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コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ37

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0001創る名無しに見る名無し2009/02/24(火) 23:43:06ID:eaiT05oZ
ここはPS2/PSPソフト「コードギアス反逆のルルーシュ LOST COLORS」SS投稿スレです。
感想等もこちらで。このゲームについて気になる人はギャルゲー板のゲーム本スレにもお越しください。
基本sage進行で。煽り・荒し・sageなし等はスルーするか専ブラでNG登録して下さい。
(投稿前に読んでください >>2-)

■SS保管庫 http://www1.ocn.ne.jp/~herma/CodeGeass_LostColors/2ch/0.html

■前スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1233659495/ 
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■関連スレ
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 21 (本スレ)
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gal/1225489272/
コードギアス ロスカラのライ 強くて優しい真の7(ナ)イト(主人公スレ)
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamechara/1233048852/
【PSP】コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1207641630/
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 攻略スレ4
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gameover/1209720651/

■公式サイト http://www.geass-game.jp/ps/
■アニメ公式サイト http://www.geass.jp/
■攻略wiki http://www9.atwiki.jp/codegeasslc/
0251創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 20:47:38ID:CzafXINE
すごすぎる…GJを贈らせてください!
0252創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 20:49:51ID:LfB2FqG2
>>250
速いぃぃぃぃぃ!
だがGJ。
まさかの妄想オチに全俺が吹いたw
何だこのクオリティはッ!
素晴らしいの一言に尽きる!
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!
0253創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 21:01:09ID:ZTLYmf4w
>>240
俺もロスカラの騎士団カレンルートをプレイしてから脳内でライカレが公式カップルになった!!
0254創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 21:01:52ID:ZTLYmf4w
>>240
俺もロスカラの騎士団カレンルートをプレイしてから脳内でライカレが公式カップルになった!!
0255創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 21:32:07ID:XQeGOmiy
>>250
すごいですね。
両方とも短い時間に書き上げたにもかかわらず、完成度の高さ、面白さはすばらしいの一言。
GJです。
0256創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 21:44:03ID:J6OeY1fM
253のかた重複してますよ。レベルは低いですがちょっと投下の方
行きたいと思います。KYと言われようが行きます!!

「英雄 一章 」

ライの過去話です
10レス位かかります、支援の方どなたかお願いします
0257テリー2009/03/03(火) 21:46:28ID:J6OeY1fM

初めに教科書に記載されている事を話そう。
それによれば、この時期のブリタニアは周辺諸国とは友好関係にあったとされている
それは当時の皇帝の力と政治家達の必死の交渉、強大な軍事力と有能な人材etc
国力、軍事力共に歴代1とも言われているその強大な“力”で周囲に圧力を
また友好関係を築き後の国定に大きな影響を与えまた当時は戦争をする理由を
相手に与えなかった、つまり隙が全く無かったのだ。


しかし


とある北方領土「ヘレナ」の王がした過ちで遂に戦闘へと突入してしまい
あわやヘレナのみならずブリタニア全土を巻き込む全面戦争へと発展しそうな
所を「ヘレナ」と「北の蛮族」の壊滅と引き換えに回避する事が出来た。
この「ヘレナ」こそライが王として治めていた領地、そしてギアスの魔力
で壊滅した地であった・・・・・・


さらに教科書にはヘレナ壊滅は時の王の所行による物であるとし、ブリタニア一族
の恥さらしとされ永遠の汚名を着せられている、しかも明確にハッキリと。現に今日
の歴史家も満場一致の結論なのだ。



それはライの事か?



その真実とは―――――



「英雄」


0258テリー2009/03/03(火) 21:47:51ID:J6OeY1fM
ガキィィン!!

ここは剣の交わる訓練場、何百という兵士達が日々鍛練を積む神聖なる場所と軍内部
での暗黙の了解となっている。どんな人物も、例え市民でも貴族でも、ブリタニア皇族
でも例外では無い。そこに身分は関係ないのだが

「も、もうこれ以上はできぬ・・・・・」
「最早ですか!?まだ30分程度ですぞ!!」
「それでも無理なものは無理なのだ!!休ませてもらうぞ!!!!」
そう吐き捨て訓練場を後にするのは皇族の一人、ドレイク・サン・ブリタニア
極度にして重度の臆病者にして怠け者。この訓練も中途半端にしかやらない
皇族の面汚し的存在でしかない。
「まったくドレイク様は」
「言うな、バルト様に聞こえる」
バルト・サン・ブリタニア、ここヘレナの王。詳しい事は後にするとして――――
ドレイクに呆れている兵士達、彼は今では28にもなると言うのに政治には無関心
特に何かすると言うわけでもないグータラ野郎として軍、住民、領民の評判は
それはひどいものが有った。
「兄があれなら弟もどっこいだな」
「ああ、兄弟そろって・・・・・なぁ」
ドレイク実の弟、クルーガー・サン・ブリタニアも同じ様な者で親の七光と言われる
始末でとても手に負えない位の悪評価。それでもこのヘレナは北方と本国及び各
領地とを結ぶ主要交通の要と位置図けられているため産業、商業が盛んで重要地と
されているので一定の援助がある。それが無ければここは荒地になっていただろう
「あの兄弟とは天と地の差だな、あのお二人は」
「そうとも!ライエル様方が居なければここはどうなっていた事か」
「妹のフレイ様の影響力にエレナ様の統率力は見事なものだ」



その訓練所の側では
「はっ!!いやぁ!!」
「まだ筋が甘い!!隙を見せれば一瞬ですぞ!!!」
訓練場で剣の鍛練を積む青年こそライエル・エス・ブリタニア、ライだ。汗を大量に
流しながら必死に鍛練を積んでいる、努力こそ人間を成長させるというライの母
エレナ・皇・ブリタニアの教えを信じて。ここヘレナの統治全てを取り仕切る女傑
0259テリー2009/03/03(火) 21:49:26ID:J6OeY1fM
その政策力は本国にいる高官も助言を求める程、ヘレナが栄えているのはこの方
のおかげなのだ。その娘でライの妹、フレイ・皇・ブリタニアは一言で言えば
格闘家だが漂う雰囲気が尋常ではない、後の歴史書にはシャルルにも負けじ劣らず
だったと記されている。



ガキィィィィィン!!!!
ライの持つ剣が弾かれ床を滑りライはその場に片膝をつけてしまいライと訓練を共にしていた将校に剣の切っ先を突き付けられる。
「もうへばりましたか、ライエル殿?」
「ま・・・・まだ・・・・まだ・・・・クッ!!」
ライは立ち上がろうとしても足はフラフラで剣を持とうにも腕は鉄の様に重かった
それも無理は無い事、何しろ日の出と共に訓練を始めかれこれ6時間以上も剣を
振り続けていたのだから。
「しかしお見事ですライエル様。その勇気と諦めの悪さに負けず嫌い、素晴らしきもの」
「ハァ、ハァ、お世辞・・・・か?それとも・・・・嫌味・・・・か?」
「滅相もありません!褒めですよ」
その言葉にその場に居合わせている兵士が笑い、ライも苦笑いを浮かべる。
ここの守備隊はライの努力と力を認めている、ライも兵士達の努力と勇気を解っている
だからこそ身分を超えた友情が生まれこの様な憎まれ?口をたたかれても気にも留めないのだ・・・・・・・・でも


「こらーーーーーーーーーーー!!!!ダグラスーーーーーーーーーー!!!!」


と猛烈な勢いで飛び蹴りをさっきまでライに特訓をしていたヘレナ守備隊部隊長
騎士ダグラスにくらわすも
「単調すぎますよフレイ様」
と難なくかわされるライの妹フレイはカンカンに怒っていた
「兄様にこんな無茶をさせるとは何事ですか!!!?」
「毎度毎度言ってますがライ様が自ら望んでの特訓ですけど」
「それが何です!!!だいたい貴方は何時も―――」
と、ながーーーーーーーーーーいお説教?が始まった。

0260テリー2009/03/03(火) 21:50:52ID:J6OeY1fM

(また始まった・・・・・)
ライの事となるとフレイはもう親馬鹿以上の過保護になる、その長いお説教の
犠牲になった将校は数知れず。
「聞いてるんですか!!?ダグラスさん!!!」
このお説教を止められるのは
「フレイ、そのへんにしないか!私が望んだ事なんだから」
「はい、解りました!!兄様」
ライが来た途端に頬を赤く染め可愛い妹に戻るフレイ、訓練時や公務の時は戦士の
表情を見せるも母やライ、友人の前では何時も笑顔を見せている。そのせいか一部の
兵士から二重人格者か?と言われている。
「ライエル、フレイ!ここに居ましたか」
「「母上!!」」
2人の母、エレナは数人の重臣を従え訓練場に来た。その表情や漂うその気はとても
優しいものがある。
「エレナ様!」
ダグラス以下その場に居合わせた兵達は皆跪き彼女を称える姿勢を取る
「皆私の息子、娘が厄介になっています。このエレナ、感謝いたしますよ」
「勿体なきお言葉、ありがたく思います」
「それよりどうなされたのです?この様な所へ」
エレナも剣の鍛練の為にここを訪れる事はあるが今は公務の最中のはず
「そうでした!ライ、フレイ、お友達が来てますよ」
「本当ですか!?」
「皆待ってますよ、行っておやりなさい」
「はい!!行こうフレイ!!」
とても嬉しそうに笑ってライとフレイは訓練で疲れているはずなのに駆け出して行った
それをいとおしむ様に見つめるエレナの表情は幸せそのものだった。
「元気ですなぁ羨ましい」
「ええ、この平和が仮初に成らなければいいのですが・・・・・」
「バルト様の事ですか?」
その言葉に重臣達もエレナも顔をしかめる
「・・・・何とかしなければなりませんが・・・・私にはどうする事も」
エレナは確かに人気も高いし臣下達や住民の支持も高いがいかんせん日本から嫁いできた
身の上に女と言う事もあり立場が低い。これが本国なら強力な発言力を持っているが
ヘレナの政権下では男の立場は非常に高い(政権内に限って)

0261テリー2009/03/03(火) 21:52:01ID:J6OeY1fM
「あの王宮の状態・・・・見れる物ではありませんですからなぁ」
「おや、揃いも揃っていかがなさいましたかな?」
エレナ達の所に現れたのはそれはそれは脂ぎった顔をしている中年男達
彼等はバルトの重臣達で無能+おべんちゃんの美味い人間ばかり。自分の
私利私欲の事しか頭にないクズどもなのだ
「いえ、ただの散歩ですわ」
冷たい目で睨みつけるエレナや将軍、兵士達。
「左様ですか、あまり出しゃばった事はお控えなさる事をお勧めしましょう」
「その通り!長生きしたければな」
とゲラゲラ笑いその場を後にする彼等を睨みつけながら送る
「腐れどもが!!」
「国の恥さらしだわ!!」
「お止めなさい!何を言っても駄目です、今は耐えるのです。必ず時は来ます」
重臣達を宥めるエレナも悔しさを隠し通せないでいる。
バルトは中年男達の言葉を重要しエレナ達真に国や民を想う臣下達の言葉を重要しない
でいる。そのためバルトよりもエレナの言葉を信じついて来た民はほぼ全員と言っても
過言ではない。


それに飽き足らずさらに酷いのは王宮その物だ


酒池肉林


聞いた事のある人は多いはず。広大な王宮内部では男女達が裸で池や林を追いかけっこ
しながら何日も宴を催していると言う有るまじき所と化している。何万tもの酒に
何万tもの肉、そこで毎日遊び呆ける後宮の女性達。更にはライの腹違いの兄達も
その中にいると言う始末。

それを目の当たりにしているエレナ達は此処に絶対に近ずこうとしない。

その為に民の税金がいくら使われている事か・・・・・止めようにもエレナ一派の
勢力は力が弱く軍隊も全てライの元に集中しているから何ともできないのだ・・・・
逆らえば命は無い・・・・と言うことなのだ

0262テリー2009/03/03(火) 21:53:50ID:J6OeY1fM
さて城下の町では活気に溢れ返っている
この町の名前は「アルウス」エレナ首都で後ろを険しい山脈で守られている天然の
要塞としても結構名高く町は高さ約15mはある城壁で囲まれている。ここに行くには
北方からは正面を流れる大河「ウイントシュト―ス」から港がある拠点「スピリッツ」まで船で渡るしかない。
平坦な道を通っては本国など西方向にある領地からしか行けず周りはやはり険しい山脈
が連なっているため通る事は出来ない。
そんな所でも力強く人々は生きている、そんな町並みを全速力で駆け抜けていく
ライとフレイの先には20人位の友達が待っている
「ライーーーーーーー!!フレイちゃーーーーーーーーん!!」
「遊びに来たぜ!!」
「寂しくなかったかしら?フローラお姉さんが会いに来てあげましたよーー」
「もうフローラちゃんたら!」
ライを皇族と知っていてもこうして友達は結構多い、駆けて来たライとフレイをみて
挨拶するのは
メリッサ、ライの彼女で周りが引くほどのバカップル(メリッサの一方的な)で町では
世継ぎが楽しみだと騒がれている、ちなみに髪はオレンジに近く眼は緑。両親は全国を
回る商業団の一人でブリタニア全土を何度も回っている。
 コルト、ブリタニア本国軍の騎士を父に持つ騎士見習い。馬に乗るのが大好きで
その乗りこなしは結構上手くここで乗馬を楽しんでいたライと出会い友達となった悪友?
 リンダ、ライよりも年上の姉的存在、だがフレイから強烈なまでの敵対心を燃やされている。困ってる人をほおっつておけない性格の黄色の髪をした美人さん。
 ソフィア、リンダと同い年で彼女の親友。両親が鍛冶屋のためか物作りが得意で
しょっちゅうフレイが折る剣を直したりしている、少し男性恐怖症があるのがキズと
言われるカワイ子ちゃん。
 他にもたくさんの友達がライとフレイにはいるも皆帝都に住んでいるため滅多に会えないでいる。
「皆久し振りだね!!元気にしてた?」
「それにしてもよく来れたわね、学校休みなの?」
「ええ、今夏休みのまっさい中でね!!それにライが寂しくしてるかなーーーーー
って思って」
と悪戯っぽく微笑むリンダにメリッサとフレイが笑顔で
「そんな事はありません、リンダさん」
「そうそう、寂しさを紛わせられるのは私だけだから」
と目を笑わさず語り、三人の間には目に見えない火花がちっていた
「このモテモテが・・・」
0263テリー2009/03/03(火) 21:55:26ID:J6OeY1fM
「呪い殺す・・・必ず!!」
「このフラグ建築士が・・・・」
憎悪の黒いオーラをしのばせるのは男の方々
「あ、あは、あははははははは。」
と冷や汗を流すライでした。この後、夜遅くまで乗馬や格闘妓大会に合戦
日向ぼっこなどすごく楽しい一日を過ごした。




