南シナ海の平和について協議しながら、一方的な「現状変更」を強行する。
これでは、関係国との緊張と相互不信を拡大させるばかりだ。
 中国の習近平政権がスプラトリー(南沙)諸島で、実効支配する岩礁を
埋め立てて、「人工島」を造成する工事を進めている。七つの岩礁中、六つが
対象という。いずれも、ベトナムやフィリピンなどと領有権を巡って係争中だ。
 中国は、国際法を無視する形で独自に設定した「九段線」を基に、南シナ海の
ほぼ全体に主権が及ぶと主張している。しかし、九段線には法的根拠がなく、
日米欧を含む国際社会は認めていない。
 事態の複雑化や紛争を避けるため、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が
2002年に署名した南シナ海の「行動宣言」にも反する行動ではないか。
 ベトナムやフィリピンは強く反発し、関係国は懸念している。中国は、
実効支配の強化を狙った人工島造成を自制すべきだ。
 中国誌は10月、満潮時に水没する暗礁だった「永暑礁」が、南沙諸島で
最大の約1平方キロの「島」になったと伝えた。軍関係者約200人が駐留し、
飛行場の建設も決まっているという。
 現在、南沙に中国の飛行場はない。「制空権確保」に向け、永暑礁を軍事
拠点化する中国の狙いは明らかだ。防空識別圏の設定を検討しているとの
見方もある。
 日本や米国にとって、南シナ海は主要な海上交通路(シーレーン)に位置する。
「航行の自由」の確保が死活的に重要だ。中国の覇権主義的行動は、看過できない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20141104-OYT1T50129.html