小さい頃、とても綺麗な叔母がいた。親父の妹なんだが、いつも綺麗な格好をして、おふくろとは全然違う
匂いをさせていた。兄にも優しかったが、特に俺に優しく、いつもたくさんお小遣いをくれた。おふくろはいつも
ちょっと冷たく当たっていた。大人になってから聞いたら、叔母は俺を養子にしたいと盛んに親父に頼んで
いたらしい。これでおふくろの態度のわけが分かった。

叔母は、60近くになっても上品で、綺麗な人だったが、ある年の大晦日に急死してしまった。一人暮らしの
マンションで、風呂に入っている最中に心筋梗塞を起こしたらしい。ダイニングテーブルの上には一人分の
ご馳走が用意されていて、冷蔵庫にはシャンパンが冷えていたそうだ。風呂から出たら一人で年越しを
祝おうと考えていたのだろう。養子にはならなくても、もっと頻繁に顔を出してやるべきだったかなと、
少し後悔した。