「ある金曜日の夜に、二人してディスコに行く約束してたから、
 俺はニッキーの家のドアをノックして『こんばんわ、ジョーンズさんニッキーいる?』
 って彼の母親に訊いた。
 そしたら、『2階にいるんだけど、もう5時間近く部屋からでてこないのよ』って。
 で、心配になって2階に上がって『ニッキー、入ってもいいか?』って訊くと、
 中から『どうしても入りたいっていうなら……』って返事だった。
 で、部屋に入ってみたら真っ暗でさ。
 電気をつけようとすると、『つけちゃダメだ!』って怒るんだよ。」

「何がなんだかわからないまま、床に座って何があったのか俺は訊ねた。
 そうしたら、シクシク泣きながら
 『このアルバムのせいで頭がおかしくなりそうだ。
 もう、僕は前みたいに遊ぶ事も出来ないし…電気もつけられない。』
 『大丈夫か?』
 『……大丈夫なんかじゃない、この……アルバムが素晴らしすぎるんだ。』って。
 いくら話しても埒があかないから、俺は嫌がるニッキーを無視して電気をつけたんだ。
 そしたら、なんとニッキーは顔に化粧をしてたんだよ!
 そう、ニッキー・ワイヤーがちょっとイカれてるのも、化粧をしてるのも、
 全て、ジョイ・ディヴィジョンの『クローサー』が出発点ってことなんだ。
 うん、これはホントいい思い出のひとつなんだよね。」