コシヒカリより高いおいしいイモを丁寧に焼いて、
少しの手間賃を載せて売値をつけても、なかなか売れなかった。

みんな容赦なく値引きを要求してくる。
中には自宅まで配達しろという人もいた。
帰りに買うから焼いて待って居ろというが、
いつまで待っても買いに来ない。
時間通りに焼きあがったイモは冷めて、
売り物にならなくなる。。。
世知辛い世の中に涙が出そうになる。
でも、焼きイモ屋を続けたい。
おいしいといって喜んでくれる顔がみたいから。

その日は大寒だった。その上、雪がちらつく絶好の焼きイモ日和。
一人のおばあさんが弾んだ声で
「一番うまく焼けたおいしいやつをちょうだい♪」といってきた。

今日は仲良しの友達がくるので、おいしい焼きイモを持って帰って
「こんなおいしい焼きイモ、いったいどこで買ったの?」と
驚かせたいのだという。

こういう人にこそ焼きイモを買ってもらいたかったので
釜をあけて、おばあさんと一緒にじっくり選別した。

おばあさん「甘い?」
ぼく「とっても甘いですよ。それに、焼きたてのアツアツです。」

つづく