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コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ37

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001創る名無しに見る名無し2009/02/24(火) 23:43:06ID:eaiT05oZ
ここはPS2/PSPソフト「コードギアス反逆のルルーシュ LOST COLORS」SS投稿スレです。
感想等もこちらで。このゲームについて気になる人はギャルゲー板のゲーム本スレにもお越しください。
基本sage進行で。煽り・荒し・sageなし等はスルーするか専ブラでNG登録して下さい。
(投稿前に読んでください >>2-)

■SS保管庫 http://www1.ocn.ne.jp/~herma/CodeGeass_LostColors/2ch/0.html

■前スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1233659495/ 
  (過去ログは保管庫スレッド一覧から閲覧できます)

■関連スレ
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 21 (本スレ)
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gal/1225489272/
コードギアス ロスカラのライ 強くて優しい真の7(ナ)イト(主人公スレ)
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamechara/1233048852/
【PSP】コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1207641630/
コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 攻略スレ4
 http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gameover/1209720651/

■公式サイト http://www.geass-game.jp/ps/
■アニメ公式サイト http://www.geass.jp/
■攻略wiki http://www9.atwiki.jp/codegeasslc/
0002創る名無しに見る名無し2009/02/24(火) 23:44:18ID:eaiT05oZ
■全般
・支援はあくまで規制を回避するシステムなので必要以上の支援は控えましょう
 (連投などに伴う規制について参考>>3-あたり)
・次スレ建設について
 950レスもしくは460kB近くなったらスレを立てるか訊くこと。立てる人は宣言してから
 重複などを防ぐために、次スレ建設宣言から建設完了まで投稿(SS・レス共に)は控えてください。
  ※SS投稿中に差し掛かった場合は別です。例 940から投稿を始めて950になっても終わらない場合など
・誤字修正依頼など
 保管庫への要望、誤字脱字等の修正依頼は次のアドレス(geass_lc_ss@yahoo.co.jp)に
  ※修正依頼の際には、作品のマスターコード
   (マスターコード:その作品の投稿が始まる、スレ番号-レス番号。保管庫の最優先識別コード)
   を必ず記述して下さい
   例:0003-0342 のタイトルを○○に カップリングを○○に
     (↑この部分が必須!)
   マスターコードを記述されず○スレ目の○番目の……などという指定だと処理ができなくなる場合があります

■SSを投下される方へ
1.投下前後に開始・終了の旨を書いたレスを入れて下さい(または「何レス目/総レス」を名前欄に)
2.前書き・後書き含めて10レス以上の連投になると同一IDからの投稿が規制されます。(←「さる」状態)
  間に他IDからの「支援」が入ることで規制は回避できますので、規制にかかりそうな長文投稿の際は
  投下前に支援を要請して下さい。逆に、必要ない場合は支援の要らない旨を書いてください。
  前レス投稿から30秒ほどで次レスを投稿することができます。(投稿に関する規制については >>4- あたり参考)
3.投下前は、他作品への割り込みを防ぐ為に必ずリロード。尚、直前の投下完了宣言から15分程度の時間を置いてください
4.投下許可を求めないこと。みんな読みたいに決まってます!
5.なるべくタイトル・カップリング・分類の表記をして下さい。(特にタイトルはある意味、後述の作者名よりも重要です)
  ・読む人を選ぶような内容(オリキャラ・残酷描写など)の場合、始めに注意を入れて下さい。
6.作者名(固定ハンドルとトリップ)について
  ・投下時(予告・完了宣言含む)にだけ付けること。その際、第三者の成りすましを防ぐためトリップもあるとベスト。
   (トリップのつけ方:名前欄に「#(好きな文字列)」#は半角で)
  ・トリップがあってもコテハンがないと領地が作れず、??????自治区に格納されます

前書きの中に、以下のテンプレを含むことが推奨されます。(強制ではありません)
【メインタイトル】
【サブタイトル】
【CP・または主な人物】
【ジャンル】
【警告】

【背景色】
【基本フォント色】
0003創る名無しに見る名無し2009/02/24(火) 23:44:56ID:eaiT05oZ
■創作発表板での投稿規制について 参考(暫定)

1レスで投稿可能な容量
 ・X:1行の最大 / 255byte
 ・Y:最大行数 / 60(改行×59)
 ・Byte :最大容量 / 4095Byte
  但し、改行に6Byte使うので注意。例えば60行の文なら59回改行するので
  6Byte×59=354Byte これだけの容量を改行のみで消費する

さるさん( 過剰数の投稿に対する規制 )
 ・1時間に投稿できる数は10レスまで。それを超えると規制対象に
 ・毎時00分ごとにリセット。00分をはさめば最長20レスの連投が可能

連投規制( 連続の投稿に対する規制。短い間隔で連続の投稿ができない )
 ・30秒以上の間隔をあければ投稿可

おしりくさい虫など( 携帯のみ?同一内容の投稿に対するマルチポスト規制 )
 ・「支援」などの同じ言葉を繰り返し投稿することでも受ける規制。
  違う内容を投稿すれば解除される。スペースを挟むだけでも効果あり
0004創る名無しに見る名無し2009/02/24(火) 23:45:28ID:eaiT05oZ
■画像投稿報告ガイドライン

