日赤は、日本赤十字社の定める独立性・中立性の要請から、政府の指揮監督に服せしめることの困難があ
り、人事面、意思決定の在り方等、その運営における透明性が確保されているとはいいがたいものです。薬害エイズで
は、その拡大を招いた原因の一つとして血液事業における責任権限の所在があいまいなことが指摘されています。エイ
ズ危機に直面した83年当時の厚生省が献血血漿の民間提供ないしクリオの増産等を日赤に打診しながら、実現しなかっ
たとされる疑惑がそれです。製造物責任法制定当時、血液製剤への適用について日赤が反対運動を展開したことも、血
液製剤の安全性を担うものとしての責任感と使命感に欠けるのではないかという疑念を私たちに与えました。日赤に対
する指揮監督の困難及び日赤自身のもろもろの不透明な体質は、公衆衛生上の危機に接したとき、リスク等の情報をオ
ープンにしながら迅速な決定を要求される血液事業の担い手としての適格性に対して大いに疑問を投げかけるもので
す。

 赤十字社が血液事業を担ってきた例は、諸外国にも多数みられますが、スイス(スイス赤十字中央輸血研究所)、オ
ランダ(オランダ赤十字中央血液センター)、ベルギー(赤十字全国委員会)では、赤十字社から独立した公益法人が
赤十字の名のもとで血液事業を実施する体制をとっており、カナダにおいては、薬害エイズやC型肝炎被害によって赤
十字に対する公衆の信頼が低下し、今年の9月、赤十字社は血液事業から撤退し、その人員、施設を継承した独立行政
法人(NBA)に血液事業を委託する体制に変わりました。

 我が国も、こうした世界の趨勢に習い、専門的かつ透明性のある公益法人ないし独立行政法人を設立し、ここに日赤
の血液センターを中心とした人員、施設を承継させたうえで、日赤に委託してきた採血、供給等の血液事業部門を担わ
せるべきだと考えます。