食品中の発がん物質と放射性物質のリスク評価 −福島原発事故の影響を考える−
畝山 智香子 国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室長 薬学博士
http://www.gepr.org/ja/contents/20120531-01/
一般向けのリスクコミュニケーションにも有用な指標として暴露マージン(Margin of Exposure:MOE)という指標を、食品リスクの評価では使うようになっています。
ほとんどの人にとってMOEから考えれば、リスク回避対策の優先順位の高い発がん物質は放射性物質ではなく無機ヒ素になると思われます。
放射性物質を避けようとして水道水をミネラルウォーターに変える、放射能対策に良いという噂を聞いて海藻類をたくさん食べたり白米を玄米にしたりという行動を推奨する人がいます。
ところが、そうした行動は、無機ヒ素によるリスクを高くしてしまいます。
食品添加物や残留農薬でがんになるとか、現在の日本に流通している食品で計測されている程度の、ほんのわずかの被ばくでもがんになるとか脅かしながら、タバコや飲酒についてまったく触れない主張は、正当性をかなり欠いたものです。

現在検出されている放射性物質の量であれば、既にわかっているほかの発がん物質に比べて飛び抜けて高いリスクというわけではありません。
福島に住む人であっても、それ以外の地域に住む人であっても、同じ方法で対処できるといえます。
バランス良く、いろいろな産地や種類の美味しいものを喜んで頂いて食生活を楽しみましょう。