同じクラスの牧原優紀子の大のお気に入りの、ウザい駄菓子屋ババァ。
優紀子には優しいが、オレにはイヤミばかり言うクソババァ。
...だが今日は違った。店で聞かされたのは、戦争で引き裂かれた恋人との
悲しい別れの話だった。オレと優紀子は胸が張り裂けそうな思いで、ババァの
語りを黙って聞いていた。

その帰り道。二人とも黙ったまま歩いた。急に優紀子と肩が触れ合った。
「愛する人を想うおばあちゃんの気持ち...感動しちゃったな」
心なしか頬を上気させ、潤んだ瞳で優紀子が語りかけてきた。
「うん」オレもまったく同じ気持ちだった。
「愛する人を前に、ためらっていてはいけないのよね...」
「ああ」同感だ。欲望がムクムクと膨れ上がってゆく。
「ねえ...今日はずっとそばに居てほしいな。今からうちに来て...」
「ごめん。オレ行くところがあるから」
オレはきびすをかえして走り出した。愛しいババァの元へ。

駄菓子屋の扉を荒々しく開け放ち、奥に居るババァの皺くちゃの体に
むしゃぶりつくオレ。

そして翌日−
「・・・あのね。おばあちゃんが・・おばあちゃんが・・死んじゃったの
 心臓マヒだって...あんなに元気だったのに...なんで急に...
 愛する人と再びめぐり合うこともできずに...ひどいよ...」

呆然と立ち尽くす優紀子。だが、オレだけは知っている。ババァはきっと、
満足して天国に旅立っていったはずだ。