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そして上位者である私が、盤の上に置かれた駒箱に手を伸ばしかけた瞬間。
「ちょっといいですか?」
雛鶴あいが思い出したように叫んだ。
「……?」
駒箱に伸ばそうとした手を止める。
あいは盤側に置いた鞄に手を突っ込みながら、申し訳なさそうな表情で、
「ごめんなさい、おば…空先生。一つ、お願いがあるんですけど」
「……何?」
「この盤を使ってもいいですか?」
鞄からあいが取り出した七寸盤を見た瞬間──頭に血が昇るのを感じた。