しばらく時間が経つ。いつの間にかドアの向こうからの音もやみ、ようやく栞も落ち着いたようだ。
「もう行ったかな」
「私はキッ○を許しません。あんなおぞましい物を生み出すなんて」
「いいけどさ」
その時、再びノックの音がする。思わず顔を見合わせる俺たち。
「あの、どなたですか」
「遅くなってごめんね。栞ちゃんいるー?」
「あの声は間違いなく先生です」
ほっとした表情の栞がドアに駆け寄り鍵を外した。
一人の女の子が入ってくる。アンテナのようにピンと立った髪の毛が特徴的だ。しかし……。
「なぁ、先生って小学生なのか?」
「失礼なことを言わないで下さい。先生は私と同じ一年生です」
「そこ、なにナイショ話してるかな」
「あ、いえ、何でもないんです」
ここは強引に話を変えるか。
「ところで先生、うちの栞は『お兄ちゃん』をマスターできそうかい?」
「うーん。とりあえず場所を変えよっか」
えっ、と思ったときには回りの景色が一変していた。