ロスカラSSスレ派生画像掲示板
 PC用  http://bbs1.aimix-z.com/gbbs.cgi?room=lcsspic
 携帯用(閲覧・コメントのみ) http://bbs1.aimix-z.com/mobile.cgi?room=lcsspic

1.タイトルとコテハン&トリップをつけて絵を投稿する。
  尚、コテハン&トリップについては、推奨であり強制ではありません。
 ・挿絵の場合は、誰の何のSSの挿絵と書く
 ・アニメ他公式媒体などにインスパイアされた場合は、それを書く(例:R2の何話をみてテンさんvsライを描きました)

2.こちらのスレに以下のことを記入し1レスだけ投稿報告。
  (SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。)
  例:「挿絵(イメージ画像)を描いてみました。 画像板の(タイトル)です。
     〜(内容・注意点などを明記)〜 よかったら見てください。」
 ・内容:挿絵の場合は、SSの作者、作品名等。それ以外のときは、何によってイメージして描いたのかなど
 ・注意点:女装/ソフトSM(首輪、ボンテージファッションなど)/微エロ(キス、半裸など)
      /ゲテモノ(爬虫類・昆虫など) など(絵はSSに比べて直接的に地雷になるので充分な配慮をお願いします。)

 画像掲示板には記事No.がありますので、似たタイトルがある場合は記事No.の併記をおすすめします。
 *ただし、SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。

3.気になった方は画像掲示板を見に行く。
  画像の感想は、原則として画像掲示板に書き、SSスレの投稿報告レスには感想レスをつけないこと。
  画像に興味ない人は、そのレスをスルーしてください。

4.SSスレに投稿報告をした絵師は以下の項目に同意したものとします。
 ・SSスレに投稿報告した時点で、美術館への保管に同意したものと見なされます
 ・何らかの理由で保管を希望しない場合は、投稿報告時のレスにその旨を明言してください
 ・美術館への保管が適当でないと判断された場合、保管されない場合もあります
  (ロスカラ関連の絵とは言えない、公序良俗に反するなど)
0005創る名無しに見る名無し2009/02/24(火) 23:45:54ID:eaiT05oZ
以上です
0006創る名無しに見る名無し2009/02/25(水) 00:36:39ID:Og4cIUmJ
>>1
乙でした!
0007創る名無しに見る名無し2009/02/25(水) 00:41:08ID:WrtkXV7h
1さん乙でした〜
新スレでもがんばって投下しますよ〜
0008創る名無しに見る名無し2009/02/25(水) 00:48:34ID:9BWSNgsW
>>1
乙です
0009創る名無しに見る名無し2009/02/25(水) 01:06:38ID:JlDDsaKb
>>1さん並びにトーマス卿乙であります。
0010創る名無しに見る名無し2009/02/25(水) 02:15:53ID:Ptc5ed7L
あと30日で発売から1年たつのか。
>>1
0011創る名無しに見る名無し2009/02/25(水) 06:59:54ID:2Mt0Vmek
もう一周年か。久しぶりにロスカラをプレイするとしよう。
0012創る名無しに見る名無し2009/02/26(木) 01:19:14ID:yZPRV19u
この板って即死あるのかな?

久しぶりに再プレイしようと思ったらPSP充電器みつからんがな
0013創る名無しに見る名無し2009/02/26(木) 08:06:59ID:WmtE55fF
まじで?
0014poppo2009/02/27(金) 00:09:58ID:XhNZrNwc
POPPOです。
今から

コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」

TURN00 「終わる日常」 (中編7)
を投稿します。
長いですけど、支援は必要ありません。
それではいきます。
0015POPPO2009/02/27(金) 00:11:01ID:XhNZrNwc
医療用のトレーラーが到着し、周囲を黒の騎士団に見張らせた。僕とルルーシュは乗り込んだ。
ルルーシュは主治医と看護士たちにギアスをかけた。正体を知られない為とはいえ、仲間にギアスをかけるのは辛いものがある。
緊急手術が行われ、ギアスをかけられた医療スタッフは淡々と治療をこなしていった。患者が仮面を外した『ゼロ』だというのに全く気にする素振りを見せない。
彼らには一団員を治療しているという認識しか無い。僕から見ても少し異様な光景だった。
弾丸は貫通していて、出血がひどかったが、医師によればルルーシュの命に別条は無いということだった。
僕はルルーシュの手を握った。
温かい。
生きているという証。無事だとわかっていても僕は落ち着いてはいられなかった。
目の前で大切な人が傷つくのはもうたくさんだ。
「…ライ」
僕の手を握り返してきた。声を聞いた僕は顔を上げた。ルルーシュは僕の顔を見て、少し驚いていた。
「…泣いているのか?」
「…泣いちゃ、悪いか?」
「フン…そんなことは、言っていない」
僕は両手でルルーシュの手を握る。
男とは思えないほどの白い肌と細い指。これが日本の救世主と言われるゼロの手だ。
でも、彼の手はこんなにも弱くて儚い。
「…ライ」
「ん?何だい?ルルーシュ」
「…俺は、ゼロは、利用されたのか?」
「…ああ、おそらく僕たちに似たギアスの持ち主だ」
「俺は、おれは…」
「今は安静にしてくれ。俺が捕まえる。いや、殺す。だから…」

