとなります。
よかったら、前編を読んでいただいて、読んでください。
よろしくお願いいたします。
0329創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:00:58ID:bTaKc7zr0330あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:01:56ID:w9GkRHWm一気に突っ込んでくる白いナイトメアを面白くなさそうに目で捉えて狙う。
帰国したらノネットに文句を言おう。
そう思いながら……。
それはあまりにも作業的な正確すぎる動作。
ハドロン砲を牽制に発射し、回避ポイントに砲火を集中させる。
それだけで終わりのはずだった。
勝利を確信していたアーニャにとって、この模擬戦はもうどうでもいいことでしかなかったはずだった。
しかし、それは間違いと思い知らされる。
ハドロン砲を回避すると思われていたライのナイトメアは、シールドを展開するとその直撃を受け流して一気に懐に飛び込んできたのだ。
「え?!」
予想とは違う動きに一瞬、反応が遅れる。
その隙をライは見逃さなかった。
右手に握られた短めのMVSが振り下ろされる。
コックピットに鳴り響く警戒音と破損を表示するディスプレのサイン。
今のでハドロン砲破損…。
だが、さすがはナイトオブラウンズ。
すぐにハドロン砲を放棄すると前方にシールドを展開する。
予想通り、MVSが返す刀で切りつけられた。
シールドとMVSの衝突で火花がおこり、機体が振動する。
だが、被害はない。
しかし、メイン火力のハドロン砲を失ったのは痛手だった。
やられた……。
そう、さっきまでの繰り返しの単調な攻撃は、こういう事だったの。
くすっ……。
悔しいはずなのになぜか微笑が漏れる。
ほんのさっきまで心を支配していた虚しさと悲しさが一気に喜びに変わっていく。
強い……。
ノネットの言うように、彼は強い。
心に湧きあがる喜びと興奮。
そう、こうじゃないと……。
こんなに楽しい気分で戦うのは、初めてだ。
そう、今、アーニャは、楽しかった。
そして、うれしかった。
自分の思っていたとおりのライの姿に……。
0331創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:02:04ID:W1VHmD1x0332あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:04:15ID:w9GkRHWm「す、すごいっ」
ハドロン砲の一撃を受け流しての攻撃に思わず声を上げてしまうセシル。
「うひょっ、やるねぇ〜」
ロイドも実に楽しそうに歓声を上げた。
クラブのMVSの一撃を受けて、モルドレットがぐらついてハドロン砲を手放す。
だが、返す刀で放ったニ撃目はシールドで完全に防がれた。
「おしいっ」そんな声が二人の口から漏れる。
だが、そんな中でスザクはただ無言で見続けていた。
メイン火器のハドロン砲を潰したのはいい。
だが、今のでシールドはもう使えないはずだ。
だがまだ強固なシールドと多彩な火力は健在。
それに、今のでアールストレイム卿も本気になっただろう。
そうなると同じ手は使えない。
やはりニ撃目を防がれたのは痛いな。
自分だったらどう対処するか考えていく。
だが、うまい手が浮かばない。
本当にどうする気だ、ライ。
さすが、ナイトオブラウンズ。
さっきまでとは格段に違う動きと反応。
機動性の低いモルドレッドがまるで普通のナイトメアと変わらない、いやそれ以上の動きを見せる。
それにさっきの攻撃も破損したハドロン砲を放棄し、ニ撃目をシールドを展開して防いだ判断力の速さ。
間違いなく決まったと思った攻撃が防がれたのには驚いた。
強い……。
彼女はとてつもなく強い。
そう再認識させられた。
どうしたっ……。
どうしてしまったんだろう。
すごく……。
すごく楽しい。
胸の奥に押し込んだわくわくした気持ちがまた顔を出してくる。
くそっ……。
こんな楽しいのは、初めてだ。
そして、戦う前までの嫌な思いが払拭されていく。
このままずっと戦いたい。
そう思ってしまうほど、この戦いに魅了されてしまいそうだった。
0333創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:05:01ID:bTaKc7zr0334あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:06:02ID:w9GkRHWm「なんかさ、あの2機の動き、踊ってるみたいに見えちゃうよ」
激しさを増していく2機の動きを見ていたロイドがぽつりと呟く。
「えっ、ロイドさんもそう感じたんですか?」