その帰り道で
「やあライエル君、フレイちゃん、ご機嫌いかがかな?」
「あ、これは遠路はるばるようこそゴドウさん!」
ゴドウとは北の蛮族出身のこれまた商人でライやメリッサら子供達に自分の旅の話や
自分の一族の話を話してくれる心優しいおじさん。
「どうしたんです?やけに暗い感じですけど」
「うん、なんか怒ってるように見えるよ?」
顔は笑顔だが雰囲気がどことなくピリピリしていたし彼の仲間は露骨なまでに
不機嫌な顔をしている者さえ見える。
「君達の親父さんさ、我々北の蛮族を下賤な輩だと罵ったんだ。私達は自分の
生まれに誇りを持っているし皇帝陛下もブリタニアもそれを尊重してくださっている。
にも拘らずだ」
「ごめんなさい、私達の親が酷い事を」
しゅんとなるフレイの頭を優しく撫でゴドウは言う


「謝る事は無いよフレイちゃん、言ってやったさ!貴様らの様に国に恩も感じず
ただ悪戯にメシばかり食いロクに動かない豚には我ら下賤な者の誇りすら解らんだろう
そう!!豚には真珠の様な高貴な魂など解る事も出来ぬ、何時かライエルの内に秘める
炎に焼かれ丸焼けとなり消え去るであろう!!貴様らがいくら束となろうとも百万の軍
を従えようともライエルにはかなう事は永久に無い!!とな」


「「・・・・・・・・・」」
周りからは拍手が起こっていた、いつの間にか声が大きくなり町中に聞こえるくらいの
大きな声となっていたらしい。
0264テリー2009/03/03(火) 21:57:15ID:J6OeY1fM
「ゴドウさん顔真っ赤ですよ?」
「ほっとけ!!」



現代
「・・・・・・・・・」
「何頬膨らませてるの?」
ぷぅと不機嫌になっているシャーリーに?が飛び交うライ。君は乙女心をよく理解
しなさいライ君
「ライを好きなのは私だけだったのになんか悔しい!」
「そうは言ってもなぁ、本気で好きなのは後にも先にもシャーリーだけなんだけど」
と困った顔をするライの目は真剣
「・・・・も、もう・・・・ライに免じて許してあげるけどこの後しっかりと
証明してもらうからね!!・・・・身体で」
と真っ赤になるシャーリーにライも赤くなり
「お手柔らかに」
と言うしかない。こんな所でニヤニヤしたらどうなるか
「それで、その後はどうなったの?」
「うん。あの3人はとんでもない事を考えていたんだ――――」




再び過去に・・・・・・・その夜




「あの下賤め!!蛮族のくせに生意気な事を言ってくれる」
怒りに震えるバルトは今や国中の笑い者となり下がってしまった、と言うより
今ようやく気付いただけだけど
「ライエルも気に入らん!!年下のくせに頭に乗り過ぎだ」
「フレイも言う事すら聞かない、あんな奴らなんか!!」
2人の兄妹もこの通りだ、大人気ない事この上ない奴らばかりで呆れる
と言うより毎晩この二人はフレイに夜這いを掛けようとしている不届き者
0265テリー2009/03/03(火) 21:58:42ID:J6OeY1fM
今また失敗して来た所なのであるそうだ
「だがそれも此処までよ・・・・まもなく此処は火の海となる。愚か者共の
町などようは無い。それに此処の生活にも飽き飽きしてきたしな」
「素晴らしい父上!!こいつ等が居なくなればその分の食べ物や酒が入る!!」
「若い女だけでも連れて行き奴隷にするのも良いかもな!!」
暗がりの部屋の中では狂喜がはびこっていたのをこの時には勉学に励むライも・・・・
スヤスヤと眠る町の誰も知らない・・・・・
(それにこれで騒ぎが大きくなればあの若僧皇帝も失脚させる事が出来る
あんな小僧が皇帝で私がこんな辺境な地の王など似合わない。私こそが皇帝
に相応しいのだ!!クハハハハハハハハハハハハ!!!)



その北約500kmにある城、名を「サイサリス」北の蛮族の首都が置かれている城
その外見はまるで暗黒に包まれているかのように黒い。



その城門は開かれ次々と兵達が進軍を開始していたその列は100kmにもおよび
さながら蛇の中でも最大の大きさを持つ大蛇「ヨルムンガルド」の様



その列は・・・・・・・・・・まだ途切れる事を知らないでいる



0266創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 22:00:27ID:LfB2FqG2
支援
0267テリー2009/03/03(火) 22:01:01ID:J6OeY1fM
以上ですが2つほどお詫びを 注意書きの所にオリジナルキャラとオリジナル設定
が入っています。とまた15分ほど開けませんでした事を深くお詫びいたします。
ではまた。
0268創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 23:16:49ID:LfB2FqG2
>>267
テリー卿、乙でした。
なんというか、ぶっちゃけ読みづらい。
長音や感嘆符が多いことと文章の切れ方が半端な事が原因かな、と思いました。
話の流れはそんなに悪くは無いと思います。
貴方の次の投下を待っています。
0269創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 23:29:08ID:mpygJECZ
オリジナル展開は難しいだろうから、
あまり風呂敷を広げずに頑張ってください
0270創る名無しに見る名無し2009/03/03(火) 23:47:13ID:XQeGOmiy
0時近くに投下します。
途中、念のためですが、支援を数回入れてもらえると助かります。
よろしくお願いいたします。
0271創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 00:00:47ID:sw8BWsOD
こんばんわー。
時間ですので投下いたします。
えー、以前から少しずつ書き進めていたやつです。


タイトル 賭け 前編
カップリング ライ×アーニャ
ジャンル 未定(笑

設定は、ゲームで言うと行政特区日本設立後になります。
なお、今回は前編となります。
楽しんでいただければ幸いです。
0272あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/04(水) 00:02:00ID:sw8BWsOD
出会いとは、いろんな形がある。
その後の関係も……。
そして、これはそんな中の一つの出会いと関係の話…・・・。


賭け 前編




「では、ライ、視察の皆様のご案内をよろしくお願いしますね」
ユーフェミア様は、にこやかにそういうとスザクを連れ立って部屋から出て行った。
出て行く間際に、スザクがごめんって感じで手で合図をしていたのだが、僕はよくわからず呆気に取られていた。
なんで…僕が……。
その時はそう思ったが、後からスザクから理由を聞いて納得した。
どうやら、本国でも特区日本を守護する二人の白騎士はかなり有名になっているという話だ。
それに元イレブンであり、ユーフェミア皇女殿下の婚約者であるスザクよりも一応ブリタニア人の僕の方が皇族や女性受けがいいのが選抜の理由ということらしい。
スザクはそう説明した後、小声で付け加えた。
どうやら視察団うちの一人の女性の指名というのが本当のところとか……。
確かに女性に興味がないわけではないが、どうも皇族というと親戚というイメージが先行して恋愛対象と思わない感じがするんだよなぁ。
それに、皇族や本国の貴族連中はガチガチのナンバーズ嫌いばかりだし…。
だから、いくら慕われてもねぇ…。
本当に頭が痛いよ……。
そんな風に思っていた。
だから、そこそこ相手をして、誤魔化すしかないか……。
そんな事を考えていたし、その通り実行した。
そして、視察最終日の夜……。
僕は、パーティ会場の離れたベランダで一人たたずんでいた。
ふぅ……。
口から溜息が出る。
やっと開放される。
そう思ったら、自然と出ていた。
おおむね皆さん満足されたみたいだし、問題なく終了したみたいだ。
もっとも、僕に御執心と思われる皇族の女性からのベッドへのエスコートはお断りしたので、その女性にしてみれば不満かもしれないが……。
ともかく、一気に肩の重しが落ちた気がする。
すごく気が楽になった。
0273あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/04(水) 00:03:58ID:sw8BWsOD
明日は非番だからのんびりして、明後日はスザクと久々に模擬戦でもするかな。
確か、クラブの改修が終わったって話だったし…。
そんな事を考えていたら、後ろから声を掛けられた。
「いい?」
そこには、ドレスを着たピンク色の髪の少女が立っていた。
確か…彼女は……。
僕は、慌てて直立不動の姿勢をとる。
そう、彼女の名は、アーニャ・アールストレイム。
ラウンズの一人であり、今回の視察団の一人としてここに来ていた。
そう言えば、よく見られていたな…。
それに写真も撮られていたような…。
もっとも、迫ってくる女性をかわすことを優先していたので気にはしなかったけど。
ふとそんな事が頭に浮かぶ。
ともかく、ここは無難に返答しておこう。
「はっ、どうぞ」
だが、そんな僕の対応に、何を思ったのか無表情のままじーっと顔を覗き込まれる。
今の溜息……聞かれたかっ……。
すーっと汗が背中を濡らす。
やばいなぁ……。
油断しすぎたっ。
そんな事を考えていたら、無表情のまま彼女は言った。
「軍務以外の時もそう対応するの?」
その予想外の言葉に僕は「はぁ?」と何気なく答えてしまう。
ますますじーっと覗き込む彼女。
何か言い訳を言った方がいいのかもしれない。
そう思って口を開こうとしたが、その前に彼女の方が反応した。
「ふーんっ…」
それだけ言うと何を納得したのか、そのまま彼女は踵を返してパーティ会場に戻って行った。
何だったんだよ、今のは……。


次の日の朝早く、僕はスザクに起こされた。
だが別に一緒に住んでいるわけではない。
ドアを叩く音で叩き起こされたというのが正しい。
「どうしたんだよ…、こんな朝早くにぃ…」
欠伸まじりの文句をドアを開けてスザクに言う。
今日は、僕は非番のはずだけどなぁ…。
なんか重大な事でも起こったのだろうか…。
でも、そういう時は、電話とかで連絡してくるし…。
瞼をこすりながらそんな事を考えていた。
「ごめん…ライ。非番なのはわかってるけどね」
苦笑してそう言った後、スザクはきりっと真剣な表情になった。
「アールストレイム卿が、模擬戦の相手に君をご指名だよ。すぐ出かける支度をしてくれ」
その言葉に僕は驚いた。
「そんな予定なかったんじゃ…」
「うん。なかったよ」
すばやくそう返される。
「じゃあ…なんでまた…」
そう答えると、スザクは僕の肩をポンと叩いて言った。
「ライ、言ったよね…。今回の件で女性の指名があったって……」
「ああ、聞いたよ。だから、問題ない程度には相手をしたけど……」
まぁ、ベッドへのエスコートは断ったがきちんと対応したし、問題にはならないと思うのだが…。
それにパーティが終わる頃には大変満足そうだったけどな。
僕の表情から、それを読み取ったらしい。
「いや、ご不満らしいんだ。だからだよ…」
スザクがすぐにそう説明する。
0274あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/04(水) 00:05:30ID:sw8BWsOD
「へ?!」
ちょっと待て。
スザク、今、なんと言った?
ご不満だと?
それが模擬戦とどう関係するんだ…。
そこまで考えて、昨日の夜の事を思い出す。
「まさか…」
「そう、そのまさかだよ」
スザクは、呆れたような表情を見せた。
「僕に御執心の女性っていうのは……もしかして……アールストレイム卿のことかっ」
スザクは、こくりと頷く。
「言ってなかったっけ?」
真顔でそんな事を聞いてくる。
「聞いてないぞっ」
僕は、ちょっとイラっとしてそう答える。
するとスザクのやつは、にこやかな笑顔で言い切った。
「あ、ごめんね」
「ごめんですむかっ」
思わず、そう答えた。
眠気が一気に覚める。
「でも、相手を勘違いしたのは、ライだからなぁ」
そんな事を言い出しているスザクに、僕は、今、初めて殺意を覚えた。
こういう天然なのはわかっていたが、ここまでとは…。
しかし、今更何を言っても始まらない。
「わかったよ、どうすればいい?」
結局、前向きに行動するしかない。
「大丈夫、車を手配しているから、すぐに着替えて出かける準備をしてくれればいいよ」
そう説明するスザクを感謝する気にはならなかった。
こうなったのもスザクが悪いんじゃないかっ。
そう思っていたから…。
だから、さっさと彼を部屋から追い出すと身支度を素早く整える事にしたのだった。