「ユフィはどうなった?」

その言葉を聞いた途端、僕の体が無意識に動いてしまった。
平静を装うつもりだったのに。ルルーシュに悟られてしまったのだろう。苦笑いで僕を見つめた。
「相変わらず…お前は優しい嘘は下手だな」
「…ごめん」
ルルーシュの手を握る僕の手が震えてきた。ルルーシュは笑っているが、涙を必死に堪えていることは丸分かりだ。
先ほど、連絡員からユフィの状況が伝えられた。言おうとすると声がかすれてしまって、うまく喋れない。
どうして、こんなことに。
どうして、どうして!
「ライ。嘘は言ってほしくない。…ユフィは、どうなった?」
「ゆ、ゆう、ユフィは―――――――――――――――――――――――」




0016POPPO2009/02/27(金) 00:11:45ID:XhNZrNwc
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」

TURN00 「終わる日常」 (中編7)




「死んだ――――――――――――――――――――――――――」

クレイン総合病院。
優秀な医療人を多く輩出する名門貴族、クレイン家が経営する病院の一つであり、トウキョウ租界にある医療施設。
最新鋭の設備に優秀な医療スタッフを集めたVIP専用の施設であり、エリア11に来訪す大貴族や皇族もこの病院を利用している。
貴族らしく豪華に装飾された病院の内部。
その一室で、一人の少年が天井を見上げていた。室外では多くのブリタニア軍人が周囲を警備している。
彼の顔は涙の跡が濃く残っていた。放心状態で視点が定まっていない。
血塗れになった服を着たままで、スザクは呆けていた。

悪い夢だと思った。
ユフィがゼロを撃つなんて。
ユフィが撃たれるなんて。
ユフィが、死ぬなんて。

これは夢だ。そう思いたかった。
でも、僕の手が現実だと言っている。
ユフィの手が冷たい。
僕が握っても、どんどん体温が失われていく。強く握っても、少しも動いてくれない。

それが許せなくて、僕はユフィの体を抱きしめた。
強く。強く。
僕がこうするとユフィはいつも決まってこう言うんだ。
≪痛いよ。スザク。でも、大好き≫
でも、ユフィは目を閉じたまま何も言わない。
何も喋ってくれない。
ユフィの体から薬品の匂いともに彼女の匂いがした。
その匂いを胸一杯に吸った。
ユフィを抱いてる時に感じた匂いを。
体温を。
温もりを。
愛を。
僕は思い出していた。

また、視界が滲む。
あれだけ泣いたのに。
あれだけ叫んだのに。
まだ僕の瞳から涙が零れ落ちた。
「ユフィいい…僕は…君が……何であんなことを、したのか…分からないよ」
僕の腕にいっそう力がこもる。自分の涙を拭わず、ユフィを抱きしめた。
ただ悲しかった。
一体、何が起こったんだ?
あの時のユフィはユフィじゃなかった。
ユフィは一度も日本人をイレブンと言ったことは無かった。
公の場でもイレブンという言葉を使うのは極力控えてた。それはユフィがナンバーズという区分を嫌っていたからだ。
僕の手を払って…
あれじゃ、まるで…
0017POPPO2009/02/27(金) 00:12:29ID:XhNZrNwc
その時、スザクの脳裏に一つの記憶が蘇った。

(まるで―――――――――――――――――――――――――?)
(ちょっと待て。たしか、半年前の式典で…)
(あの時は確か、僕は気を失って…気が付いたらライが撃たれていて、ユフィが倒れていた)
(今回はゼロが撃たれて…まさか)
(半年前は失敗して…)
(今回は、成功した?)
スザクは自分が知る由もない陰謀の輪郭を見た気がした。
体中の熱が冷め、もう一度ふつふつと『何か』がこみ上げてきた。
自分の身も心も染め上げてしまう『何か』が。
(一体、何が、いや、誰が。この事件には黒幕がいるのか。裏で手を引いている誰かが!)
(ライか!?いや、そんなことはない。ありえない!ならば、ゼロか!?しかし、自分を撃たせるわけが無い。でも、あのゼロが影武者だとしたら…だとしたら!)

