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☆メンボスレ☆ Part2 美咲とメンボ

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0001名前は開発中のものです。04/05/16 16:16ID:BNci8GEi
 ゲーム作るにゃ一人じゃ出来ぬ。サイトで募集しても応募が
無いそこの貴方、内気でホムペも持っていないそこの貴方も、
どうせ諦めるならその前にここでメンボしてみないかい?

ルール
・募集担当、人数はちゃんと書きな。現スタッフ数もな。
・冷やかし禁止
 誹謗中傷する人間はスルーして相手にしないように
・個人情報は詮索スンナ。連絡手段はフリーメール等を。
・すべてにおいて常識の範囲内で

前スレ
☆メンボスレ☆(メンバーボシュースレッド)
http://pc5.2ch.net/test/read.cgi/gamedev/1005323011/
0031名前は開発中のものです。04/05/27 00:10ID:iGJRPMd4
その日は大学に来たものの、いきなりすることがなくなった。
2コマ目の教育心理学が休講で、昼休みと合わせて2時間半の時間が空いてしまった。
仕方なく俺は前から気になっていた文庫本を生協で購入し、大学構内のベンチで
それを読むことにした。

いい天気だ。ポカポカとした陽気は、初夏のそれにふさわしい。
皐月も海のシーズン到来ではしゃいでいたな。
夏が近づくだけで喜べるとは、皐月も安上がりなヤツだ。


文庫本のページを20ページほど繰ったところで、俺の隣りに誰かが座る気配がする。

「お兄ちゃん」
「・・・」

顔を上げなくてもそれが誰なのかわかった。
まさか昨日の今日でまた現れるとは思わなかった。
声の主が誰なのかは既に分かっていたが、その姿を確認するため、俺は顔を上げる。

「美咲か・・・」
「うん、お兄ちゃん」

美咲は、昨日別れたときと同じ姿の美咲だった。
そりゃそうだ。昨日は俺の好みを聞きそびれていたからな。
しかしちょっとだけ大人っぽくなった美咲は、そこに居るだけで充分、俺をドキッとさせる。
0032名前は開発中のものです。04/05/27 00:10ID:iGJRPMd4
「今日はどうしたんだ?」
「うん、お兄ちゃん、暇そうだったから。お話しても、いい?」
「いいぞ」
「えへへ、どんなお話しようかな・・・」

美咲は初夏の日射しを浴びて、キラキラと輝く。
以前は病室で本を読んでいるのが似合う、暗い文学少女だったのだが、やっぱり女の子は
笑顔が一番だ。こんな明るい美咲に出会えたのだから、あのポップコーンには感謝しないと。
たとえそれ以外の何か怖ろしいことが、これからの2人に待ち構えていようとも。

「美咲、お前は今どこに住んでるんだ?
 お腹は空かないのか? お金は持ってきるのか?」
「うーん、それは内緒にさせて。
 お腹は・・・エネルギーを摂取する方法ならいくらでもあるし。
 お金はね、まあ、いろいろ。美咲にも、見られたくない部分はあるんだよ」
「そうか・・・。ウチ来て一緒に住むことはしないのか。なんなら、おふくろには俺がきちんと
 説明するぞ」
「うーん、それはパス。ごめんね。
 一緒に住むのがイヤとか、2人だけのヒミツを守りたいとか、そういうことでもないの。
 なんていうか・・・」
「なんだ? それも言えないことなのか?」
「説明が難しいよ。美咲、もっと頭良くするね」
「おい」

シューン!