30分後、僕は模擬戦の行われる場所に着いた。
車から降りるとロイドさんとセシルさんが僕を見つけて、手を振って呼んでいる。
改装されたクラブの説明の為だろう。
「しかし、君も大変な人に気に入られちゃったねぇ。むふふふふ」
説明しながらロイドさんがニタリとそんな事を言ってくる。
それを慌てて別の話題を振って誤魔化そうとするセシルさん。
いや、大丈夫ですよ、セシルさん。
もう慣れましたから…。
苦笑し、ロイドさんに言い返す。
「そのおかけで面白いデータが取れるんじゃないですか。終わったら何かおごってくださいよ」
軽く冗談ぽく言ってみる。
これ位言っても罰は当たるまい。
「そうだよねぇ。うん、君の言うとおりだよ。よしっ、今夜の夕食は僕がおごるよ」
ご機嫌にそう答えるロイドさん。
ナイトオブラウンズとの模擬戦は、それほど楽しみなのだろう。
いやぁ、言ってみるものだ。
そんなやり取りを呆れて見ているセシルさん。
多分、「ああ、ライくんもすっかりロイドさんに染められちゃったのね」みたいな事を考えているのだろう。
表情がそう語っている。
0275あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/04(水) 00:07:43ID:sw8BWsOD
まぁ、雑談はそれくらいにして本題に入ろう。
「で、アールストレイム卿のナイトメアのデータありますか?」
僕がそう言うと、情報末端からデータをディスプレに映し出してくれる。
彼女専用のナイトメア「モルドレッド」。
その詳細なデータがずらずらと映し出される中、そのデータを確認して僕は苦笑した。
「すごいですね…。まさに動く砲台って感じだ」
「そうだねぇ。彼女のナイトメアは、火力と防御力重視だからねぇ。かなり硬いよぉ〜」
ロイドさんが面白そうにそう解説する。
「だけと、その分、機動力と格闘戦には不向きな感じですね」
その解説にディスプレを凝視して僕はそう答える。
「だけど、接近戦だとしてもMVSでもなかなか突破は無理だし、長距離だとクラブの火力では、貫けないわよ」
僕の言葉にセシルさんがそう切り返す。
「でも、シールドが硬いとしても全方位展開じゃありませんよね」
「そうね。ランスロットと同じ様な感じかしら」
セシルさんのその言葉に僕はニヤリとしてみせた。
「提案してあった改修がされているようだったら、何とかなりますよ」
そんな僕の言葉にロイドさんは、ますます楽しそうな表情をした。
「もちろんだよぉ。ご注文どおりにやっといたから…」
ロイドさんがここまではっきりと言い切ったのなら問題はないだろう。
「でも、かなり繊細だから大変だと思うわよ。仮想データだけでしかやってないから……」
心配そうに僕の顔を覗き込むような感じで見ているセシルさん。
まぁ、ぶっつけ本番っていうのは確かにきついかもしれない。
でも、まぁ、なんとかなるかなという自信はあった。
だから、そんなセシルさんに自信ありげに微笑み返す。
「大丈夫ですよ。ある程度の仮想データがあるだけでも助かりますし、予想通りならうまくいくと思います」
そして、気になった事を切り出す。
「ところで判定の方法はどうするんですか?」
そうなのだ。
火力重視のモルドレッドで模擬戦の場合、その点が気になっていたのだ。
「まぁ、予想してたと思うけど、模擬弾とコンピューター処理判定がメインだね。後、格闘戦は、寸止めでお願いするからねぇ」
気楽に言うロイドさん。
いやぁ・・・あの重装甲に寸止めって・・・。
まぁ、とやかく言うまい。
ともかくやってやろうじやないか…。
それにやる以上は、勝ちたい。
ナイトオブラウンズと模擬戦なんてめったに出来ることではないからなぁ。
そういえば確か……ナイトオブラウンズとの模擬戦なんてノネットさんとやったとき以来だ。
でも、ノネットさんの時はスザクと僕の2対1だったし、それにノネットさんは専用機でもなかった。
そんな条件でも圧倒されたっけ…。
ふとそんな事を思い出し、苦笑してしまう。
たが、あの時とは大きく違う。
あれから1年以上が過ぎて僕の腕も上達したと思うし、何より僕自身もクラブという専用機を手に入れている。
負けられない。
そういう思いが、沸々と湧き上がってくる。
アドレナリンが全身を駆け回っているような感覚だ。
僕は、ゆっくりとディスプレから目を離すとクラブの方に目をやった。
頼むぜ、相棒。
僕は、心の中でクラブにそう声をかけていた。

0276あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/04(水) 00:10:25ID:sw8BWsOD


ポワーーッ……。
キュルルルッ・・・・・。
コックピット内が独特の起動音とディスプレの光に満たされる。
OSが立ち上がり、各部のチェックを始める。
「すべて問題なしっ。こっちはいつでもいけますよ、セシルさん」
各部のチェックが終わるとサブモニターの隅っこに小さく写るセシルさんを見て報告する。
「こっちでもチェック終わりました。ランスロット・クラブ、発進どうぞっ」
僕はスティックを握りなおすと深呼吸をした。
「ランスロット・クラブっ……。行きますっ!!!」
その声と同時にクラブを発進させた。
一気に急なGが身体を襲う。
だが、それは僕にとって身が引き締まる様に感じられて気持ちが良かった。
さぁ、やってやるっ。

模擬戦地域では、すでにモルドレッドが僕を待っていた。
「すみません。お待たせしました、アールストレイム卿」
僕はそう無線で話しかけた。
「そうね。少し待った…」
短くそう答えるアールストレイム卿。
相変わらずの無表情な顔がサブディスプレに映し出される。
その言葉と態度に少しカチンときた。
急に言い出したのはそっちだろう。
そう言い返したかったが、相手は皇帝陛下直属の騎士だ。
言い返せるはずもない。
「すみません」
短く、そう返事をする。
なんだよ、この女はっ…・…。
だから、本国にいる貴族とか皇族っていうのは嫌いなんだよ。
表情には出さず、そう心の中で不満をぶちまけている時だった。
「賭け……する…。いい?」
へ?
賭け?
いきなり、なんでそうなる…。
僕がアールストレイム卿の急な提案に驚いて何も返事出来ないでいるとそれを承諾と認識したのだろう。
そのまま話を進めていく。
「私が勝ったら1ついう事をきいて」
「え?!」
言葉に詰まる。
どういう事だよ…それは……。
だが、そんな混乱しかけた僕にお構いなく言葉を続ける。
「貴方が勝ったら……」
そこまで言った後、サブモニターの彼女の姿が消えて一気にモルドレッドが攻撃を開始した。
「くそっ。なんなんだっ…」
そのおかげで混乱しかかった頭ははっきりしたが、それどころではないほどの火線が幾重にも迫ってくる。
「くっ…」
一気に出力を上げ機体を加速させると火線の間を曲芸のようにくるくると避けていく。
コックピットのスピーカーが危険を知らせるブザー音をがなりたて、「すごいっすごいっ」というロイドさんの声、「不謹慎ですっ」というセシルさんの声がそれに続く。
ギリギリと身体をGが締め上げ、それに耐えるため歯を食いしばる。
身体は、その激しい動きに悲鳴を上げていたが、頭の中は別だった。
勝つためにするべきことが頭の中を駆け抜けていき、それに合わせてスティックを小刻みに動かして避けていく。
思ったよりも激しいじゃないかっ。
だが…それ以上じゃないっ…。
僕は、少しずつ距離を詰めていき、一瞬火線が弱まった瞬間を狙って突っ込んだ。
0277創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 00:12:12ID:eb7dM8hu
支援
0278あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/04(水) 00:12:28ID:sw8BWsOD
いけるっ…。
そう思った瞬間、待ち構えたようにハドロン砲が発射された。
反応するままに回避運動を行い、シールドを展開する。
多分、完全に回避しきれない。
そう判断したためだが、それは間違っていなかった。
モニターに被弾の表示が一瞬点滅する。
かわしきれず、シールドに掠めたのだろう。
もっとも、今の攻撃と回避行動をコンピューターは、被害なしと提示した。
それでもシールドエネルギーの消耗が激しい。
すごい威力だ…。
こりゃ、何度もは無理だな。
出来て後2回ってとこか……。
再度激しくなった攻撃を回避しながらデータを修正していく。
思った以上にモルドレッドの反応が早い。
見せてもらった機体データ以上だ。
さすがナイトオブラウンズと言ったところか。
相手の出方を伺うため回避に専念していると再び火線が弱くなる。
誘っている…な。
脳裏に無表情の彼女の顔が浮かぶ。
いいさっ、やってやるっ…。
僕は、コントロールスティックを握りなおすと火線の中に突っ込んでいった。

「うーん…。なんか今日のライくんの動き、強引過ぎませんか?」
空中で行われる戦いをモニターしながらセシルが呟く。
模擬戦がスタートしてすでに5分が経過していた。
火線が弱くなると突撃を繰り返し、その度にハドロン砲で攻撃され回避して距離をとる。
それが何度も繰り返されていた。
「そうだねぇ。なんかそういう感じするねぇ。彼らしくないっていうか……」
ロイドが歯切れが悪そうに同意する。
だが、一人スザクだけは別意見のようだった。
「さすがだと思いますよ、ライは……」
彼は空中で激しく動きあう2つのナイトメアを見上げてそう答えた。
「え?!」
思わぬ意見にセシルがモニターから目を離し、空を見上げた。
ロイドは、興味深そうにスザクを見ると聞き返す。
「その根拠はなんだい?スザクくん」
その顔には笑みが浮かび実に楽しそうだ。
空を見上げてナイトメアの動きを目で追いながらスザクが答えた。
「数字だけだと同じことの繰り返しの様ですけど、動きを見てたらわかります。少しずつ軌道を修正してますよ。
だから、1回目は回避しきれずにハドロン砲をシールドで受け流したけど、それ以降はかすってもいません」
そんなスザクの言葉にうなづくロイド。
「確かに…。数字だけではわからないねぇ、それは……。で…スザクくんの考えとしては、彼は勝てそうかい?」
ロイドだけでなく、セシルも視線をスザクに移すと彼の答えを待っている。
「わかりません。ですけどそろそろライが仕掛けると思いますよ」
拳をぎゅっと握り締め、2機の動きを目で追い続けるスザク。
そして、スザクの言葉に誘われるかのようにロイドとセシルも2機の動きを目で追い始めた。

0279あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/04(水) 00:13:44ID:sw8BWsOD

つまんない……。
何度も繰り返される単調な攻撃にアーニャはうんざりしていた。
これなら、模擬戦しなくてもよかった。
ふとそんな事が頭に浮かぶ。
そして、幻滅し、悲しい気持ちになる自分がいた。
ノネットの嘘つき……。
話してくれたこととまったく違う。
彼女が話してくれたライは、すごくかっこよくて、優しくて、そして強いはずだった。
それなのに……。
ああ…、こんなことなら、来なければよかった。
会わなければ、こんなに幻滅する事も悲しくなる事もなかったのに……。
もう……いいや……。
終わらせよう。
そう決断すると、アーニャはわざと攻撃を弱めた。
そう、ライを誘い込むために。
ほんと……つまんなかった。
そう思いながら・・・・・・。

攻撃が一瞬弱まる。
よしっ、そろそろ仕掛けるか。
シールド強度のゲージを最大まで上げる。
シールドエネルギーのほとんどを消費するが、これであのハドロン砲の直撃を1回だけだが完全に受け流せるはず……。
だがさっきまでとモルドレッドの攻撃してくるタイミングが違う。
つまり、彼女も仕掛けてくるということだ。
くそっ、なんでわくわくするんだっ、僕はっ。
そんな事が思い浮かんだが、今はその思いを胸の中に押し込めた。
くるくると機体に回避運動をさせながらモルドレッドに接近していく。
多分、ハドロン砲を牽制に使って、こっちの回避方向に火力を集めて攻撃してくるに違いない。
その為に、何度も単調と思えるような攻撃を繰り返してきたのだ。
うまくかかってくれればよし、かかってくれない時は、強引に懐に割り込むだけさ。
そう決心し、スロットルを一気に踏み込む。
「勝負だっ!!!」




つづく
0280創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 00:15:38ID:sw8BWsOD
以上で前編終了です。
まぁ、早めに後半投下する予定ですので、読んで気に入った方はお楽しみに。
それと、支援、ありがとうございました。
0281創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 00:43:45ID:JHkrJfDa
>>280、乙です!
へへ… 続きが気になるぜ…
0282創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 00:49:06ID:eb7dM8hu
>>280
あしっど・れいん卿、GJでした!
というか相手をした女性は誰なんだw
ノリノリなロイドさんがらしいなぁ、と思えますね。
相手の動きを見つつ、勝負にかかる……ところで「つづく」の文字が。
さてさて、どうなることやら……
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0283創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 14:51:58ID:xZlwbMuZ
乙でした!
ライアニャはかなり好きなカップリングなので、
これからアーニャがライにどう惹かれていくかがすごく楽しみです。
続き期待しております!
0284創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 21:42:07ID:BTYjPBJC
トーマスゲロ吐いて病院行きで廃人フラグktkrww
あいつこのままいなくなればいいのにww
0285創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 22:09:34ID:h3rG6tSq
ではライモニ(+テンさん)の短編投下しまーす
0286創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 22:11:04ID:h3rG6tSq
 ほのかに漂う香りを嗅ぎ、その後ゆったりとカップを傾け、味わい深い紅茶を楽しむ。
 それがモニカの日課であり、趣味だ。
「うん、美味しいね」
「でしょう?」
 目の前でモニカと同じようにカップを傾ける少年、ライの賛辞の言葉にモニカは表情をほころばせた。
 やはり自分の趣味が理解されるというのは嬉しい。
 ラウンズは貴族出身が多いというのに、貴族らしい貴族という者があまりいない。いつもモニカは一人寂しく日課をこなしていたのだ。
「アーニャは紅茶よりもジュースだし、ジノやノネットなんて論外。ヴァルトシュタイン卿とお茶なんて出来ないし……」
「はは、確かに」
「でも、ライって本当に貴族出身じゃないの? 作法も完璧だし……」
 そう言うと、ライは珍しく動揺を見せた。
「そ、そうかな? 僕は僕ほどがさつな人間はいないと思うよ」
「ふふっなにそれ」
 あまりに稚拙な誤魔化しに、思わず笑みが零れてしまう。ライ本人はそれではぐらかしているつもりなのだろうが。
 それにしても、
(出身を聞かれるのが困るのかしら……ま、これ以上はいっか)
 人が隠している物をわざわざ暴きたいとも思わない。興味はあるが、本当に大切な事ならいずれ彼の方から話してくれるだろう。
 それくらいには親しくありたいと思う。そういう相手だ。
「あ、」
 と、何かに気付いたライが声を上げた。
 首だけ振り返って見る。見た瞬間、モニカは嫌そうな表情を、隠す素振りも見せずに表に出した。
「ルキアーノ・ブラッドリー……何の用?」
「ほう、これはこれはクルシェフスキー卿。私に向かって何の用とは、無礼極まりないな」
 そういうのいいから、帰って。そんな無言の要求を視線で送る。
 しかしルキアーノは気にした様子もなく、
「まあいい。私が用があるのはこちらの男だ――ライ・ランペルージ」
「へ? 僕ですか?」
 ライは心底意外そうに首をかしげた。
 ルキアーノは続ける。
「就任の儀以来、挨拶をしていなかったからな。それでこのルキアーノ様が直々に来てやったという訳だ」
 なにを、いちいち偉そうに。モニカは忌々しげにルキアーノを睨んだ。
 こんな男を相手にする必要はないと言いたかったが、ライは真面目にルキアーノの言葉を受け取ったようだ。
0287創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 22:12:21ID:h3rG6tSq
 姿勢を正し、ぺこりと頭を下げる様子はやはり気品に溢れている。
「わざわざありがとうございます、ブラッドリー卿。新たにナイト・オブ・イレブンに就任したライ・ランペルージです。以後お見知りおきを」
「ああ」
 ルキアーノは一度頷いて、
「ところで……貴様の大切な物は何だ?」
 これにはライも質問の意図が理解出来なかったのか、
「大切な物……ですか? それはどういう意味でしょう」
 と、これまた真摯に答えた。
 ルキアーノはふん、と鼻を鳴らし高らかに宣言する。
「なに、個人的な興味だ」
「はぁ……」
 納得出来ない様子のまま、ライはすっと両目を閉じて思考に入った。
 それを見たモニカは、昔同じ事を問われた時の自分を思い起こしていた。
(私は何て答えたっけ?)
 確か、適当にあしらった記憶がある。
(大切な物……)
 ルキアーノは命という答えを持っている。だが、自分はどうだろうか。
 大切な物と言われても、明確な答えをそう持ち合わせてはいない。だからこそ自分ははぐらかしたのだ。
(ライは、何て答えるんだろう)
 普段なら追い払っているルキアーノを放置したのは、彼に対する微かな期待があったからだ。
 ライならば、きっと自分の出せない答えを持っている気がした。それを聞きたい。
「そうですね……」
 やがて、ライはゆっくりと口を開いた。
 真っ直ぐな視線をルキアーノに向けて、
「僕の大切な物。――それは、僕が今まで経験した出来事、そして出会ってきた全ての人々との思い出です」
 他の誰かが言ったなら、気恥ずかしくなるような台詞を、ライは誠実な表情で語った。
「ふん……変な男だ」
 ルキアーノはそれだけ言い残して去っていく。
 ただ、モニカの感想はルキアーノの物と同じだった。ルキアーノがいなくなったのを確認した後、
「本当、変よね。ライって」
「ええっ」
 少しショックだったらしい。ライは悲しげな表情を紅茶のカップで隠す。
 そんなライを微笑ましく思いながら、モニカも紅茶を一口飲んで、ふと、考え付いた質問をしてみた。
「ねぇ、ライ」
「ん?」
「さっき言ってた大切な物に、私も入ってるの?」
 ライは一瞬驚いたように目をまんまるに見開いた後、すぐに笑顔を浮かべて頷いた。