「教えてあげようか?」

唐突に後ろから声が聞こえた。
スザクが振り向くと一人の少年がいた。
「…君は」
地面に届くほどの長いブロンドの髪。貴族のような煌びやかな衣装。
整った容姿に全てを見透かすような真紅の瞳。病院には相応しくない格好をしていた。
彼の口元が薄く開く。
「はじめまして。枢木スザク。僕の名前はV.V.(ブイツー)」
「…V.V.?」
そして、彼は語りだした。彼の知る『真実』を。




0018POPPO2009/02/27(金) 00:13:50ID:XhNZrNwc
「あ、アン!しっかりして!アンッ!!」
煙と炎が辺りに漂う中、私はアンの前にしゃがみ込んで傷を確認した。
深い。
そして大きい。
白いカーディガンが真っ赤に染まっていた。
それだけでは留まらず、床にアンの血が広がっていく。
両腕が折れていて、腹部からの傷が酷過ぎる。私のジャケットを被せたのに、紺のジャケットが黒く染まっていく。
瞳孔が少し開いていて、両眼の焦点が合っていない。メガネの破片が額に食い込んでいる。
口が震える。
私は思ってしまった。
近頃、医学書を読みあさっていて、断片的に知識があるからこそ、冷静に事態を把握してしまった。

もう、アンが助からないことを。

「い、いたい、い、いい、いたいよぉ…」
「アン…お、おおお、お願い、死なないで!お願いだから!!」
私はメガネを外して、アンにギアスをかけた。
この近距離だと対象者の神経を遮断できる。
だから!
アンが私の顔を見た。両目の焦点が私の顔で合わさった。
「…あれ?い、痛みが」
「アン!動いちゃだめ!今、薬で痛みを止めてるから!!」
「……リリーシャ?何で、カツラなんて、被ってるの?」
「そ、そんなことはどうでもいいから!じっとしてなさい!い、いいこと!救命医が来るまでアンは…」
「あはは。リリーシャ。涙で顔が、グシャグシャだよ…」
「笑わないでよ!!お、お願い!アン!あなたがいないと、私…」
「う、うふふ…。リリィが取り乱すなんて、初めて見た」
「うぐっ!い、いいじゃない!私は、完璧な人間じゃないんだから!た、ただ粋がってる、ただの…」
私の視界は涙で歪む。
アンの顔に、大粒の涙が零れ落ちた。
ハンカチで血と一緒に優しく拭う。
「私、わたし、アンがいないと何もできないの。昔に戻っちゃう。だから、だから…」
「…変なの。リリィが、弱音を吐くなんて…似合わないよ」
「わ、わたしは、つ、つよ、つよくなんか、ないぃ。私は弱虫で、それを隠すために…」
「…うん、知ってる」
声が震えていた。鼻水だって出ているかもしれない。
頭が真っ白で。でも、アンの顔がたくさん出てきて。何で。何で…
「昔…と、友達を、私が、死なせてしまったから、本国から、に、逃げてきただけで…」
「うん」
「ただ、じ、自分が、天才だって、自惚れてて、ほ、ほかの人を、見下してい、た、だけでっ…」
「知ってる」
「アンが、はじめてなの、わ、わたし、を、怒って、くれたのは。アンが、き、きき、気づかせてくれたの。わ、私がぁ、わ、あああぁ」

アンがいつの間にか私を抱きしめていた。
痛みが無くて、骨折していることに気づかずに。
『あの時』みたいに、
アンが私を包み込む。


「全部、知ってるよ」


0019POPPO2009/02/27(金) 00:14:28ID:XhNZrNwc
アンが私に、そっと呟いた。
私はもう何も言えなかった。
目も、声も、震えて、上手く動いてくれない。
アンの血の匂いがする。
私は汚れることも厭わず、アンの背中に手をまわした。
ビチャ、といやな音がした。
「リリィ。私ね。今日、パパに、会いに、行ったんだ…」
うん……仲直り、したの?
「ママも、来るはず、だったのに、来な、かったんだよ」
うん…
「パパ。もう一度、や、ヒュッ、こほっ…、やり直したいん、だって、私たち3人で…」
うん…うんっ…
「でも、パパ。次も誘うって、絶対、やり、直す、って。パパの、あんな、にし、真、剣な顔、はじ、ひっ、めて見た」
うっ、うん。アンのパパが、ようやく…よ、よかっ…
「わ、わた、ひ、ヒュー、し、パパの、こと、見、なおし、た、んだ」
「リ、リィが、ア、ドバイ、ス、スしてく、れたおか、げ、だ…よ?」
私はただ、結婚記念、日に何かプ、レゼ、ん、ントしたほ、うがいい、っていっただけで…すごいの、はアンの…


「わたし、リリィ…に、かん、しゃ、して……」







―――――――――――――――アン?
私は力を失ったアンの腕を振りほどいて、アンの顔を見つめた。
口が開いたまま、動かない。
体中に怖気が走る。
「…アン?お願い。目を開けてよ。目を閉じてないでさぁ」
私の足元にヒビが入るような、そんな感覚が、私の全身に伝わる。
「…私、言うこと聞くからさ。じゅ、授業は、真面目に受けて、に、二度と、サボったりしないからさぁ、お願いよぉ」
「あなたと、ま、また、遊園、地に行ったり、ふ、服を買いに、行った、りしたいよ…」
私はもう一度ギアスをかけた。
対象者に意識が無くとも、対象者が生きていれば体を動かすことができる。
そう、生きてさえいれば。体を操ることができる。
しかし、アンの体は動かなかった。
いくら強く念じても、強く『命令』しても、
指一つ動かない。
対象者が生きていれば、生きてさえいれば。
つまり、アンはもう死ん―――――――――


