カレーは戦の合図って
病院にいたお爺ちゃんが言ってた

「お爺ちゃんはLEE食べたことあります?」と聞いたら
孫娘が食べてたので少しもらったことがあるが
辛すぎて私には無理だったと笑っていた
ボンカレーの甘口でも涙が出るというもんだから
「お爺ちゃんは辛いの苦手なのかな」と言ったら
こんな話をしてくれた

お爺ちゃんは戦争のとき飛行機乗りだった
あまり体を使わない航空部隊は
普段はたいした飯じゃないんだが
ある日の晩飯にカレーがでてきたらしい

カレーと呼ぶにはあまりにも貧弱な味だったが
いつもと違う飯にありつけるのは素直に嬉しい
みんなで喜んだのも束の間で
「これが最後の飯だ」と宣告され
いよいよなんだなと思ったらしい

しかしお爺ちゃんが乗ってた飛行機が
どうにもエンストぎみで飛ぶことができず
目的地に着く前に森林に墜落してしまい
手足に大怪我を負ったらしい
なんとか後方部隊のところまで歩いて戻り
手当てしてもらって再び戦場に向かおうとしたが
車はまったく違うとこに向かったとか

このまま生きて帰ると非難を浴びるので
死んだことにして長い間隔離施設に監禁され
家族にも会えず生き地獄だったとか
仲間の戦死が伝えられるたびに
なんで自分だけ生きているんだろうと悩んだとか

だからお爺ちゃんはカレーを食べるたびに
いっしょに戦うはずだった仲間を思い出して
甘口だろうが中辛だろうが涙が止まらないらしい