昔、親子で田舎へ行った帰りに苺を買って帰った。
親は俺にその買った苺を持たせた。幼稚園児だった俺には
パックに入った苺の鮮やかな赤とそれを包んでいる薄くて透明な
セロファンという組み合わせが非常に綺麗でかっこいい物に思えた。
だから、親に苺を持たされた時は凄く嬉しかった。その後、帰りの電車に乗って
しばらく経った後、親が俺にお前苺はどうしたと聞いてきた。
俺はすぐに気がついた。電車に乗る前、駅のベンチに座って自分の隣に苺を置いて、
そのまま置きっ放しにして電車に乗ってしまったのだ。うっかりしていた。
もちろん今更引き返すこともできず、幼稚園児の俺には自分の過失をどうすることも
できず、悲しんだ。しばらくの間、駅のベンチに淋しく取り残された苺のことを考えていた。