じいさんは戦争でシベリアに抑留され、アカに洗脳された挙句、妻子を捨てたも同然の身勝手な生活を送り
親父に散々迷惑をかけてきた。
そのせいで親父は今もじいさんが大嫌いで、同居していても口もろくに聞かない。
そんなじいさんから聞く話は戦争の武勇伝とか、シベリア抑留の悲惨な状況ばかりで、
じいさんの唯一の誇りと思っている自慢話を聞かされてるだけなので、親父の苦労を知って
いる息子としては、正直呆れていた。
ある日、酔っ払ったじいさんが普段とは違う話をし始めた。
戦争が終わり、シベリアに抑留されたじいさんは、戦後の混乱で行方不明者として扱われ、ほぼ戦死したと
思われてたそうだ。
やがて抑留から開放され、やっと日本に帰ってきた時、港で待っていたのはひたすら泣きじゃくるばあさん
と嬉しそうにじいさんの周りを飛び跳ねる親父の姿だったそうだ。
親父はそれから一月近く、寝る時も風呂に入るときもじいさんのそばをはなれず、うれしそうにじいさんの
後をついてまわったそうな。
今の親父とじいさんの関係からは正直そんな姿は想像できず、なんか切なくなって後で部屋で少し涙ぐんで
しまった。
家族って一緒にいることが大切なんだな。いつか親父とじいさんがこの時に戻れるといいな、と思った。