セシルが驚いた様にそう言った。
あの1撃が決まってからというもの、モルドレッドの動きが格段によくなった。
そして、クラブの動きもそれにあわせるかのようにより速くなっている。
くるくると攻防が入れ替わり、2機のナイトメアが空中を舞っている。
そう、それはまるで息のあった剣舞を連想させるような動き。
だから、二人がそう思えたのも仕方ないのかもしれない。
そして、もう一人。
実はスザクもそう感じていた。
まるで長年のパートーナー同士のような動きに驚き、見入ってしまう。
「なんか……楽しそう……」
セシルの呟きが口から漏れる。
「そうだねぇ。なんかさ、お互いの事を貪欲に知りたがっている恋人のようだねぇ〜」
その言葉にセシルは驚く。
ロイドの口からそんな言葉が出てくるとは思いもしなかったからだ。
「あのねぇ〜、僕だって、一応、人だよぉ〜」
そんな態度のセシルに"一応"というところに力を入れてロイドがふくれっ面で文句を言う。
その言葉と態度に、スザクもセシルも吹き出していた。
模擬戦でこんなに楽しく笑う事になるとは思いもしなかったと感じながら……。
模擬戦開始から20分が経とうとしていたが、一向に勝負が付く気配はない。
まるでお互いに相手の動きが見えているかのような攻防が続いている。
はぁはぁはぁ……。
息が切れる。
身体中がGによって引き起こされる疲労で悲鳴を上げていた。
だが、どうしてだろう。
身体はこんなにもくたくたなのに、心の中で沸き起こったワクワクした気持ちはますます大きくなっていく。
だが、何ごとにも終わりはある。
エネルギー残量の少なさを知らせるランプが点滅する。
エナジーフィラーの残量が20%を切っている。
まぁ、フルパワーに近い戦闘を20分も続けていれば消耗も激しいだろう。
あと5分もしないうちに終了か……。
なら……。
僕は、追加されたコンソールを調整する。
簡単なプログラムを入力していき、それが終わると無線のスイッチを入れた。。
「アールストレイム卿、そろそろエネルギー切れです。これで最後にしませんか?」
向こうも状況は同じなのだろう。
「うん。…OK……」
短くそう返事が返ってくる。
相変わらずの無表情の顔だったが、どことなく楽しそうに見えたのは気のせいだったのだろうか……。
ともかく、これで最後だ。
僕は、汗で滑るスティックを握りなおすと、一気にクラブを加速させた。
0335創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:07:37ID:bTaKc7zr0336あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:08:41ID:w9GkRHWm彼から無線が繋がる。
彼の方もエネルギーの残りが少ないみたいだ。
私は申し出を受ける事にした。
まだ、少し物足りなかったが、終わりはある。
それに何やら仕掛けてくる。
彼のあの楽しそうなわくわくした表情がそれを物語っている。
さぁ、何が来るの?
何を見せてくれるの?
心の中が期待感で満たされていく。
失望させないで……。
私は、そう呟く。
そして、それと同時に彼のナイトメアが一気に距離を詰めようとしてきた。
火線を幾重にも放ち牽制する。
その砲火をまるで曲芸のように潜り抜けて接近してくる彼のナイトメア。
そして、牽制なのだろう。
左右の腰の部分からスラッシュハーケンが発射された。
2本のハーケンのうち、1本を回避し、もう1本を弾き返す。
しかし、それでもかまわず彼のナイトメアが近づいてくる。
シールド展開っ……。
MVSの攻撃を防ぐため、前方にシールドを展開しょうとした。
その時だ。
後方警戒のブザー音が響く。
え?!
すばやく後方モニターを展開する。
そこには、避けたはずの1本のスラッシュハーケンが向きを変えてモルドレッドに向かってきているではないか。
そんな……馬鹿な……。
スラッシュハーケンが方向を変えて向かってくるなんて……。
とっさに回避しょうとするが間に合わない。
激しい破壊音と衝撃がコックピットに伝わってくる。
フロートユニットに命中したらしく、ガクンとモルドレッドが高度を落す。
そして、その隙をライは見逃さなかった。
一気に近づくとMVSを振り上げる。
そして、モルドレッドのコックピットに振り下ろす。
避けられないっ……。
そう思ったら身体が勝手に動いていた。
それは、訓練された者だけが出来る動きだ。
ピーーーーッ。
それと同時にけたたましいブザー音が鳴り響き、両方のナイトメアの動きが止まった。
コンピューターが強制停止させたのだ。
そして、ディスプレに映し出される判定は、「両者撃墜」だった。
そう、ライがMVSを振り下ろそうとした瞬間、アーニャも無意識のうちに打てるだけの火力で攻撃していた。