「いやっ、いやあ、いっ、いやああああああああああああああああああああああああ!!!」





0020POPPO2009/02/27(金) 00:16:07ID:XhNZrNwc
同時刻。
式典会場から遠く離れた場所に、数十機の月下と一台のKMF運搬用のトレーラーが止まっていた。その周囲には黒のジャケットを着て、武装している人間が多数いる。
副司令が率いる壱番隊の部隊だ。
杉山賢人は壱番隊の副隊長。
月下の腕に寄りかかりながら、無線機で連絡を取っていた。
『ユーフェミアぁ。よくもゼロを撃ちやがって!』
「吉田!落ち着け!藤堂弐番隊長がプランF の指示が出てる。早く所定の場所に行け」
『プランF!?まさか…』
「…ああ。最悪の状況だ。今、参番隊もそっちに向かってる」
通信を切った後、またすぐに連絡があった。
零番隊長からの通信だ。
「カレン。どうした?」
『ねえ、杉山さん。ライは、ライはどうしたの!?まだそっちに来てないって本当!?』
「今、こっちからも連絡を入れてる。プランFはライの指示らしい。あとは…」
『ライに何かあったの!?ねえ!』
「…まだ情報が回ってきてないんだ。会場で何かがあった事は間違いないみたいだが、今は何とも言えない」
『くっ!ごめんなさい。杉山さん。今、朝比奈参番隊長から連絡が入ったから…』
「ああ、分かった。ライと連絡がとれたらすぐ報告するよ」
『ええ!お願い!』
そう言うと通信が切れた。
杉山は無線機を握りしめた。
歯を食いしばると、杉山は思い切り小石を蹴り飛ばした。前方にいた月下に当たり、振り向いた。
いまだライから連絡が無く、彼は動けずにいる自分に苛立っていた。
「クソッ!カレンを心配させるなよ。ライ。泣かせたら、タダじゃおかねえからな」




同時刻。
「ゼロ様が撃たれた!?」
シズオカにあるキョウト六家の別荘。
巨大な日本庭園があり、かつては文化遺産の一つであった屋敷。
その一室にある大スクリーンに桐原の顔が映し出されていた。
皇家の代表、神楽耶はその報告に身を震わせた。
『命に別条は無いということだが、安心は出来ない。そして、日本に戦が訪れる。7年前と同じようなブリタニアとの戦争が』
「……ゼロ様」
崩れ落ちる神楽耶を二人の従者が支えた。
「神楽耶様!」
『神楽耶!気をしかと持て!皇家たる者。弱き姿を民衆に見せるでない!』
「…はい!叔父様」
『神楽耶は今からキョウトへ戻れ。神楽耶の身に何かあれば…』
神楽耶は目もとを袖で拭うと、桐原に視線を送った。
少女に相応しくない、強い決意を秘めた瞳を宿した表情で。
「なりませぬ!私はゼロ様と共に闘いとうございます!私の力をもって、今から全部隊に召集をかけます!わたくしにできることであれば何でも致しますわ」
『…分かった。そちらの好きなようにしろ』
通信が切れると、従者に命令を下す。
その場を立ち去った後、彼女は袖を捲りあげて、屋敷の奥に消えていった。



0021POPPO2009/02/27(金) 00:17:09ID:XhNZrNwc
私は…自分の願いのために…
アンの命まで踏みにじった。
憎い。
自分が憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
計画が上手くいって喜んでいた自分が憎い!
何が成功した!?何が上手くいった!?誰が喜んだ!?誰が得をした!?
自分が天才!?ギアスで何でも出来る超人!?『ゼロ』を超える策略者!?
はっ!自惚れるのもいい加減にしろ!
私は!私は!私はぁ!!
兄の仇を取る為に!死んだ人間の汚名を晴らすためだけに!私のエゴのために!
大切な親友すら犠牲にした、


―――――――――――――タダノヒトゴロシダ。


私は首元からネックレスを取り外すと、私はアンの手に握らせた。
一年前にアンから貰ったネックレス。
私のお気に入りで、外出する時はよく身につけていた。
「今の私に、これをつける資格は無いわ。アン」
私はアンに微笑む。
これがお別れの挨拶。
膝を返すと、私はアサルトライフルを持って私は立ち上がった。
「ゼロだけは…絶対に殺す。それが、せめてもの…」
目の前には幾重の死体が連なっていた。肉片しか無い死体も多くあった。
この虐殺の元凶。
身も心の血で濡れた女。
それが――――――――――――今の私。

私はギアスを発動させた。
左目がマジックミラーになっているメガネをかける。
私の眼球がどの方角を向こうが必ず私の額を映すように細工されている。
自分自身にギアスをかけることで、人間の動体視力を超えた身体能力を引き出すことができる。リスクとして体にかかる負担は凄まじいが、今はどうでもいい。自分の体がどうなろうと。
残っている一本のマガジンは、ポケットに突っ込んだ。