またあの光が美咲から立ち上る。例の遺伝子組換え能力か。
光が消えた後、そこにいた美咲は、ちょっとだけ変化していた。
目つきが、鋭い。直視されるとたじろぐような視線を持った美咲。それ以外は変化なし。
可愛い美咲が理知的な美咲になったと言えばいいか。
まるで、育成シミュレーションゲームのキャラクターみたいだと考えてしまう、俺。
0033名前は開発中のものです。04/05/27 00:11ID:iGJRPMd4
「うん。それじゃ説明するね。
 どうして一緒に住まないか、その説明を求めてるんだよね」

新しい美咲はさっきより早口だ。

「お兄ちゃんと一緒に居たいというのは本当の気持ち。
 でも常に傍にいるのは、男女の関係として実は良くないの。
 やっぱり、飽きてしまうから。男女の関係には刺激がないとね」
「なるほど・・・」

この年になって、妹に恋愛論を語られ、それに納得させられるとは思わなかった。
理知的バージョンの美咲、あなどりがたし!

「お兄ちゃん、聞いてる?
 それでね、美咲は考えたの。恋人の甘い関係を維持するにはどうしたら良いか。
 毎日べったりだと飽きてしまうから、距離をおくべきだって。
 付かず離れずの距離で、お兄ちゃんをじらそうって」
「・・・」
「きっとお兄ちゃんは、美咲に会わない時も、美咲のことを考えてる。
 美咲がいつ来るかドキドキしながら、そのときを楽しみにしながら、退屈な毎日を過ごしている。
 美咲にはそれがわかる。だからお兄ちゃんは美咲を見ると、本当に嬉しそうな顔をしてくれる。
 そんなお兄ちゃんを見て、美咲はすごく嬉しくて、もっともっと好きになる。
 これってすごくいい関係じゃない?」

当たっている。わが妹ながら、なんという洞察力。末恐いやつだ。
いや、コイツはもう、俺の知っている妹としての美咲を超えた存在だったんだな。
あらためてそう感じさせられた。
0034名前は開発中のものです。04/05/27 00:11ID:iGJRPMd4
「そうだな・・・美咲の言うとおりだよ」
「えへへ。本当は、ちょっとだけ推測も入っていたんだけどね」
「そうか・・・」

俺はさっきから適当な相槌しか打ててない。まったくこいつは不思議な妹だ。
会うたびに新しい美咲を見せてくれる。それも美咲の言う、「刺激」なんだろうな。
それは妹とか恋愛感情とか、そういったものを抜きにしても魅力的なものであって、
それ故に俺はますます美咲にハマっていく。

「そうそう。今日はお兄ちゃんにお弁当を作ってきたの。
 お昼まだでしょ? はい」
「おお、サンキュ」

今の時間は11時頃か。空腹というほどではないが、目の前に食べ物があったら手を伸ばす時間だ。
俺はありがたく、美咲から包みを受け取る。

パカッ

中身はサンドイッチだった。ハム・タマゴ・きゅうり、そしてイチゴとクリーム。
色とりどりの具材が、白と胚芽色のパンに挟まって、実に鮮やかだ。
これが、これが、妹からのお弁当というやつか。

「これはうまそうだな。いただきます」
「えへへ。どうぞ、召し上がれ」
0035名前は開発中のものです。04/05/27 00:12ID:iGJRPMd4
美咲は俺が手にしたハムきゅうりを凝視して、口に頬ばる瞬間を見逃さないようにしている。
俺は、

ハムッ

とかぶりついて、

きゅぅりっ

と噛みしめる。・・・ゴメン、あまりにも嬉しくてちょっとお茶目な表現をしてみた。

「どう、おいしい?」

ちょっと心配そうな美咲。もちろん、それに対する答えは決まっているじゃないか。

「うまい。お世辞じゃなくおいしいよ、美咲」
「本当? 嬉しいな」
「やっぱり美咲はこういう家庭的なことは得意だな。きっといいお嫁さんになれるぞ」
「えへへ・・・」

俺の食べっぷりを隣で嬉しそうに見つめる美咲。それまで宿っていた理知的な光は瞳から消えて、
今は愛しい人を見つめるトロンとした目つきになっている。頬も心もち紅くなっているようだ。

