―現代作品はもちろん、雅楽作品にも取り組んでいます。

 平安時代の日本の音楽に興味を持っていて、宮内庁などで色々と資料を見せて
もらっています。それというのも、今ある雅楽も大変素晴らしいけれど、平安時代の
宮廷の貴族が演奏していた音楽に心を魅かれています。それは弦楽器が主体となっている
ものなのですが、ほとんど現代に伝えられていない。写本や譜面が色んなところに
残っていて、ここ何年かは、その研究に時間を割いています。定まったスケジュールを
あまり組まないようにしているのもそんなことからですw

 古代の中国には調性が八十四もありましたが、その調律法が日本にも伝わっていて、
王朝の交代や革命などで文化が分断された中国よりも残っているそうです。秘伝、口伝の
世界ですから写本にはごく基本のことしか書かれていません。あまりにも失われたものが
多いからと鎌倉時代に書き留められたものです。でもずっと見ていると何かが見えてくる
ようです。

―雅楽を研究することはどんな意味がありますか。

 音楽の色んな姿を見つけ、小さな頃からやってきた音楽の環境を少しでもゼロに
戻したいと考えています。出来ないことですが、頭を空にしたいんです。それと
同時に西洋音楽をやってきたカンというか、楽器に対する様々な知識があり、それが
役に立つでしょう。九、十世紀の譜面が残っているというのはヨーロッパでもあまり
ないことです。そこに書かれた音楽は、現在のものと共通点を持ってはいても随分と
違ったものになっています。音楽家としてそこに興味を抱いています。