はじめ、この世界には一本の巨大な樹が立っていた。
どれくらいの高さがあるのか、どこに立っているのかも分からない。
ただ、確かにそこには大きな樹が存在していた。
それ以外には何もない。
やがて、その大きな神木に果実が実り、数多の神々を生んだ。
無数に積み重なった神木の枯葉と、張り巡らされた幹は、いつしか広大で豊かな大地へとその姿を変えていった。
そこには様々な命が生まれ、育っていった。
世界の名はマナヘイム。神々と、人と、神々と人の仲介をする存在、ビフロストが住む世界。その豊かで平和な時代も、長くは続かなかった。
人間は些細な出来事から、人を憎むことを覚えた。
その憎しみによって。人は傷つけ争い、それがまた新たな憎しみを生んだ。
はじめは小さかった憎しみが、愚かな争いが、いつのまにか膨れ上がり、やがて大地は荒れ果て、神々はこの世界を去っていった。
「さて、今日のお話はこれでおしまい。ちょっと坊や達には難しかったかな」
男は紙芝居の最後をめくりおえると、表紙をはじめに戻して片付けはじめた。静かに話を聞いていた数人の子供が一斉に口を開いた。
「ねぇねぇ、神様達はどこにいっちゃったの? もう戻ってこないの?」
「お、そうだな・・・」
思わぬ子供の反応に、男はしばらく考えて、やがてこう言った。
「もし、坊や達がこの世界を立派で綺麗にすることができたら、戻ってくるのかもな。おっと、時間だ・・・。また明日もいつもの時間にくるからな。気をつけて帰んなよ」
「またね、おじちゃん」
子供たちがまた広い野原へ遊びに駆けていく。その空が偽りの空だとは知らずに。

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