その結果、両者相打ちとコンピューターは判断したのだった。
0337創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:09:05ID:bTaKc7zr0338あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:10:37ID:w9GkRHWm戦いが終わり、僕は心地よい疲労感に満たされていた。
ふう……。
勝てなかったのは残念だけど、すごく楽しかった。
そう思っていたら、モルドレッドの方から無線が入ってきた。
「あの……聞いていい?」
少し覗き込むような表情がモニターに浮かぶ。
「はい。かまいませんよ。アールストレイム卿」
僕は、そんな表情を見せる彼女が少し可愛いかなと思ってしまう。
無表情の様に見えて、けっこういろいろ違ってくるものなんだな。
そんな事を考えながら…。
「あのハーケンって……」
やっぱり、それか……。
僕は、微笑みながら説明する。
「あのハーケンは、小型のバーニアみたいなのが付いてまして、事前にプログラムする事で発射後に方向を変えることが出来るようになっているんですよ。
もっとも発射後は新たに入力しての軌道変更は出来ませんから、ある程度の先読みしてのプログラム入力とそれにあわせた相手の誘導は必要ですけどね」
そう、ただ発射し回収するという直線的な動きしか出来ないハーケンをもっと活用できないかと考えた僕がロイドさんに相談していろいろやってみた結果が今回のものだったのである。
そして、今回の模擬戦で牽制や翻弄させるには十分な役目を果たす事が実証された。
発案者の僕としてもすごくうれしい結果だった。
「ふーん……」
僕の説明にそっけない返事が返ってきたが、彼女の無表情のように見える表情の中には、興味とうれしさが含まれているように見えた。
そして、しばらく無言が続く。
無線を切らずにただ、考え込む彼女の姿だけがモニターに写っている。
うーーん……。
どうしたんだろう。
すごく嫌な予感がするのは気のせいだろうか…。
「あの……、そろそろ戻りませんか?」
沈黙に耐え切れずそう声をかける僕。
だが、その言葉を言い終わらないうちに彼女から話を切り出される。
「賭けの事……だけど……」
ああーっ、それがあった。
だけど、この場合は無効が一番無難だよなぁ。
しこりも残したくないし……。
だが彼女の口から出た言葉はまったく違っていた。
「お互いに……相手を撃墜した。……両者……勝ち」
「えーーっ」
思わず、そう反応してしまう。
普通、そういう風にはしないと思うのだが……。
それにそれじゃあ、再戦を言いづらいじゃないか……。
僕としては、また彼女と戦いたい。
そして、もっとわくわくしたいという思いが強く心に残っている。
だが、これでは……。
彼女は、また戦いたいと思わなかったのだろうか……。
この気持ちは僕だけなんだろうか……。
そんな事を考えて、僕は言葉を返せないでいた。
「これ……決定」
きっと迷う僕を待っていたら決まらないと思ったのだろう。
彼女は強く断言した。。
こうなったら仕方ない。
観念するか……。
0339創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:10:55ID:bTaKc7zr0340あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:12:50ID:w9GkRHWm諦めてそう答える。
だが、沈黙のみが返ってきた。
どうしたんだろう。
そう思って再び声をかける。
「アールストレイム卿?」
するとすぐに言葉が返ってくる。
「それ……嫌……」
「へ?!」
どういう意味だ?
「アーニャ……」
不満そうな表情がかすかに出ている無表情で彼女は言った。
「は?!」
「だから……アーニャ」
つまり、アーニャと呼べという事らしい。
「えーっと……」
じーっと覗き込むように顔がモニターに映る。
あー……言うの待ってるよ。
しかし、なんかドキドキするじゃないか……、こういうのはっ……。
柄にもなく緊張してしまう。
こんなところをスザクやユーフェミア様に見られたらなんて言われるか……。
えーいっ、男は度胸だ。
少し開き直り気味に僕は言った。
「あ、アーニャ……」
その瞬間だった。
ほとんど大きく表情を出さなかった彼女の顔が、頬を染めてうれしそうに微笑んだのは……。
その可憐さに、僕は言葉を失って思わず見とれてしまっていた。
やばいよ……。
無茶苦茶かわいいじゃないかっ。
ドクンと心臓が高鳴る。
収まれ僕の心臓……。
だがそんな僕にお構いなく、彼女は……いや、アーニャは恥ずかしそうに頬を染めて聞いてくる。
「次、ライの番……」
え?!
