「・・・次は、反対側ね」

俺の返事を待たずして、すんなりと俺の身体を反転させると、もう片方の耳へ侵入する。
自分が一つの脳味噌、桃色のスープに浮かぶ肉団子になった夢の続きが、再開される。

やがてこの未知の快感にも慣れ、目線を美咲に向けると、大人びた顔でこっちを見ていた。
唇は俺の耳に密着させたままで、上目遣いで俺を見ている。
その顔からは表情を読み取ることができない。初めて見る美咲だ。

「・・・・・・」
「どうした?」
「ピーマンの匂いがする」
「・・・晩飯がピーマンだったからな」
「ふぅん」

美咲は不満そうに鼻を鳴らすと、そのまま身体を遠ざけた。
そこで、ちょっと残念に思ってしまう俺に気づいて、少しだけ微笑んでくれた。

「それじゃ、学校で。またね」

刹那、消毒液の匂いが室内を流れて、美咲は視界から消えた。
俺もやがて眠りについたが、もうその日は夢を見なかった。

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連続投稿制限キツイネ。今回はここまでです。