智弁和歌山、唯一背番号ない3年 自分と向き合い裏方へ
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 智弁和歌山には後方から選手を支える3年生部員がいる。記録員の黒木隆成君。同学年の12人のうち、唯一背番号を着けていないが、ベンチで選手と一緒に全力で戦う。

 身長180センチと恵まれた体格で、中学時代は和歌山市の選抜にも選ばれた投手。自信を胸に智弁和歌山の門をたたいたが、名門のレギュラー争いは過酷だった。
同学年だけでも中西聖輝君や伊藤大稀君、高橋令君と全国レベルの好投手がそろう。「入学して最初のころは『他校に行っていれば』なんて考えたこともあった」

 3年生になり、自分と向かい合った。「限界だな。春季県予選で区切りをつけよう」。中谷監督に「気持ちの区切りがついた。
サポート役に回りたい」と伝えると、「裏へ回るのは本当に大変だが、がんばれ」と言葉をかけてもらった。同予選の田辺工戦で、登板の機会を与えられた。「背番号11を着けさせてもらった。ほんまにうれしかった」。
野球選手としては、これで「引退」した。

 和歌山大会では記録員としてベンチ入りした。優勝が決まった直後、仲間たちから「ありがとう」と声をかけられた。
「泣いてしまった。ほんまにやってきてよかった」。甲子園でも記録員としてベンチ入りし、仲間を支える。