その言葉で浮ついた僕の心は一気に現実に戻される。
そうだった……。
お互いに勝ったのならそうなる。
えーい、何を言うべきなりだろうか……。
迷う僕を楽しそうに見ているアーニャ。
その笑顔を見ていたら、迷うのが馬鹿馬鹿しくなった。
そうだ。
何をいろいろ考えている。
素直に思った事を言えばいいんだ。
そうだよ。
僕は、そう決心すると口を開いた。
「あ、アーニャ……」
「うん……」
にこりと僅かに微笑んで聞いてくる。
その楽しそうな表情。
普段がほとんど無表情なだけに強烈すぎる。
うわーーっ…かわいいっ……。
その笑顔だけで心が満たされて、思わず言葉を失ってしまいそうになった。
おちつけ……。
落ち着くんだ。
深呼吸を数回して、落ち着かせて言葉を続けた。
0341創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:14:51ID:bTaKc7zr0342あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:15:32ID:w9GkRHWmモニター越しだがアーニャの視線が熱い。
「君と……また戦いたい……」
そして、一気に思っている事を言い続けた。
「こんなに楽しい戦いは、初めてだった。だから、もっともっと戦いたいと思ってしまったんだ。
それに、もっとアーニャの事が知りたい。そう思ってしまった。だから、また僕と戦ってほしい……」
カーーーッと顔が赤くなるのが自分でもわかる。
まるで、これじゃあ、告白みたいじゃないかっ。
そんな事が頭に浮かぶ。
えーーい、何を考えている、僕はっ……。
そんな僕に彼女は恥ずかしそうに返答をしてくれた。。
「うん……。私も楽しかった。だから……ライの事、もっと知りたい。また戦いたい……」
その返事を聞いて、感謝の言葉が自然と出る。
「ありがとう、アーニャ」
すごくうれしかった。
アーニャも僕と同じように感じてくれてたんだ。
また、戦える。
そう思うだけで、わくわくしてしまう。
だが、その気持ちは、無線に入ってきた言葉で一気にかき消されてしまった。
「あの〜、いいかなぁ〜」
そう、ロイドさんだ。
そして続けて「駄目ですよっ、ロイドさんっ、雰囲気読まないとっ」というセシルさんの声。
それって……つまり……。
「えーーーっ、ちょっと待ってくださいっ。もしかして、今の会話……筒抜け?」
「うん……」
苦笑したようなスザクの声。
「ごめん。なんかさ、言うタイミング逃しちゃって……」
そんなーーっ……。
僕は、絶句するしか方法を知らなかった。
別れの時、彼女の言った「また……」という言葉に、僕も「ああ、またね……」と返事をする。
そう、これは別れじゃない。
再会をするための儀式なのだ。
彼女の手が僕の手と重なり何か握らせる。
そこには小さな小さな紅い石があった。
すべすべとしていて綺麗な紅。
そして、キーチェーンのようなものが付けられている。
彼女が愛用の携帯を見せる。
そこには同じような紅い石が付けられていた。
「私だと思って……」
僕は頷いた。
そして、アーニャは帰国していった。
0343創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:16:31ID:bTaKc7zr0344あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:18:40ID:w9GkRHWm2日後の昼前、僕の執務室にユーフェミア様がスザクを連れてやってきた。
そして、入ってくるなり実に楽しそうに聞いてくる。
「聞きましたよっ、ライっ。アールストレイム卿に告白したんですってね」
どうやら、あの会話は行政特区の行政府中に広まっているようだった。
まぁ、今までどんなに迫られても女性に見向きもしなかった男があんな事を言ったのである。
そりゃ、話のネタとしては最高なんだろう。
だが、そのネタの本人としては、こう話が広がっていくのは勘弁して欲しいものだ。
くそーっ、誰だよ、広めてるのはっ……。
そんな事を考えながら、何とか話を収めようとした。
「いや、告白じゃなくて……」
実際にそうなのだが、どうもあの台詞では告白に聞こえてしまっているらしい……。
だから慌てて言い返そうとしたが、すぐにユーフェミア様の言葉で遮られた。
「もっと君の事が知りたいだなんてっ…。もう〜、すごく熱々です〜っ。ライって情熱的なんですねっ」
実にうれしそうです。
生き生きしてますよ、ユーフェミア様。
そんな事を考え、他人の噂話でここまで楽しんでしまうとは…と感心してしまう。
いや、感心するところが違うっ…。
自分で自分に突っ込みを入れながら、何とかこの状態を打破すべくユーフェミア様を落ち着かせようとする。
「いや、あのですね……」
しかし、僕が再びなんとか言い返そうとするものの、その度にユーフェミア様の言葉に遮られてしまい何も出来ない。
もう一方的に言われまくっている状態だ。
なんとかしてくれよ。
そんな儚い望みを持って横にいるスザクを見るものの、スザクは苦笑だけしか返してこない。
えーいっ、僕の事を親友と思うなら、自分の彼女ぐらい何とかしろ。
そう言いたかったが、だが…無理だろうなぁ…。
彼の性格と、ユーフェミア様との関係を考えれば……。
そう判ってしまうのが悲しい。
そんな事を思っていたのだがすぐにユーフェミア様の新たな言葉で現実に戻された。
