優秀で高尚な人間は没落した。
あとは自殺すればいい。

20世紀は旧来の上流階級が没落した時代だ。
それに伴い、メインカルチャーすなわちクラシック音楽や純文学に替わって、
サブカルチャーといわれるポピュラー音楽や大衆文学が台等した。
純文学者なんてものは、文字通り自殺に追い込まれたのだ。

イギリス田舎やアメリカ田舎やクロンボの民謡ひいては世界各地の民謡の独特のメロディーは、都会の高尚さに対するカウンターになった。
世界各地の文化や民族を認める思想が強まる中、フォーク音楽やロック音楽と呼ばれてそれは浸透していった。
結果として生まれたのは、差別の撤廃であり、
家柄や出自よりも、頭のいいやつなら田舎者だろうとアジア人だろうとクロンボだろうと地位と名声と財産を築くことができる社会だ。
その分、都会の上流階級だった保守白人のおじさんたちが失職した。
ホンダのバイクやソニーのラジオが世にあふれ、レコード会社専属でも徒弟制度でもないミュージシャンたちがレコードをたくさん売った。
そして生まれたのは、頭の良い新たな上流階級によるさらに強固な資本主義や商業主義社会なのだ。

いい政治やってくれるならクロンボが大統領でもいいし、気に入った車があれば日本車に乗ると良い。
こうして社会は進歩し、商業主義や資本主義はより強固になる。めでたしめでたしである。

資本家という個人や旧来の貴族階級に対抗していた、反資本主義は完全に勝利した。
反資本主義が成功した結果、現代の銀行や証券というものがある。
頭が良ければどんな人種や出自でも雇ってもらえるし、取引もできる。
資本主義はより強固な体制に進歩したのだ。悪いことではない。