事故がおさまったか

 10月1日午前6時30分には、臨界状態は停止した。工場から11キロメートルの自主的屋内
待避措置がとかれ、翌2日午後6時半には350メートル以内の避難勧告もとかれ、いわば政
府によって「安全宣言」が出された。しかし実際に危険性が去ったわけではない。すでに
述べたように、プラント内には、大量の放射能を蓄えた沈殿槽があり、手つかずに放置さ
れたままになっているのである。ここからは、引き続き放射能が放出されており、さらに
大量の放射能放出の可能性も残っている。実際京都大学の研究者によって、工場近くのヨ
モギからヨウ素131が最大54ベクレル/キログラム検出されている。また、核分裂反応の継
続中に、強い中性子線が放出されたため、放射化による放射性物質が生成しており、ナト
リウム24が工場から3キロメートル離れた場所の土壌から検出されている。私たち原子力資
料情報室の推定によれば、工場から350メートル以内であれば、かなり多くの放射化生成物
ができており、待避から帰宅した人々が、例えば残されていた食塩を使ったりすれば、放
射能を体内に取り込み被曝する可能性がある。したがって、当分安全宣言を出せるような
状態ではない。