>自ら遮断機を押し上げて踏切内に入り、同軌道内で横臥して急行下り電車に頸部等を礫過され死亡した。


芥川龍之介だったか、究極の美を追い求めた天才絵師の話があった
彼は超絶した技巧を駆使し、あらゆる美しい風景画や人物画を描き尽くしてしまった
ついには絵を描く目的を見失い、幽霊のように街をさまよい歩くようになった

そんなある日、彼は火事で人が焼死するのをたまたま目撃する
彼は強い衝撃を受け、そこに残酷な美を発見し、生き返ったように絵を描き始める
彼の描いた生き地獄の絵は、迫真の出来で高い評価を得る

彼は、残酷な絵を追求し描こうとするが、人が焼死していく光景の記憶は薄らぎ、やがて描くことができなくなる

ある日、帰宅すると、自宅が炎に包まれていた。自分の娘が炎に取り囲まれ、逃げ惑うのが見える
天才絵師は娘を助けることもせず、自分の娘が焼死していく場面を、狂ったように描き続けたという