「そうそう、昼食はご一緒してくださいね、ライ。新しくエリア11に来られた方をご紹介したいですし……」
「えっ? 新しく赴任された方ですか?}
それは初耳だった。
いきなり決まるなんて……。
僕の表情から、読み取ったのだろう。
ユーフェミア様が説明する。
「ええ…。中華連邦が最近、特に活発な動きを見せています。その為に急遽派遣が決まったそうなんです」
「そうでしたか……」
つまり、僕が担当した視察団もその為の予行演習みたいなところか……。
それなら、急な視察も納得できる。
「では、時間ですし食事に参りましょう」
ユーフェミア様に言われ、僕らは行政府のレストランへと向かった。
そして、レストランに来たものの、準備されたテーブルには……………誰もいなかった。
「あら?」
ユーフェミア様がきょろきょろと周りを見回している。
その様子は、手違いが合ったようで少し焦っているように見えた。
0345創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:19:55ID:bTaKc7zr0346あしっど・れいん ◆M21AkfQGck
2009/03/05(木) 23:21:58ID:w9GkRHWm誰だろう……。
そんな事を考えていると、いきなり後ろから抱きつかれた。
「うわぁぁっ……」
思わず声が出た。
そして、僕が後ろを見て相手を確認するのとその人物からかけられた言葉が耳に入るのは同時だった。
「只今……、ライ」
そう、そこには2日前に再会の約束をして帰国したはずのアーニャの姿があった。
「えっ?!えぇぇーーーーーっ、なんで……」
僕の驚く顔をじろじろと覗き込むアーニャ。
相変わらずの無表情だが、心なしか笑っているように見えた。
「正式に…エリア11に派遣された……。また……しばらく一緒……」
頭の中が一気に真っ白になってしまい、言葉を失う。
そんな僕に不安を覚えたのだろう。
「ライは……嫌?……うれしくない?」
すこし悲しそうな感じで聞き返される。
そんな悲しい感じて聞かないでくれ。
そう思って、すぐに答えた。
「そんなわけ、あるもんかっ。うれしいよ、アーニャ」
そして、無意識のうちに彼女を抱きしめた。
きゃしゃな身体が僕の腕の中にある。
ほのかに漂う彼女の体臭が僕を興奮させる。
こんなにうれしい事が起こるなんて……。
腕の中に感じる彼女の確かな感触と湧き上がってくる彼女への思いが僕を幸せにしていた。
だが、痛いまでに突き刺さる熱い視線。
その視線で僕は我に返った。
そう、ここは行政府の中にあるレストラン。
そして、今は……お昼時。
つまり……。
大勢の人たちがいるという事。
そんな中で、僕はアーニャを抱きしめている。
その認識で一気に体温が上昇し、僕の顔は真っ赤になった。
そして、慌てて離れようとしたのだが、アーニャはしっかり僕に抱きついており、離れようとはしない。
さらに、くすくすという声がする横を向くと、小悪魔的な表情で笑いを堪えているユーフェミア様とニコニコしているスザクの姿があった。
「よいものを見させていただきましたよ、ライ」
そんな事を言うユーフェミア様。
「よかったね、ライ」
もっとも天然のスザクは、そう言うだけだったが……。
そして、僕はその二人の態度でわかってしまった。
こうなると知ってたな、二人ともっ。
くそっ、謀られたっ…。
だが、そう思ったのもつかの間、さらに拙い事に気が付いた。
よく回りを見渡すとこっちを見ながらこそこそと喋る人が多い……。
つまり、あの噂話がよりいっそう真実として広がっているのであった。
ああーっ、なんでこうなるっ。
な、なんとか、なんとかしないと……。
焦る僕の思考が空回りを続ける。
多分、混乱気味なんだと思う。
だが、そんな中、アーニャは抱きついたまま顔を上げると少し頬を染めて言った。
「また……二人で楽しもうね……」
その言葉が、響き渡る。
僕は、もう観念するしかなかった。
終わり
0347創る名無しに見る名無し
2009/03/05(木) 23:22:12ID:bTaKc7zr0348代理投下
2009/03/05(木) 23:31:27ID:bTaKc7zr読んでいただいて少しでも楽しんでいただければ幸いです。
なお・・最後にサルが出ました。支援受けてたのに・・・なんでだよーっ。
0349創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 00:53:35ID:3RC/pXZAあしっど・れいん卿、GJでした!
ハーケンの発射前の操作、難しそうだ。
ミスったら自分に当たりかねんな。
そして聞かれていた二人の会話……恥ずかしいなぁ。
帰国してすぐに来日するアーニャ、なんか可愛い。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
誤字指摘
>>334
長年のパートーナー→パートナーかと
0350創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 18:24:13ID:Os4AUooA管理人さんどうしたのかな
0351創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 19:30:50ID:LsHMlpFY間違ってたらスマンのだが、アンチな人か?
