「妙なことを言うようだが、ほんとうだよ。君はおぼえがないかね。ゆきずりの人
にゆきずりに別れてしまって、ああ惜しいという、、。僕にはよくある。なんて好
もしい人だろう、なんてきれいな女だろう、こんなに心ひかれる人はこの世に二人
といないだろう、そういう人に道ですれちがったり、劇場で近くの席に坐り合わせ
たり、音楽会の会場を出る階段をならんでおりたり、そのまま別れるともう一生に
二度と見かけることも出来ないんだ。」