ばあちゃんは庄屋の娘だったんだが、家の仕事の下働きをしていた流れ者の爺さんと親しくなって駆け落ちした
だから勘当同然で、所帯を持って暫くは極貧生活だったが本家からは何の援助もなかった。気の毒に思った
近所の人が二番醤油を分けてくれて、それで大根を煮てくって飢えをしのいだ。
 そんなことだから親とは一切関わりがなかったが、それから何年もたって原因不明の病気になった。医者に診て
もらっても全く治らない。そこで一本松の乞食坊主(いまでいう超能力者)に診てもらったら、
「両親の墓を疎かにしている」との見立てだったらしい。以来、墓の掃除だけはするようになった。
でも自分では嫌なのだろう、孫の俺がお彼岸になると藪を刈る鎌や鋸と箒をもって墓掃除に行くのが行事
になっていた。当時にしてはかなりの額の駄賃をくれたのでそれでおもちゃを買うのが楽しみだった。