0352創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 19:47:57ID:Os4AUooA0353創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 20:10:01ID:LsHMlpFY俺も詳しいことはしらんが
0354創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 22:14:17ID:qPZKTVjS0355創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 22:15:39ID:qPZKTVjS必ず、かの悪逆皇帝の王を正さなければならぬと決意した。
ライにはファッションがわからぬ。ライは、一国の王であった。笛を吹き、母と妹と遊んで暮して来た。
けれども劣悪な環境に対しては、人一倍に敏感であった。
今日未明ライは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のペンドラゴンの都市にやって来た。
ライには父も、母も無い。女房も無い。十四の、内気な妹も死んでしまった。 ライには竹馬の友があった。枢木スザクである。
・・・・・
「走れメロスだね、懐かしい」
「ああ、スザク。よく来て……くれ……た」
ライは再び絶句した。
ルルーシュの方を見て、もう一度スザクの方を見る。
ルルーシュはそんなライの行動に訝しげに、
「ライ、さっきから何を人をじろじろと」
「だってさ……君達の服装が……」
ライは思わず目を逸らす。
ルルーシュが来ている服。それは彼の皇帝としての服だ。
白を基調としていて、各部には黄色い翼と赤の瞳のイメージが装飾されている。
スザクの方もイメージは似たような物で、こちらは黒や紺といった色調だ。加えてコーネリアのクラゲを逆さにしたようなマント。
ライははっきりと思った。ださい、と。
「似合っているだろう? 俺がギアスをイメージしてデザインしたのだが……」
浮かれた様子のルルーシュ。
本人は気に入ってるらしく、このままでは本気で衆目に晒す事になってしまう。
故に、ライは決断した。彼の愚考を止めるため、自分は悪になろうと。
「ルルーシュ……この際だから言おう」
一息。
「君のセンスはズレている」
「ははっこれはまた可笑しな発言だ。寝言は寝て言うものだぞ、ライ」
「少しは真面目に受け取ろうよ!」
「ふむ……」
少し考え込んだルルーシュはいいか、と前置きして、
「お前は古い時代の人間だから分からないだろうが――」
言ってルルーシュがスザクの方を見る。スザクはああ、と続けた。
「今はこれがトレンドだよ」
「嘘だっ!!」
「因みにライの衣装はこれだ」
ルルーシュが青を基調とした布地を広げた。
他の二人と同じように翼やら瞳のイメージが刻印されている。
一瞬ライは自分がそれを着ている姿を想像し、ぞっと背筋を凍らせた。
「嫌だ、僕はそんな服は着たくない!」
「う〜ん……ねえ、ライ」
と、スザクが頑なに拒絶するライに問うた。
0356創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 22:17:06ID:qPZKTVjSスザクの言葉にルルーシュは天井に視線を向け、何かを思い起こすように、
「結構ノリノリだったな」
「やはりね」
「違うだろう! 僕は最後まであれに反対したぞ! あんな全身タイツの仮面姿など!」
「ふむ……スザク、お前はゼロレクイエム以降――」
うん、とスザクは笑顔で頷いた。
「実は結構楽しみだ。あれ、格好いいよね」
「だろう?」
「おかしい、おかしいぞ二人とも! ……はっ!」
ライは気付いた。これほどまでに二人をおかしくする原因。そんな物は一つしかない。
周囲に向かってライは叫ぶ。
「新手のギアスだな! 出てこい、悪魔の瞳を持つものよ! 貴様が二人にギアスを掛けた事は分かっている!」
すると、スザクは可哀想な者を見る目でライを見て、ルルーシュに小声で話し掛けた。
「ライはどうしたんだろう?」
「聞こえてるぞスザク! 大体どうかしているのは僕じゃない。君達の方だ!」
はは、とルルーシュは笑って、
「正常でない者は皆そう言うな」
「くそっ、ああ言えばこう言う……!」
相手は詭弁やハッタリの達人、ルルーシュだ。それに天然系のスザクまで加わってしまっては、もはや説得のしようがない。
ライは静かに、かつてルルーシュの語った『俺達二人が揃えば、出来ない事など何も無い』という言葉を思い出した。
(なるほど、正逆の二人が同じ結論を出す事で覆せない物となる訳か)
何とたちの悪い。
「さて、そろそろライにはこれを着てもらおうか」
ルルーシュが蒼の衣装をライに近づける。
ライは反射的に後ろに退きつつ、
「いやだ! そんな物を着たら末代までの恥だ!」
「安心しろ。ブリタニアの血脈は続いている。この服装へと」
思えば、皇族にはいろいろと奇抜なファッションセンスな者が多い。
コーネリアのクラゲ、ギネヴィアの髪留め、カリーヌのリング、皇帝の髪型、シュナイゼルの顎。
後半は少し違うかもしれないが、それらを始めとするけったいな衣装のセンスは自分の中の遺伝子に潜在的に含まれているのかもしれない。
「そんなの嫌だ!」
「往生際が悪いぞ。……スザク」
「イエマジェ」
「略して格好つけてるつもりか! その姿で言うともはやギャグ……はっ、スザクやめ脱がさないでうわーーっ!!」
・・・・・・
「ライ、その格好……」
「言うなC.C.。僕は……僕は……」
「予備の拘束着、いるか?」
0357創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 22:18:53ID:qPZKTVjS0358創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 22:57:36ID:LsHMlpFYすげえな、何者だあんた。
とにかく乙 次も楽しみにしてます
0359創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 22:59:10ID:3RC/pXZAGJでした!