もう、立ち止まらない。
0022POPPO2009/02/27(金) 00:17:53ID:XhNZrNwc
私は『命令』した。
前進しろと。
地面を勢いよく蹴り飛ばした私は前へ進む。
煙で目が眩むが、前方に人影が見えた。銃を所持していることから軍人だと思われる。
だが、彼らに弁明している暇は無い。
私の行く手を阻む人間は容赦しない!
私は『命令』した。
殺せ、と。
パパパパン!
4発の弾丸は4人の人間の頭を撃ち抜いた。糸が切れた人操り形のように崩れ落ちる。
その死体から2丁のアサルトライフルを奪い去った。
両手に持ったアサルトライフルを前方に構えて、行く手にいる人間を全て撃ち殺して行った。
中には黒の騎士団の団員もいた。
躊躇いもなく撃った。
死んだ。
私は勢いをつけて、座席からランスロットと呼ばれるKMFの肩に飛び乗って、そこから式場の舞台に降り立った。
舞台上に配備されていた兵士は皆驚いた。
私は彼らに考える暇も与えず、そこにいたブリタニア軍人は全て殺し、数人の黒の騎士団の内、一人だけ残して他は撃ち殺した。
両腕両足を撃たれた男は、目の前で起こった事が把握できずにただ地べたをもがいていた。
その男に近付いて、髪を思い切り掴みあげた。
男の耳に障る悲鳴を無視してメガネを上げる。
左目にある赤の紋章が輝く。
「ゼロの居場所を言え」
「…12時の方向に待機しているトレーラーに、副司令と一緒にいる」
「ゼロの正体は?」
「………」
私は用が済むと、銃口を彼の額に当てた。
「そう、ありがとう」
バン!
男の顔が無残にはじけ飛ぶ。
返り血を浴びたが、拭うことはしなかった。
アサルトライフルを捨てて、また死体かた2丁奪った。マガジンも持てるだけ持ってポケットに入れる。
人が集まる前に、私は瓦礫と化した出入り口を飛び越えていった。
0023POPPO2009/02/27(金) 01:23:10ID:XhNZrNwc
「ああ。ゼロの治療は終わった。今は情報を隠しておけ。下手な混乱を避けたい」
僕はディートハルトに連絡を入れた。
通信機を切った後、ルルーシュの寝顔を見た。
主治医に指示して、ルルーシュには睡眠薬を飲ませて眠っている。
放っておけば傷を無視してでも指揮をとって、命を危機に晒しかねない。
医療スタッフはゼロの素顔に目もくれずに仕事に徹している。
僕は椅子に座りながら思考を始めた。
(…ユフィの言動と行動。明らかにおかしかった。ならば、半年前のようにギアスに操られていた可能性が高い…でも、一体誰が、何のために?)
そして府に落ちないことはそれだけでは無い。
(『新日本党』のリーダー、鬼頭も色々と言っていたな。
『ゼロ』の指示で、と。
でもルルーシュからそんな話は聞いていない。
それに『新日本党』と組んでも、黒の騎士団側に何のメリットも無い。ルルーシュは関わっていないことは確かだ)

『ギアス』、『新日本党』、『ゼロ』。

これをキーワードに様々な思考を巡らせていったが、もう一つ、重要な要素が欠けている。
それは動機。
事の発端はそれに繋がる。その原点が絞り込めないのだ。
今回の事は日本にとってもブリタニアにとっても不利益を被る話でしか無い。
第3者の介入が一番疑わしいが、根拠が薄すぎる上に勢力は不特定多数だ。
分かっていることはゼロの命を狙っていて、失敗したということだけ。
今はそれが分ればいい。
「だから、ここを守ることが最優先だ」
僕は手元にある銃を見た。扱い方は『知っている』。
今一度、マガジンにある弾を確認する。
(そういえば…)
カレンや壱番隊に連絡を入れてない。ルルーシュの手術中は警戒していただけだった。連絡もディートハルトと藤堂さんにしかしていない。
壱番隊には待機命令とKMFが揃うまで動くなという指示を送ったはずだけど、大丈夫かな?
そう思って無線機に電源を入れた時、

パパパパパパン!
外で銃声の音がした。
悲鳴を上げる看護士たち。
僕はそれを手で制して、アサルトライフルを握る。
外に待機させていた団員から連絡が入った。
「どうした!?何が起こった?」
『い、いきなり団員の一人が発砲して、相撃ちに…うっ、グアッ!?』
「おい。応答しろ。藤原。藤原!」
0024POPPO2009/02/27(金) 01:23:48ID:XhNZrNwc
ドン!!
突如、大きな音と共にトレーラーが傾き始めた。
それをいち早く察した僕は、銃を肩にかけて、ルルーシュの体を掴んで、反対方向の壁に背中をぶつけた。
(――――――ッ!!)
背中に激痛が走り、医療器具が飛んでくるが、僕はそれを無視して非常ボタンをガラスと共に叩き壊した。
いきなりトレーラーの天井が展開し、その小さな転がるようにルルーシュを抱きかかえたまま脱出した。
地面に僕は転がった。ルルーシュの体も二転、三転するが彼は起きなかった。
周囲から押し寄せてくるのは炎から来る熱気。
僕の背後では黒の騎士団員の死体が転がっていた。
横倒しになったトレーラーから足音が聞こえた。
咄嗟にルルーシュの前に出る。
「誰だっ!!?」
僕は反射的に銃を構えた。
後ろにはルルーシュがいる。しかも、マントもシーツも無く、顔をさらけ出している。
まずい!
僕は引き金を引こうとして、
その標的を見た途端、
手が止まってしまった。
相手の顔を見たからだろうか。
いや、目の前にいた少女がこんな事を呟いたからだ。



