原発過酷事故 備え万全か 懸念残る九電シナリオ… 溶融物 冷却できるか [福岡県]

 原発の過酷事故対策が不十分ではないか−。
専門家から、そんな疑問の声が上がっている。事故で冷却機能が失われ、原子炉内の核燃料が溶融し、
炉を覆う格納容器を破壊して大量の放射性物質を放出させる「過酷事故」。
安倍政権は原子力規制委員会の新規制基準を「世界一」と強調するが、世界ではそれを上回る安全性を
整えた新設炉が建設されている。
新基準では、格納容器内の圧力が高まった際、爆発を避けるため、放射性物質を含む気体を外部に
排出させるベント(排出口)と呼ばれる最終手段も、九州電力などの加圧水型軽水炉(PWR)では設
置の先送りが認められた。

 規制委の審査で九電は、配管の破断で原子炉に冷却水が送れず、電源も失われた過酷事故対策を説明してきた。
何とか移動式発電機をつないで格納容器への注入を再開するなどし、原子炉下のキャビティーと呼ばれる
スペースに水をため、落下する溶融物を徐々に冷やすシナリオだ。
 この対策に、疑問の声が出ている。
 「溶融物がキャビティーに徐々に落ちると、水中で小さい粒になる。粒は膜に覆われ熱を保ち続け、
膜が何かのきっかけで連鎖的に破け始めると、最も破壊力がある水蒸気爆発につながる可能性がある」。
元燃焼炉設計技術者の中西正之さん(70)=福岡県水巻町=はこう指摘する。
 一方、水をためなければ「ホワイトアウト」の展開通り、コンクリート反応で水素や一酸化炭素が発生するリスクが高まるという。