―ギターで演奏する準備を進めていますね。

 ギターで何が出来るかは分かりませんが、その一部を編曲してアメリカなどでも
演奏しています。作曲家の藤家渓子も雅楽に興味を持ち、雅楽作品を書いています。
先日、彼女のギター・ソナタ「青い花」、ギター四重奏のために書かれた雅楽作品を
ローマで演奏しました。これも素晴らしい作品ですし、あと二つ作品を書くことが
決まっています。

―藤家の「青い花」はシューベルト的なロマンティシズムに彩られた作品です。

 ギターのために大きなソナタを書くというのは素晴らしいことだと思います。
少し乱暴な表現かも知れませんが、セゴビアが出現してギターのための大きな
作品が必要になり、彼は色んな作曲家にソナタを委嘱しています。

 ギターには楽器の特性を生かした得意な調があるが、その逆に苦手な調がたくさん
あります。転調の自由が利き難く、実際に楽器も鳴りにくくなる。ほとんどのギター
曲がニ短調で書かれているのもそんな理由からで、自由に転調して長いソナタを演奏
するために、ギタリストは様々に工夫をして克服しようとしてきました。

 藤家は自由に作曲し、調を超えていくことでギターの可能性に挑んでいます。ギター
では鳴りにくい調を逆に生かして使い、それは音色の変化となって表れます。スペイン
でもローマでも好評でしたし、これから色々なギタリストが挑戦するに値する作品だと
思います。

 作品は色んな人が弾くことで発展するものです。セゴビアが「シャコンヌ」を演奏
して初めてギターのための作品となったように、大バッハもつい先日まで同様だったんです。