大叔母(祖母の姉)は旦那さんが戦争で死んで、
子供もいなくて一人暮らしだった。
実年齢より若々しくて、多才で、カッコイイ人だった。
私は本当の孫みたいに優しくしてもらってたけど、
90歳を超えて、大叔母も入退院を繰り返すようになった。

今度は危ないかもしれないと言われていた大叔母が、
朦朧としながらも、チョコが食べたいと言うので、
大叔母が好きだった洋菓子店に行って買ってきた。
本当は食べさせちゃいけないから、二口だけあげた。
泣きながらおいしいって言ってたけど、これ以上は駄目って言うと、
いやだいやだと子供のように泣いた。

次の日、私は病室に泊まり込んでいたけど、
手持ちぶさたなので病院内の売店へ行った。
本を買って帰ると、大叔母は血を吐いていて
医者や看護士が急いで処置をしようとしている所だった。
大叔母はそのまま死んだ。

今でもその洋菓子店の前を通ったり、
あの時買った本の作者の名前をみると苦しくなる。
もっとチョコをあげれば良かった。
本を買いに行かなきゃよかったって。