のっけから吹いたwww
ある意味最初からクライマックスw
ルルーシュとスザクのセンスがwww
でも、ゼロスタイルは仮面だけならオシャレだと思うんだ。
そして、顎はちげぇよwww遺伝子的な問題だよwww
ルルーシュ作の衣装<拘束着、ですね、分かります。
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
0360創る名無しに見る名無し
2009/03/06(金) 23:01:27ID:BKwd4mqLDVDのオマケに出て来ても良いシチュエーションだし、テンポ良く読めました
ギャグ系のSSも良いですね〜
楽しい話しをありがとうっ!!
又の投下をお待ちしてます
0361創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 00:38:38ID:jb/DX3y5C.C.にすら同情されるとは……よほど滅茶苦茶な物だったのかwwww
とりあえず顎は違うでしょ(多分)。皇帝の髪は否定できませんがww
0362創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 01:44:20ID:CgWVGKzw0363創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 02:07:53ID:3gZ/pCWw顎も遺伝的なもの。
問題なし。
0364創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 02:19:52ID:XHV/bucH腹筋死ぬwwww
0365創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 20:23:47ID:fmuDwSsV更新が遅れてるのは100歩譲って許してやらんこともないが
連絡もまともにできないのか?
4日前にメール出したのまだ返事こないし
0366創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 20:28:15ID:bQdLMjA4……トーマス卿、大丈夫だろうか。
0367創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 20:41:17ID:KbVZY2V9ほんの思いつきで書いたので、本当に酷いです。
ネタとか前振りとかじゃなくて、ボツにしようかと何度も思って今でも思ってます。
では、一応ライアニャ短編です。
0368創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 20:42:24ID:KbVZY2V9「そう?」
ライはアーニャが読んでいる、何やら子供向けの挿し絵がついている本を見た。
「ウサギと……なんだ、これは?」
「ガメラ」
アーニャは表紙をライの方に向け淡白に言う。
しかし、ライはガメラなるものに関する知識は無い。
「ガメラか……聞いたことないな」
すると意外そうに、
「エリア11……日本の童謡の本だから、ライは知ってるかと思った」
「知らないな…。日本で育った訳じゃないしね。しかし見た目といい名前といい、亀の一種かな?」
「そうみたい。でもガメラは火を吐く」
「火を!?」
そう、とアーニャは頷いた。更にアーニャは挿し絵のついた別のページをライに見せる。
「これはウサギとの競争。ガメラは甲羅に閉じこもり、回転して空を飛ぶ」
「空を!? ではウサギは勝ち目が無いじゃないか……」
「そう。これは生まれによって全ての者の勝敗は決まっているという教訓に基づいている。ウサギはいくら努力してもガメラに勝てない」
「そうか……日本にもブリタニアと同じような価値観があるんだな」
それはブリタニアの思想を好まない自分にとっては悲しい事実だ。
(いや、待てよ……)
そこでライはある事実に気付く。
自分の知る日本人は果たしてそうだったろうか。違うはずだ。
日本にはブリタニアとは明らかに何かが違う文化が確かに根付いていて、それは少しではあるがそこに住むブリタニア人に影響を与えていた。
事実、エリア11におけるブリタニア人のオタク含有率は世界でトップだ。
(だとしたら、かつてブリタニアと同じであった思想を変える何かがあったはず)
それが分かればブリタニアを中から変えるという、雲を掴むような話も実現可能になるかもしれない。
「アーニャ! その後ガメラはどうなったんだ!?」
「わからない。人間の台頭により、ガメラは住む場所を失ってしまったと思う」
「人間による環境破壊か……日本は緑の多い国だから、ガメラの最後の居場所だったのかな」
ブリタニアも、シャルル皇帝が即位するまでは内乱で悲惨な物だったと聞く。
「そうかも。でも、ガメラも人間に屈しなかった。別の文献にその記録が残っている」
それだ。ライは反射的にそう思った。
アーニャは床に置いてあった別の本を開く。
それは同じような絵本で、ブリタニア用に訳された文字にこう書かれていた。
0369創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 20:43:32ID:KbVZY2V9アーニャは頷いて、
「ガメラが海岸で複数の人間と戦っていた。そこにやってきたウラシマは――人間に加勢する」
それはそうだろう、とライは思った。
何しろ相手は火を吐き空を飛ぶ化け物だ。人間も必死になるというもの。
(なるほど、ブリタニアという大国に屈しない精神はここから来るのか……はっ!)
