>>912

 この場面は吉田調書にもある。吉田氏が細野氏に「炉心が溶けてチャイナシンドロームになる」
「水が入るか入らないか賭けるしかないですけども、やります。ただ、関係ない人は退避させる必要があると私は考えています」
「1号、3号と水がなくなる。同じようなプラントが三つでき、すさまじい惨事ですよ」と伝えたという記録だ。

 細野氏の証言が一段落した時点で、取材班は吉田調書の該当部分を示し、自身の記憶と合致するかどうかを尋ねた。
言葉遣いは多少違うが、細野氏は「違和感はない」と述べた。

 細野氏は吉田氏からの電話を切り、首相執務室にいた菅直人首相に対し、
2号機に水が入らずに厳しい状況にあると伝えた。菅氏は長く沈黙していたという。

 10分ほどたって細野氏の携帯が再び鳴った。吉田氏からだった。ここは吉田調書にない場面だ。

 吉田氏は「何とか水が入った。頑張れます」と言った。細野氏はその言葉を菅首相や枝野幸男官房長官に伝えた。
だが、2号機原子炉の圧力は高いままで、翌日の朝を迎えた。

■待機命令を記憶

 15日午前5時35分、細野氏は菅首相と一緒に東電本店2階の対策本部に乗り込んだ。
菅首相は第一原発からの撤退に傾く東電幹部を「撤退したら東電は必ず潰れる」と激しく叱責(しっせき)した。

 細野氏は菅氏とともに同じ階の小部屋に移った。そこにはテレビ会議の映像が流れ、吉田氏がいる現場の様子を知ることができた。

 午前6時42分。吉田氏が発言する様子が映った。前夜に想定した福島第二への撤退ではなく、
すぐに現場に戻れる第一原発構内やその近くの場所での待機を命令した瞬間だ。

 東電がのちに開示したこの時の映像には音声がない。
菅氏とともに画像を見つめる青い防災服姿の細野氏の様子が映っている。