  ――もちろん。
0288創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 22:13:06ID:h3rG6tSq
以上、「なんで、モニカすぐ死ぬん?」とか、「節子それ、モニカやない、ドロテアや」とか、色々言いたいけどまあいいです。
0289創る名無しに見る名無し2009/03/04(水) 22:55:58ID:JHkrJfDa
>>288 ライモニ珍しいですねw
ライはサラッと恥ずかしい事を言いますね!
GJでした!
0290Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:02:07ID:UDEtnOjt
投下しようと思います。
20スレぐらい予定しています。
0291創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 00:07:49ID:imDfnNht
支援
0292Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:08:27ID:UDEtnOjt
では投下します。

Another Lost Colors 色とりどりの世界を君に
 第三話

アニメともゲームとも違うパラレルワールドと思ってください。
 話の展開上オリジナルキャラ、オリジナル設定、オリジナル展開多数です、
 そういうのが苦手な方はスルーしてください。
 一応ライが主人公ですが設定がかなり違います。
0293Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:10:02ID:UDEtnOjt
「お久しぶりです、コーネリア皇女殿下」
 ヘリポートにライはコーネリアを迎えていた。
 後にはアルもついている。
「ライエルか、モスクワをおとしたそうだな」
「いえ、あれは兵達や部下達ががんばった結果です、私は何もしてません」
「ふん、相変わらずその自信に裏打ちされた謙虚さ、変わってないな。
 それよりそのしまりのない顔何とかならんのか」
「いえ、この顔は生まれつきですから・・」
 ライは多少苦笑した。
 確かにライの顔は軍人にしては柔和過ぎるというかあまり威厳がない。
「まあいい、それよりそっちの話は・・」
 コーネリアはもう1人いたエリア11の官僚に顔を向ける。
「はい、総督閣下の歓迎パーティー・・」
 その話を聞いてライは眉をひそめる。
(パーティー?今このエリアはそれどころかじゃないはずだ)
 案の定コーネリアはその官僚に銃を突きつける。
「ぬけている、ほうけている、堕落している、ゼロだ、早く私のもとへゼロを差し出せ」
「まあまあ、総督閣下、銃をお納めください、君、後で正副総督執務室にゼロに関する
 資料とこのエリアに関する資料を後でまとめて持ってきてくれないか」
「え?それはいつまでにございますか」
「いつまで?今日中か遅くても明日までに、ってもしかして用意してないの」
 ライはすでにそうゆう資料はすべてまとめて用意されているものと思っていた。
「いえ、その、事前に命令がございませんでしたので・・」
 官僚の言い訳がましい言葉を聞いて呆れた。
(普通命令がなくても事前に用意しておくものでだろう、コーネリアの言うとおり
 ほんとにほうけてるとしか思えない)
「総督閣下、副総督閣下、すでにそれらの資料はまとめてありますので今日中に
 提出いたします」
 官僚に代わって答えたのはアルだった。
0294Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:13:37ID:UDEtnOjt
 副総督執務室

 執務室のドアには統帥府直属帝立特務遊撃師団暫定司令部と書かれた手書きの紙が張られている。
 特撃はその性質上一箇所に留まることはなく、司令部は司令のライがいる場所におかれることがある。
 現在特撃は政庁基地に駐留し、一部は政庁を間借りしており司令部は執務室におかれることになった。
「こちらが資料になります」
 アルが持ってきた資料をライは目を通す。
「ゼロに関する資料はこれだけしかないのか」
「はい、警察もほとんどゼロに関する情報はつかめてないようです」
「これじゃあ、雑誌に書いてた内容とほとんど代わらないな」
「それとゼロが映っている唯一の映像をTV局から借りてきました。
 パソコンの中にすでに送ってありますのでご覧ください」
 ライはパソコンの中から映像データのアイコンをクリックした。
 パソコンと執務室のテレビにその画像が映った。
 枢木一等兵強奪事件の映像である。
(これがゼロ、それにしても大胆不敵だな、クロヴィスの専用車に模した車で
 正面から現われるとは)
 映像ではジェレミアとゼロの掛け合いが始まっている。
『言うぞ、オレンジだ』
『何、何のことだ、えーいこやつをひっとらえよ』
『全力で私を見逃せ』
「!!」
 この瞬間、ライは驚愕した。
「ちょ、今の!?」
「どうされました」
 ライはすばやくパソコンのキーボードを打ち、先ほどの映像をまき戻し再生した。
0295Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:14:39ID:UDEtnOjt
「これは、やっぱりギアスだ」
『全力で彼らを見逃すのだ』
 ジェレミアの顔を拡大し映像をクリアにしていく。
「ジェレミア卿の目が赤くなっている、ゼロはギアスを使ったんだ」
「!!ゼロも司令と同じギアスユーザーということですか」
 ライは書類をひっくり返してある書類をみつけた。
「前幕僚長バトレー将軍、クロヴィスの護衛を勤めていた親衛隊も
 クロヴィスの殺害された時間の記憶がないと証言している。
 ジェレミア卿はこの時のことをなんと言っている」
「確か記憶に無いと・・」
「やはりな、前後の記憶が混濁するのはギアスの後遺症だ。
 ゼロは私と同じ絶対遵守のギアスユーザーだ」
 ライはパソコンを先ほどの映像からシンジュク事変のデータに
 切り替えた。
 パソコンではシンジュク事変のナイトメアの動きが出ている。
「この時からレジスタンスの動きが格段に良くなっている」
「恐らくゼロが指揮したのでしょう」
「まるでナイトメアをチェスの駒の様に扱ってるな。
 これがゼロの指揮だとしたらゼロは相当な用兵家だな」
 ライは一旦書類とパソコンから目を離し考えた。
「アル、戦略研究班に言ってゼロを徹底的に分析させろ。
 情報部にはゼロに関する情報収集、どんな些細な情報も私に報告するように言え。
 ギアス解析班にはゼロのギアスの解析を頼む」
「イエス、ユアハイネス」
(ゼロ、もしかしたら僕にとって最大の敵になるかもしれない
 いや、もしかしたら味方以上に必要な敵かもしれないな)
 ライは再び書類に目を通した。
「ん?」
「どうしました」
「いや、これなんだがこのお金の流れ、うまくごまかしているけどどう見ても不自然なんだよ」
 アルはライから渡された書類を見る。
「確かに、科学技術向上のための研究費となってますが金額が大きすぎます」
「アル、すまないがこれについても調べておいてくれないか」
「わかりました、もしこれが本当だとしたらクロヴィス前総督は相当な予算を
 流用したことになります」
「死人に鞭打つまねはしたくないけどね、何か気になるんだよ」
0296Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:16:13ID:UDEtnOjt
翌日

 政庁奥にあるクロヴィスの私邸

 ライはここに訪れクロヴィスの書いた絵を見ていた。
「これを全部、クロヴィス前総督が」
「はい」
 クロヴィスの執事だった男が言った。
 ライは沈痛な面持ちでその絵を見た。
(素人の僕にもわかるほど良い絵だ。
 クロヴィス、皇族にさえ生まれてなければ
 芸術家として大成してたかもしれないのに
 哀れだ)
 ライは下を向いて少し涙をこぼした。
 ふとある絵に気づいた。
「この絵は?」
「亡きマリアンヌ様とそのお子様達の肖像画でございます」
(マリアンヌ様のご子息にご息女、確かこのエリア11で亡くなったと聞いたが
 ユフィが言ってたな、確か名前はルルーシュにナナリー)
 この事が後で重大な意味を持つことになるとはこの時のライは気づいてなかった。
0297Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:18:20ID:UDEtnOjt

 再び副総督執務室に戻ったライは政務に勤しんでいた。
 コンコン
 扉をノックする音にライは返事をする。
「はい、どうぞ」
「失礼します、副総督閣下」
 入ってきたのはスザクだった。
「突然お呼び出しして申し訳ない、枢木一等兵・・いえ、准尉になられるんでしたっけ」
「まだ、正式な辞令は出てませんがその予定です」
「そうですか、では枢木一等兵でよろしいですね、おかけください。
 今お茶をいれてもらいますんで」
 執務室のソファーに座らせ、お付のメイドにお茶を入れるように頼んだ。
「いえ、そのお構いなく・・」
「遠慮することはありません、本当はスザクと呼びたいし、ライと私のことは呼んでほしいのですが
 今は公務中なので勘弁してもらいたい」
「いえ」
 メイドがお茶を入れてライとスザクの前に出した。
「あの、この人は・・・」
「ええ、日本人ですよ、小百合さんっていうです。彼女の入れる紅茶は絶品です」
「恐縮です、ライエル様、今日は良いアールグレイが手に入りました。
 スザク様もぜひお召し上がりください」
「はい・・」
 スザクは少し戸惑っているようだった。
 日本がブリタニアに占領されてから、ブリタニア人からは名誉と差別され
 同じ日本人からは裏切り者と呼ばれた。
 それは仕方ないことだと思いつつ、悲しかった。
 目の前にいるライはブリタニア人の中でもさらに支配者階級の皇族である。
 本来なら自分を最も差別するべき立場にもかかわらずライはスザクに対して
 礼を尽くしている。
「今日貴方を呼んだのは他でもありません、貴方に聞きたいことがあるからです」
「聞きたいこと?」
 スザクは首をかしげた。
「ええ、ゼロについてです」
「ゼロ!?そのことでしたら取り調べのとき何度も・・」
「調書なら穴が開くほど読みました、ただ肝心なことが書かれてないんです」
「肝心なこと?」
「貴方はゼロについてどういう印象を持ったかということです」
「僕がゼロについてですか」
「ええ、話していただけますか」
「・・わかりました」
 スザクはしばらく考えた後、口を開いた。
0298Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:19:18ID:UDEtnOjt
「彼は間違ってると思います」
「ほう、貴方は彼によって助けられたと調書には書かれていますが・・」
「そのことについては感謝しています、でもあんなやり方じゃあだめです。
 間違ったやり方じゃ意味なんて無いと思うんです」
「ふんふん」
 ライは頷きながらメモを取っている。
 しばらくスザクの話に相槌を打っていたライだったが
「なるほど、つまり貴方はゼロに対して否定的ということですか」
「はい」
「わかりました、もう結構です、いろいろ参考になりました、ありがとうございました」
(ゼロについてだけではなくスザクの性格も読めてきたな)
「お役に立てたなら嬉しいです」
 そう言ってスザクは執務室から出て行こうとするが
「あ、ちょっと待ってください、肝心なことを伝えるの忘れていた、枢木一等兵
 貴方学校へ行く気あります」
「学校ですか」
「ええ、普通貴方の年齢だったら学生やってるほうが自然ですから
 学校通ってみませんか、もちろん強制はしませんが」
「僕もできれば学校に通いたいと思いますが・・」
「そうですか、ならこれ・・」
 そう言ってライが机の中から取り出したのはアッシュファード学園の入学案内と願書だった。
「特派がある大学から一番近いのはこちらですから何かと都合が良いでしょう。
 学費はこちらが持つんで安心してください」
「いえ、そんな、そこまでしていただくなんて」
 ライはフッと笑った。
「安心してくれ、これは私の、いや僕の自己満足、権力者の道楽とでも思ってくれれば良い
 だから遠慮することはないさ、君みたいなタイプの人間はほっとけないし、親戚には
 優しくするのは当然だろう」
「親戚!?」
 その言葉にスザクは目を見開いた。
「僕の正式な名前はライエル・スメラギ・ブリタニアって言うんだ、従兄弟殿」
「スメラギ!?」
「そうスメラギ、僕の母はキョウト六家筆頭皇家の出身、君とは従兄弟にあたるんだ」
 そう言ってライはメモに何かを走り書きしてスザクに渡した。
「僕のプライベートナンバー、何かあったら電話して力になるよ」
0299Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:20:13ID:UDEtnOjt

 釈放されたジェレミアは廊下を歩いていた。
「だからオレンジではないというのに・・」
 なにやらブツブツ呟いている。
「おい、オレンジ」
「だからオレンジではないと!!何度も・・キューエル卿か何の用だ」
「副総督がお呼びだぞ」
「副総督が私に?」
「ああ、この間のことかもしれないな、あの副総督は改革派のリーダーだ。
 ナンバーズと共生と融和などと言う戯言を唱えている連中で、純血派とは対立する派閥だ。
 たださえ厄介なのに今回の件を理由に私達を処分する気かもしれん。
 貴様がどこぞの最前線にとばされようともかまわんが、私達まで巻き込まれたら
 いい迷惑だ」
「何だと!先日の件は貴様のせいだろう、あの件に関しても私が覚えていないと何度言ったら・・」
「また、その言い訳か、それより早く行け、これ以上心証を悪くさせるな」
0300Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 00:21:32ID:UDEtnOjt
副総督執務室

