7.1 首吊りの怖さの分析
①定型忌避
日本では首吊りは自殺の70%近くを独占していますが、その大半が非定型です。
「定型は怖いけど非定型ならなんとか」というのが多数派の心理です。
非定型は、引き返す道が残されており、そこに身を置くことの安心感が決定的と言えるでしょう。
その身を置く場所(状況)をここでは“生存スペース”と言いたいと思います。
生存スペースは、身を置いても安全でありながら、そこで身を任せれば安楽死できる仕組み全体です。
非定型の「生存スペース」とは、足が地面についている状況です。
自殺志願者が生存スペースを欲することは矛盾ではありません。
なぜなら、生存スペースを確保したまま楽に死ぬのが安楽死の理想だからです。
例えば、飛び降り自殺は無痛どころか気持ちが良いと証明されても、安楽死とは言われないでしょう。
生存スペースの過激な放棄、破壊を伴うからです。
通常の定型は飛び降りのような生存スペースの過激な放棄、破壊はありませんが、生存スペースのなにがしかの喪失感は免れません。
定型の場合、体を支えているのは踏み台の上の2点の足のみです
そこから実行した場合、支点は首に長距離瞬間移動してきます。
これが生存スペースの喪失感を強く意識させます。
非定型の場合は、支点の「移動」ではなく、支点の「分散」となり、生存スペースが温存される形になります。
ここに定型が忌避され非定型が選択されるポイントがあります。

②非定型における生存スペースの不適切な拡大
ドアノブタイプの非定型で重心を後ろにずらすのは、二足歩行の人間にとっては苦手な動きです。
これで生存スペースが消失することはないとしても、それなりに毀損するでしょう。
それを補うように、体重のかけ方に裁量をはさみがちになります。
非定型は「身を任せる」ところでそれを拒み、「裁量」をはさむことで失敗リスクを増大させます。
その裁量は生存スペースの不適切な拡大に他なりません。
しかも、ネット社会になって非定型の完遂率の低さが広く知られるようになると、ますます「疑心暗鬼」になって、「裁量」を手放そうとしなくなります。
このようにして非定型は悪循環に陥ります。
そしてその悪循環を断ち切る特効薬はありません。

7.2 定型の新しいカタチ
ここで一つのテーマが見えてきます。
生存スペースを温存した定型はないものか?
非定型の生存スペースを支えているのは床です。
足をつく床がある限り定型は定型となることはできません
ここで床が縦方向にあって(つまり体を支える壁)、それに向き合う形になれば、生存スペースが可能になるのではと考えました。
そうすれば支点の「分散」に関して非定型以上の成果を出せる可能性が出てきます。
(以下省略)