大都市から地方への移住志向が高まる中、移住先として人気が高いのが岡山県だ。
県は「地震や台風などの災害が少ない」とPRしており、実際に移住者の多くもそれを理由に挙げる。

しかし、同様に地震の少なさをPRしていた熊本県は4月の熊本地震以後、「自然を侮っていた」とPRを見直す事態となった。
そうした例もあり、専門家は「(岡山県は)確かに地震が少ないが、けっして油断してはいけない」と警鐘を鳴らす。

「岡山には○○が、少ない」−。
岡山県の移住促進用ポスターなどはこう大きく書かれており、目を引く。
その下には、「雨が少ない。地震が少ない。台風も少ない。」「岡山には『心配』が少ない。だから、『安心』がいっぱい。」などと書かれている。

こうしたPRが効いたのか、ふるさと回帰支援センター(東京)が発表している「移住希望地域ランキング」で、
岡山県は平成23年の東日本大震災後、4年連続(24〜27年)で全国5位以内の人気を誇ってきた。
24年は前年の15位から2位へと大躍進。25〜26年は3位、27年は5位だった。

県が実施・発表した28年度上半期の県外からの移住者へのアンケートでは、
移住した主な理由について、「災害が少ない」が25・6%で最も高かった。

ポスター以外でも県は地震の少なさをアピール。
県作成の冊子「大好き!晴れの国おかやま〜岡山って どんなところ?〜」では、
1923〜2015年に震度4以上地震を観測した回数が16回で、
都道府県別で全国3番目に少ない(最少は佐賀県の8回。最多は東京都の555回)ことを紹介。

移住ポータルサイト「おかやま晴れの国ぐらし」でも、「岡山県は『晴れの国』と呼ばれ、気候は温暖で災害も少ないところ」と記している。

また、「岡山県移住・定住ガイドブックおかやま晴れの国ぐらし」では、
「どのくらいの頻度で地震が来るのですか?また震度はどのくらいですか?」との質問に、
「震度1以上を観測した地震は、平成23〜27年の過去5年間で93回程度です。震度3は6回、震度4は2回で、ほとんどが震度2以下となっております」と回答している。

死傷者210人、家屋全半壊3900戸。忘れられた70年前の記憶

このように岡山県では、積極的に災害や地震の少なさを移住者にPRしてきたが、実際は過去に大きな被害をもたらした地震もあった。

70年前の昭和21(1946)年12月21日午前4時19分に発生した昭和南海地震だ。
和歌山県潮岬沖を震源とするマグニチュード(M)8の地震で、岡山県内では死者52人、負傷者162人の被害が出た。
また建物被害は全壊1201戸、半壊2707戸に上り、線路の沈下や堤防の決壊、道路の損壊もあった。
ちなみに日本被害地震総覧(東京大学出版会)によると、同地震の被害は中部地方から九州にまでおよび、全体で死者が1330人にのぼったとされる。

http://www.sankei.com/west/news/161219/wst1612190006-n1.html

「岡山には○○が、少ない。」と書かれた岡山県のPRポスター。左下には「雨が少ない」「地震が少ない」などとある(同県提供)
http://www.sankei.com/images/news/161219/wst1612190006-p1.jpg