「え?…ライ、先輩?」



0025POPPO2009/02/27(金) 01:24:19ID:XhNZrNwc
(!?先輩?ってことは…)
血で濡れた服を着た青髪の少女は目を見開いて、僕を見ていた。
目の前の光景が信じられないと言っているように。

「き、君は…アッシュフォードの?」

彼女の左目に輝いている紋章を僕はとらえた。
見間違えることの無い、悪魔の紋章。
眼鏡の奥に秘めた瞳に彼女は宿していた。

(左目は、まさか…ギアス!?)

「え?…な、なんで?…へ?」

う、うしろにいるのは…

「る、ルルーシュ先輩?…は?…え、え?」

…何の冗談?ル、ルルーシュ先輩の格好って…は?ウソでしょ?

私の手が無意識に震えていた。銃口が定まらない。

ギアスの力で体を制御してるのに。

「貴方が…」

(…この騒乱、まさかこの少女が!!)

「君が…」












0026POPPO2009/02/27(金) 01:25:02ID:XhNZrNwc
「何でこんなところにいるんだああああああああああああああああ!!」
「何でこんなところにいるんですかああああああああああああああ!!」



凄まじい絶叫と共に睨みあい、互いに引き金を引こうとした瞬間―――――――――――
ズゥゥゥウウウウウン!!
突然、轟音と共に視界一杯に黒い物体が広がる。
小さな銃声がかき消され、周囲に粉塵が舞い上がった。恐る恐る上を見上げると、それがKMFであることが分かった。
『無事か!?』
「C.C.!!」
ゼロ専用のKMF、ガウェイン・ラグネルからオープンチャンネルで彼女の声が聞こえた。
赤いハッチが開き、C.C.の姿が見えた。
「今、ワイヤーを…」
「そんな暇は無い!」
僕はルルーシュを担ぎあげるとガウェイン・ラグネルの右腕を足蹴にして、コクピットに飛び乗った。
ベルトは締めずに、操縦桿を握ってハッチを閉めた。
膝にルルーシュの体を置くと、両側から現われたキーボードに打ち込んで生体反応を確認した。
モニタには炎上した機器が周辺に多くあることから、温度による生体反応が確認できない。
思わず舌打ちをする。
「…逃げたか」
「?一体どうしたんだ?」
前部座席から僕を見上げながらC.C.が訪ねてきた。
「さっき僕たちの目の前に女の子がいただろ!?彼女はギアスを持っていた!」
「何だと!?」
「!?C.C.も知らないのか…おそらく身体を操るギアスだろう。さっきの異常な身体能力も自分自身にギアスをかけていたなら説明がつく!そして、この事件のっ!…」
ガンッ!と僕は右横のフレームを思い切り叩きつけた。少し拳形に凹んでしまっていた。
その時、コクピット内にアラーム音が鳴った。
モニターを確認する。周囲に5機のサザーランドが接近し、発砲してきた。
ガウェイン・ラグネルの前方に絶対守護領域が展開された。
『ゼロォォォオオ!!自分だけ逃げる気かああああ!!』
銃弾を完全に防ぎきれたとしても衝撃はコクピット内にも伝わってくる。
ルルーシュの体が揺れ、ジャケットに彼の血がこびり付いた。
傷口が開きかけている恐れがある。
「――ッ!!」
それを見た瞬間、僕の頭は沸騰した。
0027POPPO2009/02/27(金) 01:27:48ID:XhNZrNwc
操縦桿を強く握り、サザーランド全てをロックオンした。そのままボタンを押す。
「お前らは…」
ワイヤーカッターが装備されたスラッシュハーケンが発射され、2機のサザーランドに巻きつく。ナイトメアのアサルトライフルがいとも簡単に切り落とされる。
そのままガウェイン・ラグネルの上半身を回転させた。同時にフロートシステムを展開した。
「邪魔なんだよおおおお!!!」
他のサザーランドに激突しながら、サザーランドの機体が切り裂かれた。周囲の破片と粉塵をまき散らしながら黒い機体は空高く飛び上がる。
一瞬遅れて、5機全てコクピットごとサザーランドが炎上した。パイロットも生きていはいない。