 コンコン
「はい、開いてますよ」
「失礼いたします、ライエル副総督閣下、ジェレミア・ゴッドバルト、
 ライエル様の命によりただいまはせ参じました」
(テンション高い人だな)
「急にお呼び出しして申し訳ありません、ジェレミア卿」
「ライエル様の命でしたらいつでもはせ参じる所存であります」
「ジェレミア卿、私のことはライエル卿、もしくは略してライ卿で
 結構ですよ、皇族といっても殿下とはつかないんですからわざわざ様なんて
 つけなくてもよろしいです」
「いえ、しかし、皇族相手にその様な口のきき方は・・」
「いいですね、ジェレミア卿」
 やんわりとした口調だが妙な威厳があるライの声にジェレミアは
「イエス、ユア、ハイネス」
 と返事してしまった。
「先日は災難でしたね、無事釈放されたそうで、今回貴公をお呼び出ししたのはその件にも
 関わりあることです」
 ジェレミアは息をのんだ。
「信じてください、決して私は帝国を裏切るようなまねをしておりません。
 オレンジなどというのはゼロのでっち上げです、私は本当に覚えが・・」
「わかりました、信じます」
「信じられないのも無理はありません、ですが私の皇族に対する忠義は・・っと今何と仰いましたか!!」
「信じますって言ったんですよ、ジェレミア卿」
 ジェレミア卿は信じられない者を見るような目でライを見た。
 今まで同じ純血派の仲間にすら信じてもらえないのをライは立った一回会っただけで信じるといったのだ。
「あの、ですが、しかし・・」
 ジェレミアは逆に動揺し言葉に詰まる。
「なんですか、もしかして本当は疑惑どおり不正を働いたとでも・・」
「いえ!!決してそのようなことは!!」
「フフ、すいません、私は一目見ればその人が嘘をついてるかどうかはわかります。
 貴公は嘘をつける人ではないとわかります」
「あ、ありがとうございます」
 ジェレミアは頭を90度下げた。
0301創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 00:25:04ID:i+/04ORK
さるに間に合わなかったかな

支援
0302創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 00:40:56ID:LJVWszdd
支援
0303創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 00:52:43ID:ldn4s/CS
支援
0304Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 01:00:45ID:UDEtnOjt
「顔をお挙げください、ジェレミア卿、あの映像見させてもらいました。
 恐らく貴公は混乱と興奮のあまり、自分の意思と全く別の行動をとってしまったのでしょう。
 記憶がないのもその辺の影響でしょう、精神医学的にありえない話ではありませんから。
 あれは不幸な事故です。
 さすがに貴公を前の階級に戻すことはできませんが貴公や純血派の復権できるだけ
 お手伝いさせていただきます」
 さすがにギアスについて説明するわけにはいかなかった。
 ジェレミアはボロボロ泣き出した。
「どうしました!?」
「うう・・失礼しました、命を助けられたばかりかこのような私の言うことを
 信じてもらえて大変感動しております。
 この恩義このジェレミア命に代えましてもかえさせていただきます」
「はは・・気が向いたらでいいですから・」
(本当に感情が顔に出る人だな)
「一つ聞きたいことがあります」
「はい、何なりとお申し付けください」
「貴公はゼロにどういう印象を持ちましたか」
「ゼロ・・ゼロー!!」
 急に叫びだしたジェレミアにライはビクッとする。
「ゼロ、奴こそブリタニア帝国臣民の敵!!世界の敵!!私の敵!!・・」
 その後ジェレミアはよくもまあこれだけボキャブラリーが続くなとライが
 感心するくらいゼロに対する罵詈雑言を叫び続けた。
 10分後
「つまり、ゼロを倒すことこそが・・」
「あの、もう結構です、貴公がゼロにどういう想いを抱いてるか十分理解しました」
「は、しかし、まだ20分ぐらい続きが・・」
「本当に結構ですから、私の用件は以上です、下がって良いですよ」
「は、失礼します、最後に一つお聞きしてもよろしいでしょうか」
「?なんですか」
「ライエル卿の実の母親がマリアンヌ様と言うのは本当なんでしょうか
 今は亡きルルーシュ様の双子の兄弟というのは」
 ライはその質問に顔をしかめた。
「マリアンヌ妃の二つ名『閃光』を私が受け継いだからそういう噂も出ているのも知っています。
 亡き従兄弟のルルーシュと誕生日が全く同じ日だというのも噂の出所の一つですが
 それはまったくのでたらめです、DNA鑑定でもそれは証明されています」
「も、申し訳ありません、出すぎたことを聞いてしまって・・」
「いえ、貴公がマリアンヌ妃を敬愛しているのは知っています。
 私もその2つ名に恥じぬ振る舞いをするつもりなのでよろしくおねがします」
「ははぁぁ」
 ジェレミアは恭しく頭を下げた。
 ジェレミアが出て行った後、アルが執務室に入ってきた。
「いいんですか、今更純血派を取り込んだところでたいしたメリットはありませんよ。
 彼らはあまりにも私達と思想が違い過ぎます」
 ライは机にひじを突き
「別に純血派を取り込むつもりはないよ」
「だとしたら何故ジェレミア卿をかばうのですか。
 こっちまで余計な火種を抱えることになりますよ」
「う〜ん、彼みたいな人間も何だかほっとけないんだよね」
 アルはライの人の良さにため息をつく。
「それに」
「それに?」
「彼の忠義心は本物だよ、味方にしておいて損はない」
0305Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 01:01:41ID:UDEtnOjt
数日後

「本日はクロヴィス様のご葬儀があります」
 アルはスケジュール帳を見ながら話す。
「そういえば今日だったな、本当なら直に参列したかったが
 今ここを離れるわけにはいかないな」
「衛星中継される予定なのでそちらをご覧ください」
 予定の時間になってアルは執務室のスクリーンとプロジェクターを
 動かす。
 スクリーンには亡くなったクロヴィスの巨大な肖像画がうつり
 ブリタニアの国歌が流れ荘厳な雰囲気だ。
『神聖ブリタニア帝国第98代唯一皇帝陛下よりお言葉』
 髪がロール巻きの威厳のある男性が壇上に立った。
 ライは皇帝を見るたびに思うことがある。
(どうやってあの髪セットしてるんだろう)
『人はァ! 平等ではない・・・』
 ライは皇帝の演説を聞きながら思った。
(やれやれ、伯父貴は相変わらずだな、確かに平等なんて人間の幻想に過ぎないが
 人の多様性において差別主義もナンセンスだ、平等、不平等に善も悪もない、
 もしブリタニアが本当の意味で進化しているのならとっくに戦争なんてやめているはずだ)
 演説が終わった後、ライはため息をついた。
「相変わらず伯父貴は当たり前のことを大げさに言う才能に満ちてるな。
息子の葬式まで、こんな政治的プロパガンダを垂れ流さなくても・・」
「今の発言、不敬罪にあたりますよ」
「君が言わなければいいだけだろう」
「私が密告するとは思わないですか」
「その時は僕の人の見る目がなかったというだけさ」
 ライはアルとの会話を楽しんでるようだった。
 アルはメガネの位置を直しながら
「特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)がエリア5での反乱鎮圧の任を終え
 近日中にもこのエリア11に着任します」
「そうか、ようやく彼女達が」
0306Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 01:02:39ID:UDEtnOjt
 エリア5(旧ペルー)

「くそ、何なんだ、奴らは」
「あのような少数精鋭部隊がブリタニアにいるなんて聞いてないぞ」
 破壊された市街地において反乱軍のナイトメアが次第に追い詰められていく。
「我が軍随一の機械化部隊がこうも簡単に追い込まれるとは」
「答えは単純明快『弱い』からさ」
 一機のナイトメアが放つ銃弾は反乱軍のナイトメアを次々と打ち抜く。
「奴らはコーネリアや、シュナイゼルの親衛隊でもありません」
「展開していた支援部隊、すべて破壊されました!!?」
「少佐!!」
「残りのナイトメアで市街建造物の残骸を盾に頭を叩く、最早これしかない」
 部隊の指揮官は部下に指示をだす。
「散開!GO!」

「ジ・オドに反応、気配が殺気だったな、動いたか、ルクレティア」
 ナイトメアに乗る黒髪のクールな印象を持つ少女が呟いた。
 その額にはギアスのマークが
「はい、大尉、ザ・ランドとGPSの照合完了、残存騎、予想経路2でこちらに進撃してきました」
 真面目そうな三つ編みの少女が冷静に言った。
「単純な奴らだ、司令がここにいたら笑っているところだ、ダルク」
「あいよ」
 返事をして出てきたナイトメアに乗っているのはショートカットにリボンをつけた
 活発そうな少女。
「レセプター同調、ナイトメアフレームへのギアス伝導開始」
 ゴゴゴ!!!
 轟音があたりに響く。
「いっけえええ!!!」
「何だ!?」
 ナイトメアが何とビルを担ぎながら落ちてきた。
「これがあたしの能力(ギアス)ザ・パワー」
「こんなバカな!」
 反乱軍のナイトメアはビルの残骸に押しつぶされ爆発した。
「これで当該エリアでのわれわれ(特殊名誉外人部隊)のミッションは
 終了した」
 サンチアは爆発するナイトメアを見ながら冷静に言った。
「次は、どのエリアでの作戦になるんですか」
「エリア11旧日本だ、大佐から連絡があった。
 本隊はすでに駐留している」
「んじゃあ、久しぶりにライに会えるね」
「ダルク、司令かライエル様でしょう」
「え〜、ライも呼び捨てで良いっていってるよ」
「まったく・・たしかエリア11は・・」
「ああ、すでにアリスが潜伏している」
「アリスとも久しぶりに合流できるね、そういえばターゲットは?」
「ゼロ、ギアスユーザーだ」

 パチパチ
 瓦礫の上にはD.D.が座って彼女達を見ながら拍手をしていた。
「素晴らしいな、実に素晴らしいな
 ようやく彼女達も舞台に上がる、本来出会うはずのなかった英雄達の
 一大叙事詩、主演はゼロかそれとも君か、私は観客として
 そして演出家としてこの舞台を見届けさせてもらうよ、我が契約者ライ」
0307Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 01:04:45ID:UDEtnOjt
以上です
これからはキャラ、用語説明です。

特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)
 通称イレギュラーズ 隊長はサンチア
 特撃に所属している部隊 司令であるライ直属の部隊でライの親衛隊のような部隊である。
(ただしライに騎士はいないので正式に親衛隊とは認められていない)
 名前の通り全員ナンバーズでありギアスユーザーでもある。
 戦災孤児になり響団の実験体にされ脱走したところをライに助けられてそのまま
 特撃に所属している。
 各隊員の紹介は次回

 小百合
 ライのお付きのメイド
 苗字や詳細はネタバレになるのでここでは詳しくは書けません。
(この時点で気づいた人は気づいてると思う)
 日本人でお茶を入れるのがうまい。
 詳細はおいおいと語られる予定。


0308Mrスケアクロウ2009/03/05(木) 01:13:06ID:UDEtnOjt
これで完全に終了です。

しかしライがやってること完全にナンパだな。
人脈を作っているところなんですけど。
そしてイレギュラーズの登場。
アリスは次回登場予定。

しかしコードギアス小説版最終巻読みましたが
マリアンヌのいかれっぷりに正直引いた。
さらにナナリーの闇の部分も垣間見れたところとか。
その辺も今後生かしていきたい。
ナナナは登場人物がまともでよかった。
皇帝もマリアンヌも最後はナナリーの選択を支持したし。
あとがきが長くなりました、すいません、では又次回
0309創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 01:47:45ID:bTaKc7zr
>>288
GJでした!
モニカ……結局のところ性格がイマイチ分からない私。
小説にでも書いているのだろうか。
……ルキアーノ実際何しに来たんだろう?
ライ、まっすぐだ……凄くまっすぐだ……
なんかいいねぇ。

>>308
Mrスケアクロウ卿、GJでした!
ジェレミアァァァァァ!
副総督が自分を信じてくれたことにより、彼はどういう道を行くのか……
でも、ゼロへのうらみは深いなぁ……紅蓮にチンされるフラグはまだ残っているっぽいですね。
しかしこの展開……イレギュラーズもでてるし……
続きが非常に楽しみです!

貴公らの次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0310創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 04:19:06ID:zx2rODTI
Mrスケアクロウ卿、乙です!

更新、一日千秋の思いでお待ちしておりましたが、まさかイレギュラーズが登場するとは・・・
GJ!激しくGJです!!
イレギュラーズとライ、SSのネタにすれば妙にうまく絡むんですよねw
しかも、何だか全員とフラグ成立しているみたいだしww
次回も全力でお待ちしております。

P.S
「黒髪のクールな印象を持つ『少女』」
サンチア姐さんって確か20代前半か半ばだったような・・・
0311貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE 2009/03/05(木) 12:59:34ID:LJVWszdd
ロスカラSSスレよ、私は帰ってきた!!
いや〜かなり間を空けまくりましたが、やっぱり書きたくなっちゃうんだよねw
『姫と騎士にて、愛しきかな』の続編をリハビリな感じで執筆してみた。
……この時間って人いるのかしら? 大して長くないけど、支援が欲しい今日この頃。
0312貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE 2009/03/05(木) 13:13:05ID:LJVWszdd
お茶会、食事会、夜会、舞踏会。どれも意味するところは違う。
けれどそれを貴族や皇族が行うものと考えると内容は似通ったものに成ってくる。
即ち『悪巧みの場』であり、『人脈を広げる場』でもあり同時に『万魔殿』と同義。
歴史は言うに及ばず、現代の神聖ブリタニア帝国でもその定義は適用されるだろう。
懇意である者、お近づきになりたい者をこれらのイベントに招待する事で、有効に親交を深めたり新しい関係を築くのだ。

お茶や食事、華麗なダンスの裏ではただの親交と表現するには生ぬるい策謀が飛び交う。
主催者は多くの交友関係を築くべく努力するし、出席者は自分のライバルとなりそうなものを見繕う。
戦いは常に行われているが、それは決して人目に触れることは無い。
『笑顔の敵に後ろから狙われているようで気分が悪い!』
ナイトメア・フレームの操縦に定評があったゴッドバルド家跡取りの言葉だが、正にその通りである。

笑顔で居ない者は居ないが、それは決して善意の体現でない。笑顔とは仮面であり、悪意と打算に満ちた本心を隠す為のフェイク。
偽りの微笑みの下では戦場とは違う戦いが常に行われる修羅の庭だが、そこでの争いが今のブリタニアを作り上げているのだ。
故にこの国で上流階級に属すればイヤでも通らなければならないイベントであり、それは最近になって騎士を持った出戻り皇女とて例外では無い。





