とりあえず、理想的なカーボンナノファイバーが量産できたとして、
断面積1平方ミリのケーブルを軌道から垂らしたら、総質量は50t。
ただし、地球から離れると重力が弱まって遠心力が強まるので、
ケーブルの根元にかかる張力は地表重力10t相当で済む。
断面積1平方ミリのケーブルは地表重力20t相当を支えられるので、
差し引き10t相当の余裕が荷物の分ということになる。
10tの荷物一個を地表から上に持ち上げていくと、
上に行くほど重力が弱まるので負担も軽くなる。
小さなパックを全体に分散させれば、荷物も総質量50tまでOK。

リニアなんかを付けて、乗り物をケーブル沿いに走らせるためには、
電磁的グリップと送電のために常温超導体が必要になるし、
それは構造的にはお荷物なので、貨物積載量を減らしてしまう。
直接ケーブル自体を動かして、山のリフトみたいにする方が、
必要な技術水準も構造物も少なくて済むからエレガントだ。
ケーブルをぐるっと輪にして、一定速度で回し続けるわけね。
これで、ケーブル自体の質量は100t。
一巻のケーブルをロケットで運び上げたら、
後はケーブル自体で新たなケーブルを運び上げて、
システムを拡張して行くことができる。
実用段階では、細いケーブルが吊り橋の上みたいに平行して並び、
ゴンドラそれぞれは複数のケーブルを握って、
ケーブルの破断に備えることになる。
軌道と地表には速度可変なケーブルが別にあって、
そこから定速ケーブルに乗り移るものとしよう。
ゴンドラは、手の付いたケーブルカーという感じ。

――というようなのが最小限システムだと思う。
長さは圧倒的だけど、質量は実は大したことない。
素材の量産さえクリアできたら、遠未来の技術じゃないな。