「美咲おいしいよ美咲」
「うん・・・」

それ以外、言うことがない。言葉はなくても、愛しい気持ちが通じ合っている。しぐさや声で
確認しなくても、俺は美咲の気持ちを今味わっている。これが美咲のメッセージなんだ・・・。
0036名前は開発中のものです。04/05/27 00:18ID:V6ez3HZh
「ごちそうさま。おいしかったよ」
「はい、お粗末さまでした」

美咲は俺から空になった包みを受け取ると、丁寧に折りたたんでポケットにしまった。

「それじゃ、お兄ちゃん」
「もう行くのか?」
「うん・・・お弁当を渡したから、今日の逢瀬はおしまい」
「そうか・・・今度は」

と言いかけた瞬間だった。

「おーい、藤森ー」

俺を呼んでいる声がする。同じ研究室の悪友、水野 剛(みずの たけし)の声だ。
振り向くと、水野の隣に、見たことのない女性も立っている。
年は俺や水野より少し上、24〜5ってところだろうか。ウェーブのかかった栗色の髪を綺麗にまとめ、
スーツを見事に着こなしている。誰だろう?

「水野、どうした?」
「彼女に構内を案内してたら、たまたまお前を見かけてな。
 彼女、今日からうちの研究室に入ったんだ。S大から移籍だって。
 名前は、えーと」
「葦田 柚希子(あしだ ゆきこ)です。こんにちは」
「どうも、こんちは。俺は藤森 正雄。水野と同じく、高原研の4年生です」
「あれ、こっちのお嬢さんは?」

当然といえば当然だが、水野が美咲に気がついた。
まさか死んだ妹ですとは言えない。
0037名前は開発中のものです。04/05/27 00:19ID:V6ez3HZh
「えーと、俺の従妹だ。田舎から遊びに来てて、今日は弁当を届けに来てくれたんだ」
「なるほど」

俺のとっさの嘘を信じたような信じてないような顔をする水野。
すると突然、葦田さんが美咲に微笑みかけてきた。

「可愛い妹さんね。葦田です。こんにちは」
「え、え、あ。こんにちは。それじゃ、失礼します」

葦田さんに声をかけられた美咲は、まるで夜道で露出狂に出会ったかのように逃げ出してしまった。
美咲は昔から人見知りするほうだが、今の逃げ方は何か引っかかる。どうにも不自然だ。
それよりもちょっとまて、葦田さんは美咲のことを妹と言わなかったか?
俺は従妹と説明したはずなのに。

「あらあらあら、照れちゃって」
「はは、人見知りするんですよ、アイツは」
「気にしてないわ。それじゃ、案内の続きをお願い、水野君」
「へいへい」

葦田さんが俺の傍を通り過ぎるとき、柑橘系の香りがふわっと俺を包んだ。
その香りに気を取られたときはもう、葦田さんと水野はその場を去っていた。
0038名前は開発中のものです。04/05/27 00:19ID:V6ez3HZh
俺は近くの自販機で缶コーヒーを買うと、ベンチに腰を下ろして残りのサンドイッチを平らげた。
時間は正午の少し前、3コマ目が始まるまで、まだ1時間以上ある。
だが、さっき買った文庫本の続きを読む気はしない。

食べている最中、ずっとさっき会った彼女=葦田さんのことを考えていた。
彼女は美咲のことを妹さんと言った。俺が従妹と説明したにも関わらず、だ。
葦田さんは、俺と美咲しか知らないはずの秘密を何かしら知っているのか。
そういや、美咲も葦田さんに話しかけられるなり逃げたな。あれは、自分の居場所がなくなったら
去ったわけじゃない。美咲なりに、葦田さんから何らかの恐怖を感じて去ったに違いない。

葦田さんの出現は何を意味するのか? 美咲の天敵?
美咲の遺伝子組換え能力、それによってどんなことができるなのか、見当もつかない。
不老不死の永遠に生きる存在ならば、この星の支配者になることも可能だろう。
それを粛清するために、天敵として葦田さんが現れたとか?
ふと、そんな根拠もない妄想が浮かんでしまった。

それが単なる杞憂で終わることを願って、俺は午後の講義の準備を始めることにした。

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