まさか、とライは心の中で呟く。
『ウサギとガメラ』の話を聞いて、自分は日本にもブリタニアと同じ思想があるのだと、そう思った。
だがそれが間違いだとしたら、
(日本人は、ガメラに抗うウサギであり人間……!)
そしてウサギはガメラに勝てなかった。では人間は果たしてガメラに勝てるのだろうか。
「だけどガメラも負けない。ウラシマを捕まえて、海の中に引きずり込んだ」
「!?」
「そして溺死寸前まで追い込んだ後、海底にある巣で、仲間達と共にウラシマを集団暴行」
「なんて惨い……」
それはまるでブリタニアに蹂躙されるイレヴンのようではないか。
つまり日本人は、強者と弱者の立場というものを、こちらよりも遥か昔から認識していたという事だ。
それでも諦めきれず、彼らは人間としてガメラに立ち向かっている。
(誇り高い民族だ……)
「ガメラは最後に、ウラシマを海岸へと戻した」
「ん? ……ガメラはウラシマを殺さなかったのか?」
アーニャは頷く。そして、悲しげに瞼を伏せた。
「ガメラは光速に近いスピードと強烈な加速度で海岸を行き来した。相対性理論により、ウラシマは日本と異なる時間軸へと、未来の日本へと残された。つまりそこは……」
「エリア、11……」
ライは愕然と、そして力無く膝を折った。
(そんな、それでも彼らは戦っているのか……)
たとえ世界に隔絶されたとしても、ウラシマはガメラに戦いを挑む。
そんな覚悟が自分にあるだろうか、とライは自問した。
「ライ」
心配そうにこちらを支えてくるアーニャに、ありがとう、とライは言って立ち上がった。
「僕にはまだ覚悟が足りなかった。スザクのように、ウラシマのように……!」
「ライ、私も手伝う。ガメラに勝とう」
「アーニャ……」
「ライ……」
・・・・・・
その後、一組の男女が日本を中心にブリタニアを、世界を巻き込む変革を引き起こした。
後世の歴史書は、その一連の世界革命をこう呼んでいた。
――ウラシマレクイエム、と。
0370創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 20:44:01ID:KbVZY2V9関係無いですけど、モスラって、地球に衝突する隕石の軌道を変えるという重厚なテーマを、アルマゲドンやディープインパクトより5年以上前に映画で扱っていたんですよね。
凄いですよね。今回の話はそれに匹敵する発想だと個人的には思ってます。言い訳が長くなりました。すいません。
0371創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 21:33:35ID:bQdLMjA4GJでした!
ウサギとガメラwwwシュールすぎるwww
ウラシマタロウwガメラと戦うのかwww
ガメラひでぇwwwというか仲間ってガメラいっぱいいるのかw
発想が凄すぎるwww
腹がwww腹筋が痛いwww
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0372創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 21:40:10ID:dKHLXHab多分このセンスには逆立ちしても勝てないw面白過ぎます
楽しい話を有難う
またお待ちしてます
0373創る名無しに見る名無し
2009/03/07(土) 21:55:57ID:HGPRjjhFロスカラ2出て欲しいですね!
0374テリー
2009/03/08(日) 00:00:32ID:dyisXwdj投下いきます!
「英雄 二章 」
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0375創る名無しに見る名無し
2009/03/08(日) 00:36:21ID:qfvPOkF+君は「メテオ」を見ればきっと感動出来ると思う。
0376創る名無しに見る名無し
2009/03/08(日) 00:39:03ID:X2kWyU6tかってに私の名前使わないでください!!!!!
0377創る名無しに見る名無し
2009/03/08(日) 00:49:52ID:nbQ0/CHXテリー卿混乱してるんですか?
0378創る名無しに見る名無し
2009/03/08(日) 00:52:30ID:9kqsBEwAあとテリー卿、トリップ使ったらいいんじゃないかな?
0379創る名無しに見る名無し
2009/03/08(日) 00:53:43ID:D74BH4CCお前例の荒らしだな
いい加減にしろよ
0380創る名無しに見る名無し
2009/03/08(日) 00:54:03ID:Gvg+FpX9■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています