下品な話です

私は美大受験のために美術予備校に通っていた
そこでは裸婦のモデルを描くことも多々あった
最初は変に緊張したものの人体を描くのは楽しく夢中で描いた
モデルさんたちも学生の要望に応えたポーズを堂々ととってくださり本当に尊敬した

あるとき、男性からヌードモデルに使ってほしいというメールが予備校に届いたらしく
いつも女性モデルばかりだからたまには男性モデルも…ということで検討の末その男性をモデルに起用することに
当日は男性モデルを30人程の学生が囲む
8割は女子学生である
男性モデルが服を脱いで最初のポーズをとってから数分後、彼の股間から糸状のものが垂れ下がっていることに気付く
最初は糸くずか何かと思ったがよく見ると体液だった
ええ！？と冷静に描きながらも内心パニックな処女の私

妙な緊張感の走る嫌なにおいが充満した締め切った蒸し暑い部屋の中で鉛筆を動かす音だけが鳴り響き
体液を流し続けながらもポーズをとり続けるモデルと
何故かうわあああどうしようという気持ちに焦りながらも必死で描き続ける私と
明らかに気づいているが冷静に表情ひとつ変えずに黙々と描き続けている学生仲間たち
彼らが私と同じような心情だったのかは今でも分からない
裸でポーズをとっていただいてるモデルさんに失礼な発言をするのはタブーであり内容が内容だけに学生同士でも口に出せなかったのだ
ポーズ休憩の際、講師が苦笑いでちょっと換気しましょうと言って窓を開けてくれたのが唯一の救いだった
その後朝から夕方までポーズは続いた
彼はその後も体液を流した

この異様な一日が私にはかなりの修羅場で予備校から帰ったあとも頭がぼーっと熱くなっていた
大切なものを奪われたような失ったような気持ちだった
しかし一番修羅場だったのは男性モデル自身だったのかもしれない
だがプロのモデルではなさそうだったし自薦したというところからあれはわざとだったのではないかとも思っている