左膝をかまれて出血していた。ただ痛みは搬送された病院に着いてから感じた。
 感染症の懸念もあったことから、2週間ほど入院した。体には生々しい傷が残る。かみつかれた左膝の傷はあと数センチ深ければ動脈に達して致命傷だったと医師から言われた。
左膝付近を8針縫った。かまれた傷か牙がかすめた傷かはわからない。岩場で切ったとみられる手は3針縫った。


死闘から2カ月。やっと通院が終わった。「これだけ重傷を負いながら傷害保険も適用されない。
でも一生に一度しかない体験だろうし、傷は残ったけど本当に助かって良かった」と下田さんはふり返る。
大好きな釣りは、退院してから一度も行っていない。「また釣りに行くのか」と尋ねると、笑ってこう答えた。
 「家族からは1人で行くなと心配されているけれど、自分は行くよ。もうそろそろ再開しようかな。
これからがイカ釣りのシーズン本番。もちろん、これからはイノシシが近くにいないか十分に用心しないとね」