0028POPPO2009/02/27(金) 01:28:41ID:XhNZrNwc
それをモニターで確認すること無く、ガウェイン・ラグネルを発進させた。
ルルーシュの傷にタオルを押し当て、僕はC.C.に声をかける。
「このままシズオカの本部に向かってくれ。ルルーシュの傷が開きかけてる」
「分かった。…ライ。お前はどうするつもりだ?」
「…ルルーシュを休ませている間、僕がゼロを代行する。そして、あの少女を捕まえる。黒の騎士団総力を挙げてな。C.C.君にも手伝ってもらいたい」
「…やはり、そう言うと思ったよ。ならば私も同行する」
「何を言ってるんだ?C.C.はルルーシュの傍にいてくれ。万が一の事態に対処できないだろ?」
「私はルルーシュの共犯者だが、子守をする気はない」
「…冷たいな。君は」
「恋人からの連絡をほったらかしにしているお前に言われたくないな。不審に思われるぞ?」
…先ほどから右のモニターが点滅していた。通信が来ているという知らせだ。
Q1
相手はカレンだ。紅蓮弐式からの通信だった。
僕は言い知れぬ冷や汗をかき始めた。
何でかって?
それはC.C.がニヤついているからさ。
「C.C.…ゼロの仮面は無いか?声でバレる」
「そんなものは無い。繋ぐぞ」
「ちょっと待っ!」
僕の言葉も空しく、チャンネルがつながれた。
眼前のモニターには『SOUND ONLY』の文字だけ表示されている。
『ゼロ!ご無事でしたか!?…報告します。現在、ポイント甲七十八に待機させているトレーラーに副司令が到着していません。
『蒼天』のスタンバイは既に完了していますが、連絡も途絶えたままで…』
「…そのまま『蒼天』をポイント丙二十一まで後退させてくれ。零番隊はポイントB2に移動を開始しろ」
『…ええっ!ライ!?何でガウェインに乗ってるのよ!?』
やっぱりばれた。映像は無いものの、何故か焦る僕。
「すまない。カレン。成り行きでこうなった」
『成り行きでって…!!ゼ、ゼロは?ゼロは無事なの!?』
「ああ。今は眠ってるけど命に別条はない。あと、カレン。今から数日程度、僕がゼロの代わりをするから。心配しな…」


『はあああああ!!?』


コクピット内にカレンの大声が響き渡った。前部座席にいるC.C.が両手で耳を塞ぐくらいだった。
僕の耳響くものがあったが、それが逆に心地よかった。
カレンの声を聞いただけで心が癒されるなんて…僕は完全にカレンに依存してしまっているのかもしれない。
『ちょ、ちょっと何言ってんのよ!?た、確かにライは指揮能力が高いけど、ゼロの代わりなんて…』
「大丈夫だ。カレン。ライの腕なら私が保証する」
『え!?C.C.!?何で貴女が其処に、って、まさか!ライと二人っきりでガウェインに!?』
「…ゼロも乗っている。負傷中だからあまり大声を出さないでくれ。カレン」
『あっ!も、申し訳ありません!』
「だから、ゼロは眠ってるって…」
カレンの声に、僕とC.C.は思わず笑ってしまった。
いつの間にか、さっきまで張り詰めていた緊張感が無くなっていた。
ここでようやく僕は気づいた。C.C.がカレンと連絡を取ったのは僕を気遣ってくれてのことだったということを。
『…ねえ、ライ』
「ん?何だい?」
『ライは、大丈夫なの?怪我とか、してない?』
…カレン。君って人は本当にやさしい女の子だ。
君を好きなってよかったよ。
心がすごく落ち着く。
0029POPPO2009/02/27(金) 01:35:15ID:XhNZrNwc
「ああ。心配してくれてありがとう。カレン」
『…良かったぁ』
通信が切れる前に、僕はカレンに言った。
彼女だけにかける、魔法の言葉を。
「カレン」
『えっ?何?』


『愛してるよ』


『〜〜〜!!!』
ブチッと、通信を強引に切る音が聞こえた後、コクピット内に静寂が生まれた。
C.C.が小さく笑うと僕のほうを見上げながら言葉を紡いだ。
「カレンの扱い方が上手くなったな」
「その言い方は無いよ。でも、カレンが考えていることは手に取るように分かるな」
「…乙女心まで知り尽くす気か。末恐ろしいな。お前は」
「?何がだい?」
「いや、何でも無い。ただの一人言だ」
「そうなんだ。ところでさ。C.C.」
「何だ?」
タイピングを一旦止めて、僕はC.C.に笑顔で感謝の意を述べる。
「ありがとう」
それを聞いたC,C,は含み笑いを僕に返した。
ちょっとばかり怖い。
「フン。『非』童貞坊やが。生意気だぞ?」






混沌とした式典会場。
彼は撃墜されたサザーランドの残骸の上に立っていた。
ガウェイン・ラグネルの後ろ姿を見守る一人の少年がいた。
帽子を脱ぎ去り、黒髪のカツラをはぎ取った。
彼の綺麗な白い長髪が肩にかかる。
その時、彼の表情には深い笑みが刻まれていた。
少年には相応しくない、狂喜に満ちた、目と唇を歪ませた禍々しい笑顔。
その唇が言葉を紡いだ。

「見つけた…」
0030POPPO2009/02/27(金) 01:38:29ID:XhNZrNwc
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」

TURN00 「終わる日常」 (中編7)

終了です。
話が二転三転して、適度に切ってやっと落ち着きました。
もう少し詰めようと思ったのですが、これ以上すると一章にまとまらないので
大分細部を切り落としました。
感想待ってます!
それでは。
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