それは2002年4月15日のことでした。

富山県の小さな街で平穏に過ごしていたタクシー運転手である柳原さんは、この日もいつもと同じように出社しました。

しかし突然、車で現れた刑事たちに取り囲まれ、富山県警察氷見警察署に連行されてしまいました。

それは約1カ月前の3月13日に、当時16歳の少女の自宅に侵入し乱暴しようとした犯人と似ていたということからでした。

実際、その少女も柳原さんのことを犯人と証言していたそうです。

しかし、その事件のことを知らされず容疑者として取り調べを受ける柳原さんでしたが、担当した刑事は詳細を明かさず「お前がやったんだろ!」と繰り返すだけでした。

柳原さんは、なぜ自分がこのような事態になっているのか分かりませんでした。

罪になるようなことをした覚えが一切ない柳原さんは、無実を訴えましたが、“犯人に似ている”というだけでまったく取り合ってもらえませんでした。



その後、ようやく2回目の取り調べで暴行事件の容疑者になっていることを知らされた柳原さん。

もちろん柳原さんは間違いなくやっていませんでしたが、朝から晩まで何度も過酷な取り調べが続きました。

さらには母親の遺影を持ち出し「母さんが泣いてるぞ」などと言われ、自白を迫られたことや供述を翻さないとする念書を書かされ、指ではんこまで押したそうです。


そして、肉体的にも精神的にも疲れ果て、耐えかねた柳原さんは、ついにやってもいない罪を自供してしまいました。