<全入時代の学生像(2)「従順」「もろさ」同居>

つまずくと「学校行けぬ」
 広がる学生の「まじめ化」は、キャンパスに思わぬ波紋を広げている。
 「カレッジソング(校歌)を歌える証拠を示せ」。同志社大の百合野正博教授が
約十五年にわたり「監査論」の学期末試験に出す“珍問”だ。名物教授の遊び心
に学生たちは、歌声を入れたカセットテープを答案用紙に張り付けたり、試験後
に研究室で直接歌ったりと応じてきた。
 それが最近は回答がないのはまだいい方。学長あてに「校歌は講義に関係なく
不公平」と電子メールも来た。百合野教授は「昔の学生は余裕があった。今は
融通が利かない」と苦笑いする。
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 いつから“堅物学生”が増えたのか。大学生協の調査によると、主要大学の学生が
「生活の重点」と考えるトップは、一九八〇年以来「豊かな人間関係」だったのに、
九〇年代は徐々に減少。二位だった「勉強」が九八年に逆転し、今や差は広がるばかりだ。
 上智大の武内清教授(教育社会学)は学生に、先輩らがサークルやコンパ、
アルバイトに明け暮れ、レジャーランド化と盛んにいわれたことを話してみた。反応は
「周りにそんな人はいない。もっと堅実」「懸命に勉強して資格を取る人が多い」。けげ
んな顔をされた。
 「自分もフリーターやニートになるかも、といった漠然とした将来への不安が、彼らを
とりあえずまじめに、従順にしている面がある」と武内教授。だが「その分、ショックを
受けると壊れやすい」。

(その2へ続く)