「おはようございます、ナナリー様」

ナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下の朝のご機嫌と言うのは、朝一番にかけられた声によって二段階に変化する。
もっとも目が見えず、足が動かないハンデを持ちつつも真っ直ぐ誠実に育った彼女にとって、機嫌が悪いなんて事は自意識下には無い。
強いていうならば『普通』と『上機嫌』である。

「はい、おはようございます」

見えない目で捉える先に居るのはメイドである事が、視覚以外の全ての感覚でナナリーには解った。
故に今朝のご機嫌は……普通である。


「おはよう、ナナリー。よく寝られたかい?」

でもその『普通』は朝食の場で掛けられる声によって、『上機嫌』へと変化し、後はそれが一日中続く。
声の主は先にテーブルについていた銀髪の青年 ライ・ランペルージ。本当の名をライとしか解らない元記憶喪失者。
しかし今では皇帝を初めとした皇族に認められたナナリーの騎士である。

「おはようござます、ちゃんと寝られましたよ? ライさん」

「そうかい? もしかしたら緊張して眠れていないのかと思ってさ」

足が動かないナナリーは車椅子のまま席に着き、メイドたちが料理をテーブルに並べ始め、朝食の準備が整った。
コックの技量が光るブリタニア風ブレックファーストを口にしながら、ライとナナリーの会話は続く。

0313貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE 2009/03/05(木) 13:15:20ID:LJVWszdd
「もう……私はそんなに子供じゃありません!」

「ゴメンゴメン。でも始めてのお茶会だからね? 色々と準備する事もあったし」

頬を膨らませる様すらも恐ろしく愛らしいナナリーと宥めつつもその身を案じるライ。
『お二人の会話だけで食パンが幾らでも食べられる』
二人の居住するベリアル宮のメイドなら頷いてしまう、上記の言葉が似合う理想的ストロベリートーク。

「お母様が主催したり、ユフィお姉さまの所へお呼ばれした事はありますけど……ゴメンなさい」

「どうして謝るんだい?」

不意の謝罪にライは首を傾げ、ナナリーは瞳を閉じたままの可愛い顔を苦悶に歪める。

「自分じゃ何も出来ないくせに、『お茶会を開いてみたい』なんてワガママを……」

「前にも言ったと思うけど、君のワガママなら僕は何でも叶えるよ? ナナリー」

『ブリタニアの皇帝になりたい』と真摯に言われたならば、ギアスや策謀の限りを尽くして彼女を世界の頂点に導く用意がライにはある。
万が一にもそんなお願いされないだろうと解っていたが、皇族や貴族の嗜みにして重要命題たるお茶会の開催くらい楽なものだ。

「もう……ライさんと居ると世界一悪い娘になってしまいそうです」

「それは光栄の極みです、プリンセス?」

挟んだテーブルさえも障害であり、僅かな距離すら二人の間では無粋なもの。
だが『それに』と前置きをして、ライは真剣な顔で語り出すのは現実のお話。

「これからブリタニア皇族として生きていくなら、どうしても必要な物を手に入れる絶好の機会でもあるからね」

ブリタニアと言う国で『皇族』と言う存在はただソレだけでも大きな意味を持つ。
しかしそれだけで血を別けた間からでの凄惨な共食いに勝利できる訳ではない。
次に世界を統べる皇帝に相応しい者か否か? 図るべき点としては総合した知力が筆頭に上げられるだろう。


「後ろ盾ですね?」

そして次に重要に成ってくるのが後ろ盾。簡単に言えば支援者・支持者を持つ事。
有力な後ろ盾を例に出せば国の経済を動かす大企業の社長、大隊以上を任せられた高級軍人、エリアを統括する大貴族。
彼らは皇族と言う箔を付ける事を、皇族は一人では得られない影響力を確立する為にその関係を結ぶ。

「それでライさん……どれくらい来て頂けそうですか?」

本来そんな後ろ盾候補を出戻り皇女が、会合の場に引き出すのは難しい。
なぜならばそんな存在は既に他の皇族や大貴族の傘下に入っている可能性が高いからだ。
すなわち皇位継承権を上げるレースとはそう言った後ろ盾たちの獲得競走なのである。

「大丈夫だよ、ナナリー。君が会いたいと言っていた面子は、普通ならば皇族や貴族の後ろ盾になるような人たちじゃないからね
 まぁ、儀礼的にお誘いした兄弟や姉妹の皆さんは難しいから抜きにして……」

0314貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE 2009/03/05(木) 13:16:42ID:LJVWszdd
もし本当にそう言った存在の獲得が目的ならば、ライもかなりの無理をしなければ成らないし、お断りを多数受ける事にもなりかねない。
けれども今回は実に楽な交渉に終始した。その理由はナナリーが会いたい人々がブリタニア内で高い存在では無いからである。

「それ以外はリスト通り、全員が参加してくれるみたいだよ?」

そういう意味では姫が心配する騎士への負担は小さいと言う事になるのだろう。
ナナリーはホッと息をついて、数時間後に控えるお茶会へと考えを巡らせる。

「そうですか……楽しみです」

何時でも優しく華やいだ空気が流れるベリアル宮。
そんな場所でもメイド達が準備の為に動き回り、主が夢想を巡らせる今の状況は特筆すべき状態と言えた。





「「「「「ようこそいらっしゃいました、ジョン・マクドナルド様」」」」」

迎えに来た黒塗りのリムジンから降り立った私 ジョン・マクドナルドは呆然としていた。
ここは皇族のプライベートハウスが並ぶ一角、その中では小さいとは言え一般人からすれば大きく豪華な建物 ベリアル宮。
そして自分を出迎える複数のメイドたち……私は場違いだ。

「荷物やコートはこちらでお預かりします」

「あっはい」

何とか小さく返事をすれば、テキパキと自分のコートは剥ぎ取られ、鞄は強奪された……これぞ正しくプロの手際。
空回りする思考回路の片隅で無駄な考えを巡らせてみる。

「どうぞ、こちらへ」

案内された先は充分に手入れされた庭園だった。美しい離宮の佇まいを更に引き立てている。
地面には丁寧に刈り込まれた緑の芝生、過敏に過ぎず咲き誇る淡い色合いの花々たち。
そして中央には白いクロスを纏ったテーブル、その上には白亜に精細な縁取りが成されたティーセットが並んでいる。
これがいわゆるガーデンパーティ? こういった場所に初めて呼ばれるので詳しくは解らない。

「まもなく主が参られます。どうか寛いでお待ち下さい」

案内してくれたメイドにそんな事を言われるも、ガチガチになった体を解す術は無い。
医科大の同僚たちは知らないが、こう言った場所には縁がないと思っていた。
内科や外科を筆頭とした花形を専攻していれば、皇族や貴族にお呼ばれもあるだろう。
だが自分が専門にしているのは精神科、しかも幼児や高齢者を多くの対象にしており……弱者が嫌いなブリタニアでは人気が無い分野なのだ。
ふと周りを見れば参加者は十人に満たず、その大部分がそれなりの格好をして学を収めているが、こんな場所に馴れていない雰囲気。
良かった……自分だけ場慣れしておらず、無礼を働いたら如何しようかと思っていたのだ。
ふいに空気が変わった。メイド達が緊張の糸を張り、私たち招待客にもそれが伝わる。

「ようこそ、いらっしゃいました」

0315貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE 2009/03/05(木) 13:17:33ID:LJVWszdd
響いたのは愛らしい声。現れたのは二つの人影。

「私のような若輩の招きに応じてくださり、本当にありがとうございます」

皇族らしくない前口上を語るのは車椅子に腰掛けた可憐な少女。光を捉えていないらしい眼は伏せられ、栗色の髪は緩やかなウェーブを描く。
そしてもう一人は少女の車椅子を押す端正な顔立ちの銀髪の青年。

「初めてお茶会というものを主催したので、皆さんにご満足いただけるか解りませんけど、どうか楽しい時間をお過ごしくださいね?」

そこで少年が少女に何やら耳打ち。少女の方はパッと顔を羞恥で赤く染め、思い出したように続けた。

「えっと! 私がナナリー・ヴィ・ブリタニアです。そして私の騎士である……」

「遅い紹介になってしまいましたが、ナナリー皇女殿下の騎士を勤めているライです」

どうやら先程の騎士 ライ卿の耳打ちは、皇女殿下に自己紹介を忘れていることを教えるものだったらしい。
『遅い紹介』と言う単語は忘却へのジョークなのだろうが、私を含めて招待客には笑う余裕は無い。

「もう! ライさんが早く教えてくれればよかったんです……」

ツンとそっぽを向き、頬を膨らませる。ナナリー皇女殿下が取るのはそんな余りにも愛らしいアクション。
それを受けてクスリと小さく笑い、ライ卿は続ける。

「とまぁ、こんな主従ではありますが……これから午後のひと時を皆さんとご一緒します。どうかお手柔らかに」





後にして思えば……この二人 姫と騎士はどんな高みに上り詰めても……この暖かく支えあう関係を失うことは無かったのだろう。

――ジョン・マクドナルド 晩年の回想録にて 後に世界を変える者達について記す――
0316貧弱な軍馬 ◆Hrs3a0oJRE 2009/03/05(木) 13:24:56ID:LJVWszdd
あれ〜随分と小さく収まってしまった……これが創作版の力なのか!?
うん、ただ私が久しぶりすぎて四苦八苦し、短く切っただけなんだけどねw

と言う感じで、『姫と騎士にて、愛しきかな 七話』をお送りしました〜
貴族と言えばお茶会→お茶会と言えば陰謀策謀後ろ盾? そんな無茶理論の賜物(ぉ
お茶会の詳しい中身も考えてはいるけど……読む人は楽しいのだろうか?(遠い眼
0317創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 14:16:05ID:SmzSJTJ5
GJ!
ひさしぶりにライナナで2828させていただきました
お茶会の中身ももちろん読みたいです
ここ最近の投下でロスカラはまだ終わっていないと感じました
0318創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 19:02:37ID:osedSFA4
お久しぶりです!そして投下乙です!
ナナリーが可愛すぎる!
久々のライナナごちそう様でした
又の投下をお待ちしてます
0319創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 19:21:53ID:bTaKc7zr
>>316
貧弱な軍馬卿、GJでした!
良い! ディモールト・良い!
ライナナは癒される、なんだかとっても暖かいかんじだ。
お茶会の中身? 読まなきゃ楽しいも楽しくないも分からない。
お願いです、投下していただきますますか。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0320創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 20:45:00ID:GWAtLcN/
職人の皆さんGJ!!
このままの勢いでロスカラ2発売まで行くぜ!!
というわけで、ロスカラ2のエンディングを妄想しました。(もちろん、主役はライ!)

@ルルーシュ死亡阻止エンド
Aカレンとラブラブハッピーエンド
Bシャーリー生存、ルルシャリ出歯亀エンド(シャーリー騎士団加入)
CC.C.と不死共存エンド
Dスザクとゼロレク継承エンド
Eラグナレクの接続失敗、ユフィがCの世界から復活、スザユフィ出歯亀ハッピーエンド
Fアーニャとジェレとオレンジ畑でモラトリアムエンド
Gナナリーと世界再興騎士姫エンド
H中華〜超合衆国ルートで星天出歯亀エンド
I藤堂千葉&扇ヴィレを出歯亀しつつ、玉城と日本奪還エンド
Jジノと自分探しエンド
Kルルナナロロ生存で、ロロと義兄弟エンド
L騎士団オペ娘の誰かと友達以上恋人未満で、普通の生活エンド
Mラウンズまたはブリタニア皇族女子の誰かといい仲になりつつ、ブリタニア和平復興エンド
Nシュナイゼルとダモクレス自爆エンド
Oシャルルとマリアンヌと神殺し成立、サードインパクトエンド
Pミレイとニーナとリヴァルと親友関係で、アッシュフォード養子エンド
Qロイセシ、ラクシャータとどこかで研究者エンド
Rカグヤと婚約、皇家復興エンド
Sギアス根絶のための旅に出る孤独贖罪エンド

