第9話 『絶海の罠』
北海の果てに浮かぶ寂れ小島―ストレイメイ島。
ここでは荒くれ達が、修道士を板に縛りつけ手斧の的にして遊んでいた。
勝手に点数を決め、殺さないように当てていく荒れくれ。
他の者がヨーム戦士団に酒を勧めるが、彼らは整然と隊列を保ったまま動かない。

奥の小屋では、ヨーム戦士団フローキと
荒れくれの頭領アシェラッドが卓をはさんでいた。
フローキの依頼は、トールズの首。
成功報酬は金貨100枚と標的の乗っている船、そして積荷。
“戦鬼”の噂はアシェラッドの耳にも届いていた。
「英雄で通る者を討ってよいものか」ととぼけて見せるアシェラッド。
「15年前、すでに敵前逃亡罪で処刑命令が出ている」と返ってくるが、
「ならなぜその場で殺さなかったのか」とさらに問う。
「深い詮索はためにならん」とすごむフローキ。
前金に金貨100枚を要求するアシェラッド。

長い沈黙を打ち破ったのは、外から投げられた流れ槍だった。
「すっぽ抜けちまった」と笑いながら謝る片目に傷のあるツンツン髪の男・ビョルン。
槍はアシェラッドの眼前をすぎ、タペストリーに深深とつき刺さっていた。
・・・それを見たフローキが前金追加を呑み商談成立。
喜色満面のアシェラッドは去り際にトールズの特徴を聞く。
あさっての方角を向きながら「奴はもう戦士ではない」と吐き捨てるフローキ。
視線上には、布の奥で射抜かれた伏兵の部下と、滴る血があった。

「よくやった」とビョルンの腕を褒めながらも、
今回の依頼に察した胡散臭さをもらすアシェラッド。
処刑命令は嘘だと踏んでいる。
ではなぜ自分たちにお鉢が回ってきたのか?
命令違反のヨゴレ仕事だからか、あるいは何か意図があるのか…。

一方その頃、トールズはトルフィンの尻をひっぱたいていた。
その様子を見て笑う若者たち。まだ先に待ち受ける罠も知らずに。