立憲民主党と共産党の国会議員の対談集が、発売1カ月前に急遽(きゅうきょ)、刊行延期となったことが分かった。出版社はホームページ(HP)上で延期理由を「諸般の事情」と説明している。秋までに行われる衆院選を前に持ち上がった立民と共産の接近を印象付ける出版計画は、立民の支持母体の連合内に波紋を呼んでいた。

 発売延期になった書籍のタイトルは「政権交代で日本をアップデートする」。法政大の山口二郎教授が聞き手となり、立民の小川淳也衆院議員、共産の田村智子政策委員長ら両党国会議員4組が対談した内容をまとめた。「マルクス=エンゲルス全集」の出版などで知られる大月書店が6月18日の発売を予定していた。

 前宣伝は「野党共闘の主力である立憲民主党、日本共産党の国会議員が政権構想にむけて熱く対論する。新しい日本を選択するための必読の書!」だったが、大月書店は5月19日に発売延期を発表。「楽しい対談だった」と語る共産側の一人によれば、すでに初稿の確認は終えていたという。

 同社HPは「刊行時期は改めてご案内申し上げます」としているが、あるオンライン書店は発売予定日について、衆院選が終わった後となる12月30日としている。

 同書の刊行は、共産と対立してきた連合内で物議をかもしていた。関係者によると、産業別労働組合(産別)からは「共産と一緒に本を出す立民を支援するのはおかしい」といった声が上がったという。

 また、ある産別の幹部は「共産の政権構想に巻き込まれるのは非常に迷惑だ」とした上で「出版自体をとやかく言わないが、立民の4人は選挙で支援できない」と語った。

 延期理由について大月書店の担当者は「最適なタイミングをはかりたいとの編者の山口先生のご判断で、そのように対応させていただいている」と話した。

 ただ、次期衆院選を控え「発売を延期しては意味がない。選挙前に有権者に読んでもらって、投票の判断材料にしてもらうべきではないか」(野党関係者)との声もある。

https://www.sankei.com/politics/news/210523/plt2105230009-n1.html