なんかSSのリクみたいになってしまったw

0321創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 20:47:48ID:kasq1xxR
む、投下いきます。ライin中華の短編
0322創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 20:49:05ID:kasq1xxR
 星刻と天子、香凛、そしてライの四人はとある空間に集まっていた。
 星刻を教師に、天子が国政について勉強に励む様子を、ライは香凛のいれたウーロン茶を飲みつつ見守っている。
 やがて勉強が一段落したところで、天子が星刻に問うた。
「ねぇねぇ、星刻」
「何でございましょう、天子様」
 天子は少しだけためらった後、
「星刻とライはどっちが強いの?」
「っ!?」
 いったい何を。ライはそんな視線を送るが、天子はいつも通りのにこやかな笑顔。
 どうやら、純粋に子供心から来た疑問らしい。
 では、何と答えるのがよいか。ライが言葉に迷っていると、笑顔を崩さず星刻が答えた。
「いいですか、天子様。そのような疑問に意味などありません」
 星刻の言葉は真剣だ。
 ライは彼の告げるであろう言葉を先読みし、うんうんと頷いた。
(こういう役目は、星刻の方が適任かな)
 星刻は続ける。
「我らは天子様をお守りする剣。どちらが強いなどという事実に意味はなく――」
 一息。
「また、ライも私も、どちらも天子様をお守りするための力を持っているのですから――まあ、私が上でライが下ですが」
「ぶっ」
「何か文句があるのか、ライ?」
「いえ……」
 吹き出し掛けたウーロン茶を喉の奥へ。
 敵意剥き出しの星刻をあしらいつつ、ここは一旦この場から離れたほうがいいとライが判断した時だ。
 天子はでも、と前置きして、
「でも、でもでも、ライは星刻にも負けないって言ってたよ」
「いいいいぃぃぃ天子様!?」
「ほう、ライ貴様……」
 星刻が腰の剣帯に手を掛ける。
 振り返ればもう、香凛は一目散に部屋から逃げ出していた。慣れだろうか。見習いたい。
 ライは若干泣きそうになりながら、否定の言葉を並べた。
「言ってない! 言ってないです!」
 しかし天子が続ける。
「でもライ言ってたよ。『僕は、天子様が見守って下さる限り誰にも負けませんよ』って」
「そ、それはっ……!」
 言ったかもしれない。
 ライの躊躇に、星刻が剣を抜いた。
「ライぃ!!」
「うわっ」
 首筋に突きつけられた剣先を見て、ライはごくりと唾を飲み込んだ。
 まずい。これは殺される。
 これ以上下手な事は言えない。そう思いつつ、ライはちらりと天子の方を見て、
(これは駄目だ……)
 天子は止めるどころか、ライと星刻の勝負の行方にわくわくと心躍らせているようだった。
0323創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 20:50:35ID:kasq1xxR
(仕方ない)
 ライは覚悟を決め、星刻に向き直った。ひやりとした嫌な汗が頬を流れ落ちる。
「言っ……たかもしれません」
「…………」
 ごくり、と再び唾を飲み込む音が部屋に響いた。
 沈黙が支配する空間。
 緊張の均衡。
 しかし、次の瞬間、それらは破られる。
「へくちっ」
 天子の可愛らしいくしゃみが聞こえたと思った時には、星刻が剣を突き出していた。
「シャースーニィィー!!」
 ライは反射的に頭を右に傾けてかわす。
 そのすぐ横を星刻の剣が一陣の風をもって通り過ぎた。
 つつ、と僅かに流れた自分の血を見て、
「殺す気ですか!?」
「ウオ ダ ジエン、グアン チュアン ニー!」
「何言ってるか全然分かりません!」
「ライ、頑張って!」
「あ、止めて下さらないんですね天子様!」
「タァッ、ホゥッ、ハッ!」
「シン……クー! ちょ、……待っ……!」
「ツェンツンツゥイー!!」
 ライの言葉に聞く耳もたず、星刻は剣を振り回した。
 怒りに我を忘れても剣の動きが一向に鈍らないのは、流石と言うべきか厄介と言うべきか。
 ライは豪華かつ高価な家具を盾にしつつ、星刻の剣技を避け続ける。
「頑張れライー!」
 天子がこちらに熱心な声援を送ってくる。
 家具がいくら破壊されようとも何も気にしない寛容な心に、ライは自然と涙した。
(こうなったら……)
 星刻との勝負は避けられない。そう判断したライは、一つの行動を起こした。
「天子様!」
「な〜に?」
「何か競技を決めて下さい!」
「きょうぎ?」
「ええ、星刻と僕との勝ち負けを決める競技を――うわぁ!」
 話をしながら逃げていたため、ライは床に落ちていた机の破片に気付かずにつまずいてしまった。
 慌てて起き上がろうとした瞬間、星刻の剣が眼前に突きつけられる。
 そして星刻は悲しげに、
「ライよ……貴様は我が生涯最大の味方であり敵であった」
「最後に会話が出来てよかったです」
「私は悲しい……」
 星刻の瞳から一筋の涙が伝った。ライは頷いて、
「意外です。僕と星刻にはコンセンサスがとれているみたいで」
「許せ、ライ――!」
 何を許せというのか。
 ライは半ば諦めの感情をもって剣の切っ先を見つめた。短い人生だった、と。
(いや、長い人生だったのか? しかしこの場合は生きてきた実質期間が重要……?)
 深い命題だな、とライは鋭利な刃を見ながら思った。
0324創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 20:51:37ID:kasq1xxR
 そしてその刃が振り下ろされようとした瞬間、
「じゃんけん!」
 と、場の空気を一喝する声が響いた。
「天子……様?」
 正気を取り戻した星刻が、恐る恐ると言った様子で天子に尋ねる。
 天子は自身の名案に満足しているのか、満面の笑みで、
「神楽耶から教えてもらったの! じゃんけんでどちらが強いのか決めましょう!」

 ・・・・
 ・・・・・・
 ライは今、自分の置かれている状況を再確認した。
(ええと、星刻が壊れて、天子様がじゃんけん勝負にしようと……)
 周囲を見れば、立会人として香凛や洪古、そして天子が座っている。
 皆、どうしてこのおかしな状況を平然と受け止めていられるのかがライは不思議でならない。慣れだろうか。
 すると、じゃあ、と天子が手を上げて合図した。
 どうにでもなれ、とライは目の前にいる星刻を見る。
 彼はすっと両目を閉じ、息を大きく吸って、そして吐くのと同時に奇声を上げた。
「ホオオオゥゥゥゥウ!!」
 気功の一種か、星刻の周囲から何か場のようなものが湧き出た。見ると、口元には若干血が滲み出ていた。
 かつてこれほどまでに、じゃんけんに命を懸けた男がいただろうか。
 ライは思う。こんな星刻、星刻じゃないと。
(終わらせよう……)
 そして星刻を元に戻す。それが今出来るのは自分だけだ。
 故に、ライは星刻に気圧されまいと構えをとった。
 そして思う。ああ、今僕もまたかつてないほどにじゃんけんに真剣になっている、と。星刻ほどではないが。
「最初は、」
「グゥゥゥゥウ!」
 でも、と同時に思う。
 こんな日々がいつまでも続くのも悪くはない、と。
(僕も慣れてきたのかな)
 だが今の星刻のようにはなるまい。自分は合衆国中華最後の良心として、その力は奮うのだ。
 この日々を守るために。
「じゃん!」
「ケェェェン!!」

  ――ポオオオォォォォン!!!
0325創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 20:52:07ID:kasq1xxR
以上、神楽耶から教わったからじゃんけんは日本語で設定完璧オッケー問題無しとか、でも中国語はかなりテキトーとか、いろいろ矛盾してますがまあいいです。
0326創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 21:21:18ID:bTaKc7zr
>>325
GJでした!
何だこのシンクーは! 面白いじゃないかッ!
この壊れっぷりは楽しすぎるw
中国語、わかんないぜ。
誰か、誰か翻訳プリーズ。
じゃんけんでこの覇気……すごいなぁw
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
0327創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 22:53:18ID:w9GkRHWm
こんばんわー。
23時ごろ投下します。
よろしければ、途中数回の支援をお願いいたします。
0328あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:00:36ID:w9GkRHWm
時間ですので投下いたします。
 
タイトル 賭け 後編
カップリング ライ×アーニャ
ジャンル ラブコメ?

前回の続きとなります。
よかったら、前編を読んでいただいて、読んでください。
よろしくお願いいたします。
0329創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:00:58ID:bTaKc7zr
支援
0330あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:01:56ID:w9GkRHWm
賭け  後編


一気に突っ込んでくる白いナイトメアを面白くなさそうに目で捉えて狙う。
帰国したらノネットに文句を言おう。
そう思いながら……。
それはあまりにも作業的な正確すぎる動作。
ハドロン砲を牽制に発射し、回避ポイントに砲火を集中させる。
それだけで終わりのはずだった。
勝利を確信していたアーニャにとって、この模擬戦はもうどうでもいいことでしかなかったはずだった。
しかし、それは間違いと思い知らされる。
ハドロン砲を回避すると思われていたライのナイトメアは、シールドを展開するとその直撃を受け流して一気に懐に飛び込んできたのだ。
「え?!」
予想とは違う動きに一瞬、反応が遅れる。
その隙をライは見逃さなかった。
右手に握られた短めのMVSが振り下ろされる。
コックピットに鳴り響く警戒音と破損を表示するディスプレのサイン。
今のでハドロン砲破損…。
だが、さすがはナイトオブラウンズ。
すぐにハドロン砲を放棄すると前方にシールドを展開する。
予想通り、MVSが返す刀で切りつけられた。
シールドとMVSの衝突で火花がおこり、機体が振動する。
だが、被害はない。
しかし、メイン火力のハドロン砲を失ったのは痛手だった。
やられた……。
そう、さっきまでの繰り返しの単調な攻撃は、こういう事だったの。
くすっ……。
悔しいはずなのになぜか微笑が漏れる。
ほんのさっきまで心を支配していた虚しさと悲しさが一気に喜びに変わっていく。
強い……。
ノネットの言うように、彼は強い。
心に湧きあがる喜びと興奮。
そう、こうじゃないと……。
こんなに楽しい気分で戦うのは、初めてだ。
そう、今、アーニャは、楽しかった。
そして、うれしかった。
自分の思っていたとおりのライの姿に……。

0331創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:02:04ID:W1VHmD1x
支援とかマンドクセ
0332あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:04:15ID:w9GkRHWm

「す、すごいっ」
ハドロン砲の一撃を受け流しての攻撃に思わず声を上げてしまうセシル。
「うひょっ、やるねぇ〜」
ロイドも実に楽しそうに歓声を上げた。
クラブのMVSの一撃を受けて、モルドレットがぐらついてハドロン砲を手放す。
だが、返す刀で放ったニ撃目はシールドで完全に防がれた。
「おしいっ」そんな声が二人の口から漏れる。
だが、そんな中でスザクはただ無言で見続けていた。
メイン火器のハドロン砲を潰したのはいい。
だが、今のでシールドはもう使えないはずだ。
だがまだ強固なシールドと多彩な火力は健在。
それに、今のでアールストレイム卿も本気になっただろう。
そうなると同じ手は使えない。
やはりニ撃目を防がれたのは痛いな。
自分だったらどう対処するか考えていく。
だが、うまい手が浮かばない。
本当にどうする気だ、ライ。


さすが、ナイトオブラウンズ。
さっきまでとは格段に違う動きと反応。
機動性の低いモルドレッドがまるで普通のナイトメアと変わらない、いやそれ以上の動きを見せる。
それにさっきの攻撃も破損したハドロン砲を放棄し、ニ撃目をシールドを展開して防いだ判断力の速さ。
間違いなく決まったと思った攻撃が防がれたのには驚いた。
強い……。
彼女はとてつもなく強い。
そう再認識させられた。
どうしたっ……。
どうしてしまったんだろう。
すごく……。
すごく楽しい。
胸の奥に押し込んだわくわくした気持ちがまた顔を出してくる。
くそっ……。
こんな楽しいのは、初めてだ。
そして、戦う前までの嫌な思いが払拭されていく。
このままずっと戦いたい。
そう思ってしまうほど、この戦いに魅了されてしまいそうだった。
0333創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:05:01ID:bTaKc7zr
支援!
0334あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:06:02ID:w9GkRHWm

「なんかさ、あの2機の動き、踊ってるみたいに見えちゃうよ」
激しさを増していく2機の動きを見ていたロイドがぽつりと呟く。
「えっ、ロイドさんもそう感じたんですか?」
セシルが驚いた様にそう言った。
あの1撃が決まってからというもの、モルドレッドの動きが格段によくなった。
そして、クラブの動きもそれにあわせるかのようにより速くなっている。
くるくると攻防が入れ替わり、2機のナイトメアが空中を舞っている。
そう、それはまるで息のあった剣舞を連想させるような動き。
だから、二人がそう思えたのも仕方ないのかもしれない。
そして、もう一人。
実はスザクもそう感じていた。
まるで長年のパートーナー同士のような動きに驚き、見入ってしまう。
「なんか……楽しそう……」
セシルの呟きが口から漏れる。
「そうだねぇ。なんかさ、お互いの事を貪欲に知りたがっている恋人のようだねぇ〜」
その言葉にセシルは驚く。
ロイドの口からそんな言葉が出てくるとは思いもしなかったからだ。
「あのねぇ〜、僕だって、一応、人だよぉ〜」
そんな態度のセシルに"一応"というところに力を入れてロイドがふくれっ面で文句を言う。
その言葉と態度に、スザクもセシルも吹き出していた。
模擬戦でこんなに楽しく笑う事になるとは思いもしなかったと感じながら……。

模擬戦開始から20分が経とうとしていたが、一向に勝負が付く気配はない。
まるでお互いに相手の動きが見えているかのような攻防が続いている。
はぁはぁはぁ……。
息が切れる。
身体中がGによって引き起こされる疲労で悲鳴を上げていた。
だが、どうしてだろう。
身体はこんなにもくたくたなのに、心の中で沸き起こったワクワクした気持ちはますます大きくなっていく。
だが、何ごとにも終わりはある。
エネルギー残量の少なさを知らせるランプが点滅する。
エナジーフィラーの残量が20%を切っている。
まぁ、フルパワーに近い戦闘を20分も続けていれば消耗も激しいだろう。
あと5分もしないうちに終了か……。
なら……。
僕は、追加されたコンソールを調整する。
簡単なプログラムを入力していき、それが終わると無線のスイッチを入れた。。
「アールストレイム卿、そろそろエネルギー切れです。これで最後にしませんか?」
向こうも状況は同じなのだろう。
「うん。…OK……」
短くそう返事が返ってくる。
相変わらずの無表情の顔だったが、どことなく楽しそうに見えたのは気のせいだったのだろうか……。
ともかく、これで最後だ。
僕は、汗で滑るスティックを握りなおすと、一気にクラブを加速させた。
0335創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:07:37ID:bTaKc7zr
支援
0336あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:08:41ID:w9GkRHWm

彼から無線が繋がる。
彼の方もエネルギーの残りが少ないみたいだ。
私は申し出を受ける事にした。
まだ、少し物足りなかったが、終わりはある。
それに何やら仕掛けてくる。
彼のあの楽しそうなわくわくした表情がそれを物語っている。
さぁ、何が来るの?
何を見せてくれるの?
心の中が期待感で満たされていく。
失望させないで……。
私は、そう呟く。
そして、それと同時に彼のナイトメアが一気に距離を詰めようとしてきた。
火線を幾重にも放ち牽制する。
その砲火をまるで曲芸のように潜り抜けて接近してくる彼のナイトメア。
そして、牽制なのだろう。
左右の腰の部分からスラッシュハーケンが発射された。
2本のハーケンのうち、1本を回避し、もう1本を弾き返す。
しかし、それでもかまわず彼のナイトメアが近づいてくる。
シールド展開っ……。
MVSの攻撃を防ぐため、前方にシールドを展開しょうとした。
その時だ。
後方警戒のブザー音が響く。
え?!
すばやく後方モニターを展開する。
そこには、避けたはずの1本のスラッシュハーケンが向きを変えてモルドレッドに向かってきているではないか。
そんな……馬鹿な……。
スラッシュハーケンが方向を変えて向かってくるなんて……。
とっさに回避しょうとするが間に合わない。
激しい破壊音と衝撃がコックピットに伝わってくる。
フロートユニットに命中したらしく、ガクンとモルドレッドが高度を落す。
そして、その隙をライは見逃さなかった。
一気に近づくとMVSを振り上げる。
そして、モルドレッドのコックピットに振り下ろす。
避けられないっ……。
そう思ったら身体が勝手に動いていた。
それは、訓練された者だけが出来る動きだ。
ピーーーーッ。
それと同時にけたたましいブザー音が鳴り響き、両方のナイトメアの動きが止まった。
コンピューターが強制停止させたのだ。
そして、ディスプレに映し出される判定は、「両者撃墜」だった。
そう、ライがMVSを振り下ろそうとした瞬間、アーニャも無意識のうちに打てるだけの火力で攻撃していた。
その結果、両者相打ちとコンピューターは判断したのだった。
0337創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:09:05ID:bTaKc7zr
支援!
0338あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:10:37ID:w9GkRHWm

