232です。
根拠…と言われても、医療者の心の中にある漠然とした不安・不満といった
客観的評価が難しいものについて話していますので、なかなか難しいですね。
まあ、このスレは産科・小児科医療崩壊がテーマですので、産科について例を挙げますと
周産期医療に伴う脳性まひに関しては、多くの億単位の賠償を命じる判決が出ています。
しかしながら、その中の多くは「適切な処置をしていればこうならない可能性があった」という論拠です。
確かにその通りなんですが、では「適切な処置とは何か?」については、明確に示されていない訳ですね。
一方で、脳性まひは新生児1000人に対し、2〜4人の確率で生じます。これは永久にゼロにはなりません。
医療者の立場としては、自分が担当した患者に脳性まひが起こった場合、何をしておけば
自分の行なった医療行為が「適切でなかった」と判断されずに済むかというところがはっきりしない訳です。
我々医療者は「医療にはリスクがある、しかしながら全体としてみれば患者の利益が勝っている」
という前提で働いていますので、「何をしてはいけない(もしくはしなくてはならない)」という基準を示さずに
目の前のひとつの悪い結果に対して責任を取れ、といわれるのは到底納得できるものではありません。
これが現在の産科医不足、産科医療崩壊の大きな要因だと考えていただきたいです。
そして、やや繰り返しになりますが、周産期死亡率という数字があります。これは簡単に言えば
出産1000回中何人の赤ちゃんが死ぬかという数字ですが、調査が始まった昭和25年には46.6だったものが
平成12年には5.8になりました。これは主に周産期医療に携わる医療者の努力によるものですが
ここで産科医療が崩壊し周産期医療が昭和25年のレベルに戻るとすると
日本の年間出生数は約110万ですので、毎年約4万4千人の助かるはずの命が失われることになります。
>>226で「被害者は人ごとに、別個の権利利益があり保護されなければならない」という発言がありましたが
では、この4万4千人の生きる権利は誰が保障してくれるのでしょうか?