重水素
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重水素(じゅうすいそ、deuterium(デューテリウム))は水素の安定同位体の1つ。
1932年にアメリカの化学者ハロルド・ユーリーが発見した(ユーリーはこの功績で1934年のノーベル化学賞を受賞した)。
通常の場合、地球上での水素原子と重水素原子の存在割合は、水素が、99.984%、重水素が、0.016%である。
狭義には2Hと3Hを併せて重水素と定義されているが、存在比が極く僅かで放射性同位元素である三重水素を別として、
二重水素を重水素と呼ぶ場合がほとんどである。

また、重水素原子が2つ結合した分子(D2)も重水素と呼ぶ。
常温、常圧で無色無臭の気体。融点-254.5℃、沸点-249.4℃で、普通の水素分子H2の値(融点-259.2℃、沸点-252.6℃)と比べやや高い。
これは重水素原子が水素原子のほぼ2倍の重さがあるためで、他の物理的性質も通常水素と異なり、また化学反応のしやすさも異なることがある(重水素効果)。
例えば水を電気分解すると1H2の方が発生しやすいので重水が濃縮され、この方法で100%重水を製造することができる。

重水素は原子核反応での中性子の減速剤、化学や生物学では同位体効果の研究に使用されている。
また、NMR溶媒として重水素原子で置換された溶媒(重水や重クロロホルムなど)が用いられている。