なけなしの戦力から心尽くしの対潜全路哨戒と上空直掩が、出撃直後の艦隊を支援します。
ありがとう――。
やがて彼らも帰っていきました。

私の艦隊だけが、
元々は自分たちの海だった海原を進みます。
九州、坊ノ岬沖。

来ました。
厚い雲の切れ目から現れる雲霞のような敵艦載機。
主砲の三式弾を――間に合わないっ!

十二・七センチ高角砲群が咆哮し、針鼠のような対空機銃が一斉に唸りを上げます。

数機が火を噴いて堕ちていきました。
でも、その十数倍もの敵機が襲ってきます。
だめっ、とても避けられない――!

何度も何度も襲ってきます。

叩きつけられる爆弾。機銃掃射も。
銃身が真っ赤に焼付いた我が対空砲火の火線が次第に沈黙していきます。

轟音と殴られたような衝撃と共に、魚雷が突き刺さります。
数えきれない・・・・・・それも左舷に集中被雷!?――傾斜復元を!
でも、浸水はダメージコントロールの許容範囲を遥かに超えていきました。

あぁ、艦の傾斜が――。

輪形陣の前衛を護る駆逐艦の姿は・・・・・・見えません。
最後の視界に映る水面に、もう、矢矧の姿もありません。