そろばん達人、暗記は視覚的 脳の状態を断層撮影で分析
http://www.asahi.com/science/news/K2002070600505.html
けた数の多い数字を覚えるのに、そろばんの達人と素人では使う脳の部位が違って
いることを上智大などのグループが断層撮影装置を使って確かめた。素人が言語処理の
部位を使うのに対し、達人は視覚認識の部位が活発に働き、数字を視覚的に覚えている
ことがうかがわれた。7日から都内で始まる日本神経科学大会で発表する。
 調査対象は、そろばんの達人10人(平均珠算段位8段)と、そろばん歴がほとんど
ない13人で、ともに20歳前後。覚えられる限界のけた数をそれぞれ調べ、2けた
少ない数字を使った。
 達人には10〜15けた、素人には6〜9けたの数字を3秒間見せ、15秒後に
同じ数字か微妙に違う数字を見せて、同じかどうかを尋ねた。これを30回繰り返し、
数字を暗記しているときの脳の状態を帝京大医学部の機能的核磁気共鳴断層撮影
(fMRI)で分析した。
 達人は右脳と左脳の上前頭溝や上頭頂小葉という視覚情報の処理にかかわると
される領域が、素人は主に左脳のブローカー野という言語処理にかかわるとされる
領域が活発に働いていた。
 「そろばん熟練者は頭の中にそろばんを浮かべて暗算をするといわれる。数字を
覚えるときも同じで、ふつうの人と違う方式だった」と前上智大大学院生で岡崎国立
共同研究機構生理学研究所の田中悟志さん。
 達人の中には、携帯電話の番号を覚えるときもそろばんを思い浮かべるという人も。
「数字を聞くとそろばんが思い浮かび、かえって不便」と嘆く達人もいたという。