383:奈々氏のいるせいかつ:2009/01/10(土) 08:10:37 ID:TukknMAMA
 続きです。
 
 やがて息子も中学生になった。ある日いつもと違うことが起きた。  
 息子が相撲大会に出かけたある晩、いったん帰ってきた私は台所でミロを作っていた。  
 ふと人の気配がしたので横を見ると、外人さんがいた。  
 けれどその日は手を伸ばせば触れるくらいそばにいた。  
 睡眠不足の私が思ったことは「ちょっと息子と似てるかな」くらいだった。  
 
 ―それは何だろうか?  
 体の中に声が響いたような感じだった。
 外人さんを見るとまじまじとミロの入った鍋を見ている。  
 ミロって言ってもわかんないよね・・・と思った私は「半分こしましょ」と言って、
 ミロを半分にわけて、カップを外人さんに渡した。  
 
 ―失礼する。  
 そう声が響いて、両手にカップを持ってふうふうしながら外人さんはゆっくり飲んでいた。
 その時の彼の顔は、柔らかくてすごくうれしそうだった。  
 飲み終わって、また声が響いた。
 
 ―こんなにうまいものがあるのだな。  
 少なくて悪いかな、と思った私は「おかわりする?」と聞いたが、
 外人さんはカップを私に手渡して、一礼してふっと消えてしまった。