そのような物は伝説に過ぎぬ、あの男は痴れ者よと世人は余を嗤う。
黄金のハルトシュラア像なる物を疑うは、そも、ハルトシュラアが何物か知らざるが故なり。
黄金とは黄金を産む物、即ち西洋練丹術に於ける<賢者の石>の謂。
ハルトシュラアとは全にして一、偏在する者にして門の鍵を表したる言葉なり。
なればこそ余は遥か天竺西蔵の地に至りて終に当像を得たり。誠に男子の本懐を遂げたるなり。


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「なんだかすごいお宝がやって参りました、黄金のハルトシュラー像。それでは鑑定結果オープンです!」
「一、十、百、千……」
「あーっ、なんと三万円ー!!」
「これはね、江戸時代に複製がたくさん作られましたですね、長崎の土産品ですね。ほらこれ、メッキです」
「残念やったねえー。ひいお爺ちゃんの日記ねえー、騙されてしもうたんやねえー。どうなん?」
「いやーはっはっ、ひい爺さんボケてたんでー。こんなもんかと思ったっす! ありがとうございましたー」