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哲学や思想では、19世紀の合理主義や実証主義を批判し、現実的・主体的な存在(実存)としての
人間の真のあり方・生き方を追求する実存主義が現代の思想に大きな影響を及ぼした。
実存主義の源流となったのは、19世紀のキェルケゴール(1813〜55、デンマークの哲学者)や
ニーチェ(1844〜1900、ドイツの哲学者)の思想である。 ニーチェは、主著『ツァラトゥストラはかく語りき』(1883〜91)
などで、ヨーロッパ文明の退廃はキリスト教の支配によるとして、「神は死んだ」と叫び、新しい価値の樹立を主張した。
そして「力への意志(権力への意志)」(より強く無限に向上を望む意志)・「超人」(力への意志の体現者で常に力強く
自己の向上を目ざす存在、ニーチェは超人を神にかわるものとした)などの思想を説いた。そのためニーチェの思想は
後にナチスによって利用されることとなった。 実存主義は、危機意識の高まった二度の世界大戦後に盛んとなった。
主な実存主義者としては、ドイツのヤスパース(1883〜1969)やハイデッガー(1889〜1976)・主著『存在と時間』(1927)、
そして実存主義の代表者とされるフランスのサルトル(1905〜80)・主著『存在と無』(1943)らがいる。なおサルトルは
実存主義文学を確立し、『壁』や『嘔吐』などを著した。 アメリカでは、パース(1838〜1914)によって創始されたプラグマティズム
(実用主義と訳す)がジェームズ(1842〜1910)によって確立された。ジェ−ムズは実際に有効性のあるものを真理と考えた。
プラグマティズムの大成者とされるデューイ(1859〜1952)は道具主義(ガッは事物を有効に処理する手段・道具であるとする思想)を唱えた。デューイは教育学者としても有名で、
彼の教育理念はアメリカ教育界だけでなく、世界各国の教育にも大きな影響を与えた。 オーストリアの精神病理学者である
フロイト(1856〜1939)はユダヤ系の家族に生まれ、晩年ナチスによる迫害を逃れてロンドンに亡命し、翌年ロンドンで没した。
フロイトは夢の分析や性の心理などの研究から無意識の解明に努め、心理現象を性欲と自我との葛藤で説明した。
彼の思想は20世紀の人文・社会科学にも影響を及ぼし、20世紀を代表する思想の一つとなった。