戦いが終わり、僕は心地よい疲労感に満たされていた。
ふう……。
勝てなかったのは残念だけど、すごく楽しかった。
そう思っていたら、モルドレッドの方から無線が入ってきた。
「あの……聞いていい?」
少し覗き込むような表情がモニターに浮かぶ。
「はい。かまいませんよ。アールストレイム卿」
僕は、そんな表情を見せる彼女が少し可愛いかなと思ってしまう。
無表情の様に見えて、けっこういろいろ違ってくるものなんだな。
そんな事を考えながら…。
「あのハーケンって……」
やっぱり、それか……。
僕は、微笑みながら説明する。
「あのハーケンは、小型のバーニアみたいなのが付いてまして、事前にプログラムする事で発射後に方向を変えることが出来るようになっているんですよ。
もっとも発射後は新たに入力しての軌道変更は出来ませんから、ある程度の先読みしてのプログラム入力とそれにあわせた相手の誘導は必要ですけどね」
そう、ただ発射し回収するという直線的な動きしか出来ないハーケンをもっと活用できないかと考えた僕がロイドさんに相談していろいろやってみた結果が今回のものだったのである。
そして、今回の模擬戦で牽制や翻弄させるには十分な役目を果たす事が実証された。
発案者の僕としてもすごくうれしい結果だった。
「ふーん……」
僕の説明にそっけない返事が返ってきたが、彼女の無表情のように見える表情の中には、興味とうれしさが含まれているように見えた。
そして、しばらく無言が続く。
無線を切らずにただ、考え込む彼女の姿だけがモニターに写っている。
うーーん……。
どうしたんだろう。
すごく嫌な予感がするのは気のせいだろうか…。
「あの……、そろそろ戻りませんか?」
沈黙に耐え切れずそう声をかける僕。
だが、その言葉を言い終わらないうちに彼女から話を切り出される。
「賭けの事……だけど……」
ああーっ、それがあった。
だけど、この場合は無効が一番無難だよなぁ。
しこりも残したくないし……。
だが彼女の口から出た言葉はまったく違っていた。
「お互いに……相手を撃墜した。……両者……勝ち」
「えーーっ」
思わず、そう反応してしまう。
普通、そういう風にはしないと思うのだが……。
それにそれじゃあ、再戦を言いづらいじゃないか……。
僕としては、また彼女と戦いたい。
そして、もっとわくわくしたいという思いが強く心に残っている。
だが、これでは……。
彼女は、また戦いたいと思わなかったのだろうか……。
この気持ちは僕だけなんだろうか……。
そんな事を考えて、僕は言葉を返せないでいた。
「これ……決定」
きっと迷う僕を待っていたら決まらないと思ったのだろう。
彼女は強く断言した。。
こうなったら仕方ない。
観念するか……。
0339創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:10:55ID:bTaKc7zr
支援
0340あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:12:50ID:w9GkRHWm
「はい。わかりました。アールストレイム卿」
諦めてそう答える。
だが、沈黙のみが返ってきた。
どうしたんだろう。
そう思って再び声をかける。
「アールストレイム卿?」
するとすぐに言葉が返ってくる。
「それ……嫌……」
「へ?!」
どういう意味だ?
「アーニャ……」
不満そうな表情がかすかに出ている無表情で彼女は言った。
「は?!」
「だから……アーニャ」
つまり、アーニャと呼べという事らしい。
「えーっと……」
じーっと覗き込むように顔がモニターに映る。
あー……言うの待ってるよ。
しかし、なんかドキドキするじゃないか……、こういうのはっ……。
柄にもなく緊張してしまう。
こんなところをスザクやユーフェミア様に見られたらなんて言われるか……。
えーいっ、男は度胸だ。
少し開き直り気味に僕は言った。
「あ、アーニャ……」
その瞬間だった。
ほとんど大きく表情を出さなかった彼女の顔が、頬を染めてうれしそうに微笑んだのは……。
その可憐さに、僕は言葉を失って思わず見とれてしまっていた。
やばいよ……。
無茶苦茶かわいいじゃないかっ。
ドクンと心臓が高鳴る。
収まれ僕の心臓……。
だがそんな僕にお構いなく、彼女は……いや、アーニャは恥ずかしそうに頬を染めて聞いてくる。
「次、ライの番……」
え?!
その言葉で浮ついた僕の心は一気に現実に戻される。
そうだった……。
お互いに勝ったのならそうなる。
えーい、何を言うべきなりだろうか……。
迷う僕を楽しそうに見ているアーニャ。
その笑顔を見ていたら、迷うのが馬鹿馬鹿しくなった。
そうだ。
何をいろいろ考えている。
素直に思った事を言えばいいんだ。
そうだよ。
僕は、そう決心すると口を開いた。
「あ、アーニャ……」
「うん……」
にこりと僅かに微笑んで聞いてくる。
その楽しそうな表情。
普段がほとんど無表情なだけに強烈すぎる。
うわーーっ…かわいいっ……。
その笑顔だけで心が満たされて、思わず言葉を失ってしまいそうになった。
おちつけ……。
落ち着くんだ。
深呼吸を数回して、落ち着かせて言葉を続けた。
0341創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:14:51ID:bTaKc7zr
支援!
0342あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:15:32ID:w9GkRHWm
「僕の願いは……」
モニター越しだがアーニャの視線が熱い。
「君と……また戦いたい……」
そして、一気に思っている事を言い続けた。
「こんなに楽しい戦いは、初めてだった。だから、もっともっと戦いたいと思ってしまったんだ。
それに、もっとアーニャの事が知りたい。そう思ってしまった。だから、また僕と戦ってほしい……」
カーーーッと顔が赤くなるのが自分でもわかる。
まるで、これじゃあ、告白みたいじゃないかっ。
そんな事が頭に浮かぶ。
えーーい、何を考えている、僕はっ……。
そんな僕に彼女は恥ずかしそうに返答をしてくれた。。
「うん……。私も楽しかった。だから……ライの事、もっと知りたい。また戦いたい……」
その返事を聞いて、感謝の言葉が自然と出る。
「ありがとう、アーニャ」
すごくうれしかった。
アーニャも僕と同じように感じてくれてたんだ。
また、戦える。
そう思うだけで、わくわくしてしまう。
だが、その気持ちは、無線に入ってきた言葉で一気にかき消されてしまった。
「あの〜、いいかなぁ〜」
そう、ロイドさんだ。
そして続けて「駄目ですよっ、ロイドさんっ、雰囲気読まないとっ」というセシルさんの声。
それって……つまり……。
「えーーーっ、ちょっと待ってくださいっ。もしかして、今の会話……筒抜け?」
「うん……」
苦笑したようなスザクの声。
「ごめん。なんかさ、言うタイミング逃しちゃって……」
そんなーーっ……。
僕は、絶句するしか方法を知らなかった。


別れの時、彼女の言った「また……」という言葉に、僕も「ああ、またね……」と返事をする。
そう、これは別れじゃない。
再会をするための儀式なのだ。
彼女の手が僕の手と重なり何か握らせる。
そこには小さな小さな紅い石があった。
すべすべとしていて綺麗な紅。
そして、キーチェーンのようなものが付けられている。
彼女が愛用の携帯を見せる。
そこには同じような紅い石が付けられていた。
「私だと思って……」
僕は頷いた。
そして、アーニャは帰国していった。
0343創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:16:31ID:bTaKc7zr
支援
0344あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:18:40ID:w9GkRHWm


2日後の昼前、僕の執務室にユーフェミア様がスザクを連れてやってきた。
そして、入ってくるなり実に楽しそうに聞いてくる。
「聞きましたよっ、ライっ。アールストレイム卿に告白したんですってね」
どうやら、あの会話は行政特区の行政府中に広まっているようだった。
まぁ、今までどんなに迫られても女性に見向きもしなかった男があんな事を言ったのである。
そりゃ、話のネタとしては最高なんだろう。
だが、そのネタの本人としては、こう話が広がっていくのは勘弁して欲しいものだ。
くそーっ、誰だよ、広めてるのはっ……。
そんな事を考えながら、何とか話を収めようとした。
「いや、告白じゃなくて……」
実際にそうなのだが、どうもあの台詞では告白に聞こえてしまっているらしい……。
だから慌てて言い返そうとしたが、すぐにユーフェミア様の言葉で遮られた。
「もっと君の事が知りたいだなんてっ…。もう〜、すごく熱々です〜っ。ライって情熱的なんですねっ」
実にうれしそうです。
生き生きしてますよ、ユーフェミア様。
そんな事を考え、他人の噂話でここまで楽しんでしまうとは…と感心してしまう。
いや、感心するところが違うっ…。
自分で自分に突っ込みを入れながら、何とかこの状態を打破すべくユーフェミア様を落ち着かせようとする。
「いや、あのですね……」
しかし、僕が再びなんとか言い返そうとするものの、その度にユーフェミア様の言葉に遮られてしまい何も出来ない。
もう一方的に言われまくっている状態だ。
なんとかしてくれよ。
そんな儚い望みを持って横にいるスザクを見るものの、スザクは苦笑だけしか返してこない。
えーいっ、僕の事を親友と思うなら、自分の彼女ぐらい何とかしろ。
そう言いたかったが、だが…無理だろうなぁ…。
彼の性格と、ユーフェミア様との関係を考えれば……。
そう判ってしまうのが悲しい。
そんな事を思っていたのだがすぐにユーフェミア様の新たな言葉で現実に戻された。
「そうそう、昼食はご一緒してくださいね、ライ。新しくエリア11に来られた方をご紹介したいですし……」
「えっ? 新しく赴任された方ですか?}
それは初耳だった。
いきなり決まるなんて……。
僕の表情から、読み取ったのだろう。
ユーフェミア様が説明する。
「ええ…。中華連邦が最近、特に活発な動きを見せています。その為に急遽派遣が決まったそうなんです」
「そうでしたか……」
つまり、僕が担当した視察団もその為の予行演習みたいなところか……。
それなら、急な視察も納得できる。
「では、時間ですし食事に参りましょう」
ユーフェミア様に言われ、僕らは行政府のレストランへと向かった。
そして、レストランに来たものの、準備されたテーブルには……………誰もいなかった。
「あら?」
ユーフェミア様がきょろきょろと周りを見回している。
その様子は、手違いが合ったようで少し焦っているように見えた。
0345創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:19:55ID:bTaKc7zr
支援!
0346あしっど・れいん ◆M21AkfQGck 2009/03/05(木) 23:21:58ID:w9GkRHWm
ユーフェミア様が焦るような人物か……。
誰だろう……。
そんな事を考えていると、いきなり後ろから抱きつかれた。
「うわぁぁっ……」
思わず声が出た。
そして、僕が後ろを見て相手を確認するのとその人物からかけられた言葉が耳に入るのは同時だった。
「只今……、ライ」
そう、そこには2日前に再会の約束をして帰国したはずのアーニャの姿があった。
「えっ?!えぇぇーーーーーっ、なんで……」
僕の驚く顔をじろじろと覗き込むアーニャ。
相変わらずの無表情だが、心なしか笑っているように見えた。
「正式に…エリア11に派遣された……。また……しばらく一緒……」
頭の中が一気に真っ白になってしまい、言葉を失う。
そんな僕に不安を覚えたのだろう。
「ライは……嫌?……うれしくない?」
すこし悲しそうな感じで聞き返される。
そんな悲しい感じて聞かないでくれ。
そう思って、すぐに答えた。
「そんなわけ、あるもんかっ。うれしいよ、アーニャ」
そして、無意識のうちに彼女を抱きしめた。
きゃしゃな身体が僕の腕の中にある。
ほのかに漂う彼女の体臭が僕を興奮させる。
こんなにうれしい事が起こるなんて……。
腕の中に感じる彼女の確かな感触と湧き上がってくる彼女への思いが僕を幸せにしていた。
だが、痛いまでに突き刺さる熱い視線。
その視線で僕は我に返った。
そう、ここは行政府の中にあるレストラン。
そして、今は……お昼時。
つまり……。
大勢の人たちがいるという事。
そんな中で、僕はアーニャを抱きしめている。
その認識で一気に体温が上昇し、僕の顔は真っ赤になった。
そして、慌てて離れようとしたのだが、アーニャはしっかり僕に抱きついており、離れようとはしない。
さらに、くすくすという声がする横を向くと、小悪魔的な表情で笑いを堪えているユーフェミア様とニコニコしているスザクの姿があった。
「よいものを見させていただきましたよ、ライ」
そんな事を言うユーフェミア様。
「よかったね、ライ」
もっとも天然のスザクは、そう言うだけだったが……。
そして、僕はその二人の態度でわかってしまった。
こうなると知ってたな、二人ともっ。
くそっ、謀られたっ…。
だが、そう思ったのもつかの間、さらに拙い事に気が付いた。
よく回りを見渡すとこっちを見ながらこそこそと喋る人が多い……。
つまり、あの噂話がよりいっそう真実として広がっているのであった。
ああーっ、なんでこうなるっ。
な、なんとか、なんとかしないと……。
焦る僕の思考が空回りを続ける。
多分、混乱気味なんだと思う。
だが、そんな中、アーニャは抱きついたまま顔を上げると少し頬を染めて言った。
「また……二人で楽しもうね……」
その言葉が、響き渡る。
僕は、もう観念するしかなかった。


終わり
0347創る名無しに見る名無し2009/03/05(木) 23:22:12ID:bTaKc7zr
支援
0348代理投下2009/03/05(木) 23:31:27ID:bTaKc7zr
以上でおわりです。支援ありがとうございました。
読んでいただいて少しでも楽しんでいただければ幸いです。
なお・・最後にサルが出ました。支援受けてたのに・・・なんでだよーっ。
0349創る名無しに見る名無し2009/03/06(金) 00:53:35ID:3RC/pXZA
>>348
あしっど・れいん卿、GJでした!
ハーケンの発射前の操作、難しそうだ。
ミスったら自分に当たりかねんな。
そして聞かれていた二人の会話……恥ずかしいなぁ。
帰国してすぐに来日するアーニャ、なんか可愛い。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!


誤字指摘
>>334
長年のパートーナー→パートナーかと
0350創る名無しに見る名無し2009/03/06(金) 18:24:13ID:Os4AUooA
更新ピタリと止まったね